誰が為の時間
誰が為の時間
※注意書き※
〜本編に出てくる高杉社長について〜
夢主が塩対応です。
投稿者から見た高杉社長が、遠くから見てる分には楽しいけど、巻き込まれるとちょっと厄介…な友人枠なので、親愛こそあれど、わりと雑に扱ってしまっています。
高杉社長が推しの方、特に「高杉社長が雑に扱われているのは見たくない」という方はブラウザバックを推奨します。
OKな方のみ、お進みください。
「やあやあご機嫌ようマスター君!君の高杉晋作が来てやったぞ!」
「呼んでないし私のものじゃないので、どうぞそのままお帰りください」
「ははは!相変わらず冷たいな、君は」
「そう思うなら構わないでいいです」
「何を言う、君と僕の仲じゃないか」
「そんな仲になった覚えはないんで」
マイルームを訪ねて来たのは、幕末の維新の英雄である高杉晋作。
英霊であることに変わりはないのだが…。
関わると大抵碌なことをしないこの男に、嫌悪感こそないものの畏まるほうが馬鹿らしいと感じ、いつも私は塩対応で接する。
「………随分騒がしい人間が来たな」
いつものように部屋でくつろいでいたインドラ様。
高杉社長のよく響く声に、若干煩わしそうに呟く。
「おっと…かの帝釈天もいたのか」
「何か不都合でもあるのか?」
「いやいやまさか。それはそうとマスター君!せっかくこの僕も霊基が強化できたわけだ!早速この実力を発揮するためにバトルと行こうじゃないか!」
「やだ」
「何だよやだって」
「シミュレーターで適当に暴れてて」
「そう連れないことを言わなくてもいいだろう?君の素材在庫、確か貝殻が足りてなかったはずだ。なら僕の出番だろう?修練場でも海岸でも好きなだけ付き合うとも」
「確かに足りてないけど…」
何で知ってんだこの社長。
在庫管理を任せたわけじゃないのに…。
まさか素材を頂戴しようとして覗いたのか?←正解
「そうだろうそうだろう!なら善は急げだ、ほらほら早いところ行くぞ!」
「うるっさいなもう…わかったから先にコフィンに行ってて。他のメンバーも集めるから」
「よし来た!ウルクの観測所だな!?それなら一足先に管制室で待ってるとしよう!マスター君も急ぎたまえよ!?」
「はいはい…」
上機嫌で去っていく高杉社長。
ため息をつきながら立ち上がる。
「おい、待て人間」
「あ、インドラ様。すみません、ちょっと素材集めに行ってきます」
「だから待てと言っている」
「どうしました?」
「お前は今、神の相手をしている最中だ。急に訪れたあの男を優先するというのか?」
「そうだそうだー!」
「インドラさまを放置なさるおつもりですか?」
どうやら急に決まったレイシフトで、私が席を外すのがお気に召さないらしい。
ヴァジュラたちの抗議まで加わった。
正直私も乗り気じゃないんですよ…。
でもねインドラ様…。
「申し訳ありませんインドラ様…。でもあの社長いくら無視しても私を引きずって行きますし、放置しすぎると知らないところで質の悪いこと企てて、結局私が後始末に駆り出されるので、適度に付き合って発散させないと後が面倒なんです」
「何だその邪竜並みに厄介な奴は」
「私もそう思います…。でもあんなに上機嫌で行っちゃったので、ここで『やっぱりなし』と言うと腹いせに変なこと考えかねないので、流石に付き合わないと…」
「…」
あぁ…黙っちゃった。
めっちゃ渋い顔して黙っちゃった…。
わかってくださいインドラ様。
何だったら…
私だってインドラ様と過ごしたいです…。
「………仕方がない」
「!」
「ただし…疾く帰還するよう努めろ。神を待たせた分の埋め合わせも忘れるな」
「あ…ありがとうございます!できる限り早く戻ってきますので!」
渋々といった感じだが、何とかインドラ様から許しを貰うことができた。
かつて自分が対処した干魃の邪竜のように、放置すると始末に負えないものとでも考えてくれたのだろうか?
