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第63話 アマーリエの事情

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第63話 アマーリエの事情

新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。

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同じくロボット物です!

「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」

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「ううん……もう朝か……すぐに朝食の準備を……今日は必要無かったわね」

朝、微睡みのなか目を覚ますと、私は裸のままベッドで寝ていた。

その隣には、以前は私の義弟で、今は実質私の夫という複雑な関係にあるヴェル君が、やっぱり裸で気持ちよさそうに寝ている。

昔は可愛らしかっけど、もう完全に大人になって格好よくなったわね。

私は彼よりも十歳も年上で、世間ではそろそろ夫婦の営みをやめるところも出てくる。

年を取った女性は妊娠しにくくなるので、もっと若い妻と子作りをしろと言われることが多いから。

だけど、ヴェル君は私を求め続ける。

『アマーリエ義姉さんと、もう一人子供が欲しいんですよね』

ヴェル君は大貴族なのだから、他の若い奥さんに生ませれば……なんなら新しい妻を迎え入れても誰も文句を言わないのに……。

そうは思いつつ、私がまだ女性として求められていることがわかると、とても嬉しくなる。

前の夫は私を大切にしてくれた……とは思うけど、私のことを跡継ぎを産む正妻としか見てくれなかったから。

でもヴェル君は私を女として見てくれて、それがとても嬉しい。

二十代前半の彼の肌は、白くてシミ一つない。

私は彼の若さが羨ましくなることもあるけど、ヴェル君がプレゼントしてくれる魔法薬の技術を用いた美容液のおかげで、年齢より若く見られることが多くなった。

お世辞かもしれないけど。

ヴェル君は冒険者でもあり、たまに怪我をしたり、過酷な環境で何日も野営するせいで肌が荒れるはずなのに。その様子がないなんて、それだけ彼が作る美容液って凄い証拠かも。

『自分の妻が綺麗で嬉しくない夫はいませんよ』

普段は、『そんな物言いをする奴はモテ男で、俺とは正反対にいる人間だから敵だ!』なんて言ってるけど、たまに二人きりの時に、そんなことを言ってくるから卑怯だと思う。

「不思議な人……」

子供の頃のヴェル君って大人びていたけど、ようやく見た目の年齢と一致してきた感じ。

でもまだ、大分開きがあるかも。

子供の頃のヴェル君って、たまに前の夫よりも大人びたことを言っていたから。

「……もう朝か……」

「おはよう、ヴェル君」

「おはようございます、アマーリエ義姉さん」

実質夫婦になったのに、ヴェル君は私のことを『アマーリエ義姉』さんと呼び続ける。

夫婦なのにおかしな呼び方だけど、私はエリーゼさんたちとは違う関係性に特別感を感じて気に入っていた。

そして私は、彼を公の場以外では『ヴェル君』と呼ぶ。

昔からそう呼び続けていたとはいえ、もういい加減彼を『ヴェル君』って呼ぶのはやめた方がいいと思ったのだけど、ヴェル君はそのままでいいって。

『俺は貴族になるつもりなんてなかったのに、今ではバウマイスター辺境伯ですからね。ずっと、『お館様』やら『バウマイスター辺境伯様』って呼ばれ続けて自分の立ち位置を見失いそうなので、アマーリエ義姉さんが『ヴェル君』って呼んでくれた方がいいんです』

ヴェル君にそう言われてしまうと、私も『ヴェル君』って呼ばなくちゃいけない……などと思いつつ、彼のことを『ヴェル君』って呼べるのは私だけって思うと嬉しかった。

「まだ少し早いかな?」

「そうかしら?」

私は普段、朝食の準備をするからこのくらいの時間に起きているのだけど、今日はヴェル君の領内視察に同行していたのでお屋敷ではなく、逗留している村の宿屋に泊まっているから、朝食の準備は必要なかった。

それに今の私は、ヴェル君の妻という立場で彼に同行しているから、お屋敷にいる時みたいに料理をするわけにはいかないというのもあった。

私はヴェル君の正式な妻ではないことになっているけど、領内では妻として扱われていて、だから今はそう振舞う必要があった。

色々と複雑な立場ではあるけど、私は今、自分がとても幸せだと思っている。

「時間があるということは……」

「あっ……」

担当のメイドがヴェル君を起こしにくるまで時間があるのがわかっているから、彼は私にキスをしてきて、私もそのまま受け入れてしまった。

いい年をして朝から……なんて思いつつ、女である私は内心それを喜びながら受け入れて……。

「(もう一人くらい産めるわよね)」

朝からこんなことができるのは、領内視察で外泊した時だけだけだって、ルイーゼさんが教えてくれた通りね。

そうして私はヴェル君を受け入れ、朝から愛し合うのでした。

「アマーリエ様、朝から仲がよろしくて結構でございますね。私はほら、もう夫とは枯れた関係でございまして」

「はははっ……」

当然朝からそんなことをしていれば、同行した副侍女長であるメイヤーに気がつかれるわけで、すでに五十歳を超えている彼女は、朝から交わる私たちを羨ましいなんて言うけど、私は少し恥ずかしくもあって。

