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まあ、事実ではある

Fate Grand Order インドラ&女夢主 — www.pixiv.net · All chapters

まあ、事実ではある

「失礼しますマスター!」

「何とかしてー!」

「えっ?どうしたのヴァジュラ…」

マイルームでのんびりしていると、突然ヴァジュラたちが壁をすり抜けて、中に飛び込んできた。

いつもならドアをきちんと開けて…何ならインドラ様と一緒に来るはずなのに。

インドラ様に、何かあったのだろうか?

「インドラ様がどうかしたの?」

「ぼくたちでは手に負えないのです」

「ヴァジュラたちの手に負えない!?」

「とにかく来てー!」

「わk…って、うわぁっ!?」

わかったと返事をし終わる前に、二体がかりで体を持ち上げられて物凄い速さで連れて行かれる私…。

「ちょっ…ねえ!一体何があったの!?」

ヴァジュラたちに運ばれながら、説明を求める。

「いくら呼びかけても聞いてくれないんだよー!」

「聞いてくれない…?」

「もしかしたら、あまりのショックで耳に入らないのかもしれませんが」

「ショック…?」

ヴァジュラたちの言葉を聞いても、さっぱり真相が見えてこない。

そして気づけば私は、インドラ様の部屋の前に着いていた。

「インドラ様?」

床に降ろされた私は、部屋のドアをノックする。

…が、返事はない。

「まず、訳あっていつものインドラ様のお部屋とは色々と違ってしまっています」

「え?」

「まあ…見ればわかるよ」

よくわからないヴァジュラたちの言葉に困惑する私だが、とりあえずドアを開けてみる。

「えっ…」

ドアを開けた瞬間、私はその場で固まる…。

「………蓮の、花?」

まず目に飛び込んできたのは、鮮やかに咲き誇る大きな蓮の花。

青々とした色の葉。

私の背丈以上に伸びた、たくましい茎。

もはや部屋とは言えず、ドアを開けた先は一面の蓮畑が広がっていた。

「ヴァジュラ?何…これ…」

「インドラ様が作り出した空間です」

「インドラさまと蓮…マスターなら知ってるよね?」

「あ、うん…インドラ様が…わけあって蓮の茎の中に隠れてたって逸話だよね?」

「はい。その時と同じです」

「引きこもっちゃったんだよ。蓮の中に」

「えぇ…」

ヴァジュラが『あまりのショックで』って言ってたけど、冗談抜きで何があったんだインドラ様…。

それに、蓮の中に隠れてるって言ったけど…

「………どれ?」

蓮が多すぎて、どこにインドラ様が隠れてるのかわからない…。

とりあえず、蓮をよく見てみよう…。

グチャッ

「わっ…」

部屋に一歩踏み出した私の足が、ぬかるんだ泥にとられそうになる。

蓮は泥の中に根を張って成長するって聞いたことがあるけど、そんなところまで再現しないで欲しい。

あまり深くないのが救いではあるけど、足首の辺りまで泥水に浸かっている。

泥のせいで足元が安定せず、進みにくい…。

「…っと、危ない…」

ぬかるみに嵌まらないように、近くの太い茎に掴まりながら奥に進んで行く。

「インドラ様ー?」

呼びかけてみるが、返事はない。

聞こえるのは、私が泥水の中を歩く水の音だけ。

どこにいるんだろ…。

私の声だって聞こえてるはずなんだけど…。

探す方向を変えようと、すぐそばにあった茎に手をかけた瞬間…。

「…ッ!?」

突然、目の前の景色がぐにゃりと歪み出した。

『マスター!?』

『どこ行ったのマスター!?』

「、…」

どこか遠くの方から、私を呼ぶヴァジュラたちの声が聞こえてくる。

だが私の目の前には、ただただ真っ暗な空間が広がっているだけだ。

ここ…どこ?

