第8話 次の金曜日3 ★☆
第8話 次の金曜日3 ★☆
「そんなバケモノを見るような目で見ないでよ」 笑いながら、指を引き抜かれた。 顔を覆って、ワン・トゥー・スリー! と手品のように叫んで、睦月の前でばあをする。 さらりと髪が伸びて、にたりと含み笑いを浮かべる男。 え?「……誰?」「そりゃ分かんないよねー。1年D組の 立花 ( たちばな ) 清風 ( さやか ) です。さやかって読んでねー」 ゾッとするくらいご機嫌に自己紹介される。「…でぃ、D組の人が何で…」 いきなり、こめかみをアイアンクローで掴まれる。「痛っ!!」 思わず手で弾くと、おっとごめんね、と軽く謝罪された。清風って呼んでって言ってるのに、聞かないから。 体温が下がっていく。「……さ…清風は、何で…」 ニマァと口を歪ませた。「…男型のサキュバスの人間っていう、へんてこなのがいるって聞いたからさあ」「……え?」 何故それを?「なにその顔ー。悪魔は自分達だけの話だと思ってた? 結構人間界にいるもんだよ」 まあオレはお前より上級だし純血だけどねーと笑う。「夢魔なんて、精液吸って注いでご苦労なこったって感じだけど、心配しないでいーよ。純粋な悪魔じゃなくても、人間界での使い所はあるだろうから」 まあ体が人間だからなー、女体化できなさそうなのは残念だけどと独り言つ。じろじろと見定める目線を追って、自分が全裸だったのに気づいて、タオルケットを引き寄せた。 元々は富山の提携校に通っていたのを、五月に転校してきたのだという。「半端者のサキュバスが使えそうか調べて来いって言われてさー、わざわざ見に来たんだわ。お前からは人間の匂いしかしなかったし、情報違いかと思ったけど、こないだのスポーツ大会の時にようやくピンと来たわ」 そんで念のためにつけてたら、火曜日にいーもん見ちゃったし。 睦月の体が一層固まる。火曜日って。「窓から見てましたー、ごちそー様でした」 オレしかいなかったから心配しなくていーよと付け足された。心配どころか、最悪の展開だ。「とりあえず、他の奴の使役になるのも癪だし、オレの物にしとこ」 言うや否や、腰を思いっきり掴んで引っ張られる。 頭が後ろに反ってぐらついて、即座に逃げる事は叶わなかった。全身が粟立つ。「嫌だ! 嫌だ!!」「この後に及んでなに言ってんの? 下級のお前がオレを拒否する権利なんかないんだよ」 体を捩ってうつ伏せになって、両手をベッドの端にかける。片足を蹴って逃げようとするものの、もう片方の足を掴まれてしまった。引きずり寄せられる。「待てよ、疲れさせんなよ」 どうせオレのもんなんだから、と、冷たい声が響く。「嫌だ!」 肩を押さえつけられてから、体重をかけて覆い被さってくる。 それが尻にあてがわれる。「止めろ! 嫌だ!! 嫌だ!!」 目一杯足をばたつかせているのに、全く抜け出せない。「夏伊クンはどうなるかなー」「…えっ?」「図書館の不順な行動での社会的な抹殺とか、悪魔を怒らせた時の生命の保証とか?」 刹那、抑えきれない怒りが込み上げて、目を清風に向けた。燃え上がる熱をそのままに、悪魔を正面に捉える。「…夏伊に何かしたら殺す。社会的にだろうが何だろうが関係ない。お前を殺して解決する」「…かーわいい顔して、なかなか言うじゃん」 オレに楯突くとかなかなかだね、性格も“人間らしい”ね。 再度、顔を手で隠して、ばあと開く。「怒った顔もかわいいな」「夏伊に化けるな、バケモノ」 お互い様でしょと、清風がニッコリと笑った。