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第6.5話 幕間・ロベルの訓練と仕事終わりの一風景

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第6.5話 幕間・ロベルの訓練と仕事終わりの一風景

キャプション注意書きを読まれたでしょうか。

解釈違いが起こっても大丈夫でしょうか。人外設定出てきますが、平気でしょうか。

妄想と捏造で構築された二次創作です。

なんでも大丈夫、受け入れる、という方は、先へどうぞ。

夕刻 サイド

特訓の六日目、先生役をしてくれたオリバーとともに、ロベルは店へ帰る道を歩いていた。昼過ぎから夕暮れ時になる先ほどまでずっと戦闘訓練をしていたのだが、彼らの足取りは軽く、まるでちょっとした散歩の帰り道のような明るさがあった。教えられていた本人さえ、疲労感のなさに驚いている。

「初日二日目はあんなにキツかったのになぁ。三時間くらいぶっ通しで体動かしていて、今日は全然平気や」

手を握ったり開いたりしながら言えば、隣を歩く教授は「呑み込みが早いからですよ」と褒めてくれた。

「ロベルさんは筋がいいです。僕が担当した二日目と今日を比べたら、別人ですよ。たった六日間でここまで魔力を使いこなせるなんて、思ってなかった」

「そりゃありがとうやで。みんなの教え方がうまいというか、スパルタではあったけど、おかげでできるようになったわ」

ロベルは交代しながら教えてくれた仲間たちと、課された訓練内容を脳裏に描いた。教えてもらう時間は今日とだいたい同じくらいで、むしろ昨日までは途中休憩を挟みながらの訓練だった。しかし昨日より体力は残っている。

違いといえば、毎回魔力の使い方のコツを掴み、意識しなくても体に馴染ませて使える、動けるようになった点だ。慣れてしまえば息をするように、無意識のうちに使っている。

「魔力ってすごいな。普通なら三時間もあんなに激しく体を動かしとったら、全身筋肉痛待ったなしなのに。今はちょっと長めの散歩したくらいの疲れしか感じてない」

ロベルは自分の手を見つめた。魔力は体にあって、有事の際は筋力の補強や疲労軽減のために全身を駆け巡る。使い方を教えてもらうまでは、ひたすらに抑え込むしかできなかったのに、やってみたらこうも様々に活用できるのかと驚くばかりだ。

ロベルの仕草をどう解釈したのか、オリバーは先ほどより優しい声で話し出した。

「そうですよ。使い方次第で良くも悪くも使えるし、ちゃんと食べていれば、勝手に問題なんか起こしません」

言葉に含まれている何かが気になって、ロベルは隣を歩くオリバーの顔を見た。柔らかな若葉色の瞳と視線が合う。

「ロベルさんは、普通の食事から、ちゃんと食べなきゃいけませんよ。あなたは食べなさ過ぎです」

少しだけきつく固くなった言い方に、教師に怒られた生徒よろしくロベルは「はい」と返事をする。

首を竦める問題児へ、オリバーは大きなため息をついた。

「連日魔力を使って、いつもの食事をした後にも、他にもっと食べたいなって思ったりしませんか。物足りなさはないですか」

言われてロベルは最近の食事を思い返すが、まず浮かんだのは、毎回教えてくれた先輩達が「ちゃんと晩御飯食べなよ」と言って、帰り道必ず一緒にお弁当屋へ寄った事だった。

「せやな。無いな。みんな帰り道でお弁当屋さん連れてって『ちゃんと食べな』って言われたわ」

回答を予想されていたのか、やれやれとオリバーは首を横に振る。

「聞きたいんやけど、魔力が足りないからあれ食べたいこれ食べたいって、どう感じるもんなん?」

逆に聞いてみれば、少し考える間を置いてオリバーは語り出した。

「汗をかいた後に、しょっぱいものを飲んだり食べると、とてもおいしくて、体が求めているって感じるでしょう?あれと同じです。魔力が足りない、食べたい時は体の感覚にも表れてきますよ。いつも通りの食事をしても満たさない。お腹が空いたとか喉が渇くとか、だいたいみんなそういいますね。

