第十七話 準備
第十七話 準備
これは、二次創作です。お名前だけをお借りした二次創作でありフィクションです。実在する方々と一切関係のない、妄想と捏造と『読みたいシーン』を詰め合わせた作り物です。
書いている人は彼らを追い出した歴が浅いです。とくに個人配信は全然追えていません。解釈違いを起こす可能性は非情に高く、『なんでも受け入れる、解釈違いを恐れない』方向けであります。
『魔』についてはほぼすべてを捏造しています。作品の世界観に合わせて変えています。
マフィアパロなので、今回はありませんが、暴力や殺人、流血、拷問、などの描写はでてきます。
今回はちっとも出てきませんが、ごりごりの人外設定があります。
社長を結構なサイコパスに書く予定があります。
以上の注意点を読んで、地雷がないと思われた方は、どうぞ先へお進みください。
楽しんでいただけたら幸いです。
黒い床の石材を鳴らす靴が二組、すでに深夜だというのにホテルの廊下をうるさく踊る。
「本当にキャットファイトなんて人間の女性はするんです?ふた昔くらい前の過剰な演出以外で?」
一人は上等な羽織の下にはシャツを着た、上背のある後ろ姿。
「お前はホンマに知らんのな。おるで当たり前におる。仲裁するん大変なんよな」
もう一人は、紫を基調にした派手なスーツを着こなす背中。
宿泊客がいないのか、はたまた遠慮を知らないのか。広い間隔を開けて並ぶドアがある廊下にも関わらず、彼らは普段の声量で会話をしている。
「二人してどんな会話してんの。このド深夜にさ。流石に声響いてるんだけど」
部屋三つ分先にある階段からした声は、若い男のものだった。たしなめる口調に強さも張りもなく、気だるそうに声の主は姿を現す。
「モチさん」
階段から来た同僚にむけて、彼らは親しげに笑いかけた。
加賀美 サイド
「面白くないですねぇ、こんな程度だとは」
無人となった会議室の一番の上座で、彼はそう呟いた。深く身を沈めた回転椅子は心地良く背中を受け止めてくれるが、萎えた心を支えるには役不足だ。心の重みに耐えかねるように椅子は軋み、音を立てた。
長い脚を組み、不服そうな表情のまま机に肘をつく。窓から差し込む月明かりに照らされた端正な横顔は、疲れではなく退屈さや不満がこもっている。
外に面する壁はガラス張り、広い室内には楕円の卓を一つだけ。そんな贅沢な空間の使い方をした会議室では、少し前まで血なまぐさい男たちの会合が開かれていた。
相手は、このホテルの『お得意先』だ。少々審査が必要になる品物を扱うため、毎回厳しく『商品』の持ち込み検査や手荷物検査も行っているだけで、特別うるさくなければ面倒でもない客。会場に持ち込む量と相手の多さから裏社会の流通大手と言えるような組織で、彼らの取引会場はほぼ毎回ROF―MAOのホテル会場だった。
取引を持ち掛けて来られて、ホテルの代表取締役を務める加賀美は考えた。彼らの要求は、十中八九、ホテル内に持ち込める品物の緩和や客の持ち物検査の簡略化だろう。もしくは、会場の広さや使用時間の優待、優先か。
加賀美は、いや、ROF―MAOはいかなる組織にも持ち込みの緩和をする気はない。一切ない。危険物の『監視』を目的にし、取引の観察をするために彼らは会場を提供しているのだ。緩和して、今以上に危険な武器を流通させるつもりはさらさらない。
同時に、相手組織がさらなる利益のために邪道へ舵を切っていることも把握している。
先方も、ROF―MAOに規制される武器が裏社会で、世界規模で自主規制している危険や残酷さのある武器だと承知のはず。ならば、どれだけの利をROF―MAOに提示し、あるいは脅し、己の要求を飲ませ締結させにかかるだろうか。
だから、ROF―MAOきってのバーサーカーと仲間内では名高い彼は楽しみにしていた。ある種の期待さえしていた。相手の手腕を、交渉術を、脅しの内容や得られる利益のプレゼンを。精神的でも肉体的でもいい、ただの平和な交渉などでなく、火花が散る鍔迫り合いがしたかった。
だから、ミルクティー色の瞳を不穏な期待に輝かせていたというのに。
