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第889話 黙認される集落①

【アニメ2026年7月放送!】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ — ncode.syosetu.com · All chapters

第889話 黙認される集落①

書籍14巻発売記念更新!!

イルゼは暗黒騎士として、村の食料を奪うことは許されないという裁定を 混血人 ( ハーフ ) の集落の者たちにだした。

この集落の者たちにとって魔獣に耐え切れなくなったら滅びよと言っているに等しい。

集落の者たちが息を呑んでアレンがイルゼの言葉に異を唱えたことに固唾を飲んで見守る。

「黙認とはどういうことだ? アレンよ。いくら暗黒神様から直接試練を与えられたからと言って勝手なことは許さんぞ」

「黙認の範囲で対応するってことだ。暗黒神アマンテ様からも騒動を起こすなと言われているしな」

「その黙認が何なのか早く言え」

この会話が自分らの生存できるかが掛かっていると分かっているようだ。

「この暗黒界の決まりでは魔族と獣人の間に混血人が生まれたら、どの大陸であろうと神聖なるガディアック島だろうと村を追い出す。両親も一緒に出ていくか、子供だけ追い出すのか決めさせる。守護番に助けも借りれず、冒険者ギルドに依頼もできず、大神殿に救いも求めることもできないってことだな」

今の状況をまとめる。

「そのとおりだ。魔獣が出ようが、村と揉めようが自分らで解決せよ。当然、村の物を盗めば、守護兵辺りが陳情を聞いて出張ってくることになる。本来は守護番の仕事だがな」

守護兵は守護番の下部組織だ。

「それが黙認だと言っているんだ」

「何だと?」

「暗黒神は別に混血人を生んだら両親もろとも死刑にはしないんだろ」

「暗黒神様だ。次はないぞ。それで? 我らの理を歪めるなど許されたことではないのだぞ」

(本当に切りかかってきそうだな。次から暗黒神様と言おう)

暗黒界では暗黒神が魔族と獣人の間に生まれた 混血人 ( ハーフ ) の子どもには才能を与えないことから、 混血人 ( ハーフ ) を生むことは禁忌の行為だという共通の認識がある。

はっきりとした理由は分からないが、半魔半獣のヘルビーストが生まれるのも理由の1つのようだ。

(獣神ブラキオも混血人の扱いは同じようだな。つぶらな瞳のくせに随分、厳しいルールを人々に引いているものだ)

ただ、追い出すだけで、混血人とその親たちが集落を作っても良いし、魔獣たちに滅ぼされなければ、今回のようにタジンが5歳で出て行って8年以上存続することもある。

ただ、高ランクの魔獣が跋扈するこの状況では稀なことではあるらしい。

ヘルビーストが生まれたおかげで、何とかSランクの魔獣が出てきても守護番などに助けを求めずに犠牲が出ても維持が出来た。

アレンが現状を整理していると、イルゼがさっさと答えろと言ってきそうだ。

この集落の者たちも必死な形相でアレンの次の言葉を待っている。

「俺は魔獣に襲われずに暮らせる安全地帯を1つ知っている。皆をそこに移動させて住まわせたら良い。近隣の村は食料を盗まれずに済んで、この集落も存続できる。これで解決だ。この穴ぐらでの生活はおさらばだ」

唯一無二の安全地帯だと念を押すと様々な声が聞こえる。

「な!? ほ、本当でございますか!!」

「今天の下で暮らせると言ったぞ。やった。やったぞ!!」

「暗黒騎士様から温情を頂けるということか!!」

「た、助かった……。私の子は助かったんだ」

集落の者たちの歓喜の声で大騒ぎになった。

中には歓喜のあまり、泣き出して自らの 混血人 ( ハーフ ) の子を強く抱きしめて嗚咽する者まで現れる。

(おい、俺の手柄がイルゼの手柄になっている件について。でもたまたま安全地帯を知ってて助かったぜ。善行は積んでおくものだな。おかげでクエストが1つ楽に解決できて儲けたぜ)