ああ、食べる『もの』は様々ですよ。僕の場合は周りの大人が同じ種族でしたから、周りが食べる物飲む物を一緒に口に入れていたら、自然と好みができていきましたよ。

ロベルさんは元になる情報がないですからねえ。色々と試していったほうが手っ取り早いかもしれない。確か店に……休憩室に僕の飲んでる『ワイン』がまだ残っているはずだから、試してみますか?」

「いただくわ。でもさ、オリバー君ってワイン苦手みたいに言ってなかった?」

「吸血鬼が好む赤い液体と言えば、ですよ。ワインみたいに飲みやすく加工されていますし、アルコールも加えてあるたまきさん特製の逸品です。飲みなれていない方でもお勧めできる味ですよ」

オリバーはわざと牙を見せつけて笑う。以前なら醸されている妖しい雰囲気に怖気づいていただろうが、今の――連日の訓練を受けたロベルにとってはただの日常の一風景であった。

角を二つ曲がれば店が見えるくらいに近づいてきた頃、ロベルは異変を感じ立ち止った。一方、隣を歩くオリバーは、急に足を止めたロベルへ驚いた顔を向ける。

「なあ、なんかいつもと違う匂いがする」

ロベルの鼻に届いたのは、甘くて温かいのに寒気のする匂いだった。鉄臭いのに食欲をそそってくる、日常ではまず感じない匂い。店への襲撃があった後でもあり、ロベルはなおさら警戒する。オリバーは少しの間だけ空気の匂いを確かめて、「ああ」と納得したように声を漏らした。

「大丈夫ですよ。誰かが組織の仕事終わりに店によって、料理をしているんでしょう」

落ち着かせるように微笑む教授に、身構える様子はまったくない。それでもロベルは不思議な匂いが気になって仕方がなかった。

夢追 サイド

店のキッチンで鍋の番をしていると、裏口の開く音がした。続いて「戻りました」と甘く低い声と「ただいまやでー」と特徴的な声がほぼ同時に響いてきて、訓練に行っていたオリバーとロベルが戻って来たと分かる。

「おかえり。手洗いうがいをしてきな。まだ晩ご飯はできないから、汗を流すくらいの時間はあるぞ」

隣でかぼちゃのパイの焼き加減を見ているベルモンドが、低くて落ち着く声で答えている。だが、その声を聞いて後輩たちは逆に驚いて、派手な音を立てて厨房を覗き込んできた。

「ベルさん?!忙しいっておしゃっていたじゃないですか。もうひと段落着いたんですか?」

驚きと嬉しさが混ざった興奮を持って、オリバーは質問を投げかける。オーブンからかわいい後輩へ向き直ったベルモンドは、腰に両手をあてて笑いかけた。

「ああ、こいつらのおかげで早く片付いた。ほら、話してやるから、まずはきれいにしてこい」

はい、と素直に返事をして、オリバーは階段を上がっていった。その後ろをロベルが歩いていく。

すぐに水の音が響いたと思ったら、軽やかな足音が近づいてきて、ひょっこりと、柔らかい若葉色の瞳と、オレンジと紫の宝石のようにきらめく瞳が、カウンターからこちらを覗いてくる。

自分よりも身長もあり体格も良い男たちだが、カウンター越しに覗いてくる様は子犬を彷彿とさせ、夢追は一人で密かに和んだ。

「それで、何があったんですか?今日は夢追さんがロベルさんの訓練する予定だったけど、急に仕事入ったから僕に代わってくれって言われていたのに。こんな早く終わるなら頼まなかったでしょう?」

純粋な好奇心をまっすぐに伝えてくるオリバーの隣で、ロベルも言葉を添える。

「神田君もどこにおるんや?ベルさんの仕事を夢ちゃんと神田君に手伝ってほしいから二人は引っ張ってく、って言うとったやん。まさか残業しとるん?」

「違うよ。かんちゃんはただ買い物に出ているだけ。『トマトスープにはパンを合わせたい』って言って、固いパン買いに行っているの。もうすぐ戻ると思うよ」

夢追はいない一人の説明をする。そっか、と頷くロベルは疲れているようには見えない。魔力をうまく使って、疲労を軽減できているようだ。

「仕事はな、神田が手伝ってくれたおかげで敵対組織の売人を逃さず捕まえられた。で、ゆめおには別件で捕まえていた野郎の口を割る仕事を任せていたら、予定よりもずっと早く情報を引き出してくれたんだ。――まあ、二人ともちょっと本気出しすぎだ。一緒に行動させた若手が自信喪失するし、うちの尋問役たちは全員衝撃受けてたからな」

