第9話
第9話
河野は、前からこういった物言いをする人間だっただろうか。 手早くトリートメントを洗い流した彼は、「さて、次は体を洗いましょうか」と言い、スポンジを手に取った。「他人に洗ってもらうのって、恥ずかしいんだが…シャンプーはともかく、体はな…」「そうですか?」「小学校の途中あたりから、一人で入ってんだよ、俺。ガキの頃だけだよ、洗ってもらってたのはな」「では、久々に洗ってもらうのも良いかもしれませんよ?」「…じゃあ、背中だけ、頼む…」「かしこまりました」河野からスポンジを受け取り、明は自分で首から洗い始めた。ただ、傍らに彼にいられるのが気になって仕方がない。「あの、さ…」「何でしょう?」「お前がいると、やり辛いんだよな」「どうぞお気になさらず。私はいないものと思って続けていただいて結構ですよ」「そう言われてもなぁ…」明はそう嘆息したが、河野は明をみないように関係のない方向を向いている。仕方なく、明は取り敢えず洗うのを再開した。大体自分で洗えるところは洗い終わった頃、河野に声をかけた。「なぁ、終わったからさ、背中頼むよ」「はい、ただいま」河野は明から再度スポンジを受け取ると、丁寧に背中を擦っていく。「明様の肌は、綺麗ですね」「え?そうか?」あまり他の人に言われたことがないので、明は驚いた。「そんなこというの、お前だけみたいなもんだぞ」「…気持ち悪かったですか?」「いや、そんなことはねぇけどさ…」明はそう返したものの、河野は少し寂しそうだ。「なら、良いのですが…とても滑らかで、羨ましいです」「男にそう言われるのも、変な感じだな」「そうですか?…さて、背中は終わりましたが、他に、洗い残したところなどはありませんか?」突然、河野が目をきらりと光らせて聞いてきた。「え?あ、いや…別にないけど…」 「そうですか?では、ここはどうですか?」彼はあろうことか、明の両脚の間にしゃがみ込んで明の体の中心に手を触れてきた。「おっ、おいっ!どこ触ってんだよ!」「ここもきちんと綺麗にしなくてはいけないですよね、明様?」河野は何か含みのあるような笑顔で同意を求めるようにして言う。「はぁ?いや、お前に洗ってもらうもんじゃねぇし…こんなの…」「ダメですよ、あなたは完璧でなくてはいけないのですから、ここも、抜かりがあってはいけないんです」そう言って明のものを手のひらで撫でたかと思ったら、河野はまだ固さのないそれを掴んだ。「私におまかせください、綺麗にしてさしあげますから…」 河野は手でキュっと少し強く明のものを握った。「お前、やめろよそんな冗談…」「冗談ではありません。私はご奉仕したいだけなのです」そう言うと、河野は明の胸の小さな蕾を一舐めした。