アレンが悪い顔でニヤニヤしていると、イルゼはアレンの態度が気に入らないのか怒りに任せて絶叫する。

「そ、そんな場所がこの世界にあるわけないだろ。貴様、勝手なことを言いおって! 全ての街が、そして、守護番の要塞も大神殿もこやつらを受け入れる予定などないわ!! まさか、獣神ブラキノ様はもちろんのこと暗黒神アマンテ様を謀る気か!!」

「ある。そして誰も謀っていない。これで問題解決だ」

「そ、そんなことがあるはずがない。それでどこにあるというのだ」

「その前に今日中に今回の課題を解決させたい。メルス、ガディアック島の大神殿の『巣』に飛んでくれ。俺は説明を担当するから目的地に『巣』を設置してくれ」

『ああ、分かった。急いで移動しよう』

召喚されたメルスがアレンの指示でガディアック島に転移する。

装備を素早さ特化にして共有するアレンでも分かる音速を超える速さで移動を開始した。

(目的地まで島の端だから500キロくらいか。10分も掛けずに到着しそうだな)

音速を超えて移動を開始したメルスがどれくらいの時間で到着するのか考えながら、皆に分かるように説明する。

「おい、今、ガディアック島って聞こえたぞ」

「そうです。全員を移動させてガディアック島の海岸近くに皆の集落を作ります。そこが一番、安全ですから。あとけが人だと交渉……じゃなくて挨拶が舐められるといけません。皆、回復させます」

混血人の集落の者たちには安心させるために丁寧な口調を心掛ける。

アレンは魔導書から1つの天の恵みを取り出した。

パアッ

メキメキ

「おお、手が! 足も治っていくぞ!!」

「ああ、あなた!!」

天の恵みを使い、ダークブレードドラゴンに負ったと思われる手足の欠損など、タジンの父親のラバンも含めて全員の怪我を回復させる。

タジンも笑顔で喜んでいるのだが、騒ぎを沈めるようにイルゼがアレンに問う。

「なぜ、それが解決になるというのだ」

「これから説明しよう。皆、俺に恩義のあるやつばかりだ。最低限の協力は得られるはずだ」

アレンは10分ほどかけてこれからこの集落が助かる方法について説明する。

イルゼもタジンの両親のラバンとカイアも、そしてこの集落の者たちも、アレンの話を聞いた上で半信半疑だ。

10分ほどかけて説明したところで共有するメルスから声が届く。

『巣を設置したぞ』

(助かる。そのままカラッタ村の村長に軽く説明していてくれ。俺たちが直接言って頼み事する前にな)

『ああ、分かった。 混血人 ( ハーフ ) に忌避感のある世界だからな。村の中で揉めないよう村の有力者も集めておいた方がよさそうだな』

(そうしておいてくれると助かる。村長にそのように伝えておいてくれ。あと村作りにマリアたちも出してくれ。あとゲンブあたりを向かわせておいてくれ)

『マリアたちに食料と結界を配置させていたらよいのだな。あとゲンブか』

メルスもこれがクエスト解決になるならと率先して動いてくれる。

「移動の準備が整ったようです。このまま皆さんを安全地帯に移動させますが、この場にいない者、残る者はいますか? この大陸に戻ることは当面厳しくなるかもしれません。あまり長い時間を与える余裕がないのは申し訳ありませんが、よくお考えください」

「ここにいる全員で向かう。当然残る者はいない。生きていけるならどこにでも連れて行ってくれ」

ラバンの建物に全員集まっているし、すぐにでも移動させて良いと言う。

「分かりました。どういう場所なのか分かってもらうために一度移動させます。家財などの荷物などを持ち運ぶ必要もあるでしょう。後程、戻りますが、全員一旦移動させます」

なるべく多くの人が納得する形で獣神ブラキノに与えられた課題を解決したい。

アレンは話も聞いても半信半疑どころか、ほぼ信じていない視線を送るイルゼを筆頭に集落の皆をメルスが設置させた「巣」に向けて鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」を発動させる。

