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第19・5話 『彼』のやり方なら

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第19・5話 『彼』のやり方なら

キャプション注意書きは読まれましたか。

ご本人様とまったく、一切の関係がない、妄想と捏造でできた二次創作です。

妄想と現実をきっちりと分ける能力のある方向けです。

解釈違いを恐れない猛者向けです。誰にも迷惑をかけずに、こっそりとお楽しみください。

「流血」「暴力」「殺人」の描写がある。

人外設定(今回はキャリオンパロのみ)がある。

以上を読んで平気な方は、先へお進みください。

バンデラス サイド

表の社会で生活する者が裏社会に期待する事は、いくつかある。非合法な方法による問題の解決がその筆頭だが、規制された商品を求める者や、法と警察による締め付けの無い世界でやりたい放題の狼藉を働きたい厄介者も存在する。

しかし、法と罰則の無い世界、など社会の形を保てるはずがない。

複数の種族が入り交じりながらもある程度の秩序を持っているのは、襲い掛からず話し合いができるルールが存在するからだ。

息をするくらい当たり前に、心臓が鼓動を刻むくらいに無意識に、裏社会の住人に浸透しているルール。

「裏社会に生きているなら、当たり前すぎて意識しないんだよな」

ベルモンドは手についた汚れを振り落としながら、目の前で項垂れたままの男に話しかける。

「よく言うだろ?『命の対価は命のみ』とか、『信用だけは手放すな』とかよ」

項垂れていた男は、くぼんだ眼窩に収まる虚ろな目だけをベルモンドに向けた。椅子に縛られた体は揺すぶるどころか頭を上げる力も残っていないらしい。

椅子の後ろでは仲間が一人、腕組みしてこちらの様子を窺っている。緑色のオーバーリップを施した口元は、表情が読めない。

「人間が半数を占めるが、悪魔も人狼も吸血鬼も鬼もエルフもいて、さらにもっとたくさんの種族がいるんだ。この街には。それだけ多種多様な価値観がある。しかし明確に定められた法律は無い。ならば、どうやって秩序らしい秩序を持っているのか。……当たり前に守っているんだよな。契約を破れば対価は命。裏切れば寝首をかかれる。……どんなに部下を従え、金を稼ごうとも、表の奴らと結託して権力を握ろうとも」

無言で横に立つ仲間の視線を感じる。黒のジャケットに赤いシャツを合わせた彼も、返り血にまみれた器具をテーブルに置いて、静観の構えを取ってくれている。

黒の指ぬきグローブをした手を、握って、縛られた男の目の前でゆっくり開いて見せる。

「お前は、裏切ったんだ。そんな気なかったんだろうがな」

空を掴む仕草を見せれば、縛られた男は殴られて歯が抜け落ちた口から、血と共にうめき声をこぼす。

「生き物を商品……モノとして見てはならない理由はな、一度でも生き物を売れば、部下は思うからだ。『次はまだ、でもいつかは自分が売り物にされる』……ってな」

一日かけて情報を吐き出しきった人間は、勢い良く頭をあげた。光がなくなった目から水があふれてくる。殴られて切られて腫れた顔にこびりついた血を洗い流していく。

「お前は確かに情報を渡してくれたからな。……俺なりの推測は、対価として十分だったか?」

水で一杯になった目に、彫りの深い顔が映る。琥珀の瞳はずいぶん悲しそうにしていた。

次の目的地へ急ぎ足に向かっていった背中を見送ってから、現場に残った二人はどちらともなく顔を合わせた。

「ベルモンドは優しいねえ。情報吐き切ったヤツの持ちかけた取引にちゃんと答えてやるなんてさ」

「あいつの美学というか信条というか、そういう譲れないもの、なんだろうよ」

その会話が終わる頃、現場への経由地として開けた夢の世界の扉は、跡形もなく消えていた。

「いい話と悪い話、どっちから聞きたい?ベルモンド」

ドアを開けた途端に真っ赤な瞳で射貫いてきた同僚は、開口一番にそう尋ねてきた。テーブルに肘をつき軽く上体を預けて、滅多と見せない神妙な顔つきをこちらに向ける。黒と赤の仕事着から七分袖のパーカーへ着替えているが、部屋にはほのかに鉄の匂いが漂っていた。ここは犬山が拠点とホストクラブを兼業させている店の二階。普段は休憩室として使っているから、こんな血生臭いはずがない。

