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炎が消えても冷めない熱

Fate Grand Order インドラ&女夢主 — www.pixiv.net · All chapters

炎が消えても冷めない熱

カチッ

手に持った着火剤で、蝋燭に火をつける。

「…」

照明を落とした真っ暗なマイルームを、蝋燭の炎の淡い光だけが照らし出す。

まず、何故私がこんなことをしているかというと…

プシューッ

「ん?何をしている?」

「あ、インドラ様」

タイミングがいいのか悪いのか、インドラ様がマイルームを訪ねてきた。

「蝋燭か?わざわざ照明を落としてまで、何をやらかす気だ」

「やらかすって何ですか…やらかすって」

「またくだらん儀式でも行うつもりであろう?」

「やりませんよ!」

まったく…私を何だと思ってんだ、この神様。

ちなみに、何かをするつもりでこんなことをしてるわけじゃない。

「この前やった百物語で使った蝋燭が、余っちゃったんです。しかも百本も…」

「…ああ、あれか。たまたま神が居合わせて、何とかなったからいいものを。あのようなものを軽率に執り行うでない」

「…その節は、本当にありがとうございました」

この蝋燭は、この前おっきーたちと百物語をした時に使った蝋燭だ。

百物語をした結果…いろいろあってインドラ様に助けてもらうことになったのだが、それは一旦置いておくとする。

百物語のルール上、蝋燭が燃え尽きる前に火を消すため、百本すべての蝋燭が使い途中のまま残ってしまった。

「もったいないので、使おうと思いまして」

「…ま、ただ炎を眺めているだけならばよいが」

ため息をつきながらも、事情は納得はしてくれたらしいインドラ様。

収納にしまい込むのも場所を取るので、使えるものは使い切ってしまおうと思ったのだ。

「…それにしても」

ベッドに腰掛け、蝋燭の炎を見つめるインドラ様。

「お前たち人間は、不思議なものだ」

「不思議?」

「暗闇を照らす灯りを、蝋燭や焚き火の炎から電気に移り変えたのは、効率や便利さを求めたからであろう?だというのに、わざわざ照明を消してまで非効率な蝋燭の炎を眺めるようになろうとはな」

「…よくわからないんですけど、何故か落ち着くんですよね。蝋燭の炎や焚き火を眺めてると」

単純に明るさを求めるなら、電気で十分だ。

でも、暗闇に揺らめく炎を眺めているだけで心が落ち着く気がする。

本来生き物は、炎を恐れるはずなのに。

「誕生日ケーキに、年の数の蝋燭を立てたりしますからね」

「聞いたことはある。だが、年を重ねるごとに蝋燭の数が増えていくのであろう?成人を迎える頃には剣山になる未来しか見えんが」

「数字の形の蝋燭がありますから、2カ所刺すだけで済みますよ」

「おい、数はどうした数は」

「剣山になったケーキなんて、誰も食べたがりませんよ。見た目も悪いですし」

まず、蝋燭が剣山みたいに刺さってるケーキを想像したインドラ様の発想が素直でかわi…ん“ん“っ…。

怒るだろうから、言わないけど…。

「誕生日ケーキに年の数の蝋燭を刺すのは、古代ギリシャの女神アルテミスへのお供え物が起源らしいです」

「アルテミス…ああ、あの月の女神か」

「はい、あのアルテミスです。煙が天に昇ることで神様に願いが届くとされていて、願い事を込めて火を吹き消す文化が生まれたそうです」

「神へ願うためか…いつどの時代も、人間のその行為は変わらんようだな」

「中世ドイツでは、魔除けの意味合いとして信じられていたみたいです。誕生日には悪魔がやってくるとされていて、蝋燭の火をつけて、誕生日を迎えた子どもを守る風習があったんだとか」