「アマーリエ様とお館様が朝からお熱ければ、朝駆けもできませんからね。警戒するこっちとしては好都合ですとも」

「朝駆けなんて、本当にあるのかしら?」

「あったんですよ。その時お館様に同行していたのがルイーゼ様だったので、簡単に防がれましたけど」

ヴェル君はバウマイスター辺境伯で、財力も王国貴族の中でトップクラスどころかナンバー1だ。

彼の妻になれば様々な問題が解決すると思った人たちが、ヴェル君の寝床に妹や娘を送り込もうとする事件が何度かあったみたい。

「この世の中の問題の大半は、お金で解決できますからねぇ」

「確かに」

もしヴェル君の妻になれなくても、彼と一度でも関係を持てば、責任を取れと迫れて慰謝料を貰えるから。

領内視察の場合、村民たちの出身地によっては、高貴な人が村にやって来たら一番綺麗な娘を差し出す、なんて風習があったようで、それを断るためでもあった。

「そんな因習は、バウマイスター辺境伯領内では禁止! というか、俺は色魔か!」

事情を聞いたヴェル君は怒っていたけど、万が一にも間違いがあってはならないと、ローデリヒさんが領内、外の視察に妻を同行させるようになった。

視察先でも妻と仲良く子作りをしていれば……していなくても、妻が一緒に寝ているところに女性を送り込んでも意味がないと思わせるため。

夜だけでなく朝も、隙あらばヴェル君の傍に女性を送り込もうとするため、朝もいたすと効果的だって言い始めたのはルイーゼさんだけど。

「そこまでしても、自然とお館様の奥様は増え続けますからね。しなかった場合、もっと凄いことになるので、警戒は怠れません。すべてローデリヒ様の指示ですけど」

「これまでのことを考えると確かに」

否定できない。

ヴェル君自身は勘弁してくれってよく言ってるけど、優しいからなんだかんだと言って受け入れてしまうのよね。

そういうヴェル君だからこそ、私も大好きなんだけど。

「お館様の身の回りのお世話をするメイドも、私を筆頭に枯れた婆さんばかりになりましたしねぇ」

ヴェル君が若いメイドに手を出す……なんてことはなくて、逆に優秀な若いメイドを彼の近くに配置すると、『どうして私に手を出してくれないんですか? 私って、そんなに魅力ないですか?』と、メイドの方が抗議してきて、ヴェル君が『未婚の若いメイドは面倒だ!』って怒ったから。

だから今では、私以外でヴェル君の近くで面倒を見れる人って、既婚者か孫がいるような年齢の女性ばかりだった。

「私なんて、まだ若い方ですからね。ですが非常に効果的で、婆たちとお館様との男女の関係を邪推する人はいませんから」

私も今日は妻の立場なのでメイヤーに身支度を手伝ってもらい、ヴェル君と一緒に馬車に乗って移動を開始します。

「今日は、二つの村を視察ね」

「あーーーあ、『高速飛翔』なら一日で終わる視察が一週間かぁ……」

ヴェル君が一人で魔法で飛んでいけば、一日で多くの村を視察できるけど、それだと視察に重みがなくなってしまう。

着飾ったヴェル君に、妻とお付きのメイドたち、家臣、兵士たちがゾロゾロとついて来ることで、領民たちも領主様を実感できる。

これは、ローデリヒさんの言葉だけど。

「お館様、私がこの村の村長です。ようこそお越しくださいました」

「みなの生活ぶりはどうだ?」

「前にいた村よりも広い田畑を貰ったので、みんな喜んで耕しています。税の軽減も大変ありがたく」

「今は大変だろうが、税の軽減があるうちにできることをやっておいてくれ」

「はい。それは抜かりなく」

その日も領内の村を巡り、その日の夜は宿がない村だったので、空き家を借りてそこに泊まることになりました。

「あの……。村長様から、お館様のお世話をするようにと……」

「っ! また? 俺のお世話係は足りているから、メイヤーたちのお手伝いをお願いしようかな」

「私は……」

「いやあ、助かったよぉ。メイヤー、教えてやってくれ」

「畏まりました。ではこちらへ……」

「あの……私は、お館様のお世話を……」

「さあ行きましょう」

村長から寄越された娘は、メイヤーに引っ張られていきました。

実はバウマイスター辺境伯家では、急ぎではないけど仕事なら山ほどあるから、本当にそれを手伝わせ、色をつけた給金を渡して誤魔化すのです。

「お館様が狩った獲物の解体と皮の鞣しを手伝ってください」

「ええっーーー!」

「やったことありませんか?」

「よくやらされています」

「ではお願いします。獲物は魔法の袋に山ほど入っていますから」

「本当に沢山あるーーー!」

「お肉は村の人たちにお裾分けするので頑張ってください」

「責任重大だぁーーー!」

哀れ、ヴェル君のお手つきを狙っていた娘さんは、メイヤーさんたちと家の外で獲物の解体をする羽目に。

ヴェル君らしいかわし方ね。

「ふう……。この見ず知らずの女性たちが押し掛けるムーブはいつ終わるのか?」

「しばらく? ずっとかも」

それだけ、ヴェル君の奥さんになりたい人が多い証拠よねぇ。

それも本人の意思とは別に。

「さあ、今夜はお肉料理ですよ。ミーシャさんが解体を頑張ってくれたので沢山あります」

「そうか。ごくろう、ミーシャ。お小遣いを弾むから」

「……ありがとうございます」

ミーシャさんはヴェル君のお手つきになるのは諦めたようで、夕食を沢山食べていました。

そして夜。

「お風呂に入らなくても、魔法で綺麗になるのっていいわね」

「実は『洗浄』の方が綺麗になるんですけど、俺はお風呂に入りたかった」

ヴェル君はお風呂が大好きで、私たちもよく一緒に入る。

領内視察だとお風呂がないところも多いから魔法で体を綺麗にするのだけど、あまり好きではないみたいね。

「(私は、『洗浄』魔法も嫌いじゃないし、体が綺麗になるからいいのよね)」

「アマーリエ義姉さん、今夜も寝ましょうか」

「そうね」

だって、また誰か村の娘が寝室に忍び込んでこないよう、今日も私とヴェル君は……。

おやすみなさい。