第19話 月曜日2
第19話 月曜日2
「ひどい」 恨みがましい目で見つめられてはいるが、まったく怖さを感じられず、笑ってしまった。「悪い」「ひどい」「悪かった」「嫌だ、許さない」 ティッシュを取って拭ってやると、薄い体が大きく跳ねる。「着替え、手伝ってやろうか」「いらない」 でもそこにかかってる制服は取ってほしいと、シェルフを指差された。 ベッドの上に置いてやると、唇を尖らせて、小さくアリガトウと一言。「あと10分で車が来るぞ。本当に学校に行けるんだな?」「行けるよ!」 誰のせいであと10分になったんだよ…! と叫ぶ声を後ろに、にやけながらドアを閉めた。 そうだ、聞かなければならないことが、と再度ドアを開ける。 ぎょっとした顔の木之内に、洗濯機の使い方を教えてくれと聞いた。「…なんで?」「昨日の後始末をしたタオルを洗いたい」 木之内の顔が、爆発でもしたかと言いたくなるくらいに真っ赤っかになった。「あとで、回すから、いいよ…!」「了解」 ドアの向こうから、あああ…と困惑する声が漏れてくる。 笑いを堪えるのが大変つらい。腹が痛い。 無かったことにするのは惜しい、と思ったのは確かだ。 しかし、そもそも合意の行いではなかったし、むしろ責められるだろうと腹を括って朝を迎えたのだが、この展開は想像してなかった。 無かったことにしたい気持ちも当然理解できる。 真面目そうな木之内には、到底受け入れられない大事件だろうから。 泣き言が続く。「階段がつらい」「そうみたいだな」「足が上がらない」「抱き上げようか」「謹んで辞退する」 木之内が牛歩で教室に入ると同時に、予鈴が鳴った。「夏伊、むっちゃん、おはよ!」 ヒロがニコニコと近づいてくる。「おはよ。昨日はありがとう」 木之内がジュース代を渡すと、どういたしましてとまた笑った。「夏伊、ありがとね」「おう、問題ない」 もう至って元気だろと、木之内の腰をトンと叩いたら、スローモーションのようなスピードで、木之内がへたり込んだ。 あ、やってしまった。「……」 顔は見えないが、明らかに怒っている。 近くの席の子に断って、天板に手をつきながら、木之内が立ち上がった。「そう、至って元気。大丈夫」 そのまま自席に向かう。 その様子を二人で追っていた。「むっちゃんに何かした…?」 めちゃくちゃ怒ってない…? とヒロが恐怖に震える。「何もしていない」 事になっている。「ホントかね…」 そのツッコミは無視して、夏伊も自分の席に着いた。 車に乗っていくかと提案したが、バスで帰ると言われた。 じゃあ帰ったら連絡をと言うと、何で、と憎まれ口を叩きかけてから、そうだよね、と返される。 木之内は元来、素直な性格なのだろう。夏伊が気にかけていることも、理解している。 分かったと小さく応えて、帰っていった。「夏伊、今日は?」 にやけながらクラスメイトに予定を聞かれて答える。「待ち合わせてる」「マジで相手に事欠かないねー」「茶化すなよ。また明日」 駅まで車に乗って、電車に乗った。