第十四話 特別なアフター
第十四話 特別なアフター
キャプション注意書き、読んでもらえましたか。
二次創作です。完全に妄想で構築されていて、お名前を借りたご本人様と関係ありません。
なんでも受け入れる方向けですので、あしからず。
「なあオリバーさんや。ちょっと聞きたいことあんねんけど、ええか?」
『ギャングスター』から依頼された麻薬取引の締め上げが終わった翌日、キャストとして店へ出勤したオリバーへ、ともに本日のキャストであるロベルはそう切り出した。
「はい?なんですか」
オリバーは手に持っていた布巾を絞ってシンクの横にそっと置いてから、ロベルに向き合う。開店前の掃除や、おつまみとお冷の下ごしらえはもう終わった。開店までの少しの間、雑談するくらいのゆとりはある。
「あのな、一月くらい前かな、お店へ急襲しかけてきた奴らのことや。あの二日後から俺の魔力を使いこなす特訓が始まったやんか。そんとき夢ちゃん『お店は仕掛けてきた依頼者と実行元を叩くまで休みにする』っていうとったけど、依頼者ってつまりお客さんの事やろ?」
ロベルは先にカウンター席に腰かけて、膝に肘を置いて前かがみになって聞いてきた。隣に座りオリバーは答える。
「そうですね。ロベルさんが魔力を暴走させた次の日、丸一日使って夢追さんが情報を捕まえた奴らから搾り取っていましたし。僕らが店の片付けしている間にも、裏取りを進めていたらしいですよ。
……まったく、さっさと相談してくれたら、大変な店の片付けの半分はせずに済んだのに」
もう少し信頼してほしかった。暴走させる前に。だが、三か月で抱えた秘密を話せと言うのも無理があるか。そんな色々と複雑な感情を少し茶化して滲ませる。
「ごめんて」
ロベルは顔の前で手を合わせて、軽く頭を下げて見せた。苦い笑い、もしくは困り笑いと表現できそうな顔をむけてこられて、オリバーも軽くため息をついて追及するのをやめる。もとから軽く釘を刺しておきたかっただけだ。深く掘り下げるつもりはない。ロベルも逸れた話を戻して、続きを話す。
「もうお客の締め上げ、したんやろ?お店を開けたってことは」
世間話でもする軽さで、ロベルは聞く。
「ええ、しましたよ。僕と、もう一人は神田が」
だからオリバーも、世間話でもするように返す。
「この際やから聞きたくてな。教えてくれへんか?」
彼らにとって逆らってきた客だった敵など、敵の処理など、その程度の軽い仕事なのだから。
オリバーも結果報告を夢追に上げてから、他の誰かに話していなかった。すぐあとで襲ってきた組織を叩きに行ったせいで、すっかり忘れていたのだ。
「ロベルさんが、めあさんのターゲットの元へ潜入している間に終わらせたんですよ」
そうだ、あの時は神楽が依頼してきたターゲットを、自分たちの襲いたい組織へ秘密裏に向かわせて、襲撃したのだった。
全部合わせて一気に終わらせてしまおうと、面白い策を思いついたものだ。下ごしらえのためにロベルがターゲットの元へ、夢追が組織の元へ潜入していた。
さっさと終わるでしょ、なんて店長から仕事を振られた時のことを、オリバーは脳裏に思い浮かべた。
*** ***
「オリバー、ちょっといい?一仕事頼みたいんだけど」
オリバーが夢追から連絡を受け取ったのは、ロベルの特訓七日目、つまり最終日の午前中だった。この日の特訓の先生役は夢追で、翌日一日は休んで明後日からロベルと夢追は目標の組織へ潜入しに行く予定だ。特訓へ行く前に仕事の割り振り、さすが店長に抜擢されるくらいだからよく働くな、なんて考えながらオリバーは指定された場所へ足を向ける。
仕事の話は、概要までなら他の連絡手段を用いて伝えることはある。しかし、本題や詳しい内容は必ず対面して伝えるのが、裏社会の常識だ。
いかに小さな仕事でも、犯罪の片棒を担ぐのならば、先を歩く相手の顔は拝んでおくべきだろう。もっとも、信頼関係を築きあげたマフィア仲間の場合は確認重視だ。仲間を偽った誰かでなく、本人だと確かめるための。
