第912話 2回目の達成報酬
第912話 2回目の達成報酬
アレンは暗黒騎士副長レヴィナたち暗黒騎士の連携により強力な一撃を受け、大広間の壁に全身が埋没するほどの一撃を受ける。
(なるほど、会話もアイコンタクトもなしで素晴らしい連携だな。これならステータスが倍近い差があっても勝てそうだな。副長でステータス20万弱、その他2人は15万前後といったところか。まあ、俺も魔王軍と戦う時は自分らよりも強い奴らと仲間で戦ってきたし)
仲間たちとの戦いの日々を思い出し、連携によって支え合う完璧な練度の戦い方であったと、アレンは斬撃を受けた腹を摩りながら感心する。
ギチチチ
腹の部分まで伸びた禍々しい触手に手が触れる。
ゲヘナバンドが勝手に副長の一撃からアレンへのスキルの直撃を守ったようだ。
(魔王とその幹部の上位神たちも暗黒界で力をつけてしっかり倒さないとな)
一連の流れによる攻撃を考えているのはアレンだけではなかった。
「……ふむ」
副長は一撃を与えた自らの剣の柄を握り締め、刀身に刃こぼれがないか確認する。
何か違和感があるようで、顔をしかめている。
二人して吹き飛ばされた先から副長の側に戻ったウイクは大きな声を上げる。
「やりましたね。副長、って、おい、ガライ。どうしたのだ?」
「が、がは!? なんという一撃だ……。奴は一体何者だ」
アレンの掌底を受けたガライは、内臓を裂いて口から大量の血をぶちまけた。
ウイクと違い、ガライはアレンの受けた攻撃のダメージで足が震え、立ち上がれないようだ。
「お、おい。アレン……」
「だから言ったのだ。すぐに謝れと」
姿が見えないほど埋没したアレンの様子に負けが濃厚と見たタジンとイルゼが真っ青になって絶句する。
ガライに手持ちの薬草を使って回復させる背後のウイクを見ずに、副長は話しかけた。
「ウイクよ。一緒に戦った甲殻神ヴォルレッドを覚えてるか?」
副長は自らの剣を見つめながら始めた。
「あの騎士長も参加して倒した1200年前の魔獣ですよね。とんでもない強固な外皮に覆われていて……。あの時は暗黒騎士が2人も殺されて大変でしたよね。それがどうしたというのですか?」
「あの時よりも一撃を与えた感触がなかった。恐らくだがあの黒髪の来訪者には俺の一撃が全く効いていねえぞ」
「そんな、馬鹿なことが……」
バキッ
シュルシュル
埋没されたアレンの体を無数のゲヘナバンドの触手が無理やり引っ張り出してくれたおかげで、暗黒騎士たちを見る。
「やってくれましたね。素晴らしい連携でした」
全身が出たタイミングで加護「飛翔」を使い、強者感ムーブを醸し出しながら、ゆっくりと床石に降りてくる。
(決して油断したわけではない。一撃を受けたのは敵にも敬意を示しただけだ。最初の一発は受けてやることにしているんだ。俺の戦いはここからが本番だ!)
