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空に包まれ雷に捕らわれ

Fate Grand Order インドラ&女夢主 — www.pixiv.net · All chapters

空に包まれ雷に捕らわれ

「…ん」

朝、いつも通りの時間。

目が覚めた私は、妙に身動きが取りづらいことに気づいた。

多分いるんだろうな…。

首を動かし、自分の右側を確認する。

「…すぅ…」

至近距離で聞こえる寝息。

やっぱりいた。

私の体を抱き枕にし、静かな寝息を立てているインドラ様の姿…。

夜中私が寝ているときに、布団に潜り込んで来たみたい。

毎日ではないけど、わりとよくある光景。

その穏やかな寝顔に思わず笑みが溢れる。

さて、そろそろ目を覚ます頃かな?

この神様…ぐっすり眠ってはいるが、いつも私が何か物音を立てたり寝返りを打とうと体を動かしただけで、すぐに目を覚ますのだ。

「…ん」

噂をすれば…。

「…おはようございます」

私も寝起きなので声があまり出ないが、瞼を開けたインドラ様に挨拶する。

インドラ様は私を見て一度ゆっくり瞬きをし…

「………ん」

返事のつもりなのか、僅かに声を漏らす。

まだ頭が半分くらい眠っているのだろうか。

いや、寝起きの神様の頭がどうなってるのかまったくわからないんだけども。

インドラ様はもそもそと動き、抱き枕にしている私にさらに抱きつく。

そして私の胸にそっと顔を埋める。

これは『頭を撫でろ』という合図。

猫かよ…。

いや猫にしてはでかすぎるんだけどね。

ほんっっとにかわi…ん“ん“ッ…

いや、可愛いです。はい。

あと、あざといです。

インドラ様の髪にそっと指を通し、優しく撫でる。

サラサラとしていて絹糸のような手触り…。

頭を撫でるとインドラ様は再び瞼を下ろす。

やっぱり猫だよこの神様…。

というかさらっと二度寝しようとしてる。

「…インドラ様」

「…」

「流石にお腹が空いたので起きたいです」

「…」

髪をわしわし優しく揉みながら声をかけるが、私の声が聞こえているだろうに反応しない。

この神…何が何でも二度寝する気だな。

なら…仕方ない。

私は腕の中にいるインドラ様を少しだけ離し…

チュッ

閉ざされた瞼にそっと口づけた…。

「、………!?」

「あ、やっと起きましたね」

インドラ様が驚いて目を開けた瞬間に、腕から抜け出す私。

そして布団をバサッと剥ぎ取る。

「…寒い」

「眠いならまだ寝てて大丈夫ですよ。私は朝食をとってきますから」

「…神を置いて行く気か?」

「じゃあ起きましょう?」

「…神に命ずるな」

「命令じゃなくて提案です」

まだ布団で文句を垂れるインドラ様を放置し、急いで礼装に着替えて顔を洗う。

そして髪に櫛を通すと、ようやくインドラ様が布団から出てきた。

身支度が早くて羨ましい…。

「早くしろ」

さっきまで布団で管巻いてたくせに。

部屋の入口に立ち、こちらに手を伸ばしている。

「お待たせしました」

伸ばされた手を取って部屋を出る。

わりとよくある、朝の日常だ。

〜食堂〜

「そら、待たせたなマスター!インドラ様もお待たせしました」

「ありがとうビーマ」

「ん」

「じゃ、俺はこれで失礼します」

ビーマが注文した朝食を持って運んで来てくれた。

私とインドラ様の前に料理を置き、去っていく。

いつもは自分で受け取って席に着くのだが、インドラ様と一緒に食堂に来ると、ビーマが気を利かせて先に席に着くように言ってくれる。

以前、自分で運ぶと言ったのだが…

『インドラ様をひとりにしないほうがいい』とのことだったので、お言葉に甘えてお願いしたのだ。

早速朝食を食べていると…

「あれ?マスターちゃんじゃないの、おはよう」

「おうマスター!いい朝だな!」

「おはようマスター」

「おはようございます大将」

「おはようはじめちゃん、永倉さん、藤堂君、原田さん」

声のした方から新選組のメンバーがやってきた。

「おっと…帝釈天様もご一緒か」

「お、おう…帝釈天様もか」

「「(相変わらずでかいな…)」」

「ん?何か不都合があるか?」

「いやいやまさか!」

「朝から神様を拝むと畏れ多いが勝っちまうのさ」

「であろうな…光栄に思え」

「ご一緒してもよろしいですかね?」

「構わん」

「なら、お言葉に甘えましょうかね」

インドラ様の許しが下り、4人が私たちのテーブルに加わり一緒に食卓を囲むことになった。

近藤さんと土方さん?

