第23話 大寒波5
第23話 大寒波5
目を覚ましたら、外はもう白んできていた。雪は降り止んだらしく、太陽を反射して、いつもより眩しい朝。 裸のまま寝てしまったけど、夏伊とくっついていたからか体は冷えてはいない。 えいやと気合を入れて、でも腰が抜けて、結局ゆっくりと立つ。夏伊にそっと布団をかけた。 風呂場に行って全身を軽く流した。 体を拭いて服を着て、お湯で湿らせたタオルを持って部屋に戻る。 夏伊はまだ夢の中にいる。体温を逃さないよう、少しだけ布団をもたげて、その体を上から下までこしこしと拭き続けた。「夏伊、起きて。朝だよ」 ゆるりと目を覚ますと、焦点の定まらない目でおれを見つめてくる。 誘導しながら体を起こして、足を上げたり手を動かして、服を着させた。 濡れていた靴下はタオルドライしたけど、まだ冷たい。うちにある新しい靴下を履かせてあげたかったけれど、それはできない。「夏伊、上着着て」 コートの袖を通す。前を閉じて、ソファの上に置いてあった帽子を取って被せる。 おれも上着とマフラーと帽子の格好になって、夏伊と一緒に外に出た。 まだ誰も踏みしめていない、白銀の世界。寒いようで何故かあたたかく感じて、不思議な気分だ。 雪に苦戦しながら、二人、手を繋いで歩く。 地図アプリを見て、ここだろうと目星をつけた場所へ向かった。長い板塀に、大きな木製の門。門柱に『香月』の表札がかかっている。「夏伊」 呼ぶと、まだ虚な目をした夏伊がこちらを向いて、微笑んだ。その優しさに返せたかわからないけれど、どうにか笑い顔を作る。「夏伊、おれたちは、もう、友達なんだ。ただの友達だよ。わかった?」 夏伊が、ぼんやりとした表情で頷く。 夏伊に傘を持たせて、インターフォンを押す。急いで離れた。 小さな機械音とともに「まあ、夏伊様!」と声が聞こえる。 門扉が開いて、使用人らしい人が夏伊を中に入れるのを、近くの家の物陰から見つめていた。「夢魔は精液と共に生命力も吸い取るんだぜ? セックスすればするだけ、夏伊クンの首を絞めるようなもんじゃん?」 春に皆が匂いに酔ったとき、次の日には全員すっかりその事を忘れていた。夏伊もきっと、起きたら昨日のことは忘れているだろう。そうであってくれることを祈った。 夏伊に何かしようものなら、清風を絶対許さないと思った。でもそれ以上に、自分のせいでというのは、想像するだけで心が砕けてしまいそうだった。 本当なのか嘘なのか、実際のところはよくわからない。ただ、本当だったらと思ったら、それだけで恐怖で体がすくんで、もうそれ以上は考えられなくなってしまっていた。 それでも最後にセックスしたかった。体の関係はこれで終わりにすると、おれが踏ん切りをつけるために。 それは嬉しい言葉だった。そうだといいなと思ってて、だからそうしたいと思ってる。