第二十一話 作戦会議、観察、もしくは再会の約束
第二十一話 作戦会議、観察、もしくは再会の約束
こちらは二次創作です。
ご本人様とまったく、一切の関係がない、妄想と捏造でできた二次創作です。
妄想と現実をきっちりと分ける能力のある方向けです。
解釈違いが起こる可能性が非常に高い、妄想を書き出した文章となっております。また、解像度も粗く、人によってかなり違います。登場シーンもかなり偏りがあります。
他人様に迷惑をかけず、こっそりとお楽しみください。
「流血」「暴力」「殺人」の描写がある。
人外設定がある。(シリーズで出てくる)
以上を読んで平気な方は、先へお進みください。
「ちゃん。……まったく、優しすぎよ」
「なにが優しいんですか?ロベルさん?」
休憩室で一人黄昏ているロベルの背中へ、神田はちょっとばかりからかいの意を込めて問いかけた。階段を上がる音どころかドアを開けられたことにすら気づいていなかったらしく、声をかけられた背中は大きく跳ねた。
「うっわびっくりした。なんやい神田くんか。驚かさないでよもう」
背もたれに腕をかけて振り返るロベルに、神田は大げさに首を傾げて見せた。
「えー、だって気づいてもらえるようにわざわざ足音殺さないで来たっていうのに、なんか一人で似合わない空気醸しだしてたのはロベルさんじゃないですか。ほら、私で最後だったんで、下、行きましょう?」
「ああ、うん。……珍しいやんか。神田君が最後なんて」
「ちょっと面白い事がありましてね。皆さんにぜひともお伝えしたい、面白い知らせを持ってきましたよ」
「へえ?そりゃ楽しみやな」
軽い会話をしながら、ロベルは手早くテーブルの上のものをかばんに仕舞いこんでいく。ちらと見えたそれはノートとペンだった。わざわざ一人になって何を書いていたのだろう。
「ほな、行きましょか」
「はい」
深掘りするのは余計なお世話だろうか。だが、来て三か月くらいで起こした事例もある。気に留めておくか。
後ろを歩く仲間の心配をしながら、神田は階段を降りていった。
夢追 サイド
衣擦れにしては軽快で滅多に聞かない音がする。雑音(ノイズ)だと片付けるには気になって、人狼は静かに見ていた携帯端末から視線を下に動かした。隣に陣取る小柄なボスが、満面の笑みで正面にいる二人へ話しかけている。もっと下かと体をひねったら、毛艶のよい尻尾を左右に振っていた。
「なに夢追君。ボクのしっぽになんかついてる?」
「んー、やたら機嫌よく動くなって思って」
「当たり前じゃん。やーっとナマ言ってきたヤツら絞めれるんだから」
「おや、僕らと落ち着いて話せるのが久しぶりだからじゃないんですか?」
「オリバー、今日はそんなサービスしなくていいから。な?」
「そうだよ。そういうのは営業の時だけにしときな」
いたずらに笑うオリバーへ、先輩としてベルモンドと夢追が伝える。騒ぎそうな犬山が静かに聞いていて、横目で確認すれば案の定、満足げな笑顔で頷いていた。
「オリバーきゅんも馴染んできたね。いいよいいよ」
「……サービスしすぎは良くなさそうですね」
「いいじゃんもっとしてよ!でもそういう顔されるのもまたいいわね。もうこの人たちはボクへの扱いが雑になりつつあるからね」
そんなこともないはず。それはそれで距離感変わってないって事……。なんて話を続けるのはベルモンドに任せて、夢追は再び端末へ目をやる。画面に表示された時計は、ちょうど集合時間を示していた。
そろそろ、ロベルを呼びに行った神田が戻ってくるだろうか。珍しく最後に来た神田は、やけに足取りが軽かった。犬山のようにこれからの話し合いを楽しみにしていたのか。それとも別件か。
頭上から響く音が、思案に沈みかけた夢追を現実に引き戻す。近づいてくる足音は二人分、わずかに聞こえてくる話し声。
「来たみたい」
夢追が顔を上げたと同時に、部屋のドアが開いた。
「すみません、お待たせしました」
他所向けの爽やかな声に軽やかな足取りで、神田が入ってくる。一方、すぐ後ろからついてきたロベルは無言のまま定位置の端へ腰掛ける。
夢追が伏目がちになって口を一文字に引き結んでいるロベルを観察している間に、神田はテーブルを回って定位置にさせられた犬山の隣の席に着いていたようだ。すぐ横から手を鳴らす音が響く。隣に意識を戻せば、夢追の、いや全員の視線をボスは集めていた。
「じゃあ、始めようか。一か月くらい?前にお店に来てくれた組織の依頼主を絞めに行く、作戦会議」
雑談の時から打って変わって低くなるボスの声に呼応して、仲間たちは殺気にも似た気配を漂わせる。
肌を刺す心地よい緊張感に、夢追は静かに口角を上げた。
会議は順調に進む。犬山の作戦に異議は誰も出さなかったし、ボスの提示する『報酬』は満足のいく内容だった。ただ気になったのは、参加者唯一の人間がやけに静かでいること。
「ローベール?」
「ㇵイッなんでしょうか」
変わった跳ね方をする返事に、声をかけた側が目を丸くした。
「いや、やけに考え込んで黙ってたから。どうしたの?」
「んーと、なんというか……前にやった実行部隊とずいぶん対処が違うなと思って。あいつらは掃除なんて入れなかったし、わざわざ魂を欲しがるなんて、なんでなん?」
不自然な目の泳ぎ方、普段の饒舌な様子とかけ離れた途切れ途切れでゆっくりな話し方。
嘘、と断定できない程度の違和感を残す質問だった。