うちには来なかったよ…。

「そういえば沖田さんと山南さんはいないの?」

「沖田ちゃんは健診。んで山南さんはその付き添いに行ってるよ」

味噌汁を啜りながら答えるはじめちゃん。

「沖田の奴…散々嫌がってたせいで医神の先生とおっかねえ看護師さんに引き摺られてったもんなぁ」

焼き魚をほぐしながら苦笑いする永倉さん。

「往生際の悪い沖田君がそれでも逃げようとするから山南先生が付き添いを申し出たってわけ」

呆れながら卵焼きを頬張る藤堂君。

「先輩もおとなしく受けりゃあ大ごとにならないってんのに。強情っすよねぇ」

漬け物を齧りながらため息をつく原田さん。

私も医療班から縮地を使ってまで逃げようとしてた沖田さんを見たことがある。

懲りないなぁ沖田さんは…。

あの医療班に目をつけられたら地獄の底まで追いかけてくるから、諦める他ないのに。

同じ結核持ちの高杉社長のほうがまだおとなしく健診受けてるよ。

「さて、もう一杯もらってくるとするか」

「よく食べるね永倉さん」

「大盛りもらってんのにまだ食うのかよ馬鹿八」

「あぁ!?誰が馬鹿だって!?」

「朝から元気ですね」

「んだと!?つーかそういう平助こそ、そんな少ねえ飯の量で足りるのかよ?」

「僕は別に…」

「ま、しゃあねえか!お前昔からチビだもんな」

「は?」

「あ…馬鹿」

「えっと永倉さんそれは…」

ガタッ

「いいですよ!そこまで言うならおかわりしてやりますよ!僕もこれでも量は食べれるんで!」

「そう来なくちゃな!んじゃ行くぞ!」

そう言いながら厨房へ向かう永倉さんと藤堂君。

「…ったくガキかあいつら」

「マスターちゃんも帝釈天様も…すまんねあいつらが騒がしくて」

「なに、元気がよいだけであろう」

「気にしてないよ。いつものことでしょ?」

「そう言ってもらえると助かります…」

身内の馬鹿騒ぎに申し訳なさそうにするはじめちゃんと原田さん。

でも生前のことを思うと、どうかこの馬鹿騒ぎが少しでも長く続いてほしいと思う。

さて、なんだかんだで私も食べ終わった。

「ごちそうさまでした。じゃあ2人とも、私は先に失礼するね」

「うん、またねマスターちゃん」

「了解っす」

食べ終わった食器を片付けようとすると、またビーマが出てきて私たちの食器を運んでくれた。

お言葉に甘えてビーマに片付けを任せ、私はインドラ様と食堂を後にした。

「先程の男たち」

「…あの4人ですか?」

食堂からの帰り、ふとインドラ様が言葉を紡ぐ。

「お前の故郷の英霊たちであったか」

「はい。現代の私の国では知らない人はいない英雄たちです」

「そうか」

そうだね…インドラ様からしたら、特に神秘に無縁の人間の英霊だからあまり知らないかもしれない。

ただ、私からしたら名高い英雄たちだ。

そんなことを考えながら歩いていると…。

「やあ、マスター」

「あ、ダンテ」

真向かいからダンテが歩いてきた。

「おっと…インドの雷神様」

「お前は確か物書きだったか?」

「フフ…まさか覚えてもらえてたとは」

「生者の身でありながら死後の世界を旅した者…と聞いてはいる」

「それは光栄だ。今度インドの天界についても、ぜひ話を聞いてみたいものだ」

