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設定資料集 / いかにしてオーナーはイケボ達を誘ったか

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設定資料集 / いかにしてオーナーはイケボ達を誘ったか

こちらは、二次創作です。フィクションです。現時点で出せる設定をまとめた資料集となっております。

先にコレを読んでから本編を読むも良し。本編を読み切ってから資料集を読むも良し。

解釈違いを恐れない猛者向けです。

お店の面々の分だけまとめました。他の登場人物の分は、いつの日にか出せる……かもしれない。

犬山 たまき

いわずと知れた『イケボホストクラブ』のオーナー。自分の仕事も持っているため、お店には週2か週3で顔を出す。偶然と犬山のアイデアとイケボを聞きながらお酒を飲みたい気持ちからお店は開店するに至った。

お店で働くキャスト達は、全員犬山が直々に勧誘した。厳選したイケボ達。好き。最高。

声と顔だけで採用はしていない。ちゃんと能力も考慮している。

自分の仕事は、主に情報取引と人の紹介。知り合いから「○○を消してほしい」とか「情報を絞ってほしい、当人にはもちろん、関係者にもどこで盗まれたか分からないように頼む」という依頼を受けた時には、イケボホストクラブの面々に持っていく。

時々、犬山は太客として普通にお店に行く。月に一度か二度くらいの割合で、イケボたちにセリフ読みをしてもらったり話を聞いてもらったりしながら、お酒を飲む。事前に一報入れているから、ちゃんとオーナーでなく客として迎えて、しっかりきっちり接客してくれる。

毎回予算オーバーするくらいの豪遊をしている。だけど、楽しいからね、しょうがないね。

酒を飲んでイケボに接客してもらっているときからは想像できないかもしれないが、相当な切れ者。さもなければ、キャスト達は犬山がもってくる危ない仕事を受けたりしない。

組織の代表だから『ボス』の立ち位置にいるだけで、雇用する側とされる側の関係だとも思っている。仲のいい男たちくらいのノリでもいる。

おそらく人間じゃない。正体不明。あと、魔術師だけど、戦闘はみんなに任せている。戦闘ができなくはない。けどね、得意じゃないからね。

夢追 翔

最初は、お店の売り上げ計算や在庫把握の棚卸、発注などを犬山と分担していた。だが気づいた時には夢追が主導で業務をこなしていて、シフトを組んで、いつのまにか店長になっていた。

第一話の時点で、お店で働きだして三年ほど。犬山と組みだしてから数えたら四年半くらい。

彼を紹介するなら、

話せばイケボ、黙れば美人、仕事をすればサイコパス。

もしくは

おしゃべりイケボお兄さんで時々世話焼きなオネエさんになる店のツッコミ役その一。(その二は夕刻ロベル)

このどちらかだろうと、お店の仲間たちは話す。

夢追は場のまとめ役。いじられるけど、頼りにされてもいる。あとは、犬山のブレーキ役になってくれている。たまにブレーキ壊してアクセル全開にしてくる。

犬山と仕事をする前は、国の裏組織、暗部の情報部門・最高尋問官をやっていた。情報を吐かせる技術で右に出る者はいない。その他の仕事もできる男で、部門の中でかなり権威のある地位にいた。

暗部にいるとき、ある組織を潰した。潰す作戦を立てているときに、情報を持ち込んできたのは、金髪の青年だった。仕事を終えてから、帰属を強制する場所もしがらみも無くなり、目標を得た彼を暗部に誘った。彼とは、暗部では会ったら話す程度の仲だった。まさか、暗部を抜け出した後、犬山のところで再会して、レイドボス戦を一緒にするなんて思ってもみなかった。

