神にも心臓に悪いものはある
神にも心臓に悪いものはある
※注意喚起※
インドラ様✕女夢主ですが、インドラ様の奥様であるシャチー様のお名前が登場します。
お名前だけでの登場ですが「名前だけでも原典の奥様が出るのは嫌」という方はブラウザバックを推奨します。
ここでのインドラ様は、浮気をブチギレられてやたら叱られまくった経験から、シャチー様のことを恐妻即ち鬼嫁と認識しており、名前を聞いただけで冷や汗が出るほどです。
まあ原典でも大体そんな感じでs(((
インドラ様→→→→→→→←←←夢主くらいの気持ちの重さです。これはいつもと変わらないかも?
何でも許せる方向けです。
OKな方のみお進みください。
「あぁ…可愛い」
マイルームにて、私は自分の端末でとある動画を観ていた。
それは…
「動画で観ると可愛らしいですが、やはりとても大きな体をしていますね」
「野性のシャチは約8mにまでなるからね」
とある水族館での、シャチショーの動画だ。
「シャチ…確かオルカの和名でしたか」
一緒に動画を観ていたマシュが私に聞いてきた。
「そうか…英名だとオルカとかキラーホエール(殺人クジラ)とか言われてるんだっけ?」
「通称はオルカですね。世界中の海に生息する水生哺乳類で海の食物連鎖の頂点に君臨し、武器を持つ人間以外に天敵はほとんどいないとされています」
「うん。知能が高くて感受性が強いから、水族館だとトレーナーさんに懐きやすいし芸を覚えるのも早いんだって。それにシャチは人間は捕食対象にしていないし、群れの仲間に何かあったときに人間に助けを求めたこともあるみたい」
「そうなんですか!?オルカは可食部が少ないため人間を捕食対象にしていないことは知っていましたが、まさか人間に助けを求めるとは…」
「座礁して仲間のシャチが動けなくなったときに人間に助けを求めて近づいてきたシャチの動画を観たことがあるよ。シャチのネットワークでは、人間は危害を加えると報復されるけど、何かあったときに頼れば助けてもらえるって認識があるのかも」
「それは嬉しいですね。何かあれば人間を頼れば助かると情報を広めてくださることは、こちらからしてもまるで心が繋がっているようです」
「ただ知能が高い分、船のスクリューを壊す遊びを仲間内で流行らせたり、ダイバーに遊びのつもりで戯れて怪我をさせてしまったり…敵意がなくてもこちらには命取りになることも少なくないからね」
「そうですね。野性動物である以上、仕方がないことではありますね」
「まあね。でもそれも含めて…」
「可愛いしカッコいいし、私はシャチが大好きなんだけどね」
「先輩、本当にお好きなんですね」
改めてシャチ大好きを宣言した私に、マシュが優しく笑う。
この会話を部屋の外で聞いていた方がいたとは知らずに…。
プシューッ
「…邪魔するぞ」
「あ、インドラ様」
部屋でレポートを書いていると、インドラ様が入ってきた。
のだが…。
「………」
「?」
まっすぐベッドに向かって腰を下ろしたインドラ様だったが、今日はやけに無口だ。
そばに控えるヴァジュラたちも喋らない。
どことなく…落ち着かない素振りを見せている。
妙に部屋のあちこちに視線が散っているというか…。
「インドラ様?」
「!?…何だ」
「どうかされましたか?何か落ち着かない様子ですけど」
「…気のせいであろう。神はいつも通りだ」
「そうですか…」
私からの問いかけにも努めて冷静に答えているように感じる。
何か、どこか気まずそうな…。
ヴァジュラたちもいまだに何も喋らないし、宙に浮かんでいるだけだ。
今日はあまり話しかけないほうがいいだろうか?
そう思った私は、手元のレポートに集中することにした。
カリカリ…と私のペンの音だけが響き渡る。
部屋の中が本当に静か過ぎる…。
いくらか作業が進んだ私は、椅子に座ったまま腕を上げて伸びをした。
「おい」
「え…はい!?」
と、ここに来てようやくインドラ様が口を開いた。
咄嗟に出た返事が妙に上ずった声になってしまう。
「…悪いことは言わん」
「?はい…」
やはりいつもと様子が明らかに違う。
歯切れ悪く、言葉を紡ぐインドラ様。
「………女神はやめておけ」
「えっ?」
『女神はやめておけ』?