「ああ、構わんぞ」

「フフ……え?いいの?」

「構わんと言った。ただし神への貢ぎ物として良い酒を忘れるなよ?」

「フフ……マスターどうしよう。こんなあっさり許可もらえるなんて思ってなかったし私に良い酒が用意できるかとても心配」

「大丈夫だって…」

『神曲』の中とはいえ、仮にも地獄の獄卒や天国の天使とも言葉を交わした男が神相手に怯えるんじゃないよ…。

笑顔で震えながら私の服掴んでるんじゃないよ…。

推定35歳に魔術協会礼装のケープの裾掴まれてる絵面はシュールすぎるんだよ…。

「すみませんインドラ様。ダンテが怯えてるのでお話はまたの機会に…」

「…まあ、神はいつでも構わん。ただし暇ではないことは忘れるな」

「フフ…肝に銘じます…。じゃあマスター…私はこれで失礼するよ」

「あんまり無理しないでね」

服の裾から手を離し、ふらふらとした足取りで去っていくダンテ。

インドラ様はかなり話しやすい部類の神様なのにあそこまで怯えなくても…。

身長高いから威圧感はあるけど。

そんなこんなでダンテと別れ、再びマイルームに戻ってきた。

「仲が良いからこそ…か」

「え?」

不意に呟くインドラ様。

何の話だ?

「あの男が怯えた姿を見せられるのも、お前への信頼の現れであろうな」

「それは…そうでしょうか?」

ん?

もしや何か勘繰られてる?

「ああ、勘違いするな。お前と奴がやましい関係ではないのは前々から知っている」

「あ…ならよかったです」

よかった…。

変な勘違いではなかったみたい。

「そもそも…奴も英霊とはいえ元は人間であろう?」

「え…まあ…はい」

「ならば、人間であるお前と親しくなるのは道理というものだ。やましい感情があるならまだしも、神はいちいちそのようなことに口出しはせん。先程のお前の同郷の英霊どもと同じくな」

「そうなんですね…」

つまりこの神様…

私が仲の良い男性英霊と一緒にいても、特にヤキモチは妬かないってことだよね?

私が人間である以上…人間(男女問わず)との付き合いにはいちいち目くじら立てないってことだよね?

ただし私が心変わりしたり向こうからアプローチしてきたりする場合は除く、と…。

なるほど。

確かにそれは有難い。

何もないのに疑われて、交友関係に制限をかけられる心配がないのは、かなり気が楽だ。

私はヤキモチ妬かれるくらいならまだしも、所謂束縛とか…されたくないほうだから助かるかも。

「ただし…」

「わっ…!」

急にインドラ様に片手で抱き上げられる。

先程まで見上げていたインドラ様の顔が、一気に近くなった。

「神は許さん」

「え?」

「神がいながら、他の神にうつつを抜かすことは絶対に許さん。神が倒すべき魔性も同じくだ」

「…ッ」

「もしそのような愚行を働いた暁には…」

「問答無用で神のもとへ引き摺り込む。一生お前を元の世界へは帰さん」

「…ッ!?」

「それが嫌ならば…神から目を離すでないぞ?」

まっすぐに私を見つめるインドラ様。

その瞳に映った私の姿は…

寛大な空に包まれたようでもあり…

美しい雷霆に捕らわれたようでもあった。

でも…何だろう…?