休みの日には音楽を作っている。歌がめちゃくちゃ上手い。

得意料理はパスタ。他にも色々と作ってくれる。高確率でもやしを入れてくる。

夢追も人間じゃない。人狼。耳と鼻がとても良いため、索敵に長けた種族。代わりに、血の匂いに過敏に反応する。興奮して理性が利かないと、本気で獲物を仕留めにかかる。

神田 笑一

言わずと知れたお店のNo.1であり、オーナーは彼に甘い。

第一話時点で、お店で働くようになってからなら三年ほど。犬山と仕事をするようになってから数えたら四年くらい。

物心ついたときから、裏社会で名の知れた一大組織にいた。幼いころは雑用をしていたが、大きくなるにつれて仕事は危険を含むものに変わっていった。

大きな事件が起きて、組織は潰れた。ボスは飼い慣らしたと思っていた悪魔に首を噛みちぎられた。数人の幹部は、受けるべき報復から逃げおおせた。

組織がなくなってから、誘いを受けて神田は暗部へ入った。ここなら、逃がした獲物を探すのにちょうどいいと思ったから。回って来た仕事をこなしている限りは、協力者として良き関係を築けると思った。

暗部でやっとまともな対人関係の構築ができたと思っていた。最高尋問官の『本気の仕事』を目撃して、手腕に感心はすれども動揺はしなかった。だから、他の職員たちが『本気の仕事』を見て怯えたり、彼のことを避けるのが信じられなかった。職員たちだって随分と残酷なことをしているのに。

プライベートな対人関係を持ったのは初めてだっただけに、職員たちの手のひら返しにはショックを受けた。

暗部で改革が起きて、一番変化を求められたのが情報部の尋問官たちだったなら、その次に被害を被った部署が神田の所属する諜報部だった。

今まではぎりぎりバランスを保って活動できていた諜報部の職員たちを、新しく入って来た部長は駒のように扱った。自由を認めず規律と理不尽で縛った。

最初の数か月は、うるさくやり方を決めて従わせてきただけだったので、彼らはなんとか耐えていた。

だが、尋問官の二人が失踪し、暗部のトップが殺されてから、風向きは変わった。

部長は職員を『自我と意思を持った対等な相手』として接しなくなった。『自分が操る駒』だと思って命令を下した。

そして、諜報部から一人失踪し、部長は報復を受けた。

暗部から離れるとき、心配だったのは郡道だった。彼女がいる事務は『改悪』のあおりを食らっていないと言っていたから、扱いがひどくなることはないだろう。だが、彼女のことだ。あんな事件が起きた上に神田が何も言わずに消えたら連絡を取ろうとしてくるだろう。嫌疑のかからないように、心配させないように。神田はこっそりと、一通の手紙を出していった。

彼は悪魔だ。悪魔とは『共通の祖先を持ち、魔力を使用するときに頭から角が生える』種族を指すため、一括りにできないほど個別の様々な特徴を持っている。

神田は影の中を移動できる。ただし、移動できる時間に限りがある。

ベルモンド・バンデラス

しびれる程に素敵な超低音ボイスのお方。見た目はいかついけど、話したら分かる。

第一話時点、お店で働くようになってからは二年くらい経過している。

雇用主である犬山からしても謎が多くて、開示されている情報が最も少ない。街で一二を争う巨大組織『ギャングスター』のNo2で、ボスに次ぐ位置に立っている幹部。なぜそんな大物が犬山の誘いにのってイケボホストクラブの一員になったのか。当時の事情を知らない新人たちは不思議に思っている。

ベルモンドの来歴を知る者は、本人以外いない。本人も語らないが、何百年も昔のことを昨日のように話す。

お店では穏やかな顔をしているが、本業であるギャングスターの組織では厳しくて渋い顔を見せる。どちらでも仲間や部下を思いやる優しさがにじみ、年下からの支持も厚い。

彼もまた人外、夢魔である。夢の世界へ自由に行き来できるし、夢の世界でbarを開いて、夢を見ている他者を招くことができる。

オリバー・エバンス

第一話のとき、お店に入って四か月になるかならないかくらい。可愛がられる新人。

オリバーは、お店がある街とは違う都市で大学教授をしながら、研究費を稼ぐためと食事のために裏社会の仕事を請け負っていた。なぜ地元で裏社会の仕事を受けないのか。理由は簡単で、地元の治安が終わっているから。逆に受けにくいし探しにくい。依頼主がちゃんと報酬を払ってくれないケースも多かったため、裏社会であっても秩序がある街まで足を伸ばしている。気軽に行き来できる距離である。

