第13.5話 暗部の二人の尋問官
第13.5話 暗部の二人の尋問官
いいですか、社長がサイコパスだったりします。(まだ匂わせ程度ですが)
キャプション注意書きは読まれましたか。二次創作です。お名前をお借りして妄想爆発させた二次創作です。
解釈違いも恐れない、なんでも受け入れる方向けです。
使用方法や療法を守って、自衛して、お進みください。
加賀美 サイド
「ホストクラブ?なんのことですか」
思わず口をついた言葉に、剣持が聞き返してきた。
「随分昔に、取引先から聞いたことがありましてね。剣持さんは、客の安全を保障してくれる、絶対に客の情報を漏らさない、なんて店の噂を知りませんか?」
「いやいや、組織のことならともかく、当たり前に酒を出す店の話をされても分かんないって……。僕の担当はカジノですし。夜の店は不破君の管轄だし」
呆れたようにも困ったようにも捉えられる表情を浮かべて、隣に立つ青年は肩をすくめる。この様子では本当に聞いたことがないらしい。噂から、一から説明してもいいが、やや長くなる。それに、と加賀美は事務所にいるだろう仲間の顔を思い浮かべた。あの二人にも共有しておきたい情報だが、前提になる噂を彼らは知っているだろうか。
経済界や社交界、政界を標的にした噂話だ。本業たる夜の街へは要らぬ勧誘や諍いを避けるために流さないだろう。魔の研究者にはなおさら届きそうにもない。
「じゃ、帰り道で聞かせてくださいよ」
加賀美があごに手を当てて考えていると、剣持が声をかけてきた。見た目は年下の先輩へ視線をやれば、彼はもう加賀美に背を向けて扉へと歩き出していた。
「こんなところ、長居は無用でしょう。ほら、階下が騒がしくなってきたし、今は帰りますよ」
重ねる言葉には、異を唱えさせない強さがあった。
「分かりました。行きましょうか」
加賀美は大人しくうなずき、後に続く。部屋は静かに感じるが、剣持が言うならばさっさと退散するに限る。
悪魔は、索敵能力において人狼に敵わないのだから。
「なるほど、そんな噂があったんですか。で、犬山オーナーというのがそこの経営者だと」
「そうです。会社を立ち上げた頃に、取引先から聞きました。あの方の情報はかなり信頼できます。……ま、そこは蛇足です。思いついたきっかけです。
考え付いたのは、不破さんたちのお店へ術者を呼んで、情報を引き出してもらえれば手っ取り早いだろうな、ということです」
納得しさらに考え込む先輩を余所目に、加賀美は今夜これからの予定について思いを馳せる。宵の口は過ぎたが、まだ夜は長い。
「社長、今夜はおひらきにしましょうか。ノートに書かれていたパーティーがどれのことで、術者が誰かは僕が調べておきます。あなたは引き続きホテル経営をお願いしますよ?」
証拠写真を撮った携帯端末を手で振りつつ、剣持は提案する。加賀美が意を唱えるはずもない。自ら引き受けるならば、調べる算段が付いているのだろう。頷いて了承の意を示す。
彼らは軽い挨拶を交わすと、静かに夜の街へと紛れていく。二人が置いてきたビルの中では、大きな混乱が始まっていた。
一人になってから、加賀美は遠くを仰ぎ見る。ほとんど電気を落としたオフィス街で、今宵はひと際明るく、上へ下への大騒ぎをするビルを。
「昔、SMC組で組織を潰しましたっけね。ちょうどこんな風に、三人揃ってビルを見上げて」
かつても似た光景を見たと、勝手に頭が過去の検索を始める。裏の世界で『使われる側』から『使う側』に回ろうと決めてから、初めて一緒に仕事をした仲間たち。加賀美が暗部に入ってからも、あの二人と組んで仕事をする機会がたくさんあった。その内の一件だ。久しぶりに三人で組めて、大変楽しかった。
そして、襲撃の次の工程もまた、愉しかった。
「組織を潰して、ボスと幹部は情報を吐かせましたねぇ……夢追さんと」
そういえば、あれが初めて『尋問官』と『本当の尋問』をした時だった。
彼の手際の良さは鮮烈に覚えている。
『僕の仕事を見て、引かない奴は何人かいたけどね、目を輝かせたのはハヤトが初めてだ』
懐かしい思い出に、加賀美は静かなため息をつく。あの頃から随分と変わった。暗部は己を裏切った二人の尋問官の過去を不問にした。複数人いた裏切り者たちの指名手配を解いたどころか、協力を要請してきた。
身を追われる最大にして唯一の脅威がなくなったから、彼女たちと連絡を取れた。今でも公私を問わずよくしゃべる。
もう、彼の居場所を探してもいい頃だろう。暗部を離れるときは、互いの安全のために連絡先を交換しなかった。生きていれば、会えるだろうから。
「怪しいお客の素性を突き止めて、違法なパーティーはぶち壊して。社会に違法な取引を我々は認めないと大いに示して。それから、ですね。宣伝効果も見込めますし、派手にやるとしますか」
夜空に力強くも鋭く浮かぶ三日月へ、加賀美は不敵に笑ってみせた。
夢追 サイド
一仕事を終えた夢追は、いつものように店へ帰ってきていた。いつもと違うのは、一緒に仕事をした面々がいないことだ。
組織の仕事が終わったらすぐにボスへ報告するのは、だいたいの組織が行っているだろう。報告を電話で済ますか、顔を見て直接声を聞くかは、場合にもよるが。