社長には悪いけど。(さほど悪いと思っていない)
さっさと終わらせて戻らないとな…。
インドラ様に頭を下げ、私は足早に部屋を出た。
「…、」
私を見送るインドラ様が、何とも複雑そうな表情をしていたことにも気づかずに…。
〜しばらくして〜
「いやぁ大量大量!今日は随分と素材が集まってくれたな!流石は僕だ!」
「貴方が関係あるかはさておき、確かに今日は短い時間でたくさん集まったよ。みんなお疲れ様」
「ふふ…満足したなら何よりだ」
「スカディ様、ありがとうございました」
「私への感謝も忘れずに、ですよ?」
「もちろん。ありがとうテノチ」
付き合ってくれたスカディ様とテノチにお礼を言いながら、素材庫の中に貝殻を収納する。
「ふう…流石に少し張り切りすぎた。では僕は先に戻らせてもらう。今日は付き合ってもらえて何よりだ、マスター君」
「はいはい、満足したなら何よりだよ」
少し疲れた様子だが、存分にバトルを楽しんだ高杉社長が、ひらひらと手を振りながら帰って行く。
貝殻の在庫数を更新して…。
よし終わった。
早いところ部屋に戻ろう。
そう思い後ろを振り向くと…。
「終わりましたか」
「んじゃ行っくぞー」
「えっ、ヴァジュr…わあぁ…ッ!?」
いつの間にか私の真後ろにいたヴァジュラたち。
二体がかりで私を持ち上げ、結構な速さで飛びながら移動する。
「インドラさまがお待ちですので、我々が迎えに来ました」
「早く戻れってインドラさまが言ったのに待たせすぎだぞー?」
「これでも急いだほうだから!」
「まあお決めになるのはインドラさまですから」
「どのみちインドラ様から何かしら言われるのは百も承知だよ!理由はどうあれ席を外したんだから」
「何だわかってんじゃんか。キシシッ」
ヴァジュラたちと軽く言い合っているうちに、マイルームの前に辿り着いた。
ヴァジュラが自動ドアを開ける。
プシューッ
「お連れしました、インドラさま」
「やっと帰って来たよインドラさまー!」
「ただいま戻りました!」
部屋の中に入ると、ヴァジュラたちに下ろされる。
「…戻ったか。そばに寄れ」
「はい」
ベッドに寝そべるインドラ様から声がかかり、私は先程のようにそばに腰掛けた。
「すみません、席を外してしまって」
「…」
インドラ様は何も言わない。
許可を貰ったとはいえ、本来なら機嫌を損ねてもおかしくないことをしてしまった。
インドラ様からの言葉を待つ。
「…お前は」
「はい」
「気を許した者にはあの男のように接するのか?」
「え?」
あの男…高杉社長のこと?
確かに、塩対応している以上気は許してはいることにはなると思うけど…。
「全員に、とは言いませんが…気を遣わなくてもいい相手には砕けた対応になっているかもしれません」
「…」
「ただ高杉社長は嫌いこそしませんが基本騒ぎを起こす側なので…本音を言うと、一緒に居続けると面倒なのであんな対応になっているだけです」
「…なるほど」
「…すみません、見ていて不愉快でしたか?」
「…不愉快、とは違うが…」
少し間を置いて、インドラ様は続けた。
「神が神である以上致し方ないことではある。だがお前が人である限り、あの男には得られたとしても決して神には得られんものがある…と考えたまでだ」
「え…」
「かといって、人でありたいと願いはしないがな」
それって…
私と高杉社長が砕けたやりとりをするのが…
若干羨ましいって思った…
ってこと…?
神様であるインドラ様にはあんな雑な対応は不敬にあたるから、どんなに長く接していても、人間同士のような気安い仲にはなれない。
だって身分が違うから。
あ、高杉社長の扱いについては一応気になって本人に聞いてみたことがある。
けど特に気にしてないみたいだから、お言葉に甘えて雑に扱っている。
「…インドラ様は神様ですから。流石にあんな対応はできません」
「当然だ。不敬にも程がある」
まあ、他の神様もそうなんだけど。
「なので…私がいくらお許しを得てインドラ様のそばに寄っても、縮められる距離に限界はあります」
「…」
物理的にも、心の距離でも。
「でも…」
「その分おそばにいる時間を作ることなら、私にもできます」
「!」
「さっきみたいに急に呼ばれたり、誰かと約束をしていることはどうしてもありますが、空いた時間をなるべくインドラ様のために使うことはできます。というより…それしかできることがないのですが…」
緊急事態で呼び出されることもあるから、インドラ様を優先したくてもどうしても難しいときもある。
それでも、私も本当は貴方と過ごしたい…。
そう思ってることは、伝えたい。