また、大半の人外がそうであるように、オリバーもまた自分が人外であることは隠している。実際、吸血鬼が本能を垣間見せれば、人間の生存本能は捕食者を感知して恐れるのだ。生き物の防衛反応だから仕方ないが、同じ社会で共存したい相手から壁を作られてはたまらない。人外への偏見を持つ人間もいるため、同じ人間のフリをして馴染んでいる。

食事と裏社会の仕事が結びつく理由は、オリバーの好みと吸血鬼たちの悩みの二つがある。

彼の好みは生命力豊かな人間。外見の特徴としては、筋骨隆々な成人だ。生き延びる意思が強いのであり、欲深いのとは違う。表で探すよりも裏で探した方が早い。また、仕事内容が敵組織の襲撃を迎え撃つ、だったり、襲われないように守ってくれ、だったりする。要は、獲物がこちらに寄って来るし、獲物にしてしまって構わないのだ。

街へ出るようになって、裏社会で評判の良いbarを巡っていた時期があった。ここでベルモンドと知り合いになり、以降長い付き合いになっていく。彼らの仲はマスターと客より、頼れる先輩とかわいい後輩と呼べる。この街についてさらに深く教えてくれた。

犬山と知り合ったのは、街で依頼人と会い仕事内容を聞いたときだった。依頼人についてきた。ボディーガード代わりになるくらいに腕の立つ魔術師だし、この街で仕事を探すならコイツと知り合っておいて損はない。依頼人は犬山をそう紹介した。

犬山から勧誘を受ける少し前に、大学から転勤できないかと打診があった。第二キャンバスを設立するにあたって、向こうで講義する教授がいてほしい。移ってくれるのならば、もう少し広い研究室と研究予算の増額を約束する。あと引っ越し手当も十二分に出す。そう言われて断る理由はなかった。場所も、裏社会の仕事を受けている街で、ここにいるよりも交通の便が良くなり、好都合だった。

夕刻ロベル

なんやかや大事にされている新人。芸人枠でもある。

第一話の時点で、お店に入って三か月を過ぎたくらい。

電車を乗り継いて少し離れた町に住んでいた。そこでは裏社会とつながりを持たざるを得なかった。スプラッター映画よりひどい光景を体験してきてはいるが、基本は小競り合い程度の争いにしか参加していないし、そんな程度の争いしか起こらない場所だった。お店のある街よりは平和な場所だった。

『ロベルの事情』で犬山に伝えたように、禁忌の術の実験体にされた結果、魔力を持たされて、体に異変が起きた。魔力を『異物』として考えていたため、使いこなすなんて考えていなかった。元の体に戻るため、単身で魔術師の後を追いかけてこの街に来た。今もお店で働きながら、魔術師に関係する情報を探している。

裏社会では人外が人間のフリをしていない。だから自己紹介のとき、お店の先輩達が人外だとは聞いている。たいして気にしていなかったけど、戦闘時に捕食者の顔を見ると、慣れない頃はどうしても身構えていた。今はもう慣れた。

犬山が裏社会で名乗りを上げた当時は、仕事人と依頼者を引き合わせるブローカー業を生業にしていた。その当時から暗部にいた夢追、郡道と知り合い。

暗部できな臭い改革が起こり、定期的に仕事を依頼したり(イケボを聞かせてもらいたくて)雑談したりの電話をかけていた夢追と音信不通になる。気になって事件のあらましを調べ上げようと動いたら、暗部のお偉いさんたちから圧力をかけられた。圧力なんかに屈したりせず犬山はこっそりと調べた。結果、暗部の闇と失策を知った。

裏社会全体が危うい空気に覆われていた。国として他国と緊張が高まっていて、裏でも海外製の依存度と危険性が高すぎる麻薬が出回っていた。麻薬の出どころは海外の組織で、国内の組織が反発していた。

