これは何の罰ゲーム?
これは何の罰ゲーム?
※注意喚起※
一部オタク界隈の用語が飛び交います。
なるべく慎重に書いたつもりですが、無理だと思った方はここでブラウザバックを推奨します。
あくまでもインドラ様の反応は、投稿者の妄想に過ぎませんので、あまり深く考えないでいただけたら…と思います。
OKな方のみ、お進みください。
「おい、人間」
「はい?何でしょうか?」
マイルームにて…。
ベッドに腰掛けタブレットで動画らしきものを観ていたインドラ様が、私に声をかけてきた。
レポートを書く手を止め、インドラ様の方を向く。
「理解し難い言葉がある」
「何でしょうか?」
インドラ様の隣に座り、タブレットをを覗き込む。
「ユニコーンとは…一体どういう意味だ?一本の角を持ち、馬の姿をした幻獣というのは知っておるが」
ピシッ
インドラ様の質問に、固まってしまう私。
ちょっと待て…。
誰だよインドラ様に教えた奴!?
「え…っと…?インドラ様…一体誰からそれを…」
「先程、黒い髭を持つ海賊に会ったのだが…」
オメーかくろひー!!
本当に余計なことしてくれたなくろひー!!
「信仰を常とする神ならば、もしやこの手の界隈にも理解は示してもらえるのでは…などと言っておったな。何故か震えておったが…。神はよくわからんかったが、確かに信仰を要とする神であれば知識として押さえておく必要はある。それ故奴にデータを送らせたまでだ」
私としては、そんなに知識欲旺盛にならないでほしいんですよインドラ様…。
だって貴方そんなことしたら…。
「だが、界隈の用語…と言ったか?それは神にはからっきしだ。お前は知らんはずがあるまい?答えよ」
私が教えなきゃいけなくなるじゃないですか!!
これ何の罰ゲームだよ!?
やだよ!?界隈の闇(失礼)についていけなくて宇宙猫になるインドラ様も、触発されて染まっていくインドラ様もどっちもやだよ!?
「うぅ…何で…何で私がこんな目に…」
「何を嘆いておる?早く答えんか」
「はい…答えます…答えますがインドラ様」
「何だ」
「意味がわからなくても、怒らないでいただきたいです…」
「怒るわけなかろう…問いかけたのは神の方だぞ」
「ならよかったです…」
ちっともよくないのだが…。
私はひとつ息をついてから、重い口を開く。
「ユニコーンというのは、主に今インドラ様が見ていた動画配信の界隈などの用語のひとつです。自分が応援している好きな演者…所謂『推し』と呼ぶ存在が、異性と関わることを激しく嫌悪する一部の過激なファンのことを指します。ユニコーンは清純を司り純潔の乙女を好むことから、その名がつけられたんです」
そう…インドラ様が見ていたのは、とあるバーチャル配信者の動画だったのだ…。
くろひー…インドラ様に何を布教してるんだよ…。
「…好いた女に男の気配がすることが気に食わんということか?色恋と変わらんではないか」
「そうですね…色恋と結びつくことももちろんありますが、画面越し…もしくはステージ上の推しは、自分には手が届かない輝かしい存在だからこそ、誰のものにもならない、清らな存在であってほしいと理想化しているものもあると思います」
「手が届かん存在?ならば尚更手中に収めたいと思うものではないか?」
「推しが自分のことを見てくれるはずがない、でも自分にとって遠くで輝く星のような存在であってほしいと思うのかなと…」
「よくわからん。気になる女がいれば口説けばよい話ではないか」
「それはインドラ様だからできることで…あ、女神信仰に例えたらわかるかも…」
「女神信仰?」
「インドの神様の中で、処女神って…いらっしゃいますか?」
「ああ、いる。お前もよく知っているはずだが」
「え?」
「ドゥルガーだ。奴も処女神の一柱だぞ」
「ドゥルガーさんが!?」
「奴が戦女神として絶大な力を振るうことができるのは、その身が純潔であるが故だ。他国の神話においても、戦女神に処女神が多いのはそのためともいえるな」
「そうだったんですね…」
知らなかった…。
純潔が力の源になるんだ…。
「で、女神信仰がどうした?」
「あ、失礼しました。あくまで例えばのお話で聞いていただけたらと思いますが…」
「構わん」
「ひとりの人間の男性がいたとします。彼はとある処女神に心を奪われ、信仰していました。普段の美しいお姿と戦で見せる勇ましいお姿…どちらにも惹かれ、毎日賛歌を捧げていました」