「まったくもって、お話にもなりませんよ」
まるで日中の、表社会で一般企業が行うプレゼンのような取引内容を相手は展開してきた。一流企業でも通じるだろう丁寧で、平穏で、利益の計算を述べるだけの時間だった。
事を自分から荒立てても利益がないため、さすがに一つの組織の経営者として穏便に断ったが、つまらないし楽しくないと思わずにはいられない。誰に向かうでもないため息がまた一つ、部屋にこぼれて消えていく。
「社長?入りますよ?」
一人しかいない静かな空間に、わざとか故意か分からない気の抜けた声がかけられる。どうぞ、なんて応えるよりも先に扉が開き、銀灰色の髪と澄んだ空色の瞳があらわれた。
「おや、甲斐田さんですか。こんな深夜にどうかされました?」
深夜まで起きていることは、裏社会の住人も研究者も珍しくない。だが、まだ常識を『知ってはいる』部類に属する甲斐田が深夜に訪ねてくることはまずない。
「僕もいるけどね」
痩躯の研究者の影から、紫の髪がこちらを覗く。いつもは生意気なくらいに輝いているペリドットの瞳が、今夜は眠たそうに半分閉じていた。
「剣持さんもですか。見送り途中でなにかありました?」
「別に何もないですよ。強いて言えば途中でド深夜なのに普通の声量で話しながら歩いているアニコブを見つけた程度です」
「別にあの階は誰もいないんだからいいでしょ?案内ありがとうございました」
「油断大敵って言葉は知っておいて損はありませんよ。じゃ、僕はカジノの様子見にいくんで」
眠たそうに、だけど言いたい事だけ言い切って剣持は踵を返した。後ろ姿を見送り甲斐田はやっと室内に入った。室内に入って初めて、彼の手に白い封筒が握られているのが確認できた。
その中身が先ほどの面白くない会議で出来た気分を払拭してくれそうで、加賀美は少しだけ口角を上げる。
「こんな奥の会議室にまでわたくしを探しに来るとは、結構大事な用件で?」
「ホテル全体を探し回っていたくらいには大事な用件ですよ」
答えながら近づいてくる研究者は、封筒の中から白い何かを取り出した。紙のこすれる音がする。
「社長、取引だったんでしょ?その様子じゃ、面白くない内容だったんじゃないですか」
雑談するときより低くなる声。
「ええ、大変つまらない内容でした。我々は別に、利益のために経営をしているわけじゃあないんですよね。簡略化して互いに手間を減らして云々なんて、巷の企業と同じプレゼンをしないでいただきたい」
正直な感想を伝えれば、甲斐田は満足そうに目を細めてくる。
研究者の顔をする同僚は、楽しいことを持って来てくれる。加賀美は何度も繰り返してきたやり取りを思い出し、軽く身構えた。
「ちょうどいいです。社長、コレを思いっきり叩いてください」
「はい?」
だが、甲斐田の申し出は想定していたような内容からはかけ離れていた。
机の上に差し出されたモノ、それは封筒から出した白い紙だった。和服を着て大の字になった人を模した、切り出した紙。
「苛立った相手だと思って、思いっきり叩いてください。あ、握ったり殴ったりはダメですからね。破けたら使えなくなっちゃいますから」
「そんなの言われなくてもしないけど……。え、ていうかなんですかコレ」
拍子抜けと刺激された好奇心から、加賀美は静かに人の形をした紙をつまみ上げる。ざらりとした触感とわずかな厚みがあり、ただの紙ではないらしい。試しに明かりに透かしてみた。なにか浮かび上がって、……こない。残念だ。
「しゃちょー、遊ばんでもろていいですか。術式を込めてないんで『まだ』ただの紙なんですよ」
一気に普段のテンションに戻ってきた甲斐田に目の焦点を戻せば、同僚は思ったよりも困った顔をしていた。
「何に使うか、聞いても?」
「先にやることやってもらったら、答えます」
「仕事優先ですか、しょうがない」
ふう、と一つため息をついてから頭を切り替える。個の好奇心よりも協調性を優先しないと、人間等の社会性がある集団の中で生きていけないのだ。しょうがない。
加賀美は目を閉じて、軽く集中する。脳裏に浮かべるのは先ほどの取引相手達だ。
だァん!!!