胸がじんわりと温かくなる…。

捕らわれていることには変わりないのに。

この神様が私に執着していることが…

たまらなく嬉しいと思ってしまう…。

「…インドラ様」

「何だ」

「…私から触れてもよろしいでしょうか?」

「あぁ…構わん」

「…失礼します」

片手を伸ばしてインドラ様の頬を覆い…

インドラ様の唇に、そっと口づける…。

「!!」

唇が触れた瞬間、インドラ様も噛みつくように私に口づける。

唇の隙間から舌が入り、私の舌に絡みついてくる…。

あぁ…もうダメだ…。

暫く舌を絡め合った後、そっと唇が解放された。

ペロリと自身の唇を舐め、熱の籠もった私の瞳を艶めかしい瞳で見つめ返すインドラ様。

「お前からの誘いとは珍しいな…よかろう」

不敵な笑みを浮かべ、つり上がった口角から捕食者の牙を覗かせる。

「泣いても離さん…覚悟はしておけ」

〜おまけ〜

「あ」

「おや、貴方は…」

マスターたちと別れたダンテは、そのすぐ後にアルジュナと遭遇した。

そういえばこの英雄は、さっきの雷神様のご子息って言ってたっけ?

ならあの神様が好きそうなお酒とか、聞いてみたら何か知ってるだろうか?

「えっと…アルジュナといったよね?」

「はい」

「君のお父様は…どんなお酒が好きかな?」

「えっ!?」

「えっ?」

ダンテの問いかけに、何故か目を見開き焦ったかのような反応をするアルジュナ。

そしてそんなアルジュナを見て焦るダンテ。

「もしや…もしや貴方…インドラ神…いや、私の父に酒をせびられましたか…ッ!?」

「えっ!?せび……えっ?」

ダンテの肩を掴み、問いただすアルジュナ。

ただ父の好物を尋ねただけなのに予想外の反応をされて混乱するダンテ。

「だとしたらっ…大変申し訳ありません!!父がご迷惑をおかけしまして…申し訳ありません!!」

「えぇ…」

ペコペコと頭を下げまくるアルジュナ。

あーこれ私の方から説明しないと一生誤解されるやつだ…と悟ったダンテ。

恐らくあの雷神様は想像以上に自由で破天荒な神様なのだろう。

そして息子として、父から迷惑を被ったであろう周囲に謝り倒すのが日常となりつつあるのだろう。

生真面目故に、かなり苦労している様子だ。

「とりあえず…一旦落ち着こう?」

「父が失礼なことを言ったようでしたら、無視していただいて一向に構いませんので!!」

「フフ…話聞いて?」

「おっと…失礼しました…」

「うん、落ち着いたね。一応経緯なんだけど…」

とりあえず、経緯を話すダンテ。

「なるほど…そうでしたか」

「うんまあ…君のお父様が好む物は私には用意できないからね。せめてそれ相応の物があればとは思ったんだけど」

「あまり深く考えなくてよろしいかと。父は人界の酒も躊躇いなく飲んでいる様子ですので、それこそ貴方に馴染みのあるもので十分かと思われます」

「そうか。それを聞いて安心したよ」

「むしろ父のために、ご丁寧に考えてくださりありがとうございます」

事情を知ったアルジュナは、今度は謝罪ではなく感謝から深々とダンテに頭を下げる。

「いいや、大したことはない。むしろ君は、お父様のことで苦労をしているようだけど…同じくらい大切に思ってもいるんだね」

「大切?」

まあいつも父への心配事ばかりではあるが…。

「でないと私に感謝の言葉なんて出ないはずだ。まあかなりの自信家で自由な神様みたいだけど、きっと君同様に真面目なお父様なのだろうね」

真面目…か。

まあ確かに、否定できない。

「…ええ、そうですね。貴方のおっしゃる通り、騒ぎを起こしがちではありますが、それでも…私にとっては、尊敬できる自慢の父です」

「フフ…親子仲が良くて何よりだ。君からの助言…心から感謝するよ。じゃあ…私はこれで」

「…はい、こちらこそ感謝いたします」

再び深々とお辞儀をするアルジュナに対し、穏やかな笑みを浮かべ、その場を去るダンテ。

さて…あの父親思いの英雄の助言通り、私に馴染みのある酒を探すとしようかな。

END