番外編 オーナー兼太客・犬山
番外編 オーナー兼太客・犬山
すべてがフィクションの二次創作です。キャプション注意書きを読み、地雷を避け、自衛して、お読みください。
この日、とあるレストランで二人の若者が仲良く食事をしていた。
一人は真っ赤な服が人目を惹く。また、程よく証明を落としムードを大切にする室内で、そのきれいな金髪は、夜空に輝く一番星のように映えた。
もう一人は青いチャイナドレスを着こなしていて、ほんのりと顔が朱に染まっているのは、相手の美しさに見惚れたか、アルコールを入れて火照っているのか。
「ねえたまき君、今日誘ったのはただお話ししたいだけじゃなくて、ちゃんとした依頼があるからなんだ」
食事を終えて、スタッフが皿を片付ける。食後の団欒を軽く始めようというときに、金髪の美女は本日のメインイベントを開催した。
「うん、ただのデートだったらこんないい雰囲気の場所でご飯食べないもんな星川は。分かってるよ」
いつにない星川の真剣な表情に、事態を察した犬山はため息をついてから気持ちを引き締める。楽しいひと時はここまで、今からは仕事の時間だ。
相手はもう仲良くふざけあえる関係にいる星川サラではなく、国家の秩序を守る諜報員の顔になっている。ならば、こちらもまた国家に協力するマフィア組織のボスらしく対応しなければ失礼だ。
星川は声を少し小さくして、でも周りに見られる顔は自然な笑顔のままで話を始める。
「最近、裏社会では闇オークションが開催されるって噂が出回っているの。たまき君は聞いたことある?」
「いいや、ないよ。ボクのところは『掃除』と『物流』がメインだから、そういう仕入れに関わる話はあんまりこないかな」
勘繰りや探りでなく、素直に犬山は闇オークションについて聞いたことがなかった。暗殺依頼の多い政界の要人たちの動向や同業者の活躍、または抗争についての情報は集めているが、盗品の仕入れと売買を犬山はしないため、その手の話は聞きにいかないし、入ってこない。
犬山の返答を予想していたのか、星川はとくに驚く様子もなく続ける。
「じゃあ、本当に盗品を扱う組織にしか話を流していないのかもしれないな。私たちも情報を掴み切れていないんだけど、どうもきな臭いの」
思わせぶりに間をあける諜報員へ、犬山は身を乗り出して先を聞く。
「なに、星川がそんな風に言うなんてどうしたの」
「……いくら裏社会だからって、国として見逃すわけにはいかな商品が出品されるみたいなんだ」
暗くなった声が、商品の内容を物語っている。
「……国の機密、とか?」
犬山は頭に浮かんだ内容のうち、まだましだと思ったものを挙げた。
「ううん、違うの。それに近いことは他の先輩たちも追っているけど……。今回は、人、人身売買みたい、なんだ」
苦いものを口に含んだように、かわいらしい顔を歪めて星川は話す。考えた商品の候補の中で最も聞きたくなかった単語が登場して、犬山も目の前の彼女と同じような顔をしている自覚はある。
「偶然商品カタログを入手できたの。どれも隠喩で書かれていて、今も解読作業中。でも、読めた一部に、人身売買の証拠が見つかったんだ。気持ち悪いよ」
「星川、顔」
最後の一言に星川の感情が込められていて、この場にふさわしくないと犬山はたしなめた。彼女が商人と 顧客へ向ける感情は理解できるし、犬山も同じ気持ちでいる。だからこそ仕事をするのだ。今ここで表に出して、周りに勘繰られるわけにはいかない。
これは、裏社会の問題なのだから。表の社会に生きる彼らに知られてはならない。
「あ、ごめん。つい出しすぎちゃった。で、商品リストの中で唯一、私たちが把握できた品があるの。大臣の盗品コレクション、かなりのいわくつきの『十色王冠』なんだ」