辺りをキョロキョロと見渡していると、後ろから何かに包み込まれる感触がした。

「!」

私の体を包むもの…。

その正体を即座に察した私は、ひとまず見つかったことに安堵し、後ろにいる存在に声をかける。

「…ここにいたんですね」

「………」

「ヴァジュラたち、心配してますよ?」

「………」

「…何があったんですか?」

「………」

声をかけても返事はない。

私の体に回っている…腕の力が、ほんの少し強くなっただけだった。

「…とりあえず、ここから出ませんか?」

自分の体に回る腕に、そっと手を添えて擦る。

何があったのかわからないが、今のインドラ様から事情を聞き出すのは無理そうだ。

とりあえず、ここから出てヴァジュラたちから詳しい話を聞くしかない。

「………」

「!」

相変わらず何も返事がないのだが、擦っていた私の手の上に大きな手が重なる。

すると、真っ暗だった空間にうっすらと何かの景色が浮かび上がってきた。

いくつもの大きな蓮の花…どうやら、今私たちがいる蓮から見える他の蓮のようだ。

茎の中にいると、花ってこんなに大きいのか…。

その光景に感心していると、また先程のように視界がぐにゃりと歪み出した…。

「インドラさま!?それにマスターも!」

「どこにいたのー!?」

「あ…ヴァジュラ」

気がづくと、そこはいつものインドラ様の部屋。

ヴァジュラたちが、私と…私の後ろにひっついているインドラ様に詰め寄ってきた。

どうやら、引きこもっていた蓮の中から出てきてくれたようだ。

「えっと…何があったのか聞いてもいい?」

私の質問に、ヴァジュラたちが若干気まずそうに事情を話し始めた…。

「あぁ…うん…なるほどね…」

事情を聞いた私は、それはもう深く納得する。

何に?

インドラ様が私にひっついてる理由に。

「…タイミングが最悪でしたね」

「………」

ヴァジュラたちの説明はこうだ。

今朝、廊下でマーリンと会ったインドラ様。

それはそれは楽しそうな様子のマーリンから、私との関係をつつかれまくったらしい。

我慢の限界がきたため、マーリンの頭上に軽く雷を落としたインドラ様(ただしあっさり防御されたらしい)。

退散したマーリンに向けて『これだから千里眼持ちは碌な者がおらん』と思わず独り言が出てしまったのだが、そのタイミングでインドラ様の後ろから現れたのが…アルジュナだったらしい。

もちろん先程の独り言は、ばっちりと聞こえてしまっていた…。

慌てて弁明しようとするも、アルジュナはどこか複雑そうな表情をしただけで、その場から立ち去ってしまったとのこと…。

息子に嫌われた…そう思い込んでしまったインドラ様は、ショックのあまり蓮の茎の中に引きこもってしまった…。

と、いうわけだ…。

いや、これ…ただの事故では?

あとこれって、千里眼持ちに風評被害もたらしたマーリンが戦犯なのでは?

うん、こうなったらマーリンのせいにしよう。

インドラ様は、ただ運に見放されただけだ。

ただ、インドラ様も千里眼(らしきもの)を持ってはいるんだけどね…。

強いて言うなら、ちょーっと主語が大きかったことくらいかな?

まあとにかく、マーリンのせいってことにしよう。

「大丈夫ですって。アルジュナは思慮深い性格ですから、そう簡単に実の父親を嫌ったりなんてしませんよ」

「………」

私に抱き着いたまま、全然喋らないインドラ様。

その頭を優しく撫でて説得する。

「ただ、誤解を解く必要はありますから。アルジュナに、ちゃんと事情を説明しに行きましょう?」

「………」

すると、インドラ様が無言のままゆっくりと立ち上がった。

そしてそのまま部屋を出て行こうとする。

私を抱えたままで。

「ちょっ…ちょっとインドラ様!私のことは降ろしてください!」

「…何故だ」

あ、今回初めて喋った…。

いや、じゃなくて!

「この状態でアルジュナのところまで行くのは、どう考えてもダメですよ!」

「何がダメだという?」

「人間(しかも女)を抱えて息子を訪ねに行くのなんて、話し合いに行く姿勢じゃありませんよ!そんなの見たら、いくらアルジュナでも対談拒否してもおかしくないです!」

「………」

どうやら納得はしてくれたらしい。

渋々…といった形で、私を降ろすインドラ様。

「…着いては行きますよ?ただ、アルジュナが気まずくなるかもしれないので、本題に入る頃に席を外しますけど」

「おい待て…何故肝心な時に席を外す?」

「第三者がいない方がいい時もあるんですよ」

「………」

どうやら、肝心な説明の時に私が席を外すのが不安になる…いや、気に食わないらしい。

ただ、インドラ様+私+アルジュナの構図で話すのはアルジュナの胃が心配になる上に、表面上での納得しかしてくれない可能性がある。

断じてお前のことを言ったんじゃない…という本心を、インドラ様が自分の口で伝えないとダメな気がする。

「…なら、台本を決めておきませんか?」

「…台本?」

「あ、演技とかじゃないですよ?何が何でも伝えなきゃいけないことを、簡単にまとめるだけです。そうすれば、何から話せばいいのかなんて悩まなくて済みますから」

「…別に、神は悩みはせん」

「なら、このまま行きますか?」

「…まあ、お前がそこまで進言するのであれば、保険として考えてやらんこともない」

神様も保険って言葉使うんだ…。

あと、話すのはあくまでもインドラ様ですよ?