私が作れる時間はほんのひとときだろうけど、それでもその気持ちだけはどうか…。
「フッ…先程途中で席を外した者がそれを言うか」
「…それを言われると、何も言えません」
「だがまあ…お前の心持ちは伝わった。神のためにせいぜい励むがいい。誰よりも、この神々の王のために時間を割くということを忘れるな」
そう言うとインドラ様は腕を伸ばし、私の体をそっと抱き寄せた。
「それにしてもあの男…さも己がお前の所有物かのような物言いだったな。所有物ならばお前のそばにいるのが道理とでも言うのか?神がそばに置く女に対して随分と軽率な物言いをする」
「………インドラ様?」
あれ?何か腕の力が強い…ような…。
「好き放題に周囲を巻き込み滅茶苦茶にされ、挙句事の収拾に呼び出される苦労には、神にも覚えがある。お前の立場には多少だが同情してやる」
「はあ…」
インドラ様の場合…持ちつ持たれつというか…。
いや、決して言いませんが。
「何より…神とお前の過ごす場を荒らし、お前を連れ去って行った不届者に変わりはない。二度目があれば容赦なく神雷を落としてもよい」
「インドラ様…ガッツ持ちの社長でも、流石に消し炭になるのでそれはやめてほしいです」
クラス相性有利な上にランクEXの強化解除宝具相手じゃ、社長のアラハバキでも分が悪すぎる…。
「何か不都合があるのか?」
「あります!たとえ騒ぎを起こしまくっても、力を貸してくれる英霊に変わりありませんから!」
「………まあ、加減はしてやろう」
「制裁自体は下すんですね…」
今後インドラ様とくつろいでいるときに、また社長が訪ねて来たとする。
結局どっち選んでもヤバいことになりそうだな…。
〜おまけ〜
「マスターさんじゃないですか」
「あ、カーマちゃん」
廊下にてマスターさんと遭遇…。
今日はついてますね、私♡
思わぬ遭遇に浮き足立つカーマ。
前回はインドラから制裁を食らったため、尚更だ。
「ふふっ…愛の神に廊下でばったり遭遇なんて、そうそうないですよ?」
「いやいや…カーマちゃんも出歩きはするでしょ」
「もう、連れないんですから。どうです?一緒にスイーツでも食べに行きません?今日は赤い弓兵さん特製のフルーツパフェがあるみたいですよ?」
「あー…ごめん。インドラ様に呼ばれてるんだ」
「…」
チッ…あの神、ちゃっかり先約入れて…。
とはいえ、諦めるカーマではない。
「マスターさん、最近インドラにばっかり時間使ってますよね?私も一応神なんですよ?私にも時間割いてくれたっていいじゃないですか」
「確かにそうだけど…なるべくインドラ様との時間を作るって、この前約束したんだよ」
まったく…余計な約束を…。
それに、あの神に本気になったって碌なことがないというのにマスターさんときたら…。
「そう言わずにマスターさん♡ちょっとくらい遅れても、インドラも許してくれますよ」
な〜んかインドラもマスターさんが相手なら大目に見るようですしねぇ…。
まあ…マスターさんを特別扱いしたい気持ちだけはわからなくもないですけどね?
インドラがマスターを許したとしても、ちょっかいをかけようとしたカーマを許すとは限らない。
そんな当たり前の事が見えていないカーマ。
「カーマちゃん…流石に、ね?」
折れないですねぇ…このマスターさん。
ならもっと距離を縮めて…っと。
「もう…マスターさんってば………ッ!?」
「カーマちゃん?」
思わず動きを止め、顔を顰めるカーマ。
まあ…手を出したことはわかってましたけど…。
あの神マーキングしすぎでしょう…。
マスターに近づいただけで漂ってくる…
インドラの匂い。
あぁ…本当に忌々しいですねぇ…。
「カーマちゃん?大丈夫?」
流石に人間のマスターは、自分に纏わりつくインドラの匂いには気づいていない様子。
カーマを心配するように、顔を覗き込む。
何でもありません…と返そうとしたカーマだが…。
「何をしている」
「あ、インドラ様」
げ…何でよりによって今…。
「またお前か……懲りん奴だ」
「!?」
あ、これ…マズい…。
バチバチバチッ
「きゃああぁ…ッ!!」
「カーマちゃん!?」
いたたた…ッ!!
この前のより遥かにマシですけど痛い…!!
この神…マスターさんが見てるからってかなり手加減してるみたいですけど、それにしても普通に痛いんですけど!?
「安心しろ、加減も加減だ」
「イ…インドラ様…何も攻撃しなくても」
「こいつは前科持ちだ。行くぞ」
「わっ!?」
マスターを片手で担ぎ上げ去って行くインドラ。
チッ…また失敗ですか。
でも次こそは…。
何度雷を落とされても懲りるわけでもなく、ただただリベンジに燃えるカーマであった。
END