表情を切り替え、仮面を被りなおして星川は続きを話す。出された商品名に、さすがの犬山も驚いた。
「え、それって数年前にニュースになったあの王冠のこと?どこかの博物館が発掘して、また盗まれて、犯人は捕まらず王冠は見つからず仕舞いだったよね」
「そうそれ。闇ルートで流れて二年前だったかな?くらいから大臣の所有物になったんだ。でも、いわくつきって言われるくらいだからなにかしらあったんだろうね、大臣はただの人間だし、手放すことにしたんだって。で、売る場所がこの闇オークション会場なの」
大臣が売りに出すことを確定で話しているので、そこは情報を掴んでいるのかと犬山は考えた。闇オークションに売りに出される王冠が、大臣の所有する『十色王冠』であると裏付けは取っているらしい。
「あの王冠、たしか古代の王様が血税つぎ込んで作らせたって逸話があったっけ。で、王様は謀反で処刑されちゃったけど、王冠に固執して、死んだ後も自分以外の誰かが被ろうとするどころか触るだけで呪ってくるーって噂だったよね。幽霊なら悪魔か魔術師へ頼りそうなものだし、ボクは思念まで見えないけど、ほんとにそんなささいななにかが残ってたりするのかな。で、なにか起こしてるとか?」
「うん、たまき君よく覚えてるじゃん。星川は先輩たちに教えてもらうまで忘れてた。えーとね、その作らせた王様が悪魔と契約してて、王冠を自分以外の誰かが持った時に発動する呪いをかけてもらっているんだって。昔すぎてもう効力ほどんど残ってないけど、近くにいる人の強欲とか、悪意とかに反応するらしいよ。いわくつきになったのは、偶然じゃなくて必然と自業自得の裏付けありだって。
で、そんな王冠が大臣の所から盗まれちゃったの」
唐突に変わった話の流れについていけず、交渉には慣れているはずのマフィアのボスは「え?」と間抜けな声を上げてしまった。
「だからね、王冠を探し出して、大臣に返してあげてほしいなって。たまき君にしか頼めないの」
ねえいいでしょ、と上目遣いにかわいらしく、目の前の女性は自身の魅力を引き出しながらお願いをしてくる。諜報員としても異性としても、実に攻撃力の高い一撃である。防御力の高い仕事モードで臨んでいなければ、確実に沈んでいた。今も不意打ちで急所に攻撃を当てられて、犬山は軽く了承してしまいそうになったが、だが、かろうじて、どうにか土俵際ギリギリで踏みとどまった状態だ。
この流れで受けてしまっては、一組織のボスとして失格だ。星川の依頼は公私問わず受けたいが、状況や報酬を確かめる前に受注することはできない。受注するならせめて、状況を把握して、仕事を無理なく達成できると確認を取ってからでないと、部下たちに怒られる。過去に何度そうして失敗してきたことか。
「あのね星川、確かめたいことがあるんだ。まず、盗まれたのはいつで、犯人の手がかりはあるのかな」
一方の依頼者は、相手が仕事モードに入って体勢を立てなおすふりをして、内心は依頼を受ける口実がほしいだけだと見抜いていた。
「うん、盗まれたのは一昨日で、大臣の目の前で盗んで逃走したの。で、置手紙があるんだ。これだよ」
そういいながら、星川はカバンの中から一枚のメッセージカードを取り出した。手のひらサイズで薄い紅色の紙の上に、手書きの上品な文字で『用が済んだら返します』と書かれている。
差し出されたカードを受け取りながら、事件が起こった日や用意の良さから導かれる一つの疑念を、犬山は口に出す。
「一昨日って、ボクを誘ってくれた日じゃん。もしかして、事件起きてすぐにボクに押し付けようって決めてた?」
朗らかな笑顔で星川は答えてくる。
「えー、だってたまき君とこ、こういうのも得意じゃん?先輩たちもみんな同じ意見でね、たまき君に探し出してもらおうってなったわけよ」