「くっ!? 副長の話は本当のようだ。おい、ウイク、お前が暗黒大神官から貰った回復薬を早く寄こせ!!」
「そんな!? 何ですか、この化け物は!!」
副長が歯ぎしりし、ウイクとなんとか戦線に復帰したガライも絶句する。
(さて、ステータスと違って剣術は相手が優勢過ぎて、このままだと不利だな。それにしてもスキル使いまくりやがって)
ステータス差をかき消して余りあるほどの剣術スキルが副長たちにあった。
「リオン、メルス、グラハン出てこい」
『何やら、騒ぎだな』
『またもめ事か……。お前、優先すべきことを忘れているんじゃないだろうな』
『剣による試合であるな』
アレンの周りを囲むようにリオンたちが状況を理解して出てくる。
リオンたちも攻撃の体勢をとっており、今にも副長たちに飛び掛かりそうだ。
「な!? 貴様、それは何だ!!」
「何? 私だけ1人でスキル無しで戦えと。さっきの副長の一撃は痛かったですがこれからが本番です。ぎったぎたにして全員床石にへばりつかせてイルゼに謝罪させることにしました。準備運動は終わりです。ここからが本番ですので覚悟してください」
アレンは悪者ムーブ全開で副長たちに圧を掛ける。
「ラクスベル、貴様も参加せぬか! 暗黒騎士がコケにされているのですよ!!」
「副長、神技を発動させ叩きのめしましょう! 本気を出してなかったのは我らも同じことです!!」
「ああ、そうだな……」
ラクスベルが困惑しながらも副長の側で剣を抜いた。
ウイクとガライの戸惑いの声に副長が乗るべきだと判断した時だ。
ここまで静観していた暗黒神アマンテが口を開く。
『そこまでだよ。双方、剣を収めな』
暗黒神のいる大広間での試合は唐突に終了を告げられた。
「え? まだ試合にもなっていないです。イルゼの尊厳の回復が足りません。このまま続けさせても……」
『黙るんだよ、アレン。跪きなさい』
「ぐは!? ひどい……」
アレンが早口で反論しようとすると、漆黒の神力を全身に滾らせて圧を掛けてくる。
涙目のアレンは本能が恐怖を感じ取り、勝手にその場で土下座して、自らの召喚獣を仕舞っていく。
『暗黒騎士副長レヴィナよ。務めを果たしに行きなさい。期待しているよ』
「は!! 行くぞ! お前たち!!」
暗黒神に対して最大限の敬意を示すためか一様に頭を下げた後、副長は3人の暗黒騎士を引き連れて大広間を出ていく。
「フンッ。双竜の喧嘩など放っておけば良いのだ。覚えていろ、イルゼよ。ラクスベル、案内せぬか。どこで撤退したのだ!!」
副長がイルゼの横を通り過ぎる際、怒気を込めて鼻息を荒くすると、ウイクとガライも睨みつけて出ていく。
尻を蹴り上げられそうなラクスベルだけが無言で静観するイルゼに対して、申し訳なさそうに頭を下げつつ大広間から去っていった。
大神殿最上階の大広間に静寂が包まれると、アレンは暗黒神の圧力から解放されてゆっくりと立ち上がる。
イルゼとタジンが足早に駆け寄ってくる。
「すまないな、イルゼ。お前のためにもギタギタにしたかったのだができなかった」
「いや、それは良いのだ。まさか、この大広間であんな騒ぎを起こすとは……」
「アレン、なんかかっこよかったぞ!!」
「うむ、仲間が馬鹿にされたら立ち上がらないといけないときもあるからな。覚えておくんだぞ」
暗黒神の漆黒の圧から解放されたアレンがゆっくりと立ち上がる。
「分かった!!」
仲間としてやるべきことが果たせなかったと言うアレンに対して2人はそれぞれ別々の反応を示す。
イルゼは多少呆れながらもアレンを責めることもなく、怒っている感じも全くしない。
タジンは目をキラキラと輝かせて、アレンの行動を称えている。
『それで? アレンよ、私の可愛いレヴィナと喧嘩するためにここに来たのかい?』
3人で会話していたらイルゼが足早に玉座に座る暗黒神の下へと駆け寄る。
アレンとタジンも暗黒神の手前で、イルゼの前に跪いた。
「これは失礼しました。雷神ソヴィ様の受けた課題により雷王グリオタンを倒し、雷石狩りができずに困っている人々を救ってまいりました。コルブラン大陸の大神殿の祭殿に生命球を捧げ、その報告にまいりました」
イルゼが3人を代表してすらすらと簡潔にコルブラン大陸での活躍を報告する。
『うむ、雷神ソヴィからも報告は聞いている。迅速かつ素晴らしい働きだったようだね。多くの者たちが大神殿に感謝の言葉を伝えに向かってきているらしいじゃないか』