「じゃ、まずは作戦会議だねー」

「『アルジュナに伝えたいこと』ということで」

「ちょっと待って。そのホワイトボードはどこから出てきたの?」

「えー?だって会議ってやつには、これが必須なんでしょー?」

「必須?まあ…使いはするけど…」

「通りすがりの真祖…と名乗る英霊が、そう言っていましたが」

「何してんの、あの方は…」

いつの間にか部屋に顕現したホワイトボードに、ヴァジュラたちがマジックで色々と書いている。

一旦出所が不明なホワイトボードのことは気にしないことにして、アルジュナの誤解を解くための作戦会議を始めることにした…。

〜食堂〜

「あっ…いましたよ、インドラ様」

「…ッ」

食堂に来た私とインドラ様は、奥の席に座るアルジュナを見つけた。

そばにはビーマが立って、アルジュナと何かを話している様子だった。

「アルジュナ、ビーマ」

「おや、マスター……ッ!?」

私が近づいて声をかけると、こちらを向く二人。

そしてアルジュナは、私の後ろにいるインドラ様に気づき、表情が固くなる。

「よう、マスター…っと、インドラ様もご一緒か」

どうやらビーマは、事情を知っているらしい。

アルジュナと同じような反応をしている。

「ビーマ…ちょっといいかな?」

「!」

すると、何かを察した表情になるビーマ。

「…ああ、わかった。すまんアルジュナ、俺は少し席を外す。厨房でいいか?マスター」

「うん、大丈夫」

「ビーマ兄様…ッ」

「大丈夫だ。すぐ戻る」

どこか不安そうな声を上げるアルジュナを、優しく宥めるビーマ。

そして私はビーマと移動する時に、インドラ様にアイコンタクトで伝える。

(今ですよ)

「…ッ」

この後のフォローは、もうヴァジュラたちに託すしかない。

上手くいくことを願って、私は厨房に入る。

「…ごめんねビーマ」

「いや、気にするな。インドラ様から、何か話があるんだろう?」

「…アルジュナから聞いた?」

「ああ。千里眼持ちに碌な奴がいない…みたいなことをインドラ様が言ってたらしいが…本当か?」

「本当なんだけど、事情があってね…」

私はインドラ様がマーリンにおちょくられて苛ついた時に、ついうっかり出てしまった言葉だということを説明する。

「あー…なるほどな」

「まあ、インドラ様の言い方が悪かったのも事実なんだけどね。千里眼持ち全員に同じことを思ってるわけじゃないんだよ」

「タイミングが悪かっただけってやつか。インドラ様の運が悪いのか、アルジュナの運が悪いのか…」

「強いて言うなら、両方かなぁ…」

私はビーマと一緒に、ホールの様子を覗いた…。

「…お前に伝えておくべきことがある」

「…はい」

いつものように、特に断りを入れずにアルジュナの正面の席に腰掛けるインドラ様。

アルジュナは特に反応を示さず、固い表情のままインドラ様の言葉を待っている。

「……今朝神は『千里眼持ちに碌な者がおらん』といった発言をした。それについては…あの場にいたお前も、聞いていたな?」

「……はい」

アルジュナの返事を聞き、しばらくの間を置いて言葉を紡ぐインドラ様。

「………神の物言いに…問題があった」

「………」

「…神に軽口を叩いた挙句…姿を眩ませた、夢魔の術者に向けたものだ」

「………」

インドラ様が非を認める…。

それは普段なら、まずあり得ないことだ。

先程の作戦会議で、私が再三インドラ様にアドバイスしたからでもあるのだが…。

〜回想〜

『おい待て、何故神が非を認めねばならん』

『事実だからです。今回インドラ様が碌な者じゃないと思った千里眼持ちは、マーリンのことだけですよね?』

『まあ、そうだが…』

『なら、あの場で責めていいのはマーリンだけだったはずです。悪気がないとはいえ、千里眼持ちの英霊全員に向けた言葉になってしまったのは、残念ながらインドラ様の過失です。それは何があっても認めなければいけないと思います』

『この神が、そこまでする必要があるのか?』

『認める必要はあります。ただ原因は、マーリンのせいということにしてしまって問題ありません。それも事実なので』

『……ならばよいか』

『ただし、マーリンを叩き過ぎるのは却って悪印象を与えてしまいます。マーリンに散々おちょくられてムカつく気持ちは本当によくわかりますが、あくまでも愚痴を言うのではなく、誤解を解くのが目的ですから。他責は程々にしてくださいね?』

『チッ…恨めしいことこの上ない…』

〜回想終わり〜

最後まで物凄く嫌そうにしていたインドラ様だったが、他責ばかりしていては、最悪アルジュナから顰蹙を買いかねないと考えたのか…。

自分の言い方が悪かったことを、アルジュナの前で認めた。

そして…

「………断じて、お前では…ない」

ついに、言った…。

インドラ様が一番言いたかった『お前に向けて言ったわけではない』という言葉。

「………はい」

「…ッ」

しかしそれを聞いたアルジュナは、先程と一切変わらない返事を返す。

インドラ様の本心が、響かなかったのだろうか?