あのインドラ様?
一体…何の話でしょうか?
「あいつはやめろ。神以上に怒りの沸点が低い。怒らせたら最期だ」
「え、あの…」
「神の立場もなくなる。強要はせんと言ったが、まだ神を信仰したほうがお前の身の安全は保障してやれる」
「えっと…信仰…?」
「仮にお前があいつに気に入られたとする…その場合も神はお前との接触すら禁じられる」
「あの…一体何のお話で…」
「…わからんか?」
「…申し訳ありませんが、一体何のお話をしていらっしゃるのでしょうか?」
「…はぁ。いちいち言わせるな。神とて寒気がする」
「え…インドラ様が、寒気?」
あのインドラ様が寒気覚えるなんて、一体何の話なんだ?
「ならば言わせてもらう。シャチーを信仰するのはやめておけ!あの怒りと嫉妬の女神を信仰するくらいならば、神にしろ!」
「………はい?」
インドラ様が意を決したように、はっきりと口に出した言葉。
それを聞いて私はますます混乱してしまう。
「えっと…何で私がシャチー様の信仰をする話になっているんですか?」
「?お前…先程そのようなことを言っておったではないか」
「先程…とは?」
「盾の娘がこの部屋に来ておったであろう」
「ああマシュ…確かに来てましたが」
「その際…盾の娘と共にシャチーの名を出しておったではないか」
「えっ?マシュと?シャチー様のお名前を?」
「そうだ」
「…んー?」
15秒ほど考えた後、私はすべての真相に気づいた。
「……ッ………ッ…!!」
笑うな。
笑うんじゃない私…。
「おい、聞いているのか」
「…はい、聞いてます。聞いてますがインドラ様」
「何だ」
「それ、空耳です」
「…空耳?だと?」
「インドラ様の聞き間違いです」
笑いたいところを必死に堪え、私は先程マシュと動画を観ていた端末を取り出した。
「私がマシュと話していたのは、これです」
先程観ていた…シャチショーの動画を再生する。
「…何だこの黒と白の生き物は?」
「これはですね…」
私はこの黒と白の生き物は、海洋系食物連鎖の頂点に君臨する水生哺乳類であること。
知能が高く芸を覚えやすいので、こうしたショーが行われていること。
そして英語ではオルカ…日本では『シャチ』と呼ばれている生き物であることを説明した。
すべての説明を聞き終えたインドラ様…。
「…ッ……!!」
顔を伏せてベッドに腰掛けたまま動かなくなっちゃった…。
「誤解が解けてよかったではありませんか」
「よかったねインドラさま。マスターが心変わりしたわけじゃなくて」
「………黙っていろお前たち」
空耳から早とちりをしていたことに気づき、気恥ずかしさからか顔を伏せたままヴァジュラに小言を言うインドラ様。
よく見ると、耳が赤くなってるような…。
ヴァジュラたちも気まずかった空気が勘違いだとわかったためか、いつもの調子に戻った。
「インドラさまはマスターの部屋の前でこれを聞いてしまい、在りし日のトラウマが蘇ってしまったようでした」
「『相手が他の女神ならば、とっくにあいつを神隠ししているというのに』ってぼやいてたもんねインドラさまー!キシシッ」
「黙れ!!」
いや何か今さり気なくとんでもないこと言わなかったか!?
確かに以前『自分以外の神に目移りしたら絶対に許さん』って言ってたけどさ…。
今の私の立場からしたら、シャチー様もなかなか恐ろしいけど、インドラ様も大概だぞ?
インドの神様って…重い神様多くない?
いや、神様の愛自体人間からしたら重過ぎるものだけど。
私…恐ろしいニアミス犯しまくってない?
