第879話 冒険者ギルド①
第879話 冒険者ギルド①
アレンとイルゼがブラキウス大陸の発着の街イシュバラに到着するなり、入出管理局の建物に訪れた。
コンコン
一旦出て行ったパトラマ管理局長が1時間もしないうちにアレンたちの待つ個室に戻ってきた。
「大変お待たせ……。何事でしょうか」
アレンが創生スキル上げで個室に金の卵を溢れさせていたので管理局長が目を見開いて驚いてしまう。
「申し訳ありません。すぐに片付けます」
召喚獣を出して1分1秒惜しんで創生スキル上げをしているアレンと、それを腕組して眺めているイルゼの異様な光景に管理局長は驚いてしまう。
「構わない。管理局長、それで入出許可証はできたということか?」
「そのとおりです。イルゼ様、アレン様、お二方の入出許可証をお作りしました」
「む? 私はいらないのだが受け取っておこう」
盆の上に載せられた2人の入出許可証のうち自らの分を受けとったイルゼが懐に仕舞う。
片付けを召喚獣たちに任せたアレンも自分の入出許可証を手に取った。
「ありがとうございます」
(なんか冒険者証に似ているな)
アレンの名前、入出許可の文字、ブラキウスの大陸名が表示されただけの簡素な作りだ。
一時間程度で2枚作ってきたが、それでも手続きは早いのだろう。
「……アレン様、念のためにお伝えしますが、こちらはあなたがこの大陸に足を踏み入れることを許可したことを証明するものです。全ての街や村にも神殿にも足を踏み入れることができます。ただ、この大陸では粗暴な者も多いので何卒、ご注意ください」
(許可証が通じない場合もそれなりにあるということね。この世界の獣人もパワータイプか)
「分かりました。丁寧に手続きしていただき、ありがとうございます」
暗黒神アマンテの最側近である暗黒騎士イルゼと一緒だと、自らも丁寧な対応だなと思う。
13人いる暗黒騎士の中で「暗黒騎士長」や「副暗黒騎士長」などの肩書のない末席のイルゼですら、各大陸に1人しか任命されない守護番長や暗黒大神官よりも立場が上だと聞いたが本当のようだ。
入出許可証を受け取って外に出るとイルゼが話しかけてくる。
「次は冒険者ギルドだな?」
「そうだ。魔石を依頼したいからな」
「こっちだとパトラマ局長は言っていたな」
ガディアック島の担当をしていたイルゼは、全ての大陸に足を運んだことはあるが発着場のある街中であっても、詳しくないと聞いている。
アレンは入出許可証を貰ったものの無用ないざこざに巻き込まれないようにフードを深く被り、入出管理局長に前もって聞いていた冒険者ギルドにイルゼと目指した。
(この世界にも冒険者ギルドはあると。大陸毎に冒険者ギルド長がいる感じで組織体系はどうも人間界と違うみたいだけど)
大陸ごとに責任者を設けて管理するのは暗黒神アマンテが決めた方針らしい。
アレンは魔導書のメモ機能に冒険者ギルドの項目を追加し、今後の活動のために整理する。
【暗黒騎士について】
・暗黒神アマンテと法の神アクシリオンの使いだが、ほぼ暗黒神の指示を遂行するために存在する
・暗黒騎士長1人、副暗黒騎士長が2人、暗黒騎士10人の構成
・末席の暗黒騎士でも守護番長、暗黒大神官、入出管理局長、冒険者ギルド部長よりも立場が上である
【守護番について】
・魔族や獣人を魔獣から守る
・大陸間、都市内や都市間などの人々の争いを仲裁する
・法を犯した者たちを捕まえる
・主要な街や村に守護兵を派遣している
・要塞には守護番長、守護番長補佐、守護隊などがいる
・守護番長は各大陸に1人いる
・街には守護兵長、守護兵などがいる
【入出管理局について】
・各大陸の雷神船の発着場の最高責任者は入出管理局長が1人いる
・大陸に移動の制限がある者を入れないようにしている
・入出管理局長は大陸への入出を特別に許可したことを示す入出許可証の発行権限を持つ
・入出許可証は発行した大陸単位で効果がある
【冒険者ギルドについて】
・各大陸に1人冒険者ギルド長を配置している
・各街に冒険者ギルド支部長を配置している
・村などにも出張所を設けている
・冒険者証は全ての大陸で効果がある
人間界の常識が通じないことも多く、権力構造を見誤って、もめ事に巻き込まれぬように暗黒界では立ち振る舞わないといけない。
揉めたところでアレンは暗黒神やその他上位神が出てこない限り負けることはないのだが、暗黒神のクエストの達成が遅れる可能性がある。
「……ここのようだな」
魔導書にメモを取った後に言うと、先頭を歩くイルゼの足が一旦止まり、剣と盾のマークの冒険者ギルドが大通り沿いにあったのですぐに分かった。
カランッ
冒険者ギルドに足を進めるイルゼと共に西部劇に出てきそうな胴体部分だけの戸を押して冒険者ギルドに入った。
冒険者ギルド内はアレンよりも頭1つも2つも大きい、屈強な獣人の冒険者でごった返している。
(ガディアック島にもそこそこの冒険者がいたが、建物内はすごいことになっているな。って、ん?)
