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くすぐったがりのリーシェのお話

【アニメ化】ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する — ncode.syosetu.com · All chapters

くすぐったがりのリーシェのお話

※ごく短いお話です

アルノルトは、リーシェに対していつも紳士的な態度で接してくれる。

配慮を十分に感じるし、当然それは有り難い。けれど、その気遣いが却って厄介になることも、時々は存在する。

「……あの、アルノルト殿下」

とある夜会が始まる前のこと。ホールの前で、アルノルトに告げた。

「実は、折り入ってご相談がありまして。夜会でのダンスのことなのですが」

「なんだ。参加をやめるか」

「そうではなく! ……殿下はいつも、私の腰に腕を回す際に、やさしく触れて下さるでしょう?」

リーシェはちょっと俯いて、もごもごと告げる。

「あれがですね。ええと、えーっと……」

怪訝そうなまなざしに、勇気を出して発言した。

「――くすぐったいのです!! 時々、稀に、ものすごく!」

「……」

リーシェの顔は、恐らく真っ赤になっているだろう。

そしてアルノルトの方はといえば、何故だか形容しがたい渋面を作っている。

「実は私、くすぐったがりで……」

「……」

「殿下が腰のあたりに手を回す際、変な声が出そうになるというか。わーっとなるというか……」

「…………」

アルノルトの眉間の皺が、どんどん深くなっていく。それを見て、リーシェは慌てた。

「あ!! 別に、殿下に触られるのが嫌だというわけではないですよ!?」

「………………」

何故か、そこで思いっきり眉を顰められてしまう。

「すみません……」

「……いや」

アルノルトは小さく息をついた後、怒らずにこう尋ねてくれた。

「なら、どうすればいい」

「ええと……」

リーシェは少し考える。

恐らくは、触れ方がやさしいのが仇なのだ。

そうではなく、もっと違ったやり方であれば、そわそわするようなあのくすぐったさは感じないかもしれない。

そう閃き、名案だという気持ちで彼を見上げた。

「いっそのこと、思いっきり腰を掴んでいただければと!」

「思いきり?」

「そうです! こう、殿下の手で私の腰をガッと…………ひゃあ!?」

思わず声を上げたあと、両手で口元を強く押さえた。

そのあとで、リーシェの腰を掴んだアルノルトと目を合わせ、しんとする。

「…………」

「…………」

アルノルトが、ふいと目を逸らしてこう言った。

「…………なるべくお前がくすぐったくないように、善処する」

「……ありがとう、ございます…………」

こうして、なんだか微妙に気まずい空気を抱えながら、リーシェたちはその日の夜会へ挑む羽目になるのだった。