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番外編 ロベルの日記2

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番外編 ロベルの日記2

こちらは二次創作であり、フィクションです。現実とは一切の関係がない、妄想を書き出した文章です。

現実と妄想の区別がつく方のみ、先へお進みください。

キャプション注意書きにあるように、今回はとくに解釈違い出やすいと思われます。シリーズの第六話みたいな解釈違いが。

他にもあり得ます。

楽しんでいただければ、幸いです。

久しぶりに、魔術師にまつわる情報が手に入った。だから、書こうと思う。何の役に立つか分からないけれど。何かの役に立つかもしれないから。そう思って、書き始めた日記だから。

最初は、ベルモンドさんが持ってきた依頼やった。あの夜、殺気立ったベルさんに気圧されたもんや。あっちの組織で問題が起こって、怪しい相手が交渉したい言うてきおったから、店を会談場所として使わしてほしい。相手を拘束して情報吐かせてほしいって依頼。俺が地下室の準備をしている間に会談も拘束も終わっとったから、どんなやり取りをしとったんか知らんけど。

そんで、や。交渉相手の片方はベルさんらが担当するから、もう片割れを頼むって言われて、ソイツを夢ちゃんと一緒に地下室に運んで縛り上げた。完全に拘束できたか確認し終わった頃に、ソイツ、目を覚まして、俺らを見て、言った。あれは。

俺に魔力を無理やり持たせた魔術師と、まったく同じことを言いおった。

あの魔術師が、おかしな儀式が終わった直後の意識が朦朧としている時に、無理やり頭に刻んできた長台詞。

聞いた途端、自分の体が硬直したのをよく覚えとる。心臓がうるさくて、なのに指先が冷えていく感覚。隣におった夢ちゃんが声をかけてくれなかったら、きっと自分でアイツの襟首掴んで聞き出しとったやろうな。

体が震えて、反応してるのバレバレな俺を、夢ちゃんは言葉だけで止めてくれた。

「ロベちゃん、こいつから聞き出したいことは何?」

聞いてきた夢ちゃんの顔、仕事をする尋問官の顔やった。見ているのは獲物だけの、冷たくて怖くて、絶対に敵に回しちゃいけないタイプ。

俺は聞かれたとき、動揺した。していたな。曲がりなりにも裏社会で生きていくなら、出来て当たり前のことすらできなかったんだから。

依頼と報酬をセットで決めなきゃいけません、て。

でも、あの瞬間はそんなとこまで考え付かんかった。ただ、質問に素直に答えるしかできなかった。

だから、こんな、今更、

ロベルは震えだした鉛筆を、テーブルに落とすように転がした。再びこみあげてきた感情を両手で押さえつけて、うめき声を上げながら一人で天を仰ぐ。

「なんで、夢ちゃんはそう優しいのよ」

閉じた瞼の奥では、勝手に昨夜の出来事が再生されていた。

「……ゆめちゃん、聞けた?」

「ロベル、誰にモノ言っているか分かってる?当たり前でしょ」

弱々しい聞き方に対して振り返りもせずに放つのは、低い圧のかかった答え方。さらなる問いかけを一切許さないで、夢追は尋問で付いた汚れを洗い流すために二階へ上がっていった。

「ロベル君?」

少し困惑したオリバーの呼びかけに、ロベルは何と答えたか記憶がない。やっと術師の手がかりを掴める。もう少しで、術を解けるかもしれない。頭の中は緊張とも期待とも分からない感情で満ちていた。

「ロベル、今いい?」

「う、うん。ええよ。今行く」

だから、夢追から呼ばれたとき、二人だけの話だと察してくれたオリバーと神田がどんな顔をしていたか分からない。

手すりを掴む手が震えていたことも、自覚していなかった。

いつも使う休憩室で、備え付けのテーブルに椅子。

「ロベルはさ、聞きたいんだよね。あの下っ端が言った気取った台詞を、誰から聞いたか。発言者の居場所が知りたいんだよね」

何気なく正面に座っている仲間は、普段通りに聞いてくる。

「心の準備は、できた?」

優しい言葉選びをしてくる拷問官の、真っ赤で冷え切った瞳。ゆとりがあるのに寸分の隙もなく作り上げた裏の顔。

同じ地獄の釜の飯を食った仲で、背中を預けられる親友。だけど、今だけは違う。

ここは、隙を見せれば食われる裏社会。

前に座るのは、裏社会で生き抜いてきた者。

「もちろん。聞き出してくれたんやろ?夢ちゃん」

喉の奥が張り付いて気持ち悪いのも、背中や腕や首筋、指先から足の指まで落ち着かないのも、興奮か怯えか判別できない震えまで。全てを飲み込んで、ロベルはまっすぐに夢追へ言葉を投げ返した。