「まあ…よくある話だ」
「ですが、その処女神が…どうやら恋焦がれる相手ができたようだという噂を耳にしてしまいます。あくまでも噂に過ぎないのですが、それを聞いた彼は激しく動揺してしまいます。自分が今まで信仰していた純潔の女神が、突如浮上した男の存在によって汚される…自分の中で作り上げてしまった『理想の純潔の女神』と現実の女神による板挟みで苦しんでしまう…こんなところでしょうか?」
「なるほどな。確かに女神相手ならば、人間は手中に収めたいとは思わんであろう」
「ただ『ガチ恋』と言って、推しに対して本当に恋心を抱いてしまう人も多いです。そういった人たちは、叶わない恋からユニコーンと化してしまう場合もありますので、一概には言えないのですが」
「…難儀なものであるな」
「普通なら、それを自分の中にしまう…もしくは親しい仲間内で話すくらいに留めます。まずいのは、その感情を赤の他人や推し本人にぶつけて加害に走ってしまうことですから」
「それはもはや獣と変わらんであろう」
「…そうですね」
幻獣であるユニコーンのままならいい。
それがただの獣になってしまえば、何もかも失いかねないんだろうな。
「ちなみにユニコーンの対義語に『バイコーン』という用語があります」
「…二本角の、あのバイコーンか?」
「そうです。バイコーンは不純を司るので、処女性を求めるユニコーンの逆で、非処女性を求める一部のファンを指します」
「お前たち人間はよくもまあ…よくわからん用語まで作り上げるものだ」
「ユニコーンもバイコーンも幻獣…空想の生き物とされてきましたからね。私は、個人の空想の中で楽しむ分には何も問題ないと思います」
エネミーとしてバイコーン出てくるけど…。
「ところでインドラ様…」
「何だ」
「さっきのバーチャル配信…ご興味は湧きました?」
「神にはピンと来ん。実際に触れられん女でも、それらを楽しむ者がいることは理解したが…」
やっぱり…。
極端な話、インドラ様からしたら抱けなきゃ意味がないんだろうなって思ってたけど案の定だったな…。
ただ、実際に観た上で『これの何が楽しい?』って言わなかったところは、何ともインドラ様らしいというか…。
いや待て…『これの何が楽しい?』はタイミングによってはポロッと口にしてたかもしれない。
『こういう楽しみ方をしている人たちがいる』っていう私の説明を聞いた後だから、言わなかっただけかも…。
「しかし、この娘たち…バーチャルとやらで動いているこの体は化身のようなものか?」
「あ、似たようなものですね」
確かにバーチャルにおける体だから、仮初めの器で現界してる今のインドラ様みたいなものかもしれないな。
「ならば…お前もこのような体が作れるのか?」
「え?まあ…私は詳しくないんですが、やろうと思えばこの配信者のようなバーチャルの体を作ることはできますが…」
「ほう…」
「あの…まさか作れなんて言いませんよね?」
私は配信を観るのは好きだけど、配信者になりたいわけじゃないんですが…。
「いや、作れとは言わん。考えはしたが」
「考えはしたんですね…」
「これを作るのは、この娘たちのように配信活動とやらをする前提であろう?」
「まあ…大体はそうなりますね」
「ならば作る必要はない」
「そうですか…」
「お前に厄介な信者が付き纏いかねんからな」
「え…いや、配信始めてすぐにそんなファンがつくわけじゃないんですから…」
しかしインドラ様は私の言葉に耳を貸さず、タブレットで先程の配信動画を眺めている。
「先程のユニコーンやバイコーンといった無害な奴らならばまだよい。だが『ガチ恋』とやらは見過ごせんからな」
「いや、ですから配信者全員にガチ恋がつくとは限りませんから!というかこの子たちみたいに売れるのはほんの一握りで…」
「この娘に至っては『ガチ恋営業』なるものをしておるな。お前がそのような思わせぶりをして男どもを呼び寄せようものなら、実力行使しか対策の手はあるまい…」
「だから話を!聞いて!ください…ッ!」
配信を観ているインドラ様だが、時折混じる『私が配信者になったら出てくる懸念』に、私は顔を真っ赤にして叫ぶことしかできなかった…。
〜おまけ〜
プシューッ
バァン!!