「オルカは、可愛いから好きなんですが…」
「…その生き物に罪はない。観賞することは許す」
さっきから流しているシャチショーの動画を、まだ項垂れているインドラ様に観せながら、インドラ様の前ではオルカって呼んだほうがよさそうだな…と密かに考えた。
〜おまけ〜
空耳してしまったインドラ視点。
マスターの部屋を訪ねるため、インドラはヴァジュラたちを連れて廊下を歩いていた。
「そういえばインドラさま、最近廊下でアイラーヴァタに乗らなくなったよね」
「神々の王が、ヴァーハナに乗らず己の足で目的地へ向かわねばならんとは、本来であればあってはならんことだ。だが神のアイラーヴァタにより危うく怪我人が出そうになったとなれば、気は進まんが致し方あるまい。神の評判が下がるようなことはしないに限るからな」
「以前ぶつかったのは他でもないマスターでしたからね」
「相手がマスターじゃなかったら今もアイラーヴァタで移動してたよねー。キシシッ」
「うるさいぞヴァジュラ」
カルデアに来たばかりのとき、他の英霊にぶつかりそうになった、またはぶつかったことはある。
上手くかわした者がほとんどだが、運悪くアイラーヴァタの牙が刺さった槍兵もいた。
が、生身の人間であるマスターがアイラーヴァタにぶつかって軽く吹っ飛んだ事故が起きた際は流石に少し反省したらしい。
マスターに怪我はなかったが、その日から廊下は歩いて移動するようになったインドラなのである。
そしてマスターの部屋の前に着き、ドアを開けようとしたときだった…。
『可愛いしカッコいいし、私はシャチが大好きなんだけどね』
『先輩、本当にお好きなんですね』
「!?」
部屋の中から聴こえてきたマスターとマシュの声に思わず固まってしまうインドラ。
あいつが…
シャチーが…大好き…だと?
(※シャチです)
「マスターはシャチーさまがお好きなんですね」
(※シャチです)
「へー。知らなかった」
「………」
「「インドラさま?」」
ヴァジュラたちが何か言っているが、インドラの耳には入らない。
冷たい汗がじわりと体に滲んできた。
思わずマスターの部屋から離れ、しばらくカルデアの廊下を歩き回るインドラ。
かつて女を引っ掛ける度に怒鳴られ、叱られた記憶がインドラの脳裏をよぎる…。
悪寒までしてきた…。
普通そこまでトラウマになっているのなら懲りるはずではあるが、そこはインドラ。
懲りることはない。だが怖いものは怖い。
マスターの口から『シャチーが大好き』とはっきり言っていた衝撃も加わり狼狽えるインドラ。
(※シャチです)
マスターには以前から『他の神に目移りするな』としつこいくらいに伝えている。
もし自分以外の神に心を奪われるようなことがあったとしたならば、即自分のもとへ引き摺り込むとも伝えてある。
もちろん脅しではないし、そうなれば人界へ帰す気もない。
マスターがそんな過ちを犯そうものなら、問答無用で実行するまでだ。
少し前に、無知による勘違いで大目に見てやったことはあるが、あれは特例だ。
明確な意志があるのなら、二度目はない。
だが今回は相手が相手だ。
美しい女神ではあるが、怒りと嫉妬を司る強き女神でもある。
自分と親しくしているマスターに嫉妬し神罰を下す可能性もあるが、あの神たらしのマスターをシャチーが気に入る可能性も大いにある。
インドラ自身もここまで気に入っているのだから。
しかし、そうなるとますます手が出せなくなってしまう。
神罰が下る可能性がある時点で、まだ自分のもとにいるほうが身の安全は保障してやれる。
どう説得したものか…。
「…相手が他の女神ならば、とっくにあいつを神隠ししているというのに」
「説得に成功すれば、その懸念は不要かと」
「そーそー。今マスターが一番一緒にいる神様はインドラさまなんだからさ」
ヴァジュラたちがインドラを励ます。
まあ確かに、普段からあそこまで仲を深めているのだから自分の説得に応じないこともないだろう。
ならば…行くとするか。
勘違いに気づかないまま、再度マスターの部屋に向かうインドラなのであった。
END