第七話 オーナーの出迎え方
第七話 オーナーの出迎え方
キャプション注意書きは読まれましたか。
これは妄想と捏造で構成された二次創作、ご本人様方と一切の関係がありません。フィクションです。
アンケート追記しました。お気軽にどうぞ。
友人とのディナーを楽しんだ帰り道、組織のボスであり店のオーナーでもある犬山たまきは、軽い気持ちで電話を取り出した。
慣れた手つきで電話帳を開き、目的の名前を表示する。
「夢追君は起きているかな。ていうか、ベルさんの仕事手伝ってたし、今出れるかな」
画面に映る名前を見て、早朝のやり取りを思い出す。だが、その間にも指は迷いなく端末を操作して通話ボタンを押していた。
数コールの後、端末から聞き慣れたイケボが降って来て、思わず犬山は口角を上げた。
「あれ、犬山からだ。なんだろう」
食事も終わり、ロベルに各々の特徴を見せ終わったころ、夢追の携帯電話がメロディを奏でて着信を知らせる。画面を見れば見知った名前が表示されていた。
疑問には思ったが、一応ボスだし、深く考えるよりもまずは聞くかと、夢追は通話を受けた。
「もしもし、どうしたの犬山。なんか用?」
「うん、そうなの知らせたいことがあって。ベルさんの手伝い中じゃない?終わった?」
今回はまだまともらしい。声と滑舌からして、相手は酒を入れてふざけた理由でかけてきてない、と夢追は判断する。周りから集まる視線を感じつつ、話を進める。
「ああ、その仕事は終わったよ。今はお店でみんなとご飯食べてしゃべってる。用は何?」
「よかった。あのね、皆に相談したいことがあるからちょうどよかった。実はボク神楽めあから頼まれてさ夢お」
この国の言語は語尾が大事なのだが、文の最後に言いたいことがあるのだが、最後まで聞くどころか途中で、夢追は通話を切った。
耳から端末を離して切るまでの動作の速さに、見守っていた仲間たちは驚きや呆れを込めた視線を送ってくる。
「どうしましたか。たまきさんからの電話なのにブツ切りなんかしたら後が大変ですよ」
夢追と同様に、犬山から酔っぱらった勢いで絡み電話をされた経験を持つ神田が聞く。からかいよりも心配よりも、警戒がこもった言い方をするあたり、神田もまた嫌な予感を持っているらしい。
「犬山が『神楽めあ』の名前を出して頼まれたとか言ってきたから」
かの超危険人物の名前を出せば、全員が納得した。
「あ、切られたなんで。もう判断が早すぎるよ夢追君さぁ。絶対めあの名前を出した瞬間に切る判断しただろ」
反射的になんでと言いつつ、次の瞬間には自分で結論を出す。出しながら、組織のボスは大通りを走るタクシーを捕まえた。
乗り込み、店の近くを目的地として伝えると、もう一度電話をかける。
私利私欲も絡まってはいるが、本題は組織の仕事なのだ。ここで引き下がるわけにはいかない。
なによりも、もっとイケボを聞きたい。
今度は、相手が電話に応じるまで少し時間があった。
「めあさんの名前を出したからって、まだ仕事の話だった可能性もあるっちゃあるやん。出たほうがええで」
再び鳴り響いた着信音に、端末の持ち主はしばし逡巡する。しかし普段とまったく変わりない調子でロベルに言われて、しぶしぶと彼はボタンを押した。
「……もしもし。なんですか犬山さん」
「なんで警戒心しかない声出すの夢追。その声も最高なんだけど。じゃない。ちゃんとした仕事の話なの。切らないでよ。めあの名前出したからって切らないで」
与太話を始めるなら切ろうと思っていたので、先手を打たれたなと夢追は相手に見られないのをいいことに顔をしかめる。だが、犬山は相手の無言にかまわず話を続ける。
「ボクらに喧嘩を売って来た奴らさ、ただの下請けで依頼主の組織がいたでしょ。夢追君のおかげで組織の名前は分かったけど。めあとも雑談で話したの。そしたらよ、情報をめあが持ってるし、ついでにもっと詳しく調べてくれるって言ってきたの。代わりにボクらに情報搾り取って消してほしいターゲットがいるんだって話してきてさ。