相手に切っ先を向けられて、大人しく両手を上げていたら命は無い。返すべきは同じ刃。

「わざわざ聞いてくれるなんて、焦らすねえ君も」

「そりゃあもう特別なお客だからね。丁寧になるのは当たり前じゃん?」

ちょっとだけあごを引いて見上げるように角度をつけて笑えば、彼は赤い瞳に弧を描く。

「ならば、報告する前に。決めておかなくちゃならないことがある。ねえロベちゃん。僕ら、依頼だけ受けて報酬の話はしてなかったよね」

瞬間、心臓が跳ねた。ロベルは心臓を握られる感覚を久しぶりに味わった。

「そ、そうでしたね」

報酬。裏社会において、労働の対価は必ずしも金品とは限らない。互いが納得するならば、情報や行為や今後の動向への制約を持ちかけられることもザラだ。

夢追はテーブルに両肘をつく。組んだ手で口元を隠しながら問いかける。

何にするつもりだろう。もしかして、関係するのだろうか。自分の掛けられた術に。知られたのか?世界に禁忌は数あれど、よりにもよって裏社会で毛嫌いされる術をかけられたと。術師はもとより、術の対象まで拘束されて当たり前だっていうのに、自分はひた隠しにして、身近にいるみんなも迷惑をかけて、危険に巻き込みかねないってのに。いや、そもそも、……。

動揺を表面に出さないために、くっくと喉を鳴らして笑って見せる。しかし、こんな張りぼて、きっと凄腕の尋問官には見抜かれているのだろう。

自然に下がっていた視線を、無理に戻す。

完璧に作りこまれた顔から、彼の感情なんて読み取れない。

「技術と仕事に対して、正当な報酬を払う準備はあるよ。ええもちろん。ただ、俺の懐事情は組織のボス並にとはいきませんしね、さすがに。夢ちゃんもベルさんから、いやたまきさんからか?この場合。ともかく、上からの仕事のついでに聞いてくれたコトや、ちょっとは割り引いてくれると助かるんだけど」

なるべく平静を装い、軽く肩もすくめて見せる。心臓がうるさい。口は勝手に動いてくれる。けれど、頭の中では思考とも言えない懸念や不安や後悔が湧き出て止まらない。

そうだ、頼んでしまったのだった。術師と繋がりがある人間から、術師の居場所を聞きだしてくれと。尋問の過程で、夢追は知ってしまっただろうか。

裏社会でさえ禁止した術を、知られただろうか。

この身にかけられた禁術を。

ほんの数秒。目の前に座る交渉相手が「ふうん?」と間を繋ぐだけの相槌を打つくらいの時間しか過ぎていないのに。頭の中に巡る考えが、背筋を凍らせる。

テーブルに置いていた手が震えているのが視界に入る。なんでこんな緊張するんだろう。自分にかけられた術の危険を知った時も、伝手もコネもなくこの街の裏社会へ飛び込んでいった時も、雨に打たれて店の裏口にもたれかかっていた時も、どうにかなるって思えた。もっと客観的でいられた。なのに、どうして。

「なんで、こん、な……震えるんだろう。おれ」

「そりゃロベルが勝手に不安がってるだけ。夢追がそんな冷たいヤツだって思ってる?」

「ふぇえ?」

顔を上げたら、手にあごを乗せて困ったような表情をする親友が居る。

思わず出た変な声に、夢追は笑った。

夢追 サイド

「そりゃロベルが勝手に不安がってるだけ。夢追がそんな冷たいヤツだって思ってる?」

「ふぇえ?」

思わず素でツッコミを入れたら、ロベルは完全に気が抜けた声を出した。

「別にぼったくろうなんて思っちゃいないよ?僕がそんな薄情な奴だと思ってんの?ロベルは」

完全に不意打ちを食らったロベルは、困惑して意味のない声を漏らす。「しょうがないねえロベルは」なんて呆れを込めて軽やかに笑いながら、夢追の頭は冷静に計算する。

尋常でない不安、怯えと言ってもいい。ここまでロベルを追い詰めるのは何だろう。追ってきた術師を見つけられなくなる不安?そんなものを考えるタチじゃない。震えを隠せなくなったタイミングは、報酬について言及した時だった。口に出したことは追及されやすい。ならば逆に懐事情を持ち出してきたのはフェイクで、本音は金銭以外の何かを報酬に持ち出されるのが怖い?

