63話 悪魔の子
63話 悪魔の子
都内某所
そこの大手企業に務める一人の男性がいた。
「げっ…藤山課長…また残業っすか?」
部下と思しき男性が無精髭を生やした、眉毛の上に傷のある男性に話しかけた。
「何言ってんだ。お前も残るんだよ。」
「うへ?!マジっすか?!」
「ああ、終わったら奢ってやっから。」
「おおー!そういうことなら頑張っちゃいますよ!」
「ふ…現金なヤツだな…。」
藤山 茂 とうやま しげる 。
この大手企業の課長である。
この男は妻子持ちで、楽しく暮らしていた。
「ただいま。」
「パパおかえり〜!」
「おお…おかえり。」
そう言って一人娘を抱き上げる。
「おかえりなさい、あなた。」
妻も自分を出迎えた。
「ああ…おかえり。」
「今日は残業じゃないんですね。」
「ああ、部下のおかげで早く終わった。ご飯できてるか?」
「ええ、直ぐに。あ、そう言えばあなた宛てに手紙が届いていましたよ。」
「手紙?」
「はい、机の上に置いておきました。」
「分かった…。見ておこう。」
手紙を開ける。
「ん?なんだ?イタズラか?」
『親父…やっと見つけたよ。直ぐに…
…会いに行くよ。』
「ふん…くだらん。」
茂は手紙をゴミ箱に捨てた。
「あなた、味噌汁が温まりましたよ。」
「ん、すぐ行く。」
次の日。
茂は珍しく休日だ。
「あなた、またあなた宛てに手紙が届いてます。」
「ん?ああ…捨てといていいぞ。」
「いいんですか?」
「ああ、ただのイタズラだ。」
「…一応中身を見ても?」
「いいが…。」
妻は手紙の封筒を開ける。
「なんだ…あなた…これ白紙で…」
「だからイタズラだと言ったろう?…どうした?」
妻は茂の後ろを見て固まる。
「ば、化け物!!」
「?…どうした?」
「いや!!来ないで!!」
「大丈夫か?!どうした?!」
「いや…いやよ…こないでえ!!…あ…」
そのまま妻は気を失った。
「おい!しっかりしろ!おい!」
茂は必死で妻に呼びかける。
「どうなって…」
茂は先程の手紙をとる。
「白紙じゃない…か…」
そう思っていた途端手紙に文字が浮かぶ。
『次は誰の番かな…?』
「うわぁあ!!」
茂は手紙を投げ捨てる。
「だ、誰がこんなふざけた真似を!!…は…きゅ、救急車!!」
その様子を外から見守る2つの影。
「上手くいってるね…。」
「…ああ。」
青年は不気味に口角を上げる。
「ユウ…社会的に殺すってこういう事だったのね…。」
「ああ…俺がこの世界に持ってきたのは幻影魔法。」
「…」
「さーて…早く壊れてくれるなよ?徹底的にいたぶってやるよ…
…お前の心をな…。」
あの出来事から3日。
妻はそれ以来病んでしまった。
「大丈夫か?」
「…」
そう問うても妻は一点を見つめて口を割ろうとしない。
「何を…見たんだ?」
「…くま…よ…」
「え?」
「悪魔よ!あなたのうしろに…悪魔がいたのよ!」
「お前…疲れてるんだよ。育児もしばらく俺がやる。ゆっくり休め…。」
「無理よ!」
「…」
「だって!だって今もあなたのうしろに…悪魔がいるんだもの!!」
「!」
茂は急いで後ろを見る。
「…何も…いないじゃないか…。」
「嘘よ!待って…行かないで…!」
「…っ… なんでこんな…」
茂は病院を後にして家に帰った。
「ただいま。パパが帰ったぞ?」
「…」
しかし愛娘は出迎えには来なかった。
「どうしたんだ?おーい、ただい…」
「あ…パパだ。おかえりなさい。」
「!…おい!その手に持ってるのは?!」
「?…お人形さんだよ…?」
「バカ言うな!すぐに捨ててこい!」
愛娘が手に持っていたのは腸のはみ出た猫の死体だった。
「や!私のお人形さん取らないで!」
「何を言ってるんだ!」
パンッ!
茂は娘を叩く。
「うっ…うあぁぁ!!パパのバカぁ!!」
「あ、おい!!」
「っ…なんだってこんな…。そうだ…あの手紙…。」
茂はポストを開ける。
「っ…誰だ…こんなふざけたこと…。」
ポストの中にはぎっしりとあの手紙が入っていた。
『あんただけ幸せに家族と暮らせると思ったか?』
『あんたの娘はあんたらしくいい趣味してるな…。猫の死体で遊ぶなんて。』
その分の最後には必ずこう添えてある。
…復讐の化身より。
と。
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