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愛すると誓い、それを愛す

Fate Grand Order インドラ&女夢主 — www.pixiv.net · All chapters

愛すると誓い、それを愛す

「ふむ、やはり悪くはない」

グラスに入った酒を一口飲み、満更でもなさそうな感想を述べるインドラ様。

「…でしたら、何よりです」

「この肴もなかなかだな。よく合う」

「…気に入っていただけたのなら、何より」

「が、何だその心ここにあらずといった声は。お前からこの神への捧げ物を、直々に褒め讃えてやっているのだぞ」

「感涙に噎ぶべきです」

「もっと感謝しろー!」

「…でしたら、お伺いしますが」

「構わん。述べてみよ」

「いつまでいなきゃいけないんですか?」

「決まっている。神の気が済むまでだ」

一応、状況としては…。

ここはスカイドームの中。

私は最近買った酒とつまみを、ここにいるインドラ様へ献上しに来た。

ちなみに、カルデアのインドラ様へ許可はとっていないが、書き置きだけ残してきた。

後で怒られることは確定したが、最近に至ってはまず許可をくれないインドラ様を説得するだけで日が経ってしまう。

カルデアのインドラ様は『必要ない』の一点張りだったが、この空にいる存在もインドラ様には変わりないので、私としてはずっと放置しておくわけにもいかず、ちょくちょく顔を出している。

…というわけで、スカイドームの中へやってきた私だったのだが、一体何の冗談なのか…

「この神のそばで酌をすることは、神の審美に叶ったという名誉であるぞ」

と言うインドラ様によって、足場の雲をインドラ様のそばまで引き寄せられ、挙句雲から引き摺り下ろされ…

「どうした?初めてではなかろう?」

インドラ様の、膝の上に座らされたのだ…。

抵抗しようにも、ここは空に浮かぶアイラーヴァタの上だし、何よりインドラ様の手が腰にしっかりと回っている。

脱出手段としては強制帰還があるのだが、今ここでそんな手段に出れば、後々かなり面倒なことになるのが目に見えている。

なのでおとなしく酌をしていたのだが、雲が浮かぶ青空だった景色が、すでに日が傾きかけた夕焼け空になってきている。

午後一番で顔を出したのが4時間以上…いや、もしかしたら5時間に届く時間まで拘束されている。

「流石に、そろそろ戻らないと…」

「この空では通信が途絶えることはない。そして今この時まで、お前の通信機が鳴ることがなかった。つまり、今カルデアでは異常は起きていない。お前が疾く帰還する理由はないはずだが?」

