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神と神と神敵

Fate Grand Order インドラ&女夢主 — www.pixiv.net · All chapters

神と神と神敵

「………」

停止した召喚サークルを見つめた後、私は無の境地ともいえる心情で召喚室から出ようと背を向ける。

爆死した?いや、そうじゃない。

何て反応すればいいのか、わからないだけ。

ドアを開けて廊下に出る…。

「やっと出てきたか」

「え…」

開けたドアの目の前で、インドラ様がこちらを見下ろして立っていた。

「敢えて問うぞ、人間」

「…」

「『どうだった』?」

「いや、いちいち言わせないでください!」

私の噛みつくような反応に、にんまりと意地悪そうな笑みを浮かべるインドラ様。

「何をそこまで荒れる必要がある?この神が来てやったのだぞ?」

「そーだそーだ!」

「この上ない幸福ですよ」

「だから…ッ!いや、もう…もはや何て反応したらいいのか、わかんないんですよ…」

「おい、そこまで意気消沈することはなかろう」

インドラ様が言った『この神が来てやった』というセリフは、もちろん今ここにインドラ様がいることを言ったわけじゃない。

私が今召喚室にいたのは、周年の福袋ガチャを回していたからだ。

まだお迎え出来ていないエフェメロスとデメテルのどちらかを喚べるチャンスと思った私は、2騎の召喚に挑んだ。

挑んだ…のだが…。

「何で残り1/3を引き当てたんだろ…」

「わざわざこの神が来てやったことに、何か不満があるのか?」

「インドラ様、宝具は既にMAXじゃないですか…」

そう…私はよりによって、エフェメロスやデメテルと同じガチャに入っていたインドラ様を引き当てたのである…。

何故未召喚の2騎を差し置いて、すでに宝具レベルがMAXのインドラ様がきたのか、もはや困惑するしかなかった。

「確かに宝具の強化は限界だが、サーヴァントコインとやらが手に入ったではないか」

「まあ、はい…」

「ならば…まだこの神に対して、捧げられるものがあるはずだが?」

「え…」

捧げられるもの…。

あの、まさか…インドラ様?

「レベル120に…しろと?」

「当然であろう?神はこのカルデアに在籍する英霊どもの中で、今お前と最も縁深いといっても過言ではない。ならばリソースをすべて捧げ、完全体にするのがお前の責務というものだ」

うん、まあ…確かに…。

インドラ様には聖杯はあげていたけど、アペンドスキルをMAXにするのを優先した関係で、レベルは100だった。

ただ、今まで英霊たちをレベル120にした時の労力を思い出すと軽く目眩が…。

えっと?種火は…まだたくさんあるけど、槍の種火は周回して集めた方がいいよな。聖杯は次回からの10個はインドラ様用にして、QPは…まあいけるか…。

あぁ…うぅ…これからの周回予定…。

「おい、苦行はするなよ」

「苦行求めてきた神様が言わないでください!」

「この神が苦行なぞ求めるものか。お前のペースで無理をせず進めろと言っておるのだ」

「はは…今の私には何の慰めにもならない…」

「おい、虚空を仰ぐな」

捧げられるリソースはすべて捧げろ、ただし苦行はするなって…一見矛盾してるように見えて両立は確かに出来はする。

でも、果てしない道のりを知ったから言える。

腹を括る必要はある。

エフェメロスとデメテルが来てたら、まだ普通に強化するだけでよかったのだが。

「…まさかとは思うが」

「はい?」

と、急にインドラ様の声のトーンが低くなる。

「ギリシャの女神か、竜を喚べていればよかったなどと思ってはおるまいな?」

「…!?」

先程まで私をからかっていたインドラ様が、射抜くような視線で私の目を見つめる。

「…インドラ様?」

「まあ、喚べるはずもない。神がこの召喚に応じるように仕向けたのだからな」

「えっ!?」

インドラ様の口から、とんでもない事実が明かされてさらに混乱する私。

インドラ様が…仕向けた…?

この召喚でインドラ様が来るように?

じゃあ、こうして召喚室の前にいたのは…

「神自身を喚び寄せるために決まっている」

「…ッ!?」

え…?今、心を…読まれた?

「いくら女神といえど、ああも人間に容赦のない姿勢の女神は好かん。竜の娘に至っては歴とした神敵だ。神々への敵対心を隠しもしない者の召喚を、この神が許すとでも思ったか?」

