第5話
第5話
なぜ同じ年齢の者を採用したのか意味がわからない。 洗顔を済ませると、河野は綺麗に揃った服を用意して待ち構えていた。「こちらに服を用意いたしましたので…」「わかった。けどな、自分で着るからいいよ。俺だってガキじゃねんだ。服くらい着れる」明が河野の言葉を遮るようにして言った。 これまで頑張って耐えてきたが、やはり無理だった。「しかし…仕事ですので…」「いいから。俺の言う事聞けねぇのかよ」思わず明は河野を怒鳴ってしまった。「…かしこまりました…」河野は断念したが、残念そうな、納得いかないような複雑な顔をした。それを見て、声を荒げてしまったことを内心明は申し訳ない様な気になり、少し後悔の念に捕らわれた。名家を継ぐ者として、感情を抑えられないことはどうかとも思う。明は反省する。「悪かったよ…大きな声出して」そうぼそぼそと言うと、河野は既にケロっとしているようだった。「いいえ、とんでもございません。出過ぎたことを申した私が悪いのです。明様はお気になさらないでください」そう言って、河野はその場を離れた。明にとっては河野とのやり取りなどに慣れていないせいか、調子が狂って仕方がない。 時が経ち明も河野の存在には慣れてきた。だが、少し変わってきたのは明に対して河野がはっきりと物を申すようになってきたことだ。「明様、ネクタイが曲がっていますよ。せっかくご自分でなさったのに、きちんとしなければいけないではないですか」そう言いながら、河野は明のネクタイを直す。自分よりも身長の高い佐々島にこうして言われ、直されたことが酷く恥ずかしく自分が子供っぽく感じられた。「悪かったな。たまたまずれただけだ」「明様…」「何だよ」「やはり、着替えは私にさせてはいただけないでしょうか」思い詰めたような顔で懇願してきた河野を見て、明は少しだけ不思議に思った。「な、何でだよ。俺が自分で着られてるんだから別にお前に着せてもらう理由などない」「最初は、私が着せさせていただいていたはずです。それに、元々着替えも執事の仕事の一つ。明様がご自分で御着替えをしていると旦那さまがお知りになったなら、私が職務怠慢だと怒られてしまうかもしれません」「なんだよ、その屁理屈。意味わかんねぇな。着替えくらい自分でしてぇっての」子供じゃあるまいし、着替えをしてもらうのは明にとっては避けたいところだった。「昔のお殿様は着替えを手伝ってもらっていたそうですよ」「お前…それは、着にくい着物だったからだろうが。俺は別に着物を着るわけじゃないからな」明は、このまま流して着替えの件はなかったことにしたかった。が、河野はまだ折れずになおもせがんできた。