うちで組織を一から調べるよりもめあに頼んだほうが早いし、情報絞るのも消すのも君ら得意でしょ。だから受けたよ。詳しくは店についてから話すから、もう十分か十五分くらいで着くから、待っててよ」
「ええ……。まあ、待っているのはいいですけどね。じゃあ、みんなにもそう伝えちゃっていいのね。ていうか犬山今どこにいんのさ。なんかエンジン音聞こえるけど」
話されたのは確かに仕事の話だったが、夢追は乗り気にならない。
まくし立てられた内容だけでない、きっと語られていない部分があるだろうとまで思えて、嫌な予感しかしないからだ。
そんな感情をストレートに声色に出しながらも、無意識のうちに、彼は滑らかに話をつないでいく。言ったそばから内心では切り上げればよかったと思う。このままうざがらみされでもしたら面倒だ。
「うん、言って待ってて。今ね、タクシー乗ってる。ちゃんと幻聴の魔術も使っているから情報漏洩は気にしなくていいよ」
「もうさ、僕らに待たないって選択取らせる気ないね。分かった分かった。じゃあ今は切るからね。詳しくは着いてからでね。じゃ」
「え、ねえ」
相手に有無を言わさずに、了承を得る気もなく、夢追は素早く通話を強制的に終わらせた。
通話を強制終了してから約十分後に、店の表のドアに手をかける人影がいた。ノブを掴み回して入ってきたのは、おおよそ裏通りの酒類を提供する店へ入る客の姿でなかった。
白くてかわいらしい制服を着た、十代後半くらいのかわいらしい顔立ちに、肩までかかる長い髪の上半分を結い上げている人物だからだ。
だがしかし、営業時間外の来客にもかかわらず、店内にいるスタッフ二人は一様にお辞儀をして迎え入れる。
「いらっしゃいませ。犬山オーナー」
最初に、店長が丁寧にあいさつをしながら中へと招き入れる。
「今宵は誰をご指名になりますか」
魅惑的な笑みで、誘う声で、No1が問いかける。
「神田さんともう一人を……といきたいとこだけど、今夜はまず、仕事の話をしなきゃだね。終わったらお願いね。それと、『ボクが仕事を持ってきたらボイスを徴収する』って、決まりだから、明日台本みんなに送るよ」
今宵の姫は出迎えに満足して、台本を選ぶ楽しみに口元を緩ませるのだった。
「こっわ。何度見てもあの変わり身の早さ怖いんやけど」
「怖……。店長もNo1も怖い……。店長、直前まで乗り気しないなって言ってたのに。神田君もしょうがないなって感じだったのに」
マジックミラーで様子をうかがっていた新人たちの漏らす感想に、事の発端を作ったベルモンドはさらに情報を付け足す。
「ああやって迎えるのが、犬山に仕事の話をさせるときは一番なんだよ」
新人たちは一歩後ろに立つ先輩を振り返った。彼は遠い目をしていた。
「あれがオーナーの出迎え方か」
合図を受け取って裏から出てきたロベルは、開口一番に非常に感情のこもった感想を述べる。
「そうだよ。久しぶりにちゃんと挨拶してもらった気がする。やっぱいいねイケボに迎えてもらうの。毎回欲しい」
とろけそうな満足気な顔をする犬山と、仕事の仮面を被った古参達。
観察するオリバーは思った。彼らは見事な対比になっている、と。
飛ばしても平気な あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ブックマークやいいね、コメントスタンプまで、ありがとうございます。とってもとっても励みになっております。
イケボホストクラブ感をいい加減出したくなってきました。書きたいことを詰め込もうと思います。次回からはもっとガッツリ出したいなと思ってはいます。どうなるかは分かりません。
この物語は、作者が『悪で魅力的な姿』『厄介客を帰したり返したあとの治安の悪い姿』を描いた二次創作を読みたくて、ないなら自分で書いちゃえと思い立って、書いています。
最近は様々な場面の治安の悪い姿を見たいなと思って妄想爆発させています。
みなさまも、読みたい場面があるなら、ご自分で書いちゃいましょう。待っております。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。