「思ったよりいい音出たな。はい、どうぞ」
加賀美は注文の品を丁寧に持ち上げて、研究者へ差し出した。相手のお礼を言いながら受け取る手の動きがぎこちない。甲斐田の顔を見ると、少しばかり苦笑いとか、引きつったとか、そういう類いの表情だった。きっと予想以上の音の派手さに驚いているのだろう。もっと失礼な感想を持っているかもしれないが、今は置いておこう。それよりも聞きたい事がある。
「で、甲斐田さん。わたくしは質問の答えを聞きたいです」
声をかけられて、甲斐田はまばたきを二、三回繰り返し、すぐに普段通り教えてくれた。
「あ、はい。これは森へ潜入調査するのに使う形代です。術式込めて、見た目をネズミや小鳥のような動きやすい小動物に変えます。で、たまに捕食者に襲われるんです。まあ襲われても一時的に紙に戻るし、破られて調査できなくなったらまっすぐに戻るようになっているんですけどね。目的を果たす前に襲われちゃわざわざ森にまで放った意味なくなっちゃうから、こうして強い誰かの怒気か殺気を込めて、動物除けにさせてもらったってワケです。これで準備が整いましたよ」
説明しつつ、甲斐田は形代を封筒に仕舞う。
「そういう用途ならもっと殺気を込めたのに。足ります?」
「十分ですよ。強すぎても不自然ですからね?」
「さようですか」
用は済んだから帰ろうとする甲斐田の手元を、加賀美は静かに好奇心を込めて見つめる。あんな手のひらに収まる小さな紙が、彼特有の術をかけたら動物の姿に変わる。何度聞いても不思議なものだ。
「社長?そんなに見つめられても、術式込めるところは見学させてあげられませんよ」
「別に、不思議だなって思っていただけですよ。見てみたい気持ちはありますが」
「じゃあ、僕は仕事の続きに戻ります。ありがとうございました社長」
「ええ、くれぐれも気をつけてくださいね」
お礼を言って、研究者は足早に部屋を去っていく。後ろ姿を見送ってから、加賀美はテーブルの上の資料を片付ける。取引相手から受け取った資料は、どこでどう価値が出てくるか分からないから、毎回まとめて保存しているのだ。
ROF―MAOとして活動してから習慣になった資料まとめをしながら、同僚との会話を思い返す。
「森なんて危ない場所で、一体何を探すつもりやら」
急いでいるらしかったのであえて聞かなかったが、森は基本的に人間が立ち入らない場所だ。追手をまく以外ではまず入ろうとしないだろう。自ら立ち入る物好きなんて、人知れず法外な手法を行使したい者だろう。
例えば、禁忌の魔術を使うとか。拷問と死体の処分をしたいとか。
「……そんな危ない相手を追う仕事なんて、甲斐田さんにも、誰にも任せた覚えはないんですけどねえ」
危ない相手と遊べるなら、ワタクシが出向きますよ?
綺麗な顔に凄みのある笑みを浮かべて、彼はゆっくり外を眺めた。
飛ばしても平気な あとがき
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。また、いいねやブックマーク、コメント等もありがとうございます。本当、毎回励まされております。
今回は短めに仕上がりましたがいかがでしょうか。ろふまおについて段々と書かれていきますね、気になりますね。彼らの結成の経緯とか。掴んでいる情報とか。今後の動向とか。
作者は、投稿を始めて一年が経過していました。よくこのシリーズを一年かけてここまで書いたと思います。同時に、一年かけてもまだ自分の読みたいシーンを書けていない。その事実に驚いています。どうにか書けそうな目安がやっとできたところです。なんでこんなに時間かかったんでしょう分かりません!不思議ですね。でももう少しで書けそうです。やったね。
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どこまでの表現がみなさんお好きで、受け入れられますか?作者は『思想はそのまま』『姿だけ変わる』が好みです。たまに感情ぶちまけてほしいけど(前提・ちゃんとした理由や経緯がある)、姿に引っ張られた感じは強引で解釈違い起こします。