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第十九話 動き始めた歯車が

悪魔たちの魅惑の声 — www.pixiv.net · All chapters

第十九話 動き始めた歯車が

キャプション注意書きは読まれましたか。

ご本人様とまったく、一切の関係がない、妄想と捏造でできた二次創作です。

妄想と現実をきっちりと分ける能力のある方向けです。解釈違いを恐れない猛者向けです。誰にも迷惑をかけずに、こっそりとお楽しみください。

「流血」「暴力」「殺人」の描写がある。

人外設定がある。

その他地雷になりそうな点はキャプション注意書きにまとめてあります。

以上を読んで平気な方は、先へお進みください。

月明かりのほとんどない路地裏で、吹き込んでくるビル風は様々な匂いを運び去っていく。店のダクトから垂れ流す腐臭も、脂汗を流した人間の加齢臭も、新鮮な血液の匂いだって、混ざり合って鼻が曲がる悪臭に変わる。

「あーあ。こんな雑用くらいで僕を呼ばないでもらえます?忙しいんでね、いくらコイツの身元が身元だからって、片付けるのは君らでもできるでしょ」

冷静ながらも苛立ちを込めて注意をする声は、まだ若い。雑用のせいで汚れた刀身が映した持ち主の瞳は、きれいなペリドットのように光る。

しかし、身を縮めて頭を下げる部下は、色鮮やかな瞳を直視できない。十代半ばにしか見えない若い体から放たれる圧力は、前の経営者よりも数段強い。声を荒げていないのに、自分よりも一回りは下に見えるのに、部下は命の危機すら感じていた。

「謝罪する暇があるなら、さっさと始末してください。商材屋にはさっき連絡を入れたから」

周りの気温がさらに下がる冷たい声を、事務的な着信音が遮った。血で汚れていない側の手で確認すると、上司は柳眉を寄せて一層険しい表情を浮かべる。

「残りはやれよ」

カジノの管理者は最後の一言を残し、踵を返す。ペリドットの双眸が見つめるのは、画面に映る電話相手の名前のみ。

『甲斐田君』

厄介なことになって、きっと長い夜になるんだろうな。そう思って見上げた先には、今にも溶けて消えてしまいそうな三日月が浮かんでいた。

もはや慣れ親しんだホテルの廊下を、剣を佩いた青年は赤い外套をまとった大人と並んで歩いていた。

「剣持さん、今夜はずいぶんと良い匂いがしますねアナタ。カジノで荒事でもありましたか」

隣の大人はミルクティー色の瞳を楽しそうに細めて聞いてくる。やや低音になりながらも跳ねる声に、青年はあえてため息をついてから応える。

「荒事ってほどの事じゃないです。イエローカード二枚所持の客が、最後にレッドカード叩きつける蛮行をしてきたってだけですよ。まったく、ちょっと難しい身分ではあるけれど、小物の処分に僕を呼ばないでほしいですね」

「ふふ、なるほど。まあ呼んできた部下の方の気持ちも分かりますがね。無駄に呼べば怒られるだけで済む、下手をしたら指で済む、勝手をしたら消されるだけ。分別つけるより呼んだ方が早い、って教育されてきたのでしょう」

「嫌な教育だなあ」

大げさに言って見せれば、相手は先ほどよりも明るい笑い声をあげてきた。普段通り、とまではいかないが、獲物を探したがっているような雰囲気はなくなった。

これなら、仕事の話を振っても平気だろう。

「社長も甲斐田君に呼ばれたんでしょう?何か心当たりはありませんか」

「わたくしよりも剣持さんの方があるんじゃあないですか?この間仕事持ち掛けていたでしょう」

「あれは期限が明日なんですよ。一日早めて呼び出すなんてよほどの異常事態がなきゃやらないって」

手を軽く振って否定すると、隣の仲間はいたずらな笑みを返してきた。

「よほどの異常事態があったほうが、いっそ事態が動いていいじゃないですか」

冗談めかした言い方に含まれた本意に、「そうだけど……」と剣持は漏らしながら頭を抱えた。悪い顔をする大人は、パワーにモノを言わせて強引に解決を図るきらいがある。問題解決の速度は良いが、引き換えに負う代償を考えるとあまり使いたくない手法だった。

「どの手がかりも弱いか途中で切れた。動き始めた歯車があるなら、例え軋んでいようが使いましょう。正攻法では役に立たないなら、裏の手口でもアクシデントでも、なんだって使ってこそ、ですよ。ねえ?」

「カッコイイ大人なら、何でも使って解決できる。ですか。それを言うなら、後始末までスマートにしてほしいけどな、僕は。毎回社長は壊しすぎだって」

甲斐田 サイド

仲間三人に電話をかけてから、部屋の主は一人でため息をついていた。生来の白く透き通る肌は平時よりも血の気が引いて、手足が冷えている自覚もある。

彼はもう一度、起こった問題を書き出したノートを睨み、文字列を指でなぞる。自分で書いた内容ながら、自分の式神が記録した事実だが、頭が痛くなる。

『ギャングスターの幹部と、大手組織のボスの会合』

『内容・違法取引をたくらむ』

『幹部を組織のボスの部下が急襲、殺害を試みるも返り討ちにあう』

『ボスは部下に裏切られた様子。そのまま両名は拘束される』

『取引内容・オークション』

↑もしかして、人身売買のことか?