「信頼はうれしいんだけど……」
「闇オークションが開かれるのはいつかまだ分かんないけど、準備には時間かかるものだし、王冠は目玉商品だし、多少は時間の猶予あると思うよ。で、報酬はいつもの三倍、調査にかかった費用も全額諜報部が負担する。これでどう?」
報酬三倍、三倍かあ……。うちの営業としては受けない手はないな、あんまり儲かっているとも言えないもんね、と、言い訳じみた理由を犬山は心の中で作り、自分を納得させる。
「分かった。引き受けたよ」
マフィアのボスが出した手を、諜報員が握り返す。二人の間で契約が結ばれた瞬間だった。
それから星川をタクシーに乗り込むまで見送り、自分は追加で景気づけの一杯を飲んでから、犬山はレストランを出た。軽くふらつく足で、途中はタクシーも利用して、向かう目的地は自身の経営するホストクラブだ。
夜も昼もにぎわう街の、少し入り組んだ一画に店はある。政界の住人も仕事帰りのOLも、誰もが入店するホストクラブだ。静かな佇まいに店名を掲げる看板はなく、ただドアにopenとcloseを示すのみ。今はもう営業時間を過ぎて閉店したため、扉にはcloseの文字があり、店先の電気は消されている。
そっとドアを開ければ、中では皆がカウンターに仲良く座って雑談していた。オーナーの来訪に、一同そろって頭を下げる。
「ようこそ、犬山たまきオーナー」
種類の違う、全員素敵なイケボで迎えられて、勝手に口角が上がってくる。
「みんなお疲れ様。あれ、今日は夢追君がまかない担当なの?」
顔を見渡せば一人足りないし、奥からはいい匂いがする。ちゃんとディナーは済ませてきたのだが、それでも食べてみたいと思うくらいに魅力的だ。
「犬山、さっさと手伝って。みんなのご飯持ってってあげて。ほらほらはやく」
質問の答えがそれか、と犬山は嬉しいような残念なような気持ちになる。初手からこの扱いはいつものことで、これはコレで好みだが、やはり最初はちゃんとイケボの挨拶を聞かせてほしい。呼ばれた当人はむくれた顔をしながら厨房へとふらつきつつも歩いていく。
「もう夢追君、まずは挨拶してよ。ちゃんとさ、ようこそ、か、ご指名ありがとうございますって言ってよね」
厨房へ入ると、大きなフライパンを一杯にして青椒肉絲を炒める夢追がいた。もう料理が完成したようで、彼は調理場に置いている二枚の皿へ盛り付けているところだった。
ちらと犬山を見て、夢追は言葉を返す。彼は絶対に、文句を言うオーナーをオーナーと思っていない。
「言ってほしかったらまず働けお前は。足音で分かるんだよ酒入れてきてるだろ」
教育ママか、と心の中でツッコミを入れて、犬山は言われた通りに茶碗を準備し箸も出し、部下たちのご飯の準備を進めていく。彼らがキャストとして働いている間、自分は遊んでディナーを楽しみ、少しだけ仕事をして、さらに酒を追加で飲んだ。しっかり働いてくれている部下へ労いの労働をボスがするのは当然だ。
犬山は大きなお盆に人数分のご飯と箸を乗せると、カウンターの横にある出入口からホールへ出る。その後ろを小分け用の皿と、二つの大皿に分けられたもやし入り青椒肉絲を器用に持って夢追が歩く。待っていたキャストたちは順に自分の分を受け取って、犬山も夢追も配膳してそのまま自分の定位置に座った。
口々にいただきますと言って、彼らはまかないを堪能する。店長も当たり前に箸を持つが、その前に彼にはやってもらうことがある。
「ほら、夢追、ちゃんと働いたから言ってよ」
つんと澄ました顔をしてオーナーは要求する。雇われた身である店長はまずため息をついて、次に咳払いをして準備を整えた。最初になんだかんだと言ってくるが、対価を払った時、彼は全力のサービス付きで応えてくれる。すぐに冷たい態度を取ってくるが、優しくて真面目な部分もちゃんとあるなと、犬山はいつも感じている。