「…ッ」

あ、まずい…。

インドラ様、内心かなりお怒りだったか…。

やっばいな、これ…。

深く考えずに召喚しようとしてたけど、これは完全に地雷踏み抜いたか…。

…

…

終わったか、これは…。

「…ま、神がいたからよしとするが」

「…え?」

「神を喚び寄せた結果、神へ捧げる魔力リソースの上限が解放されることとなった。つまり、お前にとっては挽回のチャンスともいえる」

「…ッ」

「…後は、わかるな?」

「………はい」

挽回のチャンス。

それはつまり、必ずインドラ様を完全体にしろということだろう。

「寛大な審決に感謝すべきです」

「よかったねマスター。インドラさまをレベル120にすればチャラだってさー」

「……うん」

ヴァジュラたちからも、慰めのオブラートに包まれた圧を受ける。

今思えば…あの召喚候補の中に、インドラ様が入ってたのはある意味救いだったのかもしれない。

神と神と神敵…私がそれらの候補を『選ぶ立場』になるのは、あまりにも命知らずだった…ということか。

「さて、神のリソースは確保出来た。ならばここに用はないはずだ。行くぞ」

「…ッ!?」

そう言うと、悶々と考え込んでいた私を抱え上げるインドラ様。

そのまま自分の部屋の方向へ歩き出す。

「…言うまでもないが」

「?」

「部屋についたら仕置きだ」

「…ッ!!」

感情がよくわからない声色のまま、さらりと伝えるインドラ様。

仕置き…その言葉に、体がびくりと反応する。

この神様のことだから、痛めつけはしないが加減はしてくれないはず。

いや、加減を…してもらえたこと自体が…あまりなかった気もするのだが…。

「神という神がいながら、神と神敵を喚ぶ愚行を働こうとした結果…この程度で済んだ。その幸運に感謝し、甘んじて受けるがいい」

「…」

「理解したな?」

「…ッ…はい」

私の返事を聞いたインドラ様は、ふっと満足そうに口元を緩め、廊下を歩くのだった…。

〜おまけ〜

「さて…と」

素材の在庫チェックをするアルジュナ。

特に誰がやるわけでもない雑務ではあるのだが、誰かしらがやっておいて損はない…むしろ英霊たちの強化においては数の把握は必要だろうと考えたアルジュナが、マスターに願い出て始めたもの。

自分にとって苦ではないし、マスターの役に立つのなら何よりだ。

そうして膨大な数のチェックをこなしていくアルジュナだったが、ふとあるものに目が留まった。

「…おや?」

それは、サーヴァントコインの項目。

英霊を召喚する、絆レベルが上がる、または巡礼の葉と交換することで増えることは知っていたアルジュナだったが…。

「…インドラ神のコインが、増えた?」

以前、インドラの絆レベルが上がってコインが増えた時に数の更新をした。

だが、その時から明らかに増えている。

増えた理由については、すぐに察しがついた。

「福袋か」

そこは在籍が長いアルジュナ。

インドラが召喚されたのだと、即座に理解した。

理解した…のだが…。

「いや、確かインドラ神は…すでに宝具レベルが限界だったはずだが?」

すでにインドラの宝具レベルがMAXだと、しっかり把握していた。

いわばマスターは、インドラを召喚する必要はないはずなのだが…。

「!?」

あれこれと考えていたアルジュナは、あるひとつの可能性を思いつく。

まさか、マスターは…

「まさか…インドラ神を、もう1騎強化させるつもりなのだろうか?」

すでにカルデアにいるインドラは、レベル100で宝具レベルもMAXだ。

つまりマスターは、2騎目の育成をしようとしているということなのでは?

そこまで考えたアルジュナは…

「うっ…」

胃がシクシクと悲鳴を上げだした。

マスター…一体何をお考えで?

インドラ神を…2騎に増やそうなどと…。

(※違います)

アルジュナからすれば、普段から乱痴気騒ぎを起こしたり、マスターとの浮いた話が舞い込んでくる父が増えたようなもの。

同じ神が来たのだから、同じ騒ぎが2倍起きる。

つまりアルジュナの胃に、2倍のダメージが加わることを意味する。

「マスター…それは…いくらマスターのご決断とはいえ、どうかそれは…」

完全にそう思い込んでしまったアルジュナ。

一応真相としては…

他2騎を召喚させまいと出しゃばって召喚されたインドラではあったが、実際は自分の強化に使うコインやプリズム等を残して、さっさと退去してしまっている。

つまりインドラはひとり…いや、一柱しかいない。

「何を蹲っている」

「!?」

ふと、すぐそばから聞こえる声。

顔を上げると、そこにはカルナの姿があった。

明らかに顔色の悪いアルジュナを見たカルナは、思わず眉を顰めた。

「医務室へ行くことを勧めるが」

「…ッ…黙れ…私には今から、どうしても行かねばならない場所がある」

「………マスターのところか」

「…ッ!?貴様、また私を見たn…」

「マスターなら周回だ」

「…周回?」

「種火が必要だと言っていた」

「…ッ!?」

カルナから聞かされた衝撃の事実。

自分の懸念が現実となってしまったことに、絶望を隠せないアルジュナ。

ちなみにマスターの種火周回は、インドラをレベル120にするためのもの。

断じて2騎目のインドラを育成するためのものではないのだが、アルジュナは…

「ーーー」

ピシッ

パリィンッ

「…また割れたのか」

硝子が割れる音。

茫然自失状態になっているアルジュナを、もう一度よく『視て』みるカルナ。

「……む?」

明らかに勘違いしている、アルジュナの思考。

先程カルナが伝えたのは、インドラをレベル120にするための種火周回なのだが、どうやらカルナの言葉足らずだったのか、きちんと伝わっていなかったらしい。

「…仕方ない」

オレが今それを伝えようにも、この男の耳には入りそうもないな…。

アスクレピオスのところに連れて行くか…。

事情だけはオレが伝えるとしよう…。

そう思ったカルナは、無気力状態のアルジュナの首根っこを掴み、医務室へと引き摺って行くのであった…。

END