6 姉の旅立ち
6 姉の旅立ち
11月の下旬、かすみと東風は結婚式当日を迎えていた。
早雲と玄馬と乱馬は、神社の親族控室で落ち着かない面持ちでいた。
紋付袴姿の早雲は、部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。
乱馬は慣れない黒の中華服の首元をそっと緩める。
「親父はいいよなー。パンダになってれば、堅苦しい衣装も着なくていいし」
パンダ姿の玄馬に、乱馬は呟いた。
「お待たせしましたー」
美容室からここへ直行してきた、振袖姿のあかねとなびきが入ってきた。
あかねは藤色、なびきは萌葱色の振袖を身に纏っている。
殺風景だった控室が、急に華やいで見えた。
「なに、ぽかーんとあかねに見惚れてんのよ」
なびきは乱馬に揶揄うように言う。
「///は?見惚れてなんてねぇし!」
その時、
「新婦さまのお支度が整いました」
と、係の人が控室に現れた。
みんなはかすみのいる控室へと入っていく。
すると、白無垢姿のかすみが、こちらを向いて立っていた。
息を呑む美しさに、一同は一瞬言葉を失った。
早雲だけは目から滝のような涙を流してかすみに縋りついた。
厳かな空気の中、神前式は静かに執り行われた。
三々九度の盃を交わし、神前で永遠の契りを結んだ二人を、家族は温かな眼差しで見守っていた。
やがて境内には、祝福の拍手が静かに響き渡った。
式を終えた一行は、紅葉に染まる境内へと出た。
「あかね。家のことよろしくね。でも、無理しちゃダメよ?」
かすみがそっとあかねの耳元に囁いた。
あかねは笑顔で頷く。
それからかすみはすぐに東風の親族たちに囲まれてしまった。
あかねは、少し離れた人のいない場所へと歩いていった。
紅葉の降る音まで聞こえてくるかのような静けさの中、安堵の息を漏らした。
すると、目線の先に乱馬がいた。
あかねはくすっと微笑み、乱馬の隣までやってくると、同じ木の下に並んで立った。
「乱馬も逃げてきたんだ?」
あかねが尋ねると、乱馬は「まあな」と言って、木の幹に寄りかかった。
「素敵だったね、かすみお姉ちゃん」
あかねは紅葉の向こうの青空を見上げる。
「ああ、そうだな。幸せそうだったし」
乱馬はようやく解放され、ひんやりとした外の空気を思い切り吸い込んだ。
沈黙が心地良かった。
「あたしも…いつかはかすみお姉ちゃんみたいに、大好きな人とああやって結婚式を挙げたりするのかな」
あかねは独り言みたいに呟く。
「……ばーか。それより、もう平気なのか?」
乱馬が尋ねると、あかねは澄んだ笑顔で答える。
「うん、もう平気」
「そっか……」
それから二人は、しばらくただ遠い空をじっと眺めていた。