『調査員は森で消息を絶った』

『これ以上は追えないから、代わりにギャングスター、裏社会の引き締め役に頼みたい』

↑ここは本音の感じがした

「利益が出ないなら、深追いしない。我々は利潤を求める組織だ。道義心なんて一銭の価値もない。しかし、森なんて場所へ危険を承知で送り込んだのもまた我々だ。尻尾を巻いて逃げれば、いままでかけてきたコストの回収もできない。なにより、大事に育てた部下を失っただけになるなんて、部下たちに申し訳ない。……私も機械じゃない、感情はあります。だから、裏社会の引き締め役、ギャングスターに売るのです」

「引き締め役なんて言われたのは初めてだ。掃除屋だの裏社会のくせに利益より秩序を守るのか、なんて悪態なら言われてきたが」

「どれでもよろしい。我々の払って来た痛みと手間を理解していただければ、呼び方なんぞ些事でしかない」

「確かに。あなたの意見はもっともだ。……ならば、取引の金額はこのくらいでよろしいかな」

「ええ、十分です」

――ガキンッ!

文字起こしした会話文に何度が出てくる『森』を、指先がぽんぽん叩く。

「森、森か……。せっかく社長に叩いてもらったのに、あの式神も仕事できてないし。本格的に捜索したいな」

空色の瞳が思考の景色を見て、最近の問題を洗い出し始めた時。研究者を現実に引き戻すノックの音が部屋に響いた。続いて、程よい甘さを含んだミルクティーのような低音がかけられる。

「甲斐田さん。来ましたよ」

「はーい」

許可の必要ない間柄の彼らは「どうぞ」とほぼ同時に扉を開けてきた。

亜麻色の髪を柔らかく揺らす、同じ色で少し吊り目の大人。その背後から濃い藤色の頭と新緑の瞳を覗かせる青年。

陽の光の下ならば、容姿だけで見れば、人目を惹く華を持った二人だ。しかし、今の彼らが身にまとうは他を圧倒する強者の覇気。和やかさとは縁遠い。

ほのかに血の匂いさえ漂わせる、裏社会の住人達だ。

研究者は軽く笑みを浮かべながら、自身の前の席を身振りで勧めた。

「来てくれてありがとうございます」

「不破さんは?」

「アニキは店の出入りがあるらしいっす。『生き死にに関係ないなら電話なんかしてくんなや』ってだけ言われて切られました」

いつものことながら、軽く肩を竦めながら答える。「なるほど」と相槌を打ちながら、来訪者たちは席に着いた。

「――それで、僕らをわざわざ呼ぶほどの事態って、一体何が起きたんですか?」

眼光鋭く、一呼吸前までのささやかな雑談の空気を切り裂く質問を最年少の青年が放つ。

「モチさんが依頼してきたホストクラブっぽいお店の調査、あったでしょう。本来の目的は人身売買をたくらむ奴らを探し出すこと。参加者と思われる術者が二名出入りしていたから、見張って探ろうって話でした」

おさらいと詳しく話していない加賀美への説明も兼ねて、話の頭から甲斐田は説明する。二人は黙って先を促してきた。

「僕は式神を放って、三日ごとに盗聴した内容を確認していたんです。……で、今夜、確認したところ、大変な場面を録音していたため、皆さんをお呼びしました」

まっすぐに二人の目を見つめる。丁寧な前置きほど重大な事態が待ち構えていると経験で知っている彼らは、甲斐田へ痛いほどの視線を送って、静かに続きを待っている。

「このホストクラブで、昨夜、二つの組織が会合を開いていました。一方は、組織名は不明ながら、ボスと部下一名。もう片方は推察するにギャングスターの幹部です。彼らの取引は情報の売買。その情報が、僕らの追っているオークションと関係あるかもしれない。あまりに類似点が多すぎる。

