第9話 次の金曜日4 ★☆
第9話 次の金曜日4 ★☆
多分今日も夕方までいるだろうと、借りた本を持って図書館に来たら。『閉館』の札。「マジか」 ジリジリと焼ける暑さとセミの合唱の中、重い足を運ぶ。 念のため睦月にメッセージを送るも、返事はないまま。 仕方なく、ヒロの部活練でも見ようとグラウンドに向かうと、休憩中だったヒロが手を振って、「退院おめでとー」と叫んだ。「やめろやめろ、わかったから」 グラウンドの側まで歩いていって、二言三言喋った。「そういえば、こんな時間まで残って何してたの?」「残って?」 夏伊がいま来たところだけどと答えると、ヒロがあれ? と首を傾げた。「朝いなかった? それにさっき、むっちゃんと正門の方に歩いていってたの見たけど。ドッペルゲンガーかな」 ただの見間違いだろと返す。「そっかなあ…」 ヒロがそろそろ練習に戻るわというので、帰ることにした。 睦月は誰と帰ったのか。夏伊は背丈のある方だから、見間違えるといっても対象はそう多くはない。 帰り道、再度メッセージを送ったが、既読は付かなかった。マンションの前を通ってみたものの、ブラインドが閉まっていて中の様子も見えずだった。 とてつもない怒りで、惨めさを打ち消している。 睦月が激昂したからか、最後までされることはなく途中で終わった。しかし、屈辱的な行為に及ばれたことに変わりはない。 シャワーを近づけて、体勢も探り探りで、浴槽のへりに足をかけたりして、中に入ったものが残らないようにの一心で洗う。 そうして長い時間をかけて、ようやく風呂を出て、鏡を見て絶句した。こめかみも肩も胴体にも、痣が散っている。気づいてみれば、痛みに全身が悲鳴を上げていた。 清風に言われた。「夏伊クンとの友達ごっこはお好きにどーぞ。オレの口が滑るまでの間、たっぷり思い出作りに励めよ」 母さんが心配そうにしているのを知っていて、でも言いようがなかったし、ただただベッドから立ち上がれなくて、何日も懇々と寝続けた。 それからようやく起きて、のろのろとPCを開く。 もやのかかった頭を奮い立たせて夏期講習を受講してから、うまく動かない指でテキストを打って、それから検索をして目星をつけ、家を出た。「うん、もう大丈夫。今回で終わりでいいよ。ひどくなる前に来てくれてよかった」 パンツとボトムを引き上げて、努めて明るい声で「ありがとうございました」とお礼を伝えた。 ジリジリと焼ける日差しに、帽子をぐっと深くかぶる。セミの鳴き声が変わっていく。季節の移ろい行くのを憎んだ。 こんなに暑くてたまらないけど、時間が止まればいいのに。二学期が来なければいいのにと思う。 賑わう街を抜けて電車に乗り、最寄駅に行く路線に乗り換える。 濃緑に茂る木々と向こうの青い空が、酷く目に染みる。 現実を遮断したいのに、みんなは何してるのかな。夏伊の手術はどうだったんだろう、元気にしてるかな。そんな事を想って、頭を小さく振るった。