空で交わす約束
空で交わす約束
※注意事項※
バレンタイン2026にて、インドラ様のバレンタインストーリーの内容が含まれます。
まだシナリオを読んでいないという方にはネタバレになってしまいますので、ご注意ください。
シナリオを読んだ上で、投稿者の妄想が爆発しておりますので何でも許せる方向けです。
OKな方のみ、お進みください。
「やっぱり綺麗だな…」
マイルームにて。
私はインドラ様からバレンタインチョコのお返しにもらったものを部屋に飾り、眺めていた。
空の景色が閉じ込められた、泡…。
スノードームならぬ、スカイドームといったところだろうか。
この空は青空だけでなく、曇り、雷雨、雪など…様々な天候に移り変わる。
ただ眺めているだけでも十分綺麗だけど…。
何とこのスカイドーム、手を伸ばすと泡の中に入ることができる。そしてそこに広がる空にはインドラ様とヴァジュラたちが存在する。
空には天空の主であるインドラ様と、その雷であるヴァジュラたちがいることが摂理…。
つまりこのスカイドームの中の空は、正真正銘の本物の空ということになる。
そしてスカイドームの空にいるのは、英霊として召喚されたインドラ様とヴァジュラたち…とは別存在になるらしい。
別存在とは言っても私のことは認識していたし、カルデアで召喚されてからの記憶もある様子だった。
と、いうことは…。
どれが本物でどれが偽物って話じゃないけど…。
英霊として召喚されたインドラ様たちは端末のようなもので、スカイドーム…つまり『本物の空』の中にいたインドラ様とヴァジュラたちは本体(?)という解釈で考えることもできる。
端末の記憶を本体(?)がリアルタイムでバックアップしていてもおかしくはない。
インドラ様はそもそも英霊じゃないから、記録だけされて記憶が消えるわけじゃない。
ちなみにインドラ様は『訪ねて来るなら捧げ物を忘れるな』『誰かを連れてきてもいいが、できたら自分の偉大さをよく知る戦士にしろ』って言ってた。
酒を捧げ物にアルジュナと訪ねて来いって言いたいんだろうな。
あと空は気まぐれだから訪ねても必ず会えるとは限らない…とも言ってた。
いや、この神様何だかんだ毎回出迎えてくれそうだけどなぁ…。
インドラ様からの説明を思い出しながら、スカイドームを眺める。
この泡の部分…台座から浮かんでいる。
まだ他の英霊たちはこの存在を知らないけど、ダヴィンチちゃんが知ったら『解析させて!』って目を輝かせながら言ってくるはず。
だって明らかにチートアイテムだし。
ただ、さ…。
スカイドームの雷雨を眺めながら、ふと思う。
インドラ様はどうしてこれをくれたんだろう?
ヴァジュラに『本物の空を一番近くに持っているなら、空の支配者であるインドラさまには毎日讃歌を捧げなきゃダメだぞ?』って言われたけど、その言葉通りなら『一番に讃え讃歌を捧げる神はインドラ様に決まってるよな?』って若干の圧にも感じなくもない。
ただ…だとしたら余計に疑問なんだ。
だってインドラ様は…英霊として召喚されて、今カルデアにいるんだよ?
カルデアで顔を合わせる機会は多い。何なら私はどの英霊たちよりも顔を合わせているのに、何故わざわざ『本物の空にいる自分』を拝謁できるものをくれたんだろう?
スカイドームの中にいたインドラ様たちは、英霊召喚されたインドラ様たちと、何ら変わりない姿をしていた。
私の目にはそう見えているだけっていう可能性もあるけど…。
「先程から何を呟いている」
「わあっ!?」
突然背後から聞き覚えのある声が聞こえ、ビクッと体を震わせて振り返る。
今の…声に出てた?