ザアアアアアッ

カラッタ漁村近くの浜辺に全員を移動させた。

浜の砂を濡らす波の音が辺りに響いている。

「おお、すごい。本当に移動したぞ」

「ここが暗黒神アマンテ様のおわする神聖な島ガディアック島ですか……」

「……ここはベスペルの祭壇の1つだな。それで、そんなにうまく話が進むとは思えぬが」

イルゼはアレンから一通り課題の解決方法を聞いて納得できないが邪魔はしないスタンスを取ることにしたようだ。

カラッタ漁村から徒歩で30分ほどの場所にあるマーマンで亜神のベスペルのために設けられた祭壇があり、入り江となった場所へと移動する。

メルスが倒したマーマンたちは既にベルペルの配下が海底にある住み家へと運び出していた。

メキメキッ

『植えるデス。金の豆を植えるデス!!』

アレンのいる海辺と反対側に霊Bと霊Cの召喚獣の2体が金の豆を生やしていた。

「あれは何をしているんだ。あんなのが結界になるのか? アレンよ」

「あの木々はAランク以下の魔獣が近付けないようにするための結界だ」

集落を作るための作業の大事なものの1つで魔獣避けの結界がある。

『おい、村長と有力者たちが村長宅でまってるぞ。こっちに村長宅前に巣を設置したからこっちに直接飛んできてくれ』

メルスの対応が同時進行で進んでいく。

「よし、タジン。持ってきた果物をこっちの籠に移してくれ」

「俺のとってきた食料だぞ」

「食料は皆で分かち合うものだ。また後で同じものをやるからそれは挨拶に使わせろ。最初が肝心なのだ」

(引っ越しの挨拶の定番の蕎麦じゃないけど許してくれ)

「……約束だからな」

ゴロゴロッ

アレンが肩に大袋を大事そうにかけているタジンに対して非常食を寄こすように言う。

転移する際に一緒に持ってきたタジンを釣るために用意した非常食を袋の中から3つの大ザルに移し替える。

3つの大ザルに乗せて山盛りになった非常食をラバン、カイア、タジンの3人が持ち上げる。

「よし、俺たちはカラッタ村にいく。メルスはこっちに向かって残った者たちへの説明を進めてくれ」

『ああ、分かった』

アレンはイルゼ、ラバン、カイア、タジンの4人を連れて、今度はカラッタ漁村の村長宅の前にメルスに設置させてもらった「巣」に向かって鳥Aの召喚獣に覚醒スキル「帰巣本能」で転移する。

「アレンだ! 本当にやってきた!!」

突然現れたアレンの顔を見て村長の娘のマニタがパアッと明るくなる。

「また来てねと言ってたからな。こんなに早く来ることなるとは思わなかったよ。これは皆さんお揃いで。こんな時間にやってきて申し訳ありません。夜分失礼します」

村長宅の前にはイグレ村長とその娘のマニタ、村の中でも発言権のある有力者の数名が立って待っていた。

満面の笑みで喜んでいるのはマニタだけで、村長の顔には困惑の表情しかない。

「ほら、タジン、説明で言った通りの挨拶をしろ。こちらの方が村長のイグレさんだ。これからご近所になるんだからな。最初の挨拶が肝心なんだ」

「わ、分かったよ。近くに住むことになったタジンだ。これはその挨拶の品だぞ。みんなで食べてくれ」

山盛りの非常食を乗せた大ザルを持ったタジンがシブシブ、村長の下へと向かって突き出す。

「もう少し、詳しく説明してくれないか。引っ越しとはどういうことなのだ……」

大ザルに乗った非常食を突き出されて明らかに困惑した村長がようやく言葉を発したのであった。