「…分かってて、おっしゃってますよね?」

「さてな。あちらの神の都合なぞ、この神の知ったことではない」

いや、知ってんじゃん…。

確実に分かっててやってんでしょ…。

「お前はインドラの寵愛を受ける身だ。カルデアに現界する神だけでなく、当然この神の相手をする責務もある。これを間違っていると申すか?」

「…ッ」

正直…それを言われてしまっては、こちらとしては何も言えなくなる。

この方は神様だから。

あちらをよくしてこちらを疎かに…というのは、本来なら不敬にあたる行為だ。

ましてや色恋が絡んでいるのだから、尚更たちが悪いことになってしまう。

「というわけだ」

「!」

インドラ様の言葉を合図に、私が手に持っていた酒がヴァジュラに回収される。

グラスも回収させて空いたインドラ様の手が、私の頬に添えられた。

「言葉通り、相手をしてもらうぞ」

「…ッ!?」

腰に添えられた手に力が入り、頬に触れる手が顎を掴んだかと思えば、そのまま唇が塞がれる。

「んっ…ッ…」

口内に侵入した舌が、舌に絡みつく。

触れられた舌が、徐々に熱くなっていく。

クチュッ…と音を立てて、唇が離された…。

「…少しは抵抗を見せるかと思っておったが」

「…」

「随分すんなりと受け入れるではないか」

拒絶されなかったことを意外に思ったのか、不思議そうな…でもどこか少しだけ嬉しそうな口調で問いかけるインドラ様。

一呼吸置いてから、私はこう返した…。

「相手がインドラ様なら、拒む理由はないです」

「…ッ!?」

私の答えに、インドラ様は僅かに目を見開いた。

そもそもの話…。

私は以前、夢で過去のインドラ様に会っている。

そしてその夢の中で、私は過去のインドラ様からの愛を受け入れている。

理由は言った通り…相手がインドラ様だから。

カルデアに在籍する、サーヴァント契約を交わしたインドラ様も、このスカイドームの中のインドラ様も、夢に出てきたインドラ様も…

私にとっては、大切な存在に変わりない。

一緒に過ごす時間は、カルデアのインドラ様の方が圧倒的に多いのだが、だからといって今目の前にいるインドラ様を蔑ろにする理由なんてない。

まあ、夢はともかく…スカイドームの方と差をつけないと、カルデアの方が怒るのは事実ではあるので正直この後が恐ろしくはあるのだが。

「………」

インドラ様は何も言わずに、私を見つめている。

この対応が正解なのかは分からないし、このインドラ様が何を望んでいるのかも分からない。

カルデアのインドラ様のように、自分だけを特別に扱って欲しい場合もある。

ただ神様ではあるから、別存在の自分に敬意を示しているのを悪く思うのか怪しいところでもある。

つまりは、何も分からん…。

「…拒む理由はない、か」

「…!」

しばらく黙っていたインドラ様が、口を開いた。

添えられた手が頬を滑り、指先が私の髪を梳く。

「…」

「…インドラ様?」

再び押し黙るインドラ様。

思わず呼びかけたその瞬間、髪を撫でる手が後頭部に回り、ぐいっと頭部を引き寄せられる。

「ん…ッ!?」

そのまま、噛みつくように口づけられた…。

先程以上に口内で舌が暴れ回り、絡みつかれた私の舌はひたすら翻弄される…。

「…ッ…はぁっ…ッ」

解放された唇は赤みを帯び、ぷつりと糸を引く…。

整えようとした息が、熱を持って吐き出される…。

「ならば、もったいぶる必要もない。せいぜい神を楽しませることだ…人間」

眩い雷霆のような瞳が、私を貫く…。

…

…

あぁ…。

インドラ様はインドラ様だったわ…。

「言ったのに…痕つけないでって言ったのに…」

自分の体につけられた、たくさんの痕。

それを隠すようにいそいそと服装を整える私。

「何故そのような制約を課されねばならん。たかだか神のものに印をつけただけであろう」

私の懇願を聞いたにも関わらず、一切叶えずに好き放題した無慈悲な神は、涼しい顔をして答える。

「カルデアのインドラ様にバレるからですよ!」

「神の目を節穴とでも思っておるのか?お前に纏わりつく神雷の魔力を感知出来んわけがなかろう」

「………私が消し炭にされたら、どう責任とってくださるおつもりで?」

「それはまずあり得ん。よって、それは神がとるべき責任ではない」

「いや、絶対ブチギレるでしょ!?」

「まあ怒りはするな」

「何で、それを分かってて…」

「それに至ってはお前が悪い。あの発言は完全に…何と言ったか?お前の国の言葉で、確か………ああ、そうだ…据えz…」

「あ、はい…もう理解しました…」

要はあの場で煽った私が悪いと…。

はいはい、私が悪かったですよ…。

とはいえ、気づけば夜の帳が下りている。

いい加減帰らなればいけないが、帰ったら絶対に待っているはずだ。

怒髪天となった、カルデアのインドラ様が…。

「はぁぁぁぁ…ッ」

魂が抜けそうな勢いで、盛大なため息をつく。

「何だそのため息は。帰るのではなかったのか」

「帰りますよ…ただ、帰ったら…何て説明すればいいのか分からなくて…」

帰りづらくした本人(神)がよく言う…。

「説明なぞ不要だ。このような夜更けに帰還した時点で大体の察しがつく。何も言わずともそのまま帰ればよかろう。現にあちらの神はすでに気づいているようだからな」

「………」

そこまでくれば、おとなしく帰るしかない。

もう、どうにでもなれ…。

腹を括って、帰還しようとする…。

「ああ、言うまでもないが…」

「………何でしょうか」

まだ何かあるの…?