「神がくれてやった空か?」
「あ…はい」
「ま、気に入ったのならよい。いつでも神に会えるという保証はせんが、このような形で神々の王たるこの神に拝謁できるのは奇跡だ…感謝するがよいぞ」
「…はい、ありがとうございます」
自分があげたものを眺めていたことに、機嫌をよくしたらしいインドラ様。
ただ、肝心の私の反応は気に入らないらしい。
「先程から何を物思いに耽っている?」
「えっ…」
「その空を眺めてはいるようだが、空模様に感動している様子ではない。神の空に何か思うところでもあるのか?」
インドラ様の問いかけに、私は正直に聞くべきか迷った。
インドラ様は神様で、私は人間。
考え方には齟齬が生じやすいから…。
「…インドラ様」
「何だ」
いや、齟齬を感じるからこそ…聞いてみる必要があるのかもしれない。
「まず…このような素敵な贈り物をくださり、ありがとうございます」
「神からすれば大したものではないがな…神々の王直々の贈り物だ。光栄に思え」
「はい。ただその上で…お聞きしたいです」
「何をだ?」
機嫌がどう転ぶか怪しいところではあるけど…。
勇気を出して聞いてみることにした。
「インドラ様は…どうしてこの空を私にくださったのですか?」
「……気になるか?」
「…インドラ様は今私の目の前にいらっしゃいます」
「ああ」
「なのに…どうしてこの空に存在するインドラ様たちへの拝謁の機会をくださったのですか?カルデアに召喚されたインドラ様とこの空にいたインドラ様は別存在とは言われましたが、私にはほとんど変わらない存在のように思えました」
「………なるほど」
私の質問については、大して機嫌を損ねなかったらしい。
しばらく耳を傾けた後、口を開くインドラ様。
「お前は…」
「はい」
「英霊召喚でなければ、神に会うことはなかったと考えるか?」
「えっ?」
インドラ様に…会うことがなかった?
それは…多分…。
「…そうは思いません」
「ほう…何故だ?」
「インドラ様がご自身で依り代を作り、英霊の規格で現界したのがあの空の特異点です。そこでできた縁で、英霊としてのインドラ様がカルデアに来てくださったのだと思っています」
「…」
「ただ…英霊召喚でインドラ様とお会いできたのはきっかけのひとつでしかないと思います」
「…」
「インドラ様は英霊ではなく、神様です。なら他の手段であっても、私がインドラ様にお会いすることはできたと思います。具体的にどんな手段で、と言われるとわからないのですが…」
そこまで答えて一旦黙る。
はっきりとした証拠はない。
でも英霊の器を使わなくても、この神様は人の前に姿を現すことはできるはず…。
何でか?
よくわからないけど、多分それは『私がそうだと思いたいから』かもしれない…。
こんな非常事態じゃなくたって、この神様に会える方法は何かしらあるんじゃないかって。
「確たる証拠はない…か。そのわりには随分とわかっているではないか…人間」
「…え?」
ベッドに腰掛け、サイドテーブルに置いたスカイドームを見つめながらインドラ様は続ける。
「それを使えば、確かに神を拝謁する機会が与えられる。その際お前がどこにいても、だ」
「?」
「その空は…今後も大事に持っておけよ?」
「…はい、もちろんです」
「さもすれば…戦いが終わり、お前が日常に帰ったとしても神を拝謁する手段は失われん」
「帰った…後?」
「英霊である以上は、契約が終われば強制的に退去となるのであろう?だがその空がある限り、神を拝謁することは可能なままだ」
「あ…」
「ただし、いつぞやの最後の戦いのように問答無用で消し飛ばされる場合もある。その際は…気が向かんことこの上ないが…神自らがお前を捜せばよい」
「…インドラ様が?」
「つまりは…」
インドラ様は至近距離まで私に近づき、低く色っぽい声で耳元で囁く。
「今更この神と縁を切れるとは思わんことだ」
「…ッ!?」
「お前には既に…神の雷によって神との縁が結ばれている。どこにいようが、必ず見つけ出してやる」
インドラ様はその至近距離のまま、私の体を包み込んだ。
私よりもずっと大きな体…その腕から抜け出すことは叶わない。
いや…抜け出す意志が湧かないと言ったほうが正しいのかもしれない。
だって…たとえお別れがきたとしても、この空に入ればインドラ様に会える。
この空を失ったとしても、私がどこにいたって見つけ出してくれる。
私がバレンタインのお返しでもらったものは、そんな未来のことすら約束されたようなものってことじゃないか…。
END