「そうだな。まずは、悪い話にしようか」

たった今出てきた、夢の世界と現実の部屋を繋ぐドアを消しながら、巨大組織『ギャングスター』のリーダーを務める彼は足を踏み出した。

他所向けの声音に滲んでいる疲れに、凄腕の尋問間は片眉を器用に上げてきた。

「疲れてんの?ベルモンドが連れてった方は口を割らなかった?」

「いや、手こずりはしたが白状させた。その内容がな……お前だってどうせ捕らえた相手から聞いたんだろ?」

「聞いたよもちろん。そっか、ベルちゃんからしたら頭の痛い問題山積みなのか」

合点がいった夢追は一人で頷く。言語化しにくい違和感を探るためにも、依頼人は質問を投げた。

「満足いく『相手』だったかい」

「ああ、もう最っ高だったよ。ありがとね久しぶりに楽しめた」

ふっと、赤い瞳が不穏に輝き、口元をほころばせる。相も変わらずな仕事仲間に、「そいつはなにより」と軽く流した。仕事は楽しめていたならば、最初のまじめな顔の理由はきっと吐き出させた内容だろう。

夢追の正面に腰を落ち着け、テーブルの上へ帽子を置く。

「聞かせてもらおうか」

ここからは仕事の時間。態度で示せば、彼もまたプロとして唇を吊り上げた。

「悪い話は、僕の拷問した彼はただの下っ端だったこと。僕らが欲しい情報は断片的にしか聞かせてもらってなかった」

両手を上に向けて「お手上げ」のポーズをとる尋問間に、ギャングは眉一つ動かさないで先を促した。

「なら、良い話は?」

「捕まえた時、ボスが色々と喚いていたでしょ?『森で契約を交わしたのに』とかさ。アレの詳細を話してくれた。ボスと組織への説明と、本当の目的。さらに、仕えていた主についてもたくさん。……本当に心酔して忠誠を誓っていた相手は、魔術師だった。しかも」

ふっと口をつぐむと、夢追は前かがみになった。顔を少し下に向ける。

「ソイツが、人身売買の主催者らしい」

端的にまとめて、夢追はベルモンドの顔を見つめてきた。詳しい説明はボスの尋問内容を聞いてから話すつもりらしい。ベルモンドも二重に聞くつもりはないため、簡単に明かしていく。

「俺も、そこまでは聞いた。組織と魔術師の締結した契約の内容は、事務所の書類を漁った方が良さそうだ。会場と日程についての相談の記録や提案のメモもあると言っていたよ。そういや、ゆめおのやり方なら、毎回裏取のために事務所は捜索して証拠を押さえてたっけな」

「うん。記憶と記録って食い違いあるしね。ベルちゃんが言い出さなかったらやろって言ってた」

「……で、お前さんはどんな話が出た?」

「魔術師と謁見できた場所の詳細と、魔術師が誰と会っていたか」

ずっと気掛かりだった項目が差し出されて、組織のリーダーは眼光鋭く問い質す。

「『ギャングスター』の誰かと会っていたか?」

「いいや。会ってないよ」

間髪入れずにきっぱり言い切る尋問間の強い眼差しは、僅かな疑いすら挟む余地がなかった。

しかし食い気味とすら感じるほどに素早い返答に、ベルモンドは静かに腕を組み、背もたれに体重を預ける。相対する夢追はあごに手を当てて、深いため息を漏らした。

「僕が聞いたことをそのまま話すよ。嘘か真か分からないけれど、アイツは真実と信じていた内容ね」

前提条件を明示するなんて、珍しい。だがベルモンドは無言のまま、続きを待つ。

沈黙を是と受け取った尋問官は、依頼人へまっすぐ目を合わせる。

「じゃ、報告を始めましょうか」

両手を合わせて、ぱん、と鳴らす。改めた口調。普段は柔和に笑みを描く口元が一文字に結ばれる。

「魔術師はずいぶん知識欲の強い個体みたいで、主な研究内容は『操縦』で、本物の模倣品でしかない人形を生きているかのように動かすことに腐心しているらしいです。しかも、動くだけじゃない。命令されたことを実行して、見たこと聞いたことを録画録音して、魔術師へ届けることまでできる人形を作ってました。このあたりの理念や手法が狂ってたし、尋問対象は本物の狂信者だった。久しぶりに見たよ。で、狂信者を従えるような内容だったから、詳しくは省きます。別に重要じゃなかったから。

既に人形は実用段階にあって、普段の買い物はさせているそうです。店員はちょっとくらい受け答えがぎこちなくても、ちゃんと品物を持って代金を渡したら詮索しないからね。

で、大事なのは、ここからです。魔術師はいかに生き物らしく動かすかを探求するうちに、ある方法を見つける。……大昔に研究され封じられた、『生き物を生きたまま人形にする方法』を」

