#4:『長屋の縁側・朝食大戦争・リターンズ』
#4:『長屋の縁側・朝食大戦争・リターンズ』
『Beyond the Frontier:第4章 〜銀河大航海編〜』
act4:『長屋の縁側・朝食大戦争・リターンズ』
【登場人物】
カルステン・ハイネ4世(フォース / 16):主人公。第3話の激闘から一転、朝から従姉妹ふたりの過剰な愛と栄養学(およびスパイス)の挟み撃ちに遭い、胃袋と算術回路がキャパオーバーを起こす。
ナディア・ナミ・ハイネ(16):母レンの「理論派メカニック思考」と父ナオの「算術計算」を受け継ぎ、フォースの筋肉と脳のリカバリーのために過剰なプロテイン料理で迫るツンデレヒロイン。
ユウナ・ピリカ・ハイネ(15):母カエデの「甘々包容力」と「特製スパイス」を受け継ぎ、フォースの心を甘やかして完全に骨抜きにしようとする天然魔王系ヒロイン。
ナオ、レン、カエデ、ツムギ、ルーク(親世代):かつて第3章・第13話で繰り広げられた「甘すぎる朝食戦争」の既視感(デジャヴ)を覚えつつ、長屋の縁側でお茶を飲みながらニヤニヤと見守る親たち。
【本編シナリオ】
◯ 長屋船『グラン・ウィンドブラストMk-III』・風穴長屋の食堂(早朝)
昨日の漆黒のデブリ帯での激しい解体作業を終え、長屋船の窓の外には静かな星空と、近くの星雲が放つ淡い桃色の光が広がっていた。
昨日の疲れを癒やそうと、寝癖のついた頭で食堂へ入ってきたフォース。
フォース(あくびをしながら、メガネをクイッと上げて)
「ふあぁ……昨日のワークレイバーの油圧系の点検、無事終わったし、今日はしっかり朝ごはんを食べて体力を戻さないと——」
ガラッ! と食堂の引き戸が激しい音を立てて開いた。
ナディア&ユウナ(一斉に両側から飛び出してきて)
「「フォース、おはよう!!」」
フォース
「うおっ!? ナディアにユウナ……? なんだい二人とも、朝からエプロン姿で……」
◯ 繰り広げられる過剰な愛と、爆発する朝食
フォースが食卓につくやいなや、ドカン! ドカン! と音を立てて山盛りの料理がテーブルに叩きつけられた。
左からはナディア。手には焦げ目のついたプロテイン高配合の特製エナジーパンケーキと、ハイパー過剰濃縮プロテインスープ。
ナディア(腕を組み、顔を少し赤くしながらも強気な口調で)
「いい!? あんたは昨日、過剰重力波の精密操作で脳の算術回路と腕の筋肉を過剰に使い果たしたんだから! このメカニック特製・過剰タンパク質&ブドウ糖完全計算パンケーキを全部食べなさい! 筋肉の超回復にはプロテインが不可欠なのよ!」
右からはユウナ。手には長屋の温室直送のフレッシュ野菜と、カエデ直伝の自家製蜂蜜&特製宇宙スパイスがたっぷりかかった、甘くて香ばしい特製スパイスオムレツ。
ユウナ(フォースの手をキュッと握り締め、とろけるような笑顔で)
「だ〜め☆ 心と脳の疲れには、甘〜くて温かい愛情がいちばんだよ♪ フォース、はい『あ〜ん』して☆ カエデお母直伝のあま〜いスパイスオムレツだよ〜っ☆」
フォース(左右からの猛攻に滝のような汗を流し)
「あ、あの……二人とも? 気持ちはものすごく嬉しいんだけど、この量は僕の体重と基礎代謝から計算して、成人の1日分の摂取カロリーの約3.8倍……!」
ナディア(身を乗り出してフォースの口元へパンケーキを突き出し)
「つべこべ言わない! ほら、口開けなさい『あ〜ん』! あたしがわざわざ焦がさないように、過剰粒子の火加減率まで算術計算して作ったんだからねっ!」
ユウナ(負けじとオムレツのスプーンを突き出し)
「フォース、私の『あ〜ん』が先だよ〜☆ ほらほら、パカッと口開けて〜♪」
フォース(左右から迫る『あ〜ん』の猛威に、目がぐるぐる回って)
「あ、あああ……算術的・精神的キャパシティ・オーバーフロー!! どっちから食べればいいんだぁぁぁっ!!」
◯ 縁側でお茶を飲む親世代の既視感(デジャヴ)
食堂から続く日当たりの良い長屋の縁側。
そこでは、急須から湯気の立つお茶をすするナオ、レン、カエデ、ツムギ、そしてルークがズラリと並んで腰掛けていた。
ナオ(お茶をすすりながら、懐かしそうに目を細めて)
「……ふむ。算術的に言って、デジャヴ率99.8%。僕がかつて『ニュー・マージン』の風穴工房で経験した第13話の朝食戦争と、全く同じ構造・同じ構図だな」
レン(腕を組み、ニヤニヤしながら)
「ちょっとナオ、他人事みたいに言ってんじゃないわよ☆ ナディアのあの強がりなプロテイン押し、完全に昔のあたしそのまんまじゃない。ほんと、血は争えないわね」
カエデ(クスクスと嬉しそうに頬に手を当てて)
「ふふ☆ ユウナの甘〜いスパイス攻勢も、私にそっくりだね♪ フォースくん、両方残さず食べないと、女の子たちの愛を無駄にすることになっちゃうぞ〜☆」
ルーク(自分の器のお茶を見つめながら、盛大にため息をつき)
「……我が息子ながら、カルステンとハイネの血を引く男の宿命とはいえ、朝から災難だな。……ツムギ、助けてやらんのか?」
ツムギ(冷ややかな目でお茶を飲みつつ、ほんのわずかに口元を緩めて)
「助ける必要はないわ、ルーク。……若い頃の苦労と、過剰な愛による胃もたれは買ってでもしろと言うでしょう? ……まあ、兄さんと同じで、あのバカ息子も優柔不断だから自業自得だけれどね」
◯ 新しい朝の光と、受け継がれる日常
結局、フォースはナディアのプロテインパンケーキとユウナの甘々スパイスオムレツを代わる代わる口に押し込まれ、パンパンに膨らんだお腹を抱えて食卓に突伏すこととなった。
フォース(苦しそうにお腹をさすりながら、目をウルウルさせて)
「うぅ……苦しい……でも、めちゃくちゃ美味い……そして、温かい……」
ナディア(フォースの頭をポンポンと優しく叩きながら、柔らかく微笑んで)
「……バカ。元気になったなら、それでいいのよ」
ユウナ(フォースの反対側の頬に自分の頬をスリスリ寄せて)
「ふふ、ごちそうさま☆ これからもずっと、私たちがフォースをいっぱい甘やかしてあげるからね☆」
長屋の窓から差し込む、宇宙の眩しい朝陽が、笑い声と愛に満ちた食堂を優しく包み込んでいく。
かつて地球や新星開拓惑星で親たちが紡いできた、賑やかで、少し甘酸っぱくて、どこまでも温かい「風穴工房の日常」。
その尊い光は、大宇宙を旅する長屋船『グラン・ウィンドブラストMk-III』の中でも変わることなく、次世代の若者たちの胸に脈々と受け継がれていたのだった——!
つづく。