「…ま、確かに炎は古来より、不浄のものを清めるとされている。あながち間違いではなかろう」

「そこからアメリカに伝わって、年の数の蝋燭を刺す風習に変わったものが、日本にも伝わったらしいですね」

まさか、あのアルテミスが起源だったなんて思わなかった。

確かに、昔から神事には篝火が使われてるし、それが起源だとしても不思議じゃない。

でもまさか…あのアルテミスが起源とは…。

《はぁい♡マスター?私の供物が起源なのが、そんなに不思議?私、これでも古代からの女神なんだからね?忘れちゃダメだからねー?》

はい、忘れません…。

肝に銘じておきます…。

「…この数の蝋燭を、すべて部屋の照明の代用として使い切る気か?」

「そのつもりでは、ありますけど…」

床に無造作に置いてある、大量の蝋燭が入った袋を見つめる私とインドラ様。

確かに、使い切るのはいつ頃になるのか…想像するとちょっと気が遠くなりそうだ。

一応小さめの蝋燭ではあるのだが。

「…ならば」

「?」

「少しばかり借りるぞ。それから、今宵は神の部屋へ来い。よいな?」

「あ、はい…」

ヴァジュラたちにいくつかの蝋燭を持たせ、インドラ様は部屋から出ていった。

インドラ様の部屋でも、使ってくれるのかな?

だとしたら、かなりありがたい。

いやまずその前に…私が蒔いた種なのに、さも当たり前のように付き合ってくれてる…。

インドラ様、何だかんだ優しいよなぁ…。

コンコンッ

「インドラ様、参りました」

「入れ」

その日の夜、私は言われた通りインドラ様の部屋を訪れ、ドアをノックする。

返事を確認すると、ドアを開ける。

プシューッ

「あっ…」

ドアを開けた私は、思わず声を上げる。

先程インドラ様が持っていった蝋燭。

それに火が灯され、淡い光が部屋を照らしている。

一本だけではなく、照らす場所を考えて何箇所にも置かれている。

何か…綺麗だなぁ…。

「この神が、わざわざお前の後始末に付き合ってやったのだぞ?感謝し讃えるがよい」

「それは本当に…ありがとうございます」

普通に考えれば、インドラ様が付き合う義理なんて何もないしね…。

また人間が馬鹿なことしてるから仕方ない…とでも思ったのだろうか?

「いつまでそこに突っ立っているつもりだ」

「あ、すみません、……ッ!?」

慌てて振り返り、ドアを閉めたその瞬間…閉まったドアに映った私の影が、ひときわ大きな影に呑み込まれる。

恐る恐る後ろを向くと…。

「…ッ!?」

伸びてきた手に顎を掴まれ、唇を塞がれた。

そして、あっという間に口内に侵入する舌…。

「んっ……ッ…」

舌を執拗になぞられ、体がびくりと反応する。

体の奥から生まれてくる火種が、じんわりと全身を蝕んでいく…。

今まで嫌という程刻み込まれた快楽で、体が疼いてきて仕方ない…。

「…ッ……はぁ…ッ」

クチュリ…と音を立てて、唇が解放される。

そしてそのまま体を抱き上げられ、ベッドに寝かせられた。

仰向けの視界に映るインドラ様を、蝋燭の柔らかい光が照らし、その顔に薄く影が差す。

「…神の人間は世話が焼けることこの上ない」

「…ッ」

「だが、まあよかろう…この炎が燃え尽きるまで抱いてみるのも一興か」

「……え?」

ちょっと待って?

この神様…今何て言った?

炎が燃え尽きるまで抱く?

…

…

いや、無理!!

私を殺す気か!?