「よし、おい、そこのもの。この建物に冒険者ギルド長は……」
全てを言い切る前にアレンは、正面にいくつものカウンターが並ぶので一番行列の少ないところに並んだ。
アレンが無言で行列に並ぶとイルゼは止めることもなくその後ろに立った。
行列の回転が速いのか10分もしないうちにアレンたちの順番となった。
「……いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「魔石を大量に依頼したいですが可能でしょうか」
そのままアレンが受付と対応する。
「可能ですが、おいくつでしょうか」
「Bランクの魔石で500万個ほどです」
「500万個!? 少々お待ちください!!」
普段の依頼に比べて多すぎたのか、カウンターの若いキツネ面の女性の獣人が足早に奥の方へと行ってしまった。
(学園にいたころを思い出すな。だが、天の恵み100万個は最低ラインのマストの目標だ。まあ、菌床栽培で収穫量2倍になったから、魔石の数は半分で済むけど)
アレンは収納に数万個の魔石を持って暗黒界にやってきたが、これは創生スキルを上げるために持ってきた霊石6000万個に比べてはるかに少ない。
天の恵みなどの回復薬にメルスと一緒にコンスタントに作ってきた上に、その回復薬の大半はアレン軍に魔王軍との決戦前に配ってしまった。
人間界に戻り、魔王との戦いに備えて金の卵を貯めるのも大事だが強力な全体回復薬は十分な数を揃えておきたい。
500万個のBランクの魔石なら、ペクタンの特技「菌床栽培」で2倍の収穫量を得ることができるので200万個の天の恵みを用意できる。
同じ数の天の恵みを用意したいならCランクの魔石で5000万個、Aランクの魔石なら50万個だ。
【アレンの中での優先順位】
①リオンの体を全部集めて封印を解除すること
②人間界に戻ること
③創生スキルを上げること
④天の恵み100万個用意すること
※魔王軍との戦闘でも使うのでストックの魔石はあればあるほど良い
暗黒界でやるべきことを考えているとギルド内での相談が終わったのか、受付のお姉さんが戻ってきた。
(まあ、この大陸だけで難しいのは分かる。人間界でも1週間1万個の制限があったし)
「一度の依頼で500万個は難しいです。この大陸全土から募集をかけてもBランクの魔石は1週間で5万個まででお願いします。またそのため超過枚数により本来であれば手数料の減割が可能だったのですが、手数料1割頂きます」
「対応いただけるなら手数料がかかっても助かります。Aランクの魔石やCランクの魔石でも同様にお願いできますか? あとSランクの魔石もできればお願いしたいです。亜神級もあるなら魔石を買いたいです」
大陸内にある全ての冒険者ギルドの支部に依頼を広げてくれるようで助かると思わず驚きの声を上げてしまった。
「……Sランクの魔石は10個ほど……。Aランクですと週に1000個、Cランクですと週に10万個ご用意できます。亜神級の魔獣についてはもちろんご用意できかねます」
(Aランクの魔獣はそこまでいないのか1000体に減ったな。Cランクなら10万体は週に狩れるぜってことか。それにしても冒険者ギルドの討伐対象はSランクまでね)
なお、Aランクの魔石、Bランクの魔石、Cランクの魔石は天の恵み用だが、Sランクの魔石はフォルマールの矢のための募集だ。
フォルマールは高価な魔石を矢に変える「無限の矢筒」という神技を持っている。
「2週間分ほどまとめてお願いしてもよろしいですか?」
(やばい。1月分もお金がなかった。金貨の金量の違いで破産しそう。助けて、ペロムスえもおおおん……)
「問題ございません。1年以上、依頼した品を受け取りに来られないと権利を失いますのでご注意ください。また、今回は金額が高額なことから契約書を巻かせていただけます。お時間は大丈夫でしょうか?」
お金があることの確認が取れたら契約書を巻くと言う。
「時間ならありますので問題ありません。あとどうも私の金貨は皆さまの金貨よりも薄く軽いようです。それらを勘案して金貨の合計枚数を計算していただけませんか?」
「畏ました。量りを持ってきましょう」
(月、週、日、時間は人間界、神界と同じだからな。暗黒神は、元は神界の神だったみたいだし、元は太陽神で世界の時間の設定は同じなのかな。さて、大神殿までもう少しかかりそうだし、待つのは構わないな。後活動に支障がでるから、金貨を暗黒界のものに交換してもらえないかな)
①Cランクの魔石1週間分の金貨枚数
0・1(等価交換)×10万個(1週間分)×1・1(手数料)×5・12(金貨の相場)
=56,320
②・Bランクの魔石1週間分の金貨枚数
1×5万×1・1×5・12=281,600
③Aランクの魔石1週間分の金貨枚数
10×1000×1・1×5・12=56,320
④Sランクの魔石1週間分の金貨枚数
100×10×1・1×5・12=5,632
①+②+③+④=399,872
【1週間当たりのBランク相当の魔石と作成可能な天の恵み】
①Cランクの魔石:10万個=Bランクの魔石1万個
②Bランクの魔石:5万個
③Aランクの魔石:1000個=Bランクの魔石1万個
※Sランクの魔石は対象外
①+②+③=魔石7万個
7万個÷5×2=天の恵み2・8万個分
「……1週間分の募集ですと金貨399,872枚になります」
(これで目標の天の恵み100万個のうち2・8万個か。1つの大陸で募集しても 埒 ( らち ) が明かないことが分かったぞ。あと魔石募集で間違いなく破産する。魔石を集めつつ、金策が必要だな)
アレンはペロムスから金貨については200万枚ほどしか渡されていなかった。
計算したら5週間分、14万個の天の恵み分の募集しかできない。
「……」
無言のイルゼを後目に今後の予定を考えるアレンだった。