第913話 Sランクの召喚獣
第913話 Sランクの召喚獣
アレンは暗黒神アマンテにコルブラン大陸に生命球を捧げた報酬としてレベルを20上げてもらった
「大変助かります。これで次の生命球を捧げる際も迅速に行動に移れそうです。以前、お約束したとおり2つ目の生命球を捧げましたので……」
(副長たちがこの場にいた理由とか聞いた方が良いんだろうけど、報酬を貰う流れになったし、このまま全ての報酬をもらうことにする)
アレンは暗黒神に対して願望を言いかけて、途中でやめることで、ここから先は察して欲しいと態度で示す。
とてつもなく目上の相手に要望を通すための作法だとか前世の記憶で習ったような気がする。
『そうだったね。えっとビルディガとオヌバどっちにするかね。こっちにおいで』
ブンッ
ブンッ
『吾輩をお呼びでしょうか』
『暗黒神アマンテ様、このオヌバ参上しました』
甲虫の姿をしたビルディガと宙を浮く魔剣の姿をしたオヌバが、暗黒神の前に跪くアレンの目の前に現われた。
『アレンは私との約束を果たし2つの生命球をそれぞれ大陸へ捧げた。お前たちのどちらか一方を召喚獣にするよ。どちらが良いかね』
(2体を呼んで、これから決めると)
『それならば吾輩が残りましょう。暗黒神アマンテ様』
跪いてビルディガが残り、オヌバが先に召喚獣になるべきだと言う。
『ほう、理由を聞こうか。奈落の門の開放は順調だと聞いているんだけど』
『奈落の門は人間界と暗黒界と 対 ( つい ) になって機能します。魔王軍は奈落の門を破壊して暗黒界と人間界を自由に移動できないようにしてあります』
暗黒神相手にも変わらない口調で淡々と説明する。
『小癪なことをするね。キュプラスの入れ知恵ね。どうしても私たちを暗黒界に縛り付けておきたいってわけね』
『……』
暗黒神はビルディガの説明に呆れている。
『大神殿の地下に眠る奈落の門は傷一つなく扉、時空を開けること自体は問題ありませんが、入り口が開いても出口が完全に閉じている状態なのです』
「おい、それじゃあ、人間界に戻れないってことか」
アレンは思わずビルディガの説明に割って入った。
『人間界への別の道を無理やり通す必要がある。そのためには膨大な力が必要だ』
「そのための雷鳴石か」
(だが、助かるな。仲間や家族の状況も分からない状況で魔王軍の根城である大陸最深部にいきなり突っ込むより別の出口を作ってくれた方が作戦を立てやすいか。この石探しも無駄じゃなかったってことだな)
人間界で破壊されたと言う奈落の門は魔王城のある忘れ去られた大陸のどこかにある。
アレンはコルブラン大陸へ向かう前に頼まれていた雷鳴石を魔導書から取り出した。
ビルディガが鎌状の前足を伸ばすのでアレンは挟み込めるように渡してあげる。
『これだけでは足りない。次は海鳴石を取って来てくれ。エクスワイヤ大陸にあるはずだ。吾輩はこの石の力を奈落の門に適合させるとしよう』
「分かった。じゃあ、次は魚神ミンギア様が統治するエクスワイヤ大陸に向かうとしよう」
(なんか審判の門を攻略する前に、試しの門で竜の爪とか鱗だとか集めたのを思い出すな。門を開いて別の世界に行く前にお使いクエストが必要と。俺はこの世界の攻略をしているのか。ゲームのように……)