なぜ夢追が持ち出す『金銭以外の報酬』が怖い?術師の居所を聞き出してほしいと願ったのはロベル自身なのに。

いや、本当に術師の情報は欲しいのだろう。依頼した時のロベルは、欲しい情報の他は考えられていなかった。報酬について指摘された途端に、ロベルは報酬として求められることに自分の不利益が含まれる可能性に思い当たったのか?夢追に……いや、この場合夢追に仮定しなくても成り立つか。他者に知られたくない情報?

ロベルは尋問した下っ端を知らず、尋問された人間もロベルを知らなかった。ならば、ロベル自身の行いや過去ではないだろう。術師に関連することか。

「じゃ、じゃあ夢ちゃんはどうするつもり?」

しかして、夢追の思考は弱々しい問いかけによって途切れた。まばたきをして思考の焦点を現実に合わせる。

「別に?どうもしないよ。仕事として受けたからには、はっきりさせたかっただけ」

「はああ?」

「そんな顔しないでよ。その場で決めなかったのは僕も悪かったしさ。お互いさまじゃんね」

詰めるのを止めて話してみても、ロベルはまだ怪訝そうな顔のままでこちらを見てくる。緊張のピークは去ったが、とても本調子ではない仲間の様子に、夢追は首を傾げた。

「僕から一つ提案があるんだけど。あのねロベちゃん。聞き出しはした。したけど、おんなじことを『ギャングスター』にも報告してんの。あいつの依頼内容にも被ったから。そんで、尋問した下っ端が言うには、術師は人身売買も計画している。つまり、覚えてる?『暗部』も追っている事件の首謀者である可能性が非常に高い」

「回りくどく言ってくるってことは、なんか説得しようとしてるんちゃうか」

「正解」

パンッ、と小気味よく手を打ち鳴らす。だいぶ調子が戻ってきた親友に、つい夢追は交渉の最中だということも忘れて普通に談笑していた。

「わかってんねえロベル。その通り、言いくるめようとしてます私」

「なによもう。どうする気よ」

「お前、居場所聞いて行くつもりでしょ?尋問してたしかに聞き出したよ。聞き出したけど、当人も行き方をよく理解していなかったんだ。多分、魔術や違法な方法で記憶の改ざんや隠ぺいをされている。だいたいの場所の目星は付いたけどね。でも、偽造するにしても力業で押し通すにしても、危険がすぎる。だから、互いの利益のために『ギャングスター』と『暗部』と、僕ら組織の動きを利用してくれって提案させてもらおうかな」

急な展開に珍しくついていけない顔をするロベルに、つい夢追も本音をこぼしていた。

「俺がもらいたい報酬は、ロベルの安全だよ」

ため息と共に瞼を開く。当たり前に、いつもと変わらない休憩室が目の前に展開される。小さな流し台に、並べられた色とりどりの、6つのマグカップ。オレンジ色と赤色が隣り合って乾かされている。

「夢ちゃん。……まったく、優しすぎよ」

後ろのドアが音を立てているのにも気づかないで、ロベルは呟いていた。

感謝を述べる あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

長らく更新できていなかったのに、いいね、ブックマーク、スタンプやコメントまでいただけて、大変喜んで踊っています。一つでも反応があるだけで嬉しいのです。

この先の展開と付け足し場面は考えていますが、どこから手を付けていくか迷っています。

それと一つお聞きしたいのですが、みなさんは『派生』なる二次創作の注意書きをご存知ですか?一話限りですが書こうと思っています。

感想なんてどれだけでも、いくらでも送ってください。お待ちしています。何度も見返して元気もらっています。これまで送ってくださった方々、ありがとうございます。

本編を読んで、楽しんでいただければ幸いです。