報告させたものの暗黒神はご機嫌の様子で、コルブラン大陸で起きたことは手に取るように分かっているようだ。
「俺も頑張ったぞ!!」
『うむうむ、2人は成長の限界に達したようだし、新たな力と加護を授けよう。あんたも良いね。あとはイルゼの相棒のコケトリスのクローエもだ』
(おお? 神化した魔獣を倒したから報酬も大盤振る舞いなのか)
「ありがとうございます」
「やったぜ」
暗黒神がイルゼに手をかざすと漆黒の闇に包まれる。
頭部しかない法の神アクシリオンがカッと目を光らせるとタジンは眩い光に包まれた。
『イルゼは暗黒騎王になった。暗黒神の加護は特大になった』
『タジンは半身獣魔になった。法の神の加護大を得ました』
『クローエはコケトリスエンペラーになった』
【名 前】イルゼ=デーモンブレイカー
【年 齢】20
【加護①】暗黒神(加護大)
【職 業】暗黒騎王
【レベル】1
【体 力】9650
【魔 力】7020
【攻撃力】9650
【耐久力】9650
【素早さ】9650
【知 力】7020
【幸 運】7020
【加護②】全ステータス10000、暗黒属性付与、暗黒神の依代
【神 技】暗黒波動〈3〉
【スキル】暗黒騎王〈1〉、真斬撃〈9〉、真渾身斬〈9〉、真居合切〈9〉、真堅巨盾〈9〉、八裂無残〈9〉、無双魔剣〈9〉、六道羅刹〈9〉、神技発動、剣術〈9〉、剣神術〈4〉、瞑想〈4〉
【武 器】暗黒騎士の剣:攻撃力50000、物理ダメージ60%増、クリティカル率60%増、攻撃力倍化
【防具①】暗黒騎士の鎧:耐久力30000、物理耐性(大)、体力自動回復
【防具②】暗黒騎士の外套:耐久力15000、魔法耐性(大)、回避率60%増
【防具③】暗黒騎士の兜:耐久力10000、デバフ耐性(大)、自己修復
※装備一覧の魔法具は変化なしのため省略
【名 前】タジン
【年 齢】13
【加護①】法の神(加護大)
【職 業】ヘルビースト
【レベル】1
【体 力】5220
【魔 力】5220
【攻撃力】6960
【耐久力】5220
【素早さ】6960
【知 力】3480
【幸 運】3480
【加護②】全ステータス10000、クリティカル率3割上昇、不死属性付与
【神 技】 超獣魔化 ( ヘルビースト ) 〈3〉、雷王駿牙〈1〉
【スキル】半身獣魔〈1〉、真爪牙〈7〉、真強裂爪〈7〉、真駿狼斬〈7〉、真爆虎拳〈7〉、暴魔暴獣〈6〉、斬月魔断〈6〉、反攻狼煙〈6〉、神技発動、爪術〈7〉、爪神術〈3〉、瞑想〈3〉
・装備一覧
【武 器】原獣の爪:攻撃力50000、物理ダメージ60%増、クリティカル率60%増
【防具①】原獣のベスト:耐久力30000、物理耐性(大)、回避率60%増
【防具②】原獣の膝あて:耐久力10000、ブレス耐性(大)
※装備一覧の魔法具は変化なしのため省略
(ふむふむ、スキルやスキルレベルは前回同様のイルゼの転職同様にほとんど維持してくれて助かる。暗黒神が褒めたとおり速やかに課題を達成して欲しいからスキルを削除している場合じゃないってことか。それにしても武具も強化した上にイルゼが今回同行していないコケトリスまで強化してくれるのか)
暗黒騎士は作戦によっては成長させたコケトリスと行動を共にするとイルゼから聞いた。
『アレンよ。考え事していないでこっちにおいで。よくぞ、私の可愛いイルゼの誇りを守ってくれたね。お前にも報酬をやろうじゃないの』
「はい! 喜んで! 私の番でございますね!!」
(ふむふむ、イルゼがボロカスに言われていたのを静観していたが、俺の行動に誤りはなかったと)
『全く。あれこれ考えるね。あの子もいつになれば私情を忘れてくれることやら……』
「え?」
(暗黒神も手を焼いていたってこと?)
副長相手に暴れ出してしまったが暗黒神としては助かったようだ。
『お前の中に眠る生命の力をレベルに変換してやろう』
ズンッ
アレンの腹に暗黒神の巨大な指が刺さる。
『滞留する生命の力を生命球1つ分消費しました。レベルが300になりました。体力が7000上がりました。魔力が11200上がりました。攻撃力が3920上がりました。耐久力が3920上がりました。素早さが7280上がりました。知力が11200上がりました。幸運が7280上がりました』
(お? あとはビルディガかオヌバのどちらかを召喚獣にできるな。どっちが良いだろう)
暗黒神は呆れながらもアレンのレベルをアップさせた。
コルブラン大陸での達成報酬に心を躍らせるアレンであった。