アレンは生まれて最初のころはゲーム感覚を感じることの多い世界だなと思ってきた。
アレンは前世で健一の頃にとあるサイトを見て、この世界にロダンとテレシアの子供として転生してきた。
健一だったころはゲームにやり込んでいたため、この世界でいる時も、ゲームの頃の思い出を元に戦略を立てたり、問題を解決することは多い。
だが、それは健一だったころの経験から来るもので、あくまでもゲーム感覚であってゲームをやっているつもりは決してなかった。
父のロダンがグレイトボアに狩りの最中に重傷を負った時にまざまざと思い知らせたはずだ。
つい最近見た悪夢のせいでその気持ちが揺らいだのは間違いがない。
(攻略達成率50%か)
アレンは静かに暗黒神アマンテを見上げる。
この広間にいる暗黒神アマンテと法の神アクシリオン、そしてヘルビーストのタジンを仲間にしたことによって、攻略達成率が進んだ夢を見た。
あれから同じような夢を見ていない。
それは攻略達成率が進んでいないから夢に出てこないのか、それとも別の理由があるのか、そもそもただの夢だったのかもしれない。
あれこれ考えることの多い暗黒界において、アレンの疲労に来るものだったからあのような生々しくも訳の分からない夢を見たのかもしれない。
だが、もし、これからの攻略のヒントになるなら思考を放棄するわけにはいかない。
(俺が何故、達成率を教えてくれたのか聞いたが「それは言えない」って言ってたからな。教えられない理由があるんだろう。それが攻略のヒントになるからな。この世界が何なのか。ゲームではないでいいんだよな)
今自らがどこにいて何をしているのか分からなくなる。
既に落ち着きを取り戻したイルゼを見る。
(あの時の怒りは本物であった。不用意に感情を爆発させてしまったが、決してゲーム感覚だと出ない感情だ)
『……何を思いにふけっているのか分からないが、そろそろいいかい。アレンには生命球を捧げた褒美としてオヌバを先に召喚獣にしようかね』
アレンの思考は暗黒神の言葉で遮断される。
「ありがとうございます。では聖獣石にオヌバよ、来てくれ」
アレンは魔導書から聖獣石を取り出した。
『暗黒神アマンテ様の命により召喚獣になる。そのことを忘れんじゃねえぞ。勘違いしてこき使ったら内臓をまき散らせてぶち殺すからな!』
アレンのために召喚獣をやるつもりは決してないと念を押される。
「分かった。はよ、入ってくれ」
『ふん』
パアッ
光る泡になったオヌバは聖獣石の中に入っていく。
『岩山神オヌバの同意を得ました。石Sの召喚獣に作り変えます。石Sの召喚獣の封印が解けました。石Sの召喚獣の生成は済んでいます。召喚しますか?』
「もちろんだ。召喚してくれ」
パアッ
アレンは石Sの召喚獣になったオヌバを召喚した。
剣の姿で宙を浮いている。
刀身は弧を描くように湾曲しており、暗黒騎士の鎧を思わせる漆黒の剣だが、毒々しい赤い血管が浮き出ている。
(そうか。剣の召喚獣なんだよな。俺は剣を大地の迷宮で手に入れたから鎧が良かったって、特技「魔鎧化」だと!?)