息子の無機質な声に、先程以上に表情が険しくなるインドラ様。

「しかと…理解致しました」

「…」

「私は、マーリンの姿は確認しておりません。インドラ神のお言葉通りならば、すでに逃亡していたからなのでしょう」

「…」

「しかし…私は貴方が今おっしゃったことを、疑うようなことは致しません」

「…!」

「貴方は無礼を受けたにも関わらず、ご自身の立ち振る舞いを顧みた上で、私に説明をしてくださいました。でしたら貴方を…実の父を、私が信じないでどうするというのです」

「…ッ!!」

アルジュナからの、インドラ様への言葉。

それは本心を話してくれた父親に対する、感謝に満ちたものだった。

「よく言えたな、アルジュナ…やっぱりお前は立派な奴だ。流石は俺の自慢の弟だ」

「あぁ…ほんっとによかった…」

実の弟を心から賞賛するビーマ。

安堵から、厨房の壁に寄りかかる私。

とりあえず、もう出ていっても大丈夫そうだ…。

そう思った私たちだったのだが…。

「…いえ、そもそも」

「…ん?」

「先程、マーリンから軽口を叩かれた…とおっしゃいましたね?」

「ん…まあ、な…」

「一体何を言われたのです?」

「…いや、まあアレだ…単なる軽口だ。そう大したことでは…」

いじられる内容は、ほとんどが私とのこと。

インドラ様からしても、どうやらアルジュナには言いづらいらしく、口ごもる。

「大したことです!神であるインドラ神に、よくもそのような無礼を…!」

「…おい、急にどうした?」

マーリンの諸行を聞き、次第に語気が強くなるアルジュナ。

「確かに、あの夢魔は不敬にも程がありますね」

「それは同意ー!あいつ、いっつもインドラさまにあんな感じで絡みに来るよねー!」

「おい、ヴァジュラ…」

アルジュナの言葉に便乗したヴァジュラにより、わりと普段から受けている悪戯であることが、あっさりアルジュナにバラされてしまう。

「いつも!?常日頃から受けていると!?」

「あ、あー…まあ、事実ではあるな」

「…ッ!?」

その途端、ガタッと椅子から立ち上がるアルジュナ。

「流石に聞き捨てなりません。申し訳ありませんインドラ神…今からマーリンを捕まえて礼儀というものを叩き込んで参りますので!」

「お、おい…アルジュナ!?」

そう言うとアルジュナは、インドラ様の制止も聞かずに物凄い速さで食堂から出ていってしまった。

しかも、それだけではない。

「失礼、インドラ神。アルジュナ殿の口から『マーリンを捕まえる』という言葉が聞こえたような気がしたのですが、お間違いありませんか?」

「…ん?」

インドラ様のそばにやって来たのは、少し遠くから一部始終を見ていたらしい、ガウェインだった。

「確かに、そう言ったが…」

「それは何とも素晴らしい!ぜひ私も参加させてもらうと致しましょう!トリスタン卿やランスロット卿にも声を掛けなければ!ではインドラ神…私はこれで失礼致します!」

「???」

まさに太陽のような眩しい笑顔でインドラ様へ話しかけ、そして先程のアルジュナのような物凄い速さで食堂から去っていったガウェイン。

そして状況が呑み込めず、ひとり席に残されたインドラ様…と、開いた口が塞がらない私とビーマ。

「うーん…これはこれで、よかった…のか?」

「うん、まあ…マーリンだし、仕方ないかな」

アルジュナが明後日の方向に走り出したが、とりあえず和解には成功した。

まずはインドラ様を労おうと思った私は、ひとまず厨房から出て、インドラ様のいる席へ向かうのだった…。

〜その頃のマーリン〜

「おや、何やら私のもとに不穏な勢力が…」

「その通りです、マーリン」

「いや待った待った!来るのが早くないかい!?しかも円卓の騎士たちまで一緒にいるじゃないか!」

「貴方をとっちめる機を、私たちが逃すはずがありません」

「アルジュナ殿の千里眼のおかげで、容易く貴方の居場所が掴めました…」

「さあ、アルジュナ殿のお父上への無礼…そして日頃の我らの不満を、今ここで晴らさせていただくとしましょう!」

「乱暴だな、君たちはぁ…ッ!!」

END