#3:『月影の真剣と、見習いパイロットの誇り』
#3:『月影の真剣と、見習いパイロットの誇り』
『Beyond the Frontier:第4章 〜銀河大航海編〜』
act3:『月影の真剣と、見習いパイロットの誇り』
【登場人物】
カルステン・ハイネ4世(フォース / 16):主人公。父ルークから叩き込まれた「精密操縦」と、母ツムギから受け継いだ「過剰不殺の気迫」を胸に秘めた見習いパイロット。
ナディア・ナミ・ハイネ(16):オペレーター。過剰炉の出力を算術的に完璧に管理し、フォースの操縦を限界領域でアシストする理論派ヒロイン。
ユウナ・ピリカ・ハイネ(15):広域放送からフォースたちを作業用BGM(歌声)と応援メッセージで支える長屋のアイドル。
ツムギ・ナディア・ハイネ&ルーク・ハイネ(回想/親世代):フォースに不殺の気迫と、泥臭くも繊細な重機操縦の真髄を教え込んだ両親。
【本編シナリオ】
◯ 長屋船『グラン・ウィンドブラストMk-III』・暗黒デブリ帯宙域(昼)
長屋船『グラン・ウィンドブラストMk-III』が差し掛かったのは、かつての星間戦争時に破壊された軍事要塞の残骸が漂う、全銀河でも有数の危険宙域「漆黒のデブリ帯」であった。
船体を覆い尽くさんばかりの無数の巨大金属塊。
その中央に、長屋船の航路を完全に塞ぐように横たわる、全長500メートルを超える「旧過剰炉搭載型の大型廃棄戦艦の残骸」が鎮座していた。
ナディア(ブリッジのオペレーター席で、高速でホログラムを叩きながら)
「ナオ艦長、正面の大型デブリ、過剰炉の残存パルスが不規則に脈動しています! このまま船体の過剰重力波で無理に押し払えば、爆発的な過剰粒子の誘爆を引き起こし、長屋船の左舷区画が巻き込まれる確率……算術的に89.2%!」
ナオ(艦長席でメガネをクイッと上げ)
「ふむ……強行突破は算術的に悪手だな。……フォース! ワークレイバーで出撃し、あのデブリの過剰炉を誘爆させずに『精密解体』せよ!」
◯ 見習いパイロットの出撃と、背中を押す歌声
格納庫のカタパルトデッキ。
モスグリーンと純白の最新機『ヴェスター・ウィンド・ワークレイバー・フルカスタム』が、過剰粒子の清冽な光を全身から放ちながら待機していた。
コックピットの中で、フォースは緊張に少し指先を震わせながら、両手の操縦桿を固く握り締める。
フォース(深呼吸をし、自分に言い聞かせるように)
「(大丈夫だ……。父さんの『過剰粒子の手応えを感じ取れ』という言葉と、母さんの『刃を交えずとも気迫で制せ』という教えを思い出すんだ……!)」
通信ウィンドウがパッと開き、ナディアの凛とした顔が映し出される。
ナディア
『フォース、過剰炉の出力同調率、算術的最適値にセット完了よ。あたしのナビゲートから一ミリたりともズレないでちょうだい。……いいわね?』
さらに、ユウナの笑顔が隣に並ぶ。
ユウナ
『フォース、がんばって☆ 今日の『ラジオ・ウィンドブラスト』は、宇宙でいちばんカッコいい重機パイロットへ贈るスペシャルライブだよ♪』
スピーカーから流れ出す、ユウナの伸びやかで温かい歌声。
旋律が過剰粒子と共鳴し、ワークレイバーの過剰炉が心地よい重低音を響かせ始める。
フォース(瞳に確かな覚悟の光を宿し)
「了解! カルステン・ハイネ4世、ワークレイバー・フルカスタム……解体作業へ出撃する!!」
◯ 母の気迫、父の技術
宇宙空間へと飛び出したフォースは、激しく自転する大型デブリの懐深くへと急降下した。
デブリの表面からは、過熱した旧過剰粒子が高圧ガスのように吹き出し、機体の装甲を苛烈に叩く。一歩間違えれば、過剰炉の誘爆によって宇宙の塵と消える極限の状況。
ナディア(通信越しに鋭い指示を飛ばす)
『フォース! 装甲の隙間、第3ブロックの冷却ラインを狙って! 誤差許容範囲はわずか3センチ!』
フォース
「3センチ……! 父さんの言っていた『油圧の遊撃トルク』を応用するんだ……っ!」
フォースは両手の操縦桿をミリ単位で繊細に微調整。父ルークから泥まみれになりながら叩き込まれた「重機の指先感覚」が、見事にワークレイバーのマニピュレーターへと伝達される。
ガチンッ! と音を立て、過剰重力耕作爪(グラビティ・プラウ)が寸分の狂いもなく過剰炉の緊急停止弁を掴み取った!
しかしその瞬間、デブリ内部の歪んだ構造材が崩落し、鋭利な金属の装甲板がワークレイバーのコックピットへ向かって突進してきた!
ナディア
『しまん体、第2装甲が崩落! 回避が間に合わない……っ!』
フォース(瞳を冷徹に研ぎ澄ませ)
「——させないッ!!」
フォースの脳裏に、母ツムギが不殺刀『月影』を静かに構える姿が過った。
【回想のツムギの声】
『フォース。刃とは、切るためだけに存在するのではない。己の不殺の信念と気迫を、空間そのものに刃(やいば)として置き去るのだ』
フォース
「過剰不殺気圧——『月影・過剰気迫断ち』ッッ!!」
ワークレイバーの右腕のグラビティ・プラウから、切断力を持たない「超高圧の過剰重力衝撃波」が放たれた!
ズバァァァンッ!!
迫り来る巨大な装甲板は、傷一つつけられることなく、フォースが放った圧倒的な「気迫の力場」によって完璧に弾き飛ばされ、宇宙の彼方へと安全に逸らされた!
◯ 完璧なる解体と、オペレーターの誇り
ナディア(目を見開き、ホログラムの数値を注視して)
「……過剰炉の不規則脈動、完全停止。デブリの構造フレーム、過剰重力波により無効化完了!……算術的解体、成功よっ!」
デブリは静かに複数の安全なブロックへと分解され、長屋船の航路が大きく開かれた。
長屋船のブリッジから、ナオやレン、カエデたちの歓声が湧き上がる。
コックピットの中で、ハァハァと息をつきながら操縦桿から手を離すフォース。
画面の中のナディアが、照れくさそうにメガネを押し上げ、ほんのりと頬を染めて微笑んだ。
ナディア
『……見事な操縦だったわ、フォース。父様(ナオ)の算術理論と、ルーク伯父様の精密さ、そしてツムギ叔母様の気迫……完璧に証明してみせたわね』
フォース(照れくさそうに苦笑いして)
「ありがとう、ナディア。でも、君の寸分の狂いもない算術アシストと……ユウナの歌声が届いていなきゃ、僕は今頃デブリの一部になってたよ」
ユウナ(通信画面に飛び込んできて☆)
『ふふっ☆ フォース、最高にカッコよかったよ〜! 長屋に戻ったら、カエデお母特製の『勝利のホットスパイスティー』を淹れてあげるね♪』
窓の外に広がる、デブリの晴れ渡った美しい星空。
見習いパイロットとしての第一歩を踏み出したフォース。
その胸には、風穴工房の歴史と両親から受け継いだ「不殺の重機乗りとしての誇り」が、確かな光となって輝き始めていたのだった——!
つづく。