【種 類】石
【ランク】S
【名 前】オヌバ
【体 力】50000
【魔 力】40000
【攻撃力】40000
【耐久力】50000
【素早さ】40000
【知 力】40000
【幸 運】40000
【加 護】体力5000、耐久力5000、ダメージ転嫁
【特 技】岩剣化、岩鎧化、岩山防壁、吸血修復、フルバースト
【覚 醒】岩神の鎧剣、聖珠生成、封印〈弱〉
【石Sの召喚獣の特技・覚醒スキル・加護の説明一覧】
・岩剣化※
漆黒の岩に血脈が流れるデザインの大剣、剣、レイピア、短剣などの剣になって切り裂く
剣のステータスは攻撃力50000、知力50000、クリティカル率30%増
霊Sの召喚獣の特技による攻撃が2回攻撃になる
勝手に動き回ることもできる
・岩鎧化※1
漆黒の岩に血脈が流れるデザインの鎧になって攻撃から対象の身を守る
鎧のステータスは体力50000、耐久力50000、ダメージ30%減
・岩山防壁※
巨大な岩山による防壁になり、対象の身を守る
大きさは体力依存、硬さは耐久力依存
・吸血修復
攻撃した対象の体力を奪い、石Sの召喚獣自らの体力を回復させる
・フルバースト
ジェットエンジンになって急加速する
速度は素早さに依存する
・岩神の鎧剣
全身を覆う強力な鎧と剣になる
特技「岩剣化」「岩鎧化」のどちらかと併用可能
岩神の剣のステータスは攻撃力100000、知力100000、クリティカル率50%増
岩神の鎧のステータスは体力100000、耐久力100000、ダメージ50%減
効果1時間、クールタイム1日
・聖珠生成、封印〈弱〉
・聖珠生成
月に3回、体力、耐久力系の聖珠を生成する
聖珠ポイント9ポイントに変換可能(不可逆)
・封印〈弱〉
暗黒神アマンテの力によって封印が解けかけている
封印を解くためには神級の魔獣なら1体、亜神級の魔獣なら5体倒す必要がある
・ダメージ転嫁※2
アレンの受けるダメージを岩Sの召喚獣に転嫁できる
※1 武器も防具も装備枠のため、バフによるステータスの上昇効果の対象外
※2 自らの体力を超えるダメージを受けると光る泡になって消える
アレンは魔導書でオヌバのステータスを確認する。
特技には日用の普段着のアレンにとって心が躍る「魔鎧化」の表示がある。
さらに、魔導書のメモ機能が光り、めくってみるとオヌバの特技、覚醒スキルの説明が表示されていた。
「なんだ? 魔導書に特技とかの効果が書かれているぞ」
『俺の体は暗黒神様のものだ。能力を調べるのに無駄なリスクを負ってもらっても困るんだよ。全ての役目が終わったら解放されるって約束だ。おい、アレン、てめえ、聞いてんのか? 無視決め込んでんじゃねえぞ、こら!!』
「究極だ。俺は究極の鎧を手に入れたんだ! オヌバよ! 岩鎧化するんだ!!」
『相変わらず、話の聞かねえ奴だ! だが、しけた服来てんな。俺が究極の鎧がなんなのか見せてやるぜ!!』
メキメキッ
漆黒の刀身に血の浮き出た大剣だったのだが、音を立てて姿が一瞬で代わり、アレンの全身を覆っていく。
雷神から貰った外套の下に漆黒を基調として血が浮き出るラインがアクセントとなった禍々しい鎧が姿を現した。
「お、おおおおお!! なんて耐久力だ。効果は神器以上だ!! ほとんど着た感じがせず動きやすいぞ!!」
『当然だ。俺様の鎧だからな!!』
ジャンプして空中でクルクル回転させたり、跳ねてみるが何の違和感を覚えない。
羽のように軽くて頑丈な鎧が欲しく魔獣の素材を探していたアレンだが、オヌバを召喚獣にすることで問題は全て解決した。
「あれ? なんだ? 覚醒スキルの封印が弱になっているぞ。封印が解けかけているってことか? え? おい、どうなんだ? 封印解けちゃうってことか!?」
狂乱するアレンにイルゼもタジンもさすがにまずいと思ったようだ。
「おい、アレン。いい加減にせよ。暗黒神アマンテ様の御前であるぞ!!」
『……良い、イルゼよ』
「は! 暗黒神アマンテ様!!」
『アレンよ、先ほどはイルゼを守ってくれたな。その礼とは言わないが封印を解けやすくしておいた。詳しくは後程、オヌバから聞くが良い』
「ありがとうございます! 暗黒神アマンテ様!!」
『うむ、次の大陸でも活躍を期待しているぞ』
「はい! 失礼します!!」
イルゼとタジンと一緒に、新たなSランクの召喚獣の手にしたアレンは暗黒神のいる大広間を勢いよく出て行ったのであった。