「ん?何だ、お前の顔も火を吹いたようだな」

混乱して顔や耳まで熱くなった私を見下ろし、からかってくるインドラ様。

でもその目に、徐々に熱が籠もり始める…。

まるで、愛おしいものを見つめるかのような…。

「さて…楽しむ時間はたっぷりあるが、かといってそう無為に過ごせまい。早いところ、お前を極上の快楽に堕としてやるとするか」

「ちょっ…インドラ様…ッ!?」

部屋を灯す、いくつもの蝋燭。

それらがすべて縮み切って炎が消えた後も、意識を飛ばすことすら許されずに、朝を迎えることになる私なのであった…。

〜おまけ〜

プシューッ

「失礼しまs…おや?」

諸用でマイルームを訪れたアルジュナ。

だが、部屋の主であるマスターはというと…

「…あ、アルジュナ?」

床に四つん這いになっている。

そしてその手には、雑巾。

「すみません、お掃除中でしたか」

「いや、大丈夫だよ」

ゆっくりと立ち上がるマスターだが、少しふらつきながら腰をそっと押さえる。

「大丈夫ですか?」

「あ…うん、大丈夫…」

どこか気まずそうに、水の入ったバケツに雑巾を入れるマスター。

その様子を見たアルジュナに、ふと素朴な疑問が芽生えた。

「いつもお掃除は、ハンディモップを使っていらっしゃいましたよね?」

「…ハンディモップだと取れなかったんだ」

「取れない?」

「…煤」

「煤?」

「…この前いろいろあって、蝋燭を使ったんだ。そしたら思ったより煤が出て…」

「ああ、煤汚れですか。でしたら、確かに水拭きの方がよさそうですね」

納得するアルジュナだが、当のマスターは気まずそうに視線を逸らしている。

煤汚れが出来る原因となった、蝋燭…。

その蝋燭をインドラに渡したせいで、昨夜は朝までじっくりと相手をさせられる羽目になった。

おかげで、寝不足と腰の痛みを抱えながら拭き掃除をしなければならなくなった。

そして自分を訪ねて来たのは、よりによってインドラの息子のアルジュナ…。

つまり、バレないように必死なのだ。

「…そういえば、私に何か用だった?」

「あ、これは失礼しました。この前のイベントで手に入れた素材なのですが、在庫が妙に減っているのです」

「……使った覚えはないんだけど」

「はい。恐らく、勝手に持ち出した者がいるかと」

「……大体見当はつくけどね」

素材を勝手に頂戴する人物…。

マスターが思い浮かべるのは、もはや常習犯ともいえる英霊だ。

「ええ。私も心当たりのある人物がいます。よろしければ、私からその人物を問い詰めてもよろしいでしょうか?」

「…いいの?」

「もちろんです。勝手に持ち出したのなら、きっちり頭数を揃えて返していただかなければなりませんから」

「…うん、私が言うより効果がありそうだから、お願いしちゃおうかな」

「わかりました。では早速行って参ります」

「…ありがとう。助かる」

マスターの承諾を得たアルジュナは、部屋を出ていこうと体をドアの方向に向ける…。

プシューッ

「ん?来ていたのか、我が息子よ」

「…インドラ…神?」

目の前のドアが開いて現れたのは、自身の父親であるインドラだった。

「…ッ!?」

「ん?何だ、掃除をしているのか?」

「……はい」

水に浸けた雑巾を絞っていたマスターは、急に現れたインドラに動揺しながら答える。

いや、インドラが来るのは日常なのだが、何しろ今この部屋にいるのは…

「ーーー」

その息子であるアルジュナだ。

タイミングが悪すぎる父親の来訪に、すっかりフリーズしてしまっている。

「何だお前たち…何があった?」

何も知らないインドラは、明らかに様子のおかしい息子とマスターを交互に見る。

はっと我に返ったアルジュナは、目の前のインドラに一礼する。

「も、申し訳ありません、インドラ神…私は、これから用事がありますので…ッ!」

「ん?何だ、もう行くのか」

「はい…では、失礼致します」

そう言うと、風のように去っていくアルジュナ。

ある程度離れた場所に来て、足を止める。

「うっ…」

マスターの部屋を訪れるインドラを見てしまったせいか、悲鳴を上げる胃。

たまらず、近くの壁に寄りかかって項垂れる。

素材泥棒を問い詰める前に、薬を飲まなければ…。

私の胃の方が、音を上げている…。

そう思ったアルジュナは、胃薬を飲むためにふらふらと自室へ戻っていくのだった…。

END