その分、仕事中やもう一面の表情との落差が際立つともいえるのだが。
「ようこそいらっしゃいませ、犬山たまき様」
特別な客を迎え入れるときのボイスを聴けて、興奮してぞくぞくする。ただイケボで言うんじゃない。この感情の込め方が、表情が、シチュエーションへの落とし込みが素晴らしい。夢追は求めている以上のクオリティをたたき出してくるから、神田やベルモンドとはまた違うおねだりをついついしてしまう。新人のオリバーとロベルはこれまで演技の経験があまりないと言っていたが、十分すぎるほどにリクエストに応えてくれる。今後が非常に楽しみだ。どんな台本を書こうか。読むときにはどんなアレンジを加えてくれるだろうか。
うっとりと余韻にひたり、ボイスについて妄想していたら、「たまきさん、食べないんですか」と隣の神田から声をかけられ、我に返った。
少し味わう程度ではあるが、犬山もまかないを食べる。夢追の料理はほぼ毎回もやしを入れていて、かさ増しするのオカンかよといつも思う。でも、毎回おいしいからただ「おいしい」しか言わない。もやしばかりで他の食材が全然ない、とか、そんな悲しいことはない。ちゃんと他の野菜もたっぷり入っているのだから。
左右を見れば、どの子もおいしそうにしっかり食べている。とくに私生活でご飯を全然食べていないロベルが、たっぷりと食べる姿を見ると安心する。食べないで平気な顔をしているのは、ダイエットを繰り返す身としてうらやましくもあり嫉妬心を呼び起こしもするが、今はその点に触れないでおこう。
全員が食べ終えると、本日のまかない担当が「犬山が皿の片付けまでして」と容赦なく言ってきた。まかない当番が誰であれ言われてきて、犬山としても半分は受け入れてきている。だが、その心は表に出さないで抵抗を試みる。
なぜかって?罵倒してもらえるチャンスだから。それ以外に必要な理由はない。
「えー、ボクはオーナーなんだよ夢追君。なんで毎回ボクがさせられるのさ」
「……なに。文句あるの」
普段より低くなった声とかしびれるし見下す視線もたまらないこのまま神田さんにも冷たくされて腹パンされたらもう最高なのに。
そんな思考が一気に駆け巡り、犬山の喉から声にならない声が漏れた。隣に座る神田も聞こえたのだろう、もしかしたら、横顔ではあるが犬山の表情で察したのかもしれない。オーナー兼太客犬山たまきに、No1ホスト神田はサービスしてきてくれた。
「たまきさん」
いつもと違う声で呼ばれて、視線を感じて隣を見れば、なんとも冷ややかな目をして神田は犬山を見詰めていた。言葉を使われるよりも効果的で、思わず「メス」が出そうになり口元を押さえた。
満足したので、皿を集めて洗い場へと運んでいく。途中、ボスとしての威厳だとか、これでただ従順になっていたら次の機会に冷たい対応してもらえない、雑な対応されたりしないか、と余計な事かもしれないがそんなことが頭をよぎった。だから、「オニー、アクマー」と、ささやかな抵抗の心を示しておく。
まだ折れていないと分かれば、きっと痛めつけてくれるだろう。それに、弱ったところから立ち上がる姿を見るのが、あのイケボ袖な……いやいや、あの店長は好きだから。こうやってアピールしておこう。
犬山は皿の汚れを落として、もう後は泡を水で流すだけになってくると、毎回耳を澄ませてカウンターの会話を聞く。彼らの声はよく通る、集中さえしていれば、水の音にもかき消されない。
「分かる。仕事しているときとここに来た時の落差すごいですよねたまきさん」
どんな流れか分からないが、オリバーの声が聞こえた。なにやら自分が話題に上がっているようだ。