そう思った私の耳元に唇を寄せ、囁く…。

「近いうちに必ず顔を出せ。よいな?ーーーー」

「…ッ!?」

動揺した私は、返事をする前に咄嗟に部屋に戻るよう念じてしまった。

転移により、視界が真っ暗になる…。

あの、神………。

帰り際に、しれっと名前呼びして………。

…

…

「…!」

気づくと、部屋に戻っていた私。

そして当たり前ではあるが、その部屋には…

「……………随分と遅い帰りだな」

物凄く不機嫌なオーラを醸し、私を鋭い目つきで睨みつけているインドラ様の姿があった。

そのあまりにも重い圧がかかった声に、何も返すことが出来なくなる。

「…ッ」

顔を上げられない…。

何があったのか勘付いてるはずだし、そうでなくても私の姿を見て全部バレそうだし…。

何も言えずに立ち尽くす私と、ベッドに腰を下ろした状態で私を睨んでいるインドラ様。

ギシッ

「…ッ」

立ち上がる挙動を見せたらしく、静かな空間にベッドが軋む音が聞こえてきた。

そして…。

「え…ッ!?」

突然、体が宙に浮く感覚がした。

「…」

インドラ様が、私の体を抱き上げたのだ。

何も言わずにマイルームのドアに向かい、そのまま部屋を出ていくインドラ様。

インドラ様の部屋に向かうのかな…。

今下手に口を開こうものなら、何をされるか分からないと思った私は、視線を合わせず固く口を閉ざしたままだった。

そのまま運ばれて辿り着いたのは、私の想像していた通り…インドラ様の部屋。

プシューッ

部屋に入ったインドラ様は、まっすぐにベッドへ向かい、私の体を仰向けに寝かせるようにして下ろした。

その上に覆い被さり、私を見下ろす…。

「何をしていたか、察しはつくが…」

「…ッ」

淡々とした口調で、詰問するインドラ様。

「単刀直入に聞く。あちらの神とまぐわったな?」

「………はい」

「チッ…いつかはやると思っていたが…」

「………」

いつかはやると思っていた…。

つまり自分も同じ立場なら、同じことをすると…。

「好きに戻ることは出来たはずだが…あちらの神からの命で止められでもしたか?」

「………半分は違います」

私の回答に、眼光が鋭くなるインドラ様。

「…半分は、お前の意思だったと?」

「…はい」

「ほう………訳を聞くとするか」

声まで鋭くなったインドラ様に対して、私は先程スカイドームのインドラ様にも言ったことを伝える。

「相手がインドラ様ならば、私が拒絶する理由はありません」

「………つまりお前は、相手がこの神でなくとも、インドラという神あれば、その体に触れることを許すと?」

声の調子がだんだん剣呑になっていくインドラ様に対して、私はある事実を突きつける。

「…私は以前、過去のインドラ様と思われる神様と夢で邂逅したことがあります」

「?…ああ、あの夢か」

「インドラ様も、あの夢自体は観測していたとおっしゃいましたよね?」

「言ったが、それが何か関係があるのか?」

「ご存じのはずですよね。私があの夢で、過去のインドラ様と何をしていたのか」

「!?」

「あの時と同じです。『相手がインドラ様なら拒む理由がない』からです」

「…ッ」

「あの時のことは一切お咎めがないのに、何故今回のことは追及なさるのですか?」

「いや…それはだな…」

口ごもり出したインドラ様に、私はとどめを刺すように言葉を続けた。

「あの夢を第三者視点で観測してたのではなく『過去のインドラ様』の姿で、当事者視点で観測してたんですよね?」

「…ッ!?」

恐らくあの時のインドラ様は、過去の自分に化けていたわけではなく『過去の自分の中』に意識だけが乗り移っていた。

思考や言動は過去のインドラ様のものだが、それを内側から一切干渉出来ない状態で観せられていたのだろう。

となると、あの夢に対して一切のお咎めがない理由が自然と見えてくる…。

「『自分が抱いたも同じ』って思ってたから、何も言わなかったんですよね?」

「…ッ!」

わっかりやす…。

「ご自身が干渉出来ないスカイドームのインドラ様が相手だったから、お怒りなんですよね?」

「…ッ!」

「私からすればインドラ様は、貴方とスカイドームの中にいる存在だけです。神様であるインドラ様に人間社会のルールが適用されないとおっしゃるのなら、私はどちらのインドラ様も愛するべきだと思っているんですが…」

「…確かに、神である神を尊重する姿勢については口を出す気はない。だが、あちらに時間を割くくらいならば、お前自身の呼びかけに応じた、この神を優先すべきであろう!」

「むしろ貴方に偏っているくらいですよ?一緒にいる時間が長いんですから」

「当然だ。あちらの神は、おまけ程度でちょうどよいのだからな」

「あの、ご存じだと思いますけど…あちらのインドラ様は、ここで起こっていることを観測していらっしゃいますよ?今の全部聞かれてるんですが…」

「神が知らんはずがあるまい。聞かれたとて何か不利益があるのか?」

「………」

「…おい、何だその心底呆れ返ったような目は」

ええ、心底呆れ返っていますよ…。

だって『あちらばかりに目を向けずに、こちらをもっと構って欲しい』んですよね?

マジで、本当に…

何であの空の中に自分を入れたんですか?

「…お願いですから」

「ん?」

「お願いですから…ご自分同士の争いに私を巻き込まないでいただきたいのですが…ッ!」

振り回される身にもなって!?

インドラ様は周囲を振り回しもしますけど、振り回される側の気持ちも分からないわけじゃないですよね!?

「………振り回しているのは、お前の方であろう」

「え?」

ぽつり、とインドラ様が呟く。

狼狽えた表情から一変…先程のような鋭い目つきに変わり、私の姿を捉える。

「こちらの思惑を露とも知らず…予想の斜め上をいく言動をとる上に、気づけば姿が消えている…空の気まぐれを地で行くような人間の女に、天空神たるこの神が振り回されているのだぞ!?」

「え…はい?」

空の気まぐれを、地で行くような女…?

私って、インドラ様からそんな風に見えてるの?

「挙句、争いに巻き込むな…だと?神やあちらの神が争うこととなった発端は、お前がインドラという神を振り回したからに他ならんであろうが!」

「え…」

「…と、いうわけだ」

インドラ様の長い指先が、私の顎を掴む。

「今宵は仕置きだ。朝まで離してやらんからな」

「………はい」

「…だが、多少の手心は加えてやる。お前が神以外の神には、その身を差し出すことをしないという誓いは聞き届けた」

「…!」

鋭い視線からまたさらに一変、慈しむような穏やかな目で見つめられる。

「………もし神様から求められることがあれば、拒絶はしますけど、その…」

「そのような事態には遭遇させん。他の神の手痕がついた人間は、諦める者が大半だ…」

「…ッ!」

そこまで言うと、インドラ様は私の唇に口づけた。

チロッ…と舌先で唇をなぞると、すぐに唇を離す。

「すでに手痕はついているが、念には念だ。近寄らせんようじっくりとつけ直さねばな…」

END