待ち合い場所は、オリバーの所属する大学から徒歩数分の立地にある公共図書館だった。
図書館の玄関ホールに立っていた店長は、当たり前ではあるのだが普段着だった。秋に相応しい七分袖のパーカーに、赤地に白の縦ラインをいれたスラックス姿。華やかなスーツ姿を見慣れているので、オリバーには逆に新鮮だった。
オリバーの姿を認めてから、自然に夢追は歩き出した。まるで、待ち合せなんてしていないかのように、一人で。
オリバーも静かに、何も言わず夢追の後をついていく。平日で利用客の少ない時間帯であるが、その中でも人っ子一人いないエリアへと歩いていく。
四人掛けのテーブルに着くと、夢追は道中見繕っていた分厚い本を数冊机に置き、一冊はページを開く。
向かいにオリバーが座ってから、やっと夢追は顔を合わせた。適当な資料を選んで、調べものをしている学生と教授――そんな風に、傍から見る人がいたら思っただろう。
「急に呼び出したりして、ごめんね」
「大丈夫ですよ。それで、仕事の内容は?」
培われた技術は本物で、何年たっても色あせることがないらしい。店に乗り込んできた奴らから得た情報を元に、すでに夢追と神田は標的を割り出していた。いや、他の基準がないため、オリバーはこれが早いのか遅いのか、はたまた標準なのか判断できないのだが。
「こいつらが、依頼を出したお馬鹿さんだよ」
そう言って夢追がオリバーへ差し出した写真に写る人物は、夏が過ぎると同時に姿を消した客だった。
「ふむ。僕が恋愛に一切興味ないよって伝えてあげたら、壊しにきましたか。行動力は評価してあげてもいいですね」
口にした内容は誉め言葉になり得るのだが、話す声はとても冷たい。
「細かな項目は、裏に書いて置いた。一週間以内には終わらせてほしい」
薄ら笑いを浮かべて頬杖をつきながら店長は聞いてくる。オリバーも懐へ写真を仕舞いながら、不敵な笑みで返事をする。
「分かりました。……ところで店長、今月こそはちゃんと現金を払っていただけますか?」
「それは、新人たちの働き次第……かな?」
二人の間で、目には見えない火花が散った。
*** ***
「ったくもう。なんでなの。なんでまだ連絡がこないの」
「遅くなりました。代わりに僕が直々に報告にきましたよ?」
「ヒッ」
「なんでそんな顔をするんですか?せっかくかわいらしい顔をしているのに、台無しですよ?」
「なんで……なんであなたがここにいるのよ。なんで生きているのよ。あいつらはどうし……いえ、まさか、まさか」
「ああ、あの三流ですか?技能は拙かったですが、素材の味はよく、まあ及第点でしたよ。ごちそうさまでした。今回は、ご馳走を届けてくださったお客様にお礼をしに来ました。普段はしない、特別なアフターですよ」
「待って。違うの。私じゃないの。上司に通うのはやめろって止められて。馴染みの組織に相談したら、軽いお礼参りをしてくるって。行ってきたぞって連絡がないって待っていたのよ。わざわざアフターなんて、オリバーさんはやっぱり良い方ね」
「ふふ。声が震えていますよ?無理しなくていいんです。全部分かっていますから。ね。だから、大人しくしてくださいね?」
――騒ぐなら、余計に壊さなきゃいけないので。
*** ***
「……ていう感じで、『丁寧に』おもてなしをしてきました」
柔らかな笑みで話をまとめた大学教授に、ロベルはなにか言おうと口を開いた。
「君たち、準備はできた?」
だが、今夜の責任者であるオーナーが顔を覗かせて、彼らの雑談は中断された。
「できてますよ。あとはopenの看板を出すだけです」
開店前の打ち合わせをしながら、ちらとロベルは隣に立つオリバーへ目をやった。
――やっぱり、おいしくないんですよね。細い人間の女性って。
仕事の感想で最後に付け足した言葉が、彼もまた人外……吸血鬼だったと思い出させた。
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(そろそろ残忍なのとかほしいな……。他の人にほのぼのは任せて、思いっきりやっちゃいたいな)