「こっちの街のやり方、流儀ってヤツよ。ロベルさんのいた街じゃ違った?」
両手で頬杖をつきながら犬山が問う。ボスは夢追のように疑ってはいないらしく、深く追及するつもりもなさそうだ。
「前回は見せしめ、今回は警告だけじゃなくて報復も込みですからね。目的が少し違うんです」
「そうそう、神田さんの説明が分かりやすいかな。あとねえ、お店を荒らしてきた奴らの依頼主と受けたアホの魂ちょうだいっていうのは、もちろん収支をプラスにするためでもあるけど、それ以上に『ボクらに手を出したらこうなるぞ』『格下が手を出したらどうなるか分かったな』っていう見せしめでもある。掃除するのは特にそうだね。事件の意味を理解できる頭があるなら、きれいになった室内の恐怖も分ってくれるでしょ?前は現状そのままを見せて、今回も同じ状況になってからわざわざ元に戻せるだけの実力を持っているんだぞって、分からせたいのもあるし。ついでに、あんまり警察に動かれると面倒だしね。猟奇事件よりも怪奇事件のほうが、隠れやすいもん」
「成程なぁ。色々考えてるんや」
「勿論だよ。他に疑問は無い?」
「大丈夫、ありがとうな丁寧に」
「うん、どういたしまして」
他に質問ない?と聞く犬山を尻目にして、再び尋問官は人間の観察に戻る。彼は自分を見つめてくる視線に気づいていて、気づいた上でそっと逸らした。
「では、私からもよろしいでしょうか。ここに来る前に、面白い情報をもらえたんです」
予想外の発言に、その場にいる全員が青年に注目した。
「昔の知り合いが接触してきて、誘ってきたんですよ。『違法な取引を一緒に潰さないか』って」
場の空気が張りつめる音を、確かに組織の全員が聞いた。
自分の中の本題を置いてでも、尋問官は同僚へ視線を向け直す。全員の注目を一身に受けながら、相も変わらず読めない笑顔のままでいる。
「いいね。神田さん、詳しく聞かせてよ」
相手を試す冷たさを含んだ声で、ボスは優しく続きを求めてくる。
「はい、たまきさん。……彼は所属する組織の代表として、私に話してきました。彼らはずっと、ご禁制の品を流す闇オークションの噂について追っていたそうです。その過程でウチを知り、同じ獲物を探していると知ったそうです。一緒に潰さないか、と誘ってきました」
神田は思わせぶりに口を閉ざし、深く息を吸い込む。
薄っすらと開かれた目に、意識が釘付けになる。
「私の店へ行く道をほぼ把握して、待ち伏せしてきたんです。彼は古い知り合いでして、闇オークションを潰したい、てのは本気です。我々と同じように熱量を持っていることは、私が保証します。それと、話した印象ですが、この店のことを知ったのは偶然だった様子でした。おそらく、手がかりにしていた誰かしらが客として来ていたんでしょうね。どこからの情報か聞いたら、ずいぶん食い気味に『タレコミじゃなくて自分たちが掴んだ情報だ』って言っていましたし」
「……持ってきた情報は、それで全てか?」
眼光鋭くベルモンドが問うと、神田はゆっくりと頷いた。
「あとは探し人の仲介を頼まれました。これとは別件で。……まずはボスに話を通して、向こうと会うかどうかだけ判断をしていただきたいのですが」
「神田さんは、なんにも条件や情報確認しないで、ただ持ってきただけなの?」
「そうですよ。余計な交渉なんて不要でしょう?私はただの伝言役です。もっとも、私がこの役を断ったところで、彼は……ふわっちは自分からお店へ来るつもりだったそうですが」
声のトーンを落とした犬山にも、全く動じずにこやかに神田は答えている。自分にかかっている信頼だけで、ボスに話を持ってきたのか。細かい細工を許さない相手だったのか、はたまた古い知り合いへの信頼が厚いのか。
いや、どうせ持って来られる内容なら、自分から運ぶ方が穏便になったから、だろうか。
「いいよ。日程はあとで詰めるから、その探し人のことも話してよ」
背もたれに体重を預けた犬山の態度に、神田は優雅に一礼して返した。
「ありがとうございます。探し人の仲介……といっても、預かった伝言は誰向けか知らされていないんですけどね」
「なにそれ」
「私が聞きたいくらいです。ふわっちも詳しく聞かされていないらしくて。ただ、みんなを集めて言ってくれってことでした。いいですか?」
――昼休みの紅葉狩り
神田 サイド
聞かされた通りの伝言を口にする。身構えてくれていた仲間たちは、揃いもそろって拍子抜けしたような、怪訝な表情を浮かべている。
そうだろう。聞かされた時、自分も同じ気持ちだった。
だから。
「……あはは、アハハハハハッ!」
突然響いた笑い声に、心底驚いた。
「ゆ、夢追さん?」
「ああ、ごめんごめん。つい……そっかあ。まさかそっちから気づいてくれたか」
先程まで眉根を寄せて口を一文字にしていた彼が、いつになく生き生きしている。
「嬉しいな。犬山、相手の話、結構信用していいと思うよ。アイツが居る組織なら、本当に手を組むつもりだと思う」
「うん、え?夢追君がそこまで断言する相手?」
「断言できるね。だって、ハヤトだもん」
興奮して跳ねる声、漏れてくる笑みに。
なぜこうも正気と反対の感情が乗っている。
「ねえかんちゃん。とりあえず、返事を送ってくれない?詳しくは後から伝えるからさ」
「はい、いいですけど」
「ありがとね、じゃあ、そうだな。うん、……こう返してね」
「何の変哲もないウミガメのスープ」
「再会の約束、覚えててくれたんだ」