ベルモンドが苦笑いをしながら、要所をかいつまんで説明をする。途中で夢追の方へ視線を送ってきたが、あえてとぼけて首をかしげて見せる。

やれやれ、とでも言いたげに、それでいて愉快そうにしながらベルモンドは頭を振る。

「今日一日かけて奴らの事務所やたまり場を潰していこうかと予定していたら、半日くらいで全部終わっちまったよ。しかも、事務所へ帰ったら部下が飛んできて『リーダー、なんですかあの人は。手際が良すぎます。もう情報吐かせちまいました』って言われたんだ。さすがに国の暗部で働いていた奴らは違うね。たまには任せてみるもんだ。助かったよ。あいつらにもいい刺激になった」

さも『良い上司』の顔をしているベルモンドへ、夢追は鼻を鳴らしてみせる。

「ホントは最初から狙ってたんだろ。お前が神田君と一緒に行動させた奴ら若者ばっかだったじゃん。自分が手練れの連中と組んでさ。組織の尋問官たちだってそう。みんな新人だった。

ま、対象の命は問わないし、早く口を割らしてくれたら遊んでいいって言ってくれたから、お言葉通り遊ばせてもらったけど」

「ははは、お見通しだな。ま、人手が足りなくなったのは本当なんだ。予定では力ちゃんと舞元の担当だったんだが、二人には急に別件に行ってもらうことになった。で、代わりに刺激を与えられる人材って探した時に、お前らに白羽の矢が立ったってワケさ。

正直助かった。ありがとうな。オリバーも、急に言ったのに受けてくれてありがとう」

どういたしまして。と夢追は返し、オリバーはいい笑顔で「はい」と返事をした。

「今日は午前中までしか授業のない日でしたから、タイミングが良かったです」

ベルモンドの頼みとあらば、たとえ授業があっても引き受けそうだけどな。と、夢追は心の中で呟いた。

「別件ってなんやったん?聞いてもいいか?」

好奇心と配慮をまぜこぜにした声音でロベルが聞いてくると、ベルモンドはいたずらな笑みを浮かべた。人差し指を立てて自身の唇に当て、「しーっ」と合図をする。

「それはな、神田が帰ってきてからにしようか。いいニュースだからな」

新人はベルモンドが醸し出すマフィアの空気を、仲間を狩りへ誘う匂いを嗅ぎ取ったしい。仲間の思わせぶりな対応に、ロベルは一度目を丸くして、それから楽しそうに悪い笑顔になって頷いた。

「そうだ、ロベちゃんの今日の訓練はどうだった?昨日教えた気配の感知はできた?」

彼らのやり取りを観察していて、使えていそうだな、と思いながら昨日の教官役だった夢追は聞く。

「もちろん。おかげで背後とか死角からの攻撃も対応できたで。あと場所もよかったな。音が反響する場所やから、小さい音でも拾いやすかった」

ロベルは素直に、謙遜もなく誇張もなく話してくれる。仲間として、そうした点はありがたい。彼の目を通した事実を語ってくれると、判断する側は余計な情報の分別作業がなくて助かるし、なによりも彼を信用できる。

「ロベルさんすごいですよ。ちょっとした音でも聞き取って、不意打ちを察知しましたから。それにですよ、帰り道、店に着く前です。僕はほとんど気にしなかった匂い、料理とお二人のまとっている血の匂い、ロベルさん分かったんですよ。あれは驚いた。攻撃よりも探索の方が向いていそうですよ」