「オラァ!テメエのお望み通り、ちゃーんとあの神に布教してきてやったかんな!?」
「ノックはドアを開ける前にしてくれたまえ」
「ああ“!?文句垂れる気かコラァ!!」
自動ドアが開いたかと思うと、壁を殴りつける音とともにティーチが怒鳴り込んで来た。
優雅にラム酒を飲みながら、涼しい顔で迎えるバーソロミュー。
「それで?ちゃんとインドラ神に動画を観てもらえるようにリンクを送ったんだな?」
「送ったに決まってんだろ!ったく…何で俺様がこんなことしなきゃならねえ…」
「何でって…決まってるだろう?」
バーソロミューはそばにあったラム酒のボトルを手に取り、空になったグラスに注いだ。
そして注ぎ終わるとティーチの方を向き、ひと言。
「昨日の罰ゲームだ」
「んなこたぁわかってんだよ!何であんなおっかねえ神に、テメエの趣味の布教なんざしなきゃならなかったのかって聞いてんだよ!」
「仕方ない…君の運だ」
そう…昨夜、海賊たちと酒を飲んだ際に行われたゲームで惨敗したティーチ。
その罰ゲームとして提案したのが、最近バーソロミューが推しを見つけたバーチャル配信グループ…それを誰かに布教してくるというもので、くじ引きで布教する英霊を決めた結果がインドラだった。
ティーチの運が悪かったのか、その対象に選ばれたインドラの運が悪かったのか…はたまたそのどちらもなのか…。
バーソロミューの推し?
それは当然メカクレビジュのライバーだ。
「ったく…テメエよくあんなおっかねえ神のとこに行けるなメカクレ魔人」
「決まっているだろう?そこにメカクレがいるからだとも」
「うん、知ってた」
あの雷霆神のそばに控える従神の一体は、このメカクレ魔人に目をつけられた可哀想な被害s…ゲフン…メカクレ少女。
いや、正確には性別はないようだが。
「何ならインドラ神も、あと少し前髪が…」
「いやそれ以上はやめとけ馬鹿!集中砲火…いや集中落雷が起きんぞ!?」
「チッ…」
「え?舌打ち?拙者親切に止めたのに?まさかすでにあの神に言った後だったりする?」
「いいや、まだ言っていないが?」
「あー、なら安心…いや待て、今『まだ』って言った?まさか今後その話に触れてみようとか阿呆なこと思ったりしてない?」
「ん?何か問題があるのかな?」
「あるに決まってんでしょーがアホンダラ!いや拙者は無問題ですが?消し炭になりたいわけ?流石にこれにゃあの神も前髪上がっちまうぞ」
「やめないか黒髭!インドラ神のあの重たげで魅力的な前髪を上げようだなんて何て非道なことを考えるんだ貴様!?」
「これ拙者が悪いの?」
このメカクレ魔人…文字通り神をも恐れぬ猛者なのである。
あと、インドラの第三再臨の話はNGらしい。
「まったく…インドラ神は雨の神でもある。船乗りである私たちからすれば、敬意を欠くような真似は控えたほうが身のためだぞ」
「今現在不敬働いてんのどっちかっつーと、テメエの方だと思う」
「何を言う。きちんと捧げ物のラム酒は欠かさず持っていくし、神への挨拶も欠かさない。礼儀で言うなら間違いなく貴様よりきちんとしているとも」
「ほぼ3日に1回くらいの頻度でマスターの部屋に押しかけてるってことじゃん?マスターうんざりしてない?そこんとこ大丈夫そ?」
「私とマスターの仲だからね…そこはきっと大丈夫だとも」
ぜってー大丈夫じゃねえじゃん…。
マスター、このメカクレ魔人…たまには出禁にしていいと思いますぞ?
気持ち悪いの見てるの我慢するのも、限界ってもんがあるでしょ?
気苦労が絶えないであろうマスターに向け、そう心の中で呟くティーチであった…。
END