「はあ?!」

テーブルに手をつき、勢いよく立ち上がる。前のめりになって言葉にならない疑問をぶつける。

夢追は微動だにせず、まっすぐに赤い瞳を向けたまま、口を開いた。

「そう。『生き物を生きたままで意思を奪い道具として操る』ことが、魔術師の最近の研究テーマ。大昔に研究されて、危険性から世界中で廃棄され禁止された呪術の、初歩」

あくまでも淡々と尋問官は語るが、彼の手は関節が白くなるほどに固く握られている。

「お前、そんな、裏社会でさえ禁止した術を、使おうとしてるってんのか。その魔術師が」

「使おうと『してる』じゃないよ、ベルモンド。……使って『いる』んだって。もう。既に」

成功例があるらしいんだ。

夢追が告げる内容に、場は静まり返った。

「……人身売買なんて未だにやろうとする外道がいるのかって、思ってたけどよ」

「うん」

「情報を吐かせたボスもそうだった。あいつら、裏社会で生き物を『モノ』扱いするってのがどういう意味を持つか忘れてんだな」

「そうだね。……研究のために、たくさん集めて、適性を見るんだって。で、適性があれば実験へ、なければオークションに出す計画だって、さ」

聞いたままを話す彼は、感情を出さないよう押さえつけていた。

甲斐田 サイド

「夢追さん!?」

立ち上がった勢いで、椅子が倒れる。不意に響いた声量と椅子が転倒する派手な音に驚いて、甲斐田は映像を再生していた術を途切れさせた。

裏社会において安全な宿泊、一時的な場所の提供、もしくは派手なオークションを開催するための場所と人材を提供する組織、ROF―MAO。彼らの所有するホテルの、上階。客はおろか職員すら入室禁止の会議室で、甲斐田は仲間を緊急招集した。不破は本業で手が離せず不参加だが、来てくれた剣持と加賀美には偶然入手した情報――偶然捕らえた、ギャングとマフィアの会談、暗殺の試み、そして失敗し拘束されるまでの映像を見せていたのだ。もう映像も終盤、暗殺しようとした部下が拘束され、マフィアボスも喉元に刃物を突き付けられた。混乱するマフィアのボスへ掛けられた声を聴いた瞬間、ミルクティー色の瞳が揺れた。画面の端、会談場所の奥から現れた男の姿が映った途端、彼は唐突に声を上げた。

止まった画面を、ミルクティー色の瞳は穴が開くほど見つめている。

「なになに、どうしたっていうの社長らしくない」

急に立ち上がった長身の男性の正面に座る、濃い藤色の髪をした青年が問う。翡翠の瞳にあるのは非難でなく疑問で、甲斐田もそれは同じだった。

「社長?」

画面の真正面に座る甲斐田も重ねて声をかけて、やっとミルクティーの瞳が揺れた。二、三回まばたきをして、映像から自分たちへ焦点を合わせる。

普段の彼とは全く違う、滅多と見せない興奮しきった表情。

「甲斐田さん、剣持さん。……ワタクシ、やっと見つけました」

彼は、加賀美という仲間は、普段はカッコいい大人である。知的で駆け引きが上手く、ホテルの経営業務をやっているため、呼び方がいつしか『社長』になっていったほどだ。

ただ唯一の例外がある。

「ああ、こぉんなところに居たなんて……」

羽織る赤のジャケットの裾から、うねる触手をのぞかせて。

嬉しそうに細めた瞳が、真っ赤に染まった時。

「社長。ソレ、仕舞って。今は作戦会議中だよ」

言い放つ剣持の冷たさに、加賀美は一瞬だけ面食らっていた。目を閉じて、顔を伏せる。伸ばしていた触手を元に戻す。

「すみません。……しかし、あの人がいるなら。夢追さんのやり方なら、分かります。ちょっと聞いてもらえますか」

再びこちらへ向き直った彼の瞳は、見慣れた色に戻っていた。

「何ですか?」

応える剣持の声は、警笛のような尖り方をしている。

「今夜まで動きがなかった理由は、あの人が情報を搾り取っていたからでしょう。本気で対象が知っていることをすべて聞いていたからだと推測できます。そして、その情報をもとに、明日動くでしょうね。狙うとしたら、事務所……だろうなやはり。裏付けの資料や制裁なんかのために。もしくは、直に聞いた情報の中にある場所へ行くか?いや、夢追さんなら慎重に動くはず」

あごに手を当てて、昔を懐かしむように一言一言をかみしめながら加賀美は話す。ほのかに上がった口角が、獲物を探し出した狩人のようだ。

「だから、協力、していただけません?」

「は?」

「何がどう繋がったら協力要請になるのか、ちっとも分かんないって」

「ワタクシの人探しに、ですよ」

甲斐田と剣持の困惑を置いて、獰猛な瞳の狩人は楽しそうに触手をくねらせた。

飛ばしても平気な あとがき

お読みくださり、ありがとうございます。

待ってくださっていた方、まだ読んでくださるでしょうか。更新できず、申し訳ないです。一年以上期間が空くなど書き手自身も思ってみませんでした。泣き言をこぼしていた日々もありました。本当に人生ってうまくいかないです。ただ、そんな時もずっと、推し達に笑顔を、元気をもらいました。ありがとう推し。本当にありがとう。やっぱり妄想して書き起こすことも自分にとっては推し活の一部で、再び更新できた次第です。書くことが自分にとって楽しい時間です。感想いただけるとさらに元気になりますので、よければ送ってください。

読んでくださったあなた様にとっても、読んで楽しいと思えるひと時であったら、幸いです。