オリバーもまた楽しそうに語ってくれる。教え子の成長を喜ぶ教授というよりも、遊び相手が増えそうでワクワクする子供のようだ。

だが、匂いについてオリバーが言及した途端に、隣に座るロベルの顔が強張った。

「え。あの匂いって血の……」

「そうですよ。料理と血の匂いです。なにを今更驚いているんですか?」

当たり前でしょう、とオリバーはさらりと言って見せるが、ロベルは少しだけ顔を伏せて答えない。

ただ、その顔は決して暗くなっているのではない。

強いて言えば、困惑だった。

「僕の愛飲している『ワイン』、飲みましょうって言っていましたね。持ってきますよ」

オリバーも何かを察したらしい。瞳を一瞬だけ赤く光らせると、足音もなく二階へ上がっていった。

癖で人の移動する足音を追おうとした夢追の耳に、外から聞き慣れた靴の音が届いてきた。

「ロベル。ちょっと耳を澄ませて、外の音を聞いてみて」

何が、と目的や理由は伝えず、ただロベルへ促してみる。新人は組織の先輩の声音が変わったと気づいて、ただ言われた通り音に集中する。

わずかな沈黙の後、ロベルはハッキリと答えを出す。

「人の足音がする。こっちに近づいてきてるな。しっかりした音やから、成人男性か体格のいい女性かな」

「正解。これは神田君の音だよ。ちゃんとできてるね偉い。足音はね、このメンバーの分は覚えておいた方がいいよ。いざって時に、仲間か偽装した偽物か分かる手がかりになるから」

夢追は優しく答えを言うと、パイを焼き上げたベルモンドが口笛を吹いて、驚きと称賛の意を示した。

「そんな驚かれるほどの事ちゃうでしょ?」

「いやいや、足音の聞き分けをしろってゆめおが言ってくるのは、まずないぞ。俺らは姿を変えなきゃ、外の足音まで聞き取れやしないよ」

意外そうにするロベルへ、ベルモンドは苦笑交じりに教える。腑に落ちていない様子に、夢追は補足情報を出した。

「あのね、俺らは種族の特徴を隠したままで使える魔力に限界があって、使う量が増えるほど、特徴を出すの。精度が上がる、または、隠す余裕がないから。身体能力の向上もそうだよ。本気を出したら特徴を隠してなんかいられない。で、大抵は外の足音ここまで細かく知ろうとしたら、特徴を出すんだよ」

「へえ?じゃあ、俺の訓練で姿を誰も変えていないのは」

「うん、あれは練習だからねえ。あ、そうだ思い出した。姿を変えたらどんな感じかって結局見せられてなくね?」

「ああ、まだだな。簡単な種族の特徴を話しただけだ」

確認を取れば、同じく思い出したらしいベルモンドが答えてくれた。

ロベルは興味津々な顔をしてこちらを見てくる。

話を聞くのと実際に目にするのは違う。ちょうど今夜は全員がそろうから、見せてもいいかと夢追は思考を巡らせている間に、ドアが開いた。

裏口から軽快な音を立てて、買い物袋を抱えて登場したのは、金髪の青年だった。

「戻りました。あ、ロベルさん帰って来たんですね。お疲れ様です。どうですか調子は」

「お疲れ様、神田君。みんなのおかげで好調やで」

挨拶を交わしながら、神田は袋を厨房に置いた。「パンは私が焼きますから」とだけ言い残して、手洗いをしに二階へ上がっていく。

目の前にある鍋の中身は、程よく煮えている。パンはすぐに焼けるだろうし、デザート枠のパイも出来上がった。

「オリバーの『ワイン』と普通の酒を出して、ご飯にしようか。それから、ベルモンドのいい話や僕らの特徴について見せよう」

二階へ行っていた二人が戻って、全員がそろってから夢追店長はみんなに告げる。笑みを浮かべる口元からは、上下合わせて四本の鋭い牙がのぞいていた。

飛ばしても平気な あとがき

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

また、読んでくださるだけでなく、いいねやブックマーク、コメントスタンプまで、ありがとうございます。反応をいただけると、本当にうれしいです。

今回は幕間、話と話の間として書きました。いかがでしたでしょうか。

感想も、「こんなセリフをイケボで言っているシーンを読みたい」のような妄想オタク話のリクエストも、いただけないですか。お待ちしております。

犬山オーナーが『太客』として接待されるシーンを書くために欲しいのです。よろしくお願いいたします。

作者はこの物語を書きながら思うのです。

「事件が起こった時、場面にハイライトを当てて書かないのか」と思うのです。

この物語は、「悪で魅力的な姿」「厄介客を帰したり返した後の治安の悪い姿」を読みたいがために書いております。

結論は、平和の中にある治安の悪さを見たいから書く、でした。また、魅力を最大限に引き出すためにも、作者の好きなシーンを書くためにも、日常の平和な姿を書きます。治安の悪さは、日頃の和やかな姿を知れば知るほど、一層鮮やかに浮かんでくれるでしょう。

ここまで長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。