調べている最中に、郡道から会わせたい人がいるから、時間いつがいい?と誘いが来る。誰かなと待ち合わせにいけば、イケメンイケボのお兄さんがいた。

これが、神田と初めて会った時だった。

熱烈なお礼メールを後で郡道に送った。

仕事も危険な依頼が増えて疲れが溜まっていた犬山へ、朗報が届く。

『重厚な低音ボイスのマスターが経営するbarがある。ちょっと狭い路地にあって、とても落ち着いた雰囲気だ。だいたい毎日営業しているから、気が向いたら行くといい』

もちろん飛びついた。もちろん。

「そこにいたのが、しびれる程の重低音と190を超える身長、鳩胸で包容力のあるベルさん。ベルモンド・バンデラスさんだったんだよ。話すうちに分かったね、ボクが探していたママみを持ったお方だと」

このバーのマスターが、裏社会で五本の指に入る大組織『ギャングスター』の一員だと知るのは、もう少しだけ先になる。知ったからこそ、イケボホストクラブへ勧誘する口実を得た。

神田と会って少したくらいから、裏社会の知り合い(モブ)からある話を聞く。

「新顔がいるの。拷問を代わりに請け負う、相手を捕らえていて、生死を問わないなら、知っている情報をすべて吐き出させるって豪語する奴が。試しで雇った組織から感想を聞いたら、腕はたしかだって。ただ、見た目は白くて細くて、もやしみたいって言ってたよ。あと、犬山にとって大事な情報。良い声しているイケメンだって」

もしかして、あいつか?違っていても、仕事の人脈形成になるためぜひ会いたい。犬山は知り合いから連絡方法を聞きだして、早速接触を図った。待ち合わせ場所にいたのは、暗部から消えたイケボ、夢追だった。

夢追と組んで仕事を始めて、数か月。神田から連絡があった。内容は、『暗部を強引に抜けて、暗部から身を隠しながらフリーランスで生きていくつもりです。なにかしら仕事の依頼がありましたら、一報ください』

連絡を受け取った時には、犬山も暗部で行われた改革を知っている。調べ上げた。何が起こったかおおよその予想がついた。

文面を読んだとき、犬山は閃いた。仕事を持ち込むよりも、いっそのこと、一緒に仕事をする仲間に引き込んでしまおう。

なぜここまで勢いが出たのか、犬山自身も分からない。もう勢いで神田とコンタクトを取った。夢追もいるから、暗部を敵に回すのは構わないの。神田さんの条件聞かせて。きっと飲めるから。そう言ってぐいぐい迫ったことと、神田が最初は押され気味だったことは覚えている。

後々聞くと、「たまきさんが勢いよく迫ってこられて、びっくりしました。『ボクのとこで働かない?条件良いよ!』ですよ開口一番に。驚くなってほうがムリでしょう」とのことだった。

ちゃんと条件の交渉をして、互いに合意できた。だから、神田は犬山の元で働いている。

夢追と神田が来たころ、犬山は情報を盗んだり売ったりする仕事を二人に頼んでいた。依頼で、「ある要職に就いている者から情報を盗んでほしい。ただし、情報を盗まれたと自覚を持たせないこと」などという難題を受けてしまう。

困った犬山は、ターゲットを酒類提供店でイケボ二人の接待を受けながら酒を飲ませて、ぽろりと話させることにする。

作戦はうまくいった。きっと、夢追と神田にとっては、上手くいって少し複雑だっただろう。

情報収集を夢追と神田にさせていて、近くの席で見守っていた犬山は、接待する二人を見て思いついた。否、思った。

「ボクもお酒に気持ちよく酔いながら、あのイケボたちに介抱してもらいたい」

「彼らが酒を提供する店の店員で、接待していたら、客は勝手に情報をこぼしてくれそうだからさ、お店やろうと思うの」と二人を強引に説得する。お店を開くための手筈は自分が済ませていく。経営も想定していたよりずっとうまくいく。やっぱり、店員がイケボでイケメンだからね。

そして、裏社会でも表の社会でも歴史に残る一連の事件が始まる。

事件の中心で活躍した『ギャングスター』と暗部。各々がそれなりに被害を被った。この事件で数々のbarが襲撃され、壊れてしまった。ベルモンドの現実社会に出していたお店もその内の一つ。情報収集の場であったbarを続けられなくなったベルモンドへ、犬山オーナーは利害の一致を熱弁して、お店で働いてもらう契約を結ぶ。やったね。