そして、大手組織のボスと部下はホストクラブで拘束されています。部下は店の地下室に連れていかれ、ボスはギャングスターが引き取っていきました」

話している途中から仲間の一人は表情が険しくなり、もう一人は口角を吊り上げた。甲斐田の説明が途切れた途端、「大事がすぎる」と青年が口火を切った。

「ギャングスターが取引に応じるだけの組織、しかもボスがいなくなったなんて、街を巻き込む抗争が起きておかしくない!なのに、一日経った今も混乱はないんですよ?」

机に両肘をつき、やや前屈みになって剣持は聞く。尖った声には驚きと疑いが同じだけ混ざっている。

「どうやら、このボスはお飾りだったみたいなんです。取引の終わりに、部下がギャングスター幹部を襲って、押さえつけられる場面があったんですが、ボスの指示じゃないようで、『裏切ったのか』ってボスは発言しています」

「面白い。甲斐田さん、この場で我々にも録音を聞かせてもらえませんか。要約よりも、現場の音声を聞いて諸々考えたい」

「できますよ。ただ、取引をしている二人以外の声はかなりくぐもっています。写真でいうとピントがぼやけているみたいな感じで、主要な音声以外はぼやけるって仕様なんです」

テーブルの上に放り出しておいた携帯が鳴ったのは、ちょうど拷問官が手の汚れを拭い落した時だった。きれいになった利き手で通知を確認すれば、後輩からの経営終了の知らせで、彼は形の良い唇を吊り上げるように笑みを浮かべる。

「いいタイミングじゃん」

反対の手に握っているタオルは、赤黒く変色した汚れをたっぷり吸っていた。だが、彼はそんなことを全く気に留めず、テーブルの上に置き去りにする。背後にある凄惨な光景に一瞥もくれず、己の職場へ帰ろうと足を進める。扉を開けた途端に流れ込む新鮮な空気を肺へたっぷり吸い込んで、上機嫌に目を細めていた。

神田 サイド

奥のドアが開く音がした。同時に流れ込んでくる酸化した血液の匂いから、地下室の惨状を神田は頭に容易に描くことができた。

「お疲れさん、って血まみれやんか」

「お疲れ様です……よくそんなになるまで、いえ、なんでもないです」

「なによ二人してそんな反応しちゃって。ヒドくない?」

神田が顔を出すまでの少しの間に交わされる軽快な会話が、仕事終わりの拷問官の姿を見る前から教えてくれる。

キッチンとホールの仕切りをまたげば、目と鼻の先に三人は立っていた。新人二人の背に隠れた店長が、こちらを見てにたりと笑って見せてくる。

「かんちゃん、待ってたお客は来たかい」

「ええ、もちろんですよ」

獲物が罠にかかった手ごたえを、あの瞬間を思い出して、神田は口角が勝手に上がった。悪い顔をしている自覚はあるが、彼ら相手なら隠す気もない。

「よかったねえ。じゃ、掃除さっさと終わらしちゃって。今週は楽しくなるよ。夢追はシャワーもらってくるから」

壁になっていた二人が半歩引いてできた隙間を通って、神田の横をすり抜けながら夢追は二階へあがろうとする。オリバーも神田も軽く返事をしながら作業に戻ろうと、足を進める。

だが、ロベルだけは拷問官の後を追った。

「……ゆめちゃん、聞けた?」

「ロベル、誰にモノ言っているか分かってる?当たり前でしょ」

弱々しい聞き方に対して、珍しく低い圧のかかった答え方だった。

帰りがけ、後輩達が着替えのために上に行ったことを確認してから、夢追は軽く隣の同僚に聞いた。

「神田君、あのお客からの成果はあった?」

「ええ。もちろん」

神田は大事そうに腰のポケットに手を添えてから、付け加えた。

「今週末か、週明けには解決できそうです。うろちょろと目障りなネズミでしたが、まあ肥えてはいますから、味はいいでしょうね」

飛ばしても平気な あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

また、これまでの小説も読んでいただき、いいねやブックマーク、コメント等もありがとうございます。毎回ありがたいです。

どうにかこうにか書き上げましたが、荒っぽさが目立ちますが、楽しんでいただけたでしょうか。新衣装に歌みたに、何度心臓ないなったことでしょう。ショットガンでロシアンルーレットしてくれたり、本当にもう……。ありがとうしか言えないです。公式から加賀追の供給もあって、……ありがとう。

そろそろお話もまとめにかかりたいところです。あれもこれも書きたい項目とワンシーンだけはある。ストーリーに繋がってくれない。なぜ。そんな日々が続いております。

かっこいい悪役、魅力的で治安の悪い姿、最高ですよね。もっと読みたいです。皆さま書きませんか。推したちの人外ボイス悪役ボイスの聞ける配信を何度見返してきたことか。教授と社長もちょいちょいそういう場面があって嬉しい限りです。

感想をいただけると、喜びます。割と本気で、続きが書けない時の励みになるので、そうっと送ってくださるとうれしいです。

最後に、物語をお楽しみいただけていたら、幸いです。