「犬山って、あいつマルチタスクで同時に三つくらい作業できるし、そこまでの作業量抱えていながらまだ『暇だ』とか言っちゃえるのよね。忙しいの感覚バグって心配だけど、どの仕事も真面目にきっちりこなしてくのは偉いよ。仕事以外はアレだけど」
「細かいところにまで気が付くし、連絡送った時の返事はすごい早いし、仕事をする上では見習うところとってもあるんですよ。ただな、たまきさんって仕事に入る前にオタクの視線で感想言ってくるのが少し……ってのはありますけどね」
「神田君に対しては特にあいつ甘いからな。でも仕事モードに切り替わればきっちり決めてくれるし、頼りになるんだよな」
古参の部下たちがなぜだか分からないが口々に自分を褒めてきて、犬山はなんとも言えない気持ちになる。勝手に顔に血が上る。
聞きながら大急ぎで皿をゆすぐ。これ以上言われてはたまったものじゃないと、止めに入る。
「ちょっとーー!君たちの声良く通るって自覚ある?全部聞こえているし、そんな褒めないでよほどほどにけなされるくらいが気持ちよかったりするのにさぁ」
洗い場から抗議の声を飛ばせば、カウンターからは苦笑する声が返ってきた。話しの流れを変えなければと、犬山はここに来た本来の目的を出す。同時に、最後の一枚を乾かす台の上に置いた。
「今日は依頼があったんだよ。だから来たってのに、なんで洗い物をボクに先にさせるかな夢追は」
口を動かしながら、袖を止めていた洗濯ばさみを取りつつ犬山は戻る。カウンターの席には座らない。あえてスタッフの立つ内側に行く。キャスト達、いや、部下達と顔を合わせるためだ。
「そりゃ、依頼があるからって知らせを寄越したくせに、ボスがお酒なんか飲んでくるからに決まってすよ。食べて動いて、いい感じに酔いもさめたでしょう?」
ふざけながらもオーナーと店長ではなく、マフィアのボスと部下として夢追は発言してくる。意地の悪い笑みを浮かべながら、仕事モードに切り替えていけと示してきた。
それぞれの顔を見てみれば、神田とベルモンドはもう仕事をしようかと雰囲気を引き締めている。端に座るオリバーは先輩達の空気を読み取って背筋を正したが、そんな彼の隣にいるロベルは、無言でいるが表情は雄弁に「店長怖い」と言っている。
いつだったか、店長が新人に圧をかけていた。そのとき店長は「一周回れば楽しいよ」とか言っていて、オリバーは「もう少しかかるかなぁ」と呟いていたと、犬山は思い出す。大学教授という表の顔も持ちながら、自身の食事と研究費のために裏社会へ足を踏み入れた彼は、もう少しで「一周回った」と言えるだろう。肝の据わった新人だし、今後が楽しみだ。どんな交渉の仕方をし、どんな風に相手を『説得』していくだろうか。
一方のロベルは、入った時から分かっていたが、ポーカーフェイスができない新人だ。これはこれで長所であり使い道がある。ボスとしては無理に技術を覚えさせるつもりもない。しかし、本人の危機管理という視点から見ればハンデになるだろう。まさに今のように。
「なにロベちゃん、なにか言いたそうね。何かしら」
店長は新人研修と言わんばかりに、口調はお姉さま風にまろやかにして、目つきで鋭いナイフをロベルへ突きつける。
「イエ、ナンデモナイデス」
「まあまあ、前座はそんくらいにして、本題にはいらせてもらおうや。犬山ボス、依頼ってのは、どんな内容なんだい」
軽く怯えるロベルの反応を見て、このくらいにしようとベルモンドが止めに入る。新人を庇うところもまた包容力、ママみを感じるなと、犬山は心の中でにんまりする。
だがそんな気持ちを表に出していては、話が先へ進まない。犬山も重々しくうなずいて、雰囲気を整える。
仕事の時間だ。全員の顔付きが変化した。裏社会の住人の顔だ。
「じゃあ、話させてもらおうかな」