また、暗部は裏社会へ指名手配をしていたりするのだが、リストの一部を改訂、訂正する。夢追、加賀美、神田の指名手配を解除した。他にも指名手配をしていた者がいて、全員解除した。

暗部は解除を大々的に裏社会へ喧伝した。理由は、解除した彼らに協力を仰ぐため。

偽りでなく、本当に解除して協力を持ち掛けるつもりだと確認して、夢追と神田は暗部から隠れるのをやめた。また、暗部から犬山へ接触があった。二人を部下に持っているならば、暗部の仕事を請け負わないか、と。

当人たちへ確認すると、悪い顔をしていた。「考えさせて」って言って、二人でしばらく話していた。

答えはOKでした。

暗部のごたつきも解消され、やっと裏社会が落ち着いた。各所にあった惨劇の爪痕も直されたころだった。情報を買いに来る客が増えて、ホストクラブは軌道に乗り、今の場所からもう少し大きな物件へと移りたい、新しいイケボはいないか探していた犬山は、耳よりな情報を手に入れる。

少し離れた都市から移って来た吸血鬼がいて、人手不足な組織の手伝いをして稼いでいる。見た目は物腰柔らかく、高身長でいい声をした男らしい。

話を持ち掛けてきたモブは、彼に仕事を依頼するため数日後に会う約束を取り付けた。一緒に行って人脈を作るか?と誘ってくれた。二つ返事で犬山は承諾した。

オリバー教授との初顔合わせであった。

モブに仕事の腕を聞けば、評判は上々。さらに、金に困って裏社会の仕事を受けているらしいよ、と情報ももらう。

そこから、犬山の行動は早かった。オリバーに再び連絡を取り、自分の元で働かないかと誘った。「日給100万出すよ。どう?」「行きます」

実際はもっと少なかった。しかし、個人で仕事を請け負っているとどうしても収入や機会が不定期で安定しなかったが、今は定期収入と品質の良い食事を確保できた。(犬山は特製のワインも給料と一緒に渡す)裏の仕事は彼にとって獲物を見つけるチャンス。総合的な判断は「結果良し」

オリバーが来てくれると確定してから、現在のお店へ移転を決める。引っ越し作業はさすがに業者を手配した。なお、手配して現地で指揮を執り荷物整理に尽力したのは夢追である。この頃から、彼は店長業務をこなすようになっていった。今までは簡単に売り上げをまとめて、軽く在庫確認をして発注をしていた。段々とシフトを組んで商品の棚卸をして、売り上げをまとめていく作業を夢追がこなすようになっていった。犬山が自分の仕事で忙しそうにしているのを見て、「ほら、お店のことはやってくから。ちょっとは休んだら?」と声をかけてくれたのが、今振り返ればきっかけだった。

新装開店して、おおよそ一か月。新しい職場にみんなが慣れてきた頃だ。

土砂降りの雨が降る日だった。客はもちろん全然いなくて、暇で、早めに店仕舞いになった。犬山がゴミ出しのために裏の扉を開けたら、外壁に寄り掛かっている一人の男がいた。

ドアの音に反応して頭を上げる。様子を伺うオッドアイは、怯えていた。

ただ事じゃないと一目で察した犬山は店に上げて、中にいる面々と一緒に体を拭いたり温かい飲み物を出したりして、介抱する。最初は警戒心混ざりに受け答えしていた彼だったが、段々と落ち着いてきて、話をしてくれた。事情を抱えてこの街に来たこと。昨日まで働いていたところでひと悶着あり、どうにか逃げ出したこと。

「帰る場所がないなら、ここで働かない?」

「はい?」

ここからの勧誘は見事だったと、近くで観戦していたオリバーは言う。

「ロベル君が遠慮がちにあれやこれや言っても、たまき君が逃げ道をどんどん塞ぐでしょう。しかも頼もしくて背中を預けられるボスって雰囲気をまとっていましたから、弱ったメンタルのときにあの説得は効きますね」