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その獲物、危険につき

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

その獲物、危険につき

一度、壁を背にして座る。

目の前には、麻痺で動けぬまま毒で命を削られていく魔物たち。

「どんだけ巣食ってんだよ、こいつら」

麻痺状態の魔物が不恰好な半円の壁をなしている。

麻痺した魔物をどけて次の”獲物”がやってくる。

身体の穴から酸を噴き出しながら。

毒々しい 体色 ( たいしょく ) の魔物たちの視線が、突き刺さる。

怒り。

憎悪。

殺意。

この身体が動くようになったら、即殺してやる。

魔物の心の声が伝わってくるようだ。

「 殺 ( ヤ ) れよ」

睨み返す。

「 殺 ( ヤ ) られる前に、 殺 ( ヤ ) ってやるから」

肌の表面がヒリついている。

なぜだろう。

今は魔物の殺意に不思議と安堵感すら覚える。

殺意を向けられるのなら――気兼ねなく、毒殺できるからか。

しかし俺も睨み合いに終始している場合ではない。

ゲージ残量をしっかり注視していなくてはならない。

見極めるべきことも多い。

観察していれば、何か新たにわかることがあるかもしれない。

「…………」

毒のダメージは一定なのだろうか?

ダメージに振れ幅はあるのか?

まだ麻痺は解けてない。

毒で死ぬ前に、麻痺が解けるかもしれない。

麻痺が切れたら【スリープ】をかける必要がある。

気を弛めるには時期尚早。

まだ”油断”に足を踏み入れていい時間じゃない。

「そういえば……」

麻痺に眠りの重ねがけが可能かどうか。

そろそろ、確認してみるか。

「っと、試す前に――」

MPを確認しておくか。

「ステータスオープン」

【トーカ・ミモリ】

LV258

HP:+774

MP:+8194/8514

攻撃:+774

防御:+774

体力:+774

速さ:+774

賢さ:+774

【称号:E級勇者】

元の数値から考えると、飛躍的なステータスの伸びだ。

3×258=774。

なるほど。

掛け算で伸びてるのか。

初期値が高かったためかMPだけ異様に伸びている。

これはありがたい。

今の俺にとってMPは生命線。

固有スキルを放つ燃料。

これが尽きたら三森灯河は完全終了する。

ちなみにMPはレベルアップで全回復すると思われる。

「で、他の補正値は……どうなんだ、これ?」

小山田が確かLV1で体力+500。

とすると、俺のは大した補正ではないのかもな。

E級らしい補正値とも言えるか。

まあいいさ。

レベルアップのおかげか疲れも少し取れた。

若干、スタミナも戻った感がある。

「ブる、ゴ、ぁ――、……」

【レベルが上がりました】

ミノタウロスが一匹、力尽きた。

【LV258→LV277】

しばらく待つ。

【レベルが上がりました】

一匹、また一匹と息絶えていくミノタウロス。

【LV277→LV321】

時間はけっこう経っている。

しかし最初のやつ以外、まだ鳥頭が一匹も死んでいない。

鳥頭の方はけっこうHPがあるようだ。

「コ、ぽ、コ、け――、……」

「お?」

【レベルが上がりました】

鳥頭がようやく一匹、力尽きた。

【LV321→LV395】

「鳥頭の方が、経験値効率がいいのか」

残念ながらステータス表記に経験値の表記は出ていない。

いわゆる”次のレベルまであといくつ”みたいなのはわからないようだ。

スタミナ制のソシャゲに触れた経験のある人間からすると……。

少し、レベルアップ前に残っていたMPが惜しいと感じてしまう。

レベルアップで全回復するのなら、レベルアップ前に極力MPを消費しておきたい気がする。

貧乏性だからな。

「さて」

ステータスオープン。

MP表示を確認。

MP +13035/13035

