「やっぱり止める?」
「やっぱり止める?」
「っ……ちょっと、翼……あっ、」「んー?」「あんっ、ん、ヤるの……?」「うん。駄目?」 翼と付き合い始めて二週間。と言っても、人気男優である彼のハードスケジュールのおかげであの日から予定が合わず、翼に会うのはこれが二回目。そして早々に押し倒されているこの状況。「だ、駄目じゃないけど、でもね、俺……っ、んっ……」「フェラ好きなんだ?」 素直に反応するモノを撫でながらクスクスと見上げられ、真っ赤になった顔を背ける。また始まった刺激に耐えながら、机の上に置かれた雑誌に目を落としてしょんぼり。 デート、したかったんだけどな……。 電話とチャットだけで繋がっていた二週間。十分楽しかったし、暇を見つけては連絡をくれる翼の優しさも嬉しかった。 けど初めての“彼氏”に、俺の心は舞い上がる一方で。会ったらやりたい事、たくさんあった。アヤと朝日に、男同士でも気軽にいちゃつけるようなデートスポットもたくさん教えてもらった。とにかくたくさん喋って、たくさん甘えたくて。まだまだ全然知らない翼の事をたくさん知りたかった。 大好きなBL小説のキャラ達みたいに、キラキラした、幸せな恋愛がしたい。「んっ、えっ! ちょっ……!」 ふと後孔に感じた熱と痛みに、ボーっと考え事をしていた頭を慌てて起こす。「ん? 何?」「何って……」 慣らさないの? まだあの撮影の時の傷が治ってない、そう、喉まで出掛かっていた言葉を飲み込む。翼は当たり前みたいに、そのまま挿れようとしてんじゃん。だから、翼にとってはこれが普通。「どうした?」「な、んでも、ない……」 任せよう。同性愛が初めての俺なんかより翼の方が色々知ってるんだから。俺が変に口出して、それで嫌われたら嫌だ。デートだって行かない。俺は、翼がやりたいって事だけをやらなきゃ。「挿れるよ?」「……うん、」 俺は多分この時、主導権と一緒に、大事な大事な何かも翼に渡してしまったんだと思う。「いっ……! っ……待、……!」「ん、痛い?」 いきなり奥まで刺さった熱で、傷口を広げられた激痛にシーツを握りしめる。ヤバい。痛い。痛い。また裂けた……? でも翼が何も言わないって事は、きっと大丈夫。 けど既に泣きそうなくらい痛いのに、このまま動かれたらどうなんだよって。痛みと恐怖感で萎え始めたモノを見ながら、思考を巡らせていると、「やっぱり止める……?」 俺よりも泣きそうな声と、髪に触れた優しい指先に顔を上げる。 ああ、俺は何を迷ってんだ。大好きな翼の愛。受けとめる以外に何がある。「……ううん、大丈夫。動いて……?」 優しく笑って、唇にキス。ゆっくり始まった律動に目を閉じる。ズキズキ身体中に響く痛みに、口から漏れるのは喘ぎ声とは程遠いものだけど、翼が気持ち良さそうだからそれでいいや。「っ……いっ! ん、……んっ、」「はあっ、最高……」 翼の瞳が好き。指先と、声と、キスも好き。優しくて安心するから。でもなんで安心するんだろう。 ああ、そうだ。優しい瞳も、指先も声もキスも、全部。佐伯さんに似てるんだ。だから安心するんだ。『千尋、可愛い。いい子だね』 脳裏に浮かんだ、あの優しい笑顔。すると途端に痛みが引いていくのを感じ。 あれ、痛くない。 なんだかよくわからないまま、こみ上げてきた快感に浸ろうと、目の前の翼に抱きついた。