何時に終わるか分からないのに、ずっと店で犬山を待たせるわけにもいかない。夢追と神田の仕事が終わるのと、ベルモンドの仕事が終わるまでも時間があるため、彼ら二人のうちどちらかが店に帰ってきたときに犬山へ連絡を入れる決まりだ。
今回の仕事は、『ギャングスター』からの依頼だった。麻薬取引を摘発するための人手がほしいから、無理のない範囲で手伝いがほしいと言ってきた。当初は全員参加予定だったのだが、決行日とフィールドワークへ行く予定が被った大学教授には本業を、引っ越し先が予想以上にすんなり決まった新人はプライベートを優先させた。
なお、犬山がオペレーターとして郡道を連れてきたのは、二人の欠員が出たことと関係ない。取引の場所や麻薬流通の大本をたどるための情報収集の時、まとめ役がいればスムーズに事を運べるから、誰かいないかなと議題に上がった。犬山が「ボク、いい人材知っているから連れてくるよ!」と言い切ったのだ。
そうして、夢追と神田は情報を集めた。郡道は『ギャングスター』の構成員や知り合いたちから集まった情報を錯綜させず見事にまとめてくれた。
やるべきことは終わった。犬山への連絡も入れた。あとは、大本を叩いたベルモンドが来るのを待つだけだ。作戦の現場から本拠地へ戻るまでの道のりにお店があるため、簡単に寄れるらしい。
郡道は「明日は朝早いから」といって早々に帰宅、こんなことの後なので、念のためと神田は郡道を彼女の家の近くまで送りに出ている。絶賛フィールドワーク中のオリバーがいるはずもなく、引っ越し作業の最中にいるロベルは、二日前から新居に寝泊まりしている。
今、店には夢追しかいなかった。
遠くに響くけん騒がウソのように静まり返った店内で、カウンター席に腰を下ろす。新品の椅子は、まだクッションが固かった。ほどよくこなれた感触を無意識に予想していただけに、思わず夢追は椅子の背を触る。
「そっか、ロベちゃんが暴れた時に買い替えた椅子か」
他と違う肌触りから呼び覚ました記憶は、ついでとばかりに関連項目を脳内に再生する。暴れる彼を無傷で抑え込むのに苦労したこと。特訓では良い反応を示してきたから、じゃれつくように楽しめたこと。そして、地下室で尋問したときのこと。
地下室の一幕を思い出し、夢追は下へ続く階段を見つめる。
「本当に似ているんだよね、暗部の拷問部屋と」
目を閉じるだけでありありと脳裏に浮かぶ。長年仕事をしてきた部屋。
『暗部』なんて名前をつけられるくらいの場所でありながらも、そこで務める者たちは比較的まともな精神の持ち主が多い。夢追の仕事を目撃して、『仕事』で抑えている程度なのだが、半数は顔を青くした。大半が、普通の場所会っても視線をそらせた。あからさまに避けられるのも珍しくなく、恐怖の目を向けられても、「またか」だった。
親しく話せる距離感まで近づいた相手からも、それは同じだった。避けられる。怖がられる。線を引き、壁を作られる。
夢追も、組織に属するくらいには社会性を持っている。仲間意識も持っている。ただ仕事をこなすだけなのに、余計な傷を増やすだけなのに、なぜ感情を、仲間意識を持っているのだろうと、当時は本気で悩んでいた。
だから、仕事を知り、夢追の『本気の尋問』を見ても、一切態度を変えなかったベルモンドや神田は、稀少で大事な存在だった。暗部を飛び出して犬山と手を組むようになって、まさか二人に再会できるとは思っていなかった。会えて素直にうれしかった。
星川とも指名手配を解かれてから再会したし、郡道とも話ができた。あとは、ただ一人だけ。
『生きていたら、絶対にまた会いましょう』と言って、共に暗部を飛び出した彼だけだ。
あそこで唯一、自分の仕事に目を輝かせた後輩。
ただ一人、夢追が趣味を打ち明けて、理解を示してくれた親友。
「どこにいるんだろうな……ハヤト」
様々な感情の詰まった横顔を、窓から差し込む月明かりが淡く照らしていた。
飛ばしても平気な あとがき
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。また、いいねやブックマーク、感想やスタンプなどもしてくださり、ありがとうございます。毎回本当に励みになっております。
今回、人物背景の深掘りして描きましたがいかがでしたでしょうか。ここまで深掘りしておいてタグを出さないのかと、脳内会議を開きました。恐る恐るつけました。タグを出さなくても、検索で引っかかるかもしれませんが。
供給がないと不穏なネタと展開しか思い浮かばない作者です。やっと開店してもらえて狂喜乱舞です。
お店のネタや、オーナーとキャスト達も書きたい。ネタは不穏なのしか出てこない。そんな日々を送っておりました。
作者、夢追さんに沼った決定打が『ゲームのサイコパス犯人のセリフ読み上げ』でした。加賀追を知ったのは、あの、森で紅葉狩りして遭難しサバイバルするゲームの社長とのコラボでした。(亀に容赦のないパスおの切り抜きから本編を見ました)つまり、そういうことです。
割と本気で、毎回吹き矢が飛んでこないかと不安です。お手柔らかにお願いします。
これを読んで、少しでもお楽しみくだされば、幸いです。