全快している。

やはりレベルアップ時に全回復するようだ。

固有スキルのMP消費が10。

1303回、使用可能。

生きている魔物はまだ何匹もいる。

こいつらの経験値が入れば今後もまだレベルは上がるはずだ。

「要するに――」

重ねがけができれば、

「スキル経験値も、稼げるかもしれない」

▽

視線で、ロックオン。

鳥頭の方へ手をかざす。

「【スリープ】」

倒れない。

倒れないのは、麻痺しているせいだろう。

「だが」

目が、閉じている。

成功。

つまり、

「できる」

麻痺と眠りの重ねがけ。

ゲージは二本表示されていた。

黄と青。

麻痺と眠り。

これで【パラライズ】のゲージが完全になくなってから【スリープ】をかける必要もなくなった。

一瞬とて魔物が行動可能になることはない。

リスクを完全に回避できる。

毒の効果も継続。

完全無欠のコンボ――完成。

これでスキル使用回数も稼げる。

MP残量にはまだまだ十分余裕がある。

しかもあの経験値量だ。

まだしばらくはレベルも上がるだろう。

「よし……」

そうとわかれば、

「【スリープ】!【スリープ】、【スリープ】、【スリープ】、【スリープ】、【スリープ】――」

次々と、重ねがけしていく。

「【スリープ】、【スリープ】――」

【スキルレベルが上がりました】

【LV1→LV2】

よし。

上がった。

これで【スリープ】も、レベル2。

「ブ、り、ォ――」

「ぱリ、ピ、ぉ――」

毒にかかっていた魔物が立て続けに絶命していく。

【レベルが上がりました】

【LV395→LV507】

「とりあえずできる分の【スリープ】は、重ねがけできたが……」

数値的に考えると相当な量のMPが無駄になってしまった。

とはいえこれは仕方ないか。

まあ、残量に余裕があるのは悪いことじゃない。

さっきはMPが切れかけて死ぬ寸前だったわけだし。

先ほどと比べたら天と地の差だ。

で、

「MPもまた、全快したわけだし――」

取り囲んでいる魔物たちを、睨みつける。

「ん?」

「ぐ、ル――ぶ、ゥ……ッ」

なんだ?

「集まってきていたミノタウロスたちが、後退していく……?」

ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ……

背を向け、去っていく。

増援のミノタウロスたちが。

「諦めた、のか?」

俺を殺すのを。

「ぱパるン――ぱピー、こッこッこッこ……ッ!」

突然、恐慌に陥ったかのごとく鳥頭がくちばしをカッ!と開いた。

「プち、コろ……コろコろ、ッこー……コー!」

その場をぐるぐる旋回し始める鳥頭。

「こ、コぇェえエーっ!」

一斉に背を向ける鳥頭たち。

群れとなって、逃走を開始。

羽ばたくみたいに四本腕をバタバタさせながら、

「コぇエーっ!」

走り去っていく。

意味もわからずどんどん死んでいく仲間たち。

なぜか急に動けなくなる。

紫に変色し、ポコポコ泡が浮かんでくる。

しばらくすると、息絶える。

原因はどうやらあの人間のようだ。

あの人間と殺し合うのはリスクが高すぎる……。

まあ、あくまで想像だが。

そんなところではないだろうか?

廃棄遺跡の魔物とはいえあいつらも生物。

どうやら命は大事らしい。

逃走する魔物を、ぼんやり眺める。

「で、どうする?」

自分自身に問いかける。

「あいつら――追いかけて、殺すか?」

いや……。

今はやめておこう。

慈悲の心からではない。

俺の目標は地上へ出ることだ。

レベルは十分に上がった。

他にやるべきこと。

遺跡の探索。

この廃棄遺跡を調べる。

地上へつながる道を探す。

ゆったりと、立ち上がる。

ミノタウロスたちが逃げた方向を見る。

さっきじっくりと探索できなかった場所。

転送先。

「まずは一度、戻ってみるか」

最初に廃棄勇者が辿り着く場所。

何か、使えるものがあるかもしれない。