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ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

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「トーカ殿」

「……ああ」

俺とセラスの視線は、同じ方向へと注がれていた。

何かが近づいてくる気配――音。

意識を、聴覚に集中させる。

「何かから、逃げてる」

この感じ。

演技じゃなければ、相当必死に逃げてる。

いつでも戦闘に入れる準備はしつつ、俺たちは待機した。

やがて、

ガサッ!

葉が舞い散り、一人の少女が飛び出してきた。

少女は一度、大きく口を開いた。

それからややあって、

「に、逃げてくださいニャ!」

……猫耳。

亜人族か?

髪は薄桃色。

背丈はかなり低い。

子ども、って感じだ。

しかし……。

こんなところに、なぜ子どもが?

「……何かに追われてるのか?」

尋ねると猫耳少女は立ち止まり、背後を確認した。

再び、俺たちに向き直る。

「お、恐ろしい魔物が出たんですニャ! ニャキは、ここで取れる珍しい薬草を採りに来てましたニャ! でも、魔物に襲われて命からがら逃げてきたんですニャぁ! だからお二人も、早くお逃げくださいニャ!」

ニャキ――というのは、名前だろうか。

少女が南を指差す。

「知ってるかもしれニャいですが、あっちへずっと行けばウルザ領に出ますニャ! ええっと――」

少女は次に俺たちが来た方角――東を指差す。

「ニャキは、あっちに逃げますニャ!」

「……一緒に逃げないのか?」

「ニャッ!? そのぅ……信じてもらえるかわからニャいのですが、ニャキが魔物を引きつけますニャ。その隙に、お二人はどうか逃げてくださいニャ」

「…………」

こいつ。

どんっ!

得意げに胸を叩く少女。

「ニャぁに! ニャキは足が早いんですニャ! 見ての通り少し魔物の攻撃を受けて傷こそ負いましたが、ニャキはこれでも頑丈なのですニャッ♪ だから心配ご無用ニャっ♪ ですから早く、あっちにお逃げくださいニャ! それ行くニャ!」

少女が横を走り過ぎようとしたところで、

「おい」

俺は、少女を呼び止めた。

「一つ、聞いていいか?」

「な、なんですかニャ? 早く、逃げニャいと……」

「おまえ……俺たちの前に姿を現した時、最初に――」

俺には、わかった。

「”助けて”って、言おうとしたよな?」

「ニャッ――」

ピタリッ、と。

ニャキの動きが、止まった。

「き、気のせいですニャ……♪」

「嘘、ですね?」

セラスの真偽判定。

「にゃ、ニャキは……ニャキは、その……、――も、申し訳ないですニャ!」

急にニャキが俺たちの方へ向き直り、土下座した。

「実は、ニャキは命を狙われて追われているのですニャ! 追ってきている人間さんたちはとっても強いのですニャ! もしかすると、そのっ……お二人も巻き込まれてしまうかもしれませんニャ! だから、急いでここを離れてくださいニャ!」

「…………」

この子は。

自分の命が危機に晒されている、この状況で。

逃がそうとしたのか――俺たちを。

一方の自分は、より危険な魔群帯の深部へと向かう選択をして。

逆に俺たちの方を、深部から離れゆく南のウルザへ逃がそうとした。

しかもだ。

最初に言いかけた”助けて”を、咄嗟に飲み込んで。

魔物に追われているなどと――嘘をついた。

自分が助かるのなど、二の次で。

嘘を。

なんのために?

俺たちを――巻き込まないために。

「――――――――」

露わになった少女の腕。

それが、目に入った。

震えを抑えた声で、俺は聞く。

「名前は……ニャキか?」

「へ? あ、そうですがニャ……あ、の……早く、逃げニャいと……」

「その腕……」

「ニャ?」

「おまえを追ってるヤツらにやられたのか?」

「…………」

「嘘は意味がない。わかってるだろ」

「……そう、ですニャ」

深刻な顔つきのセラスが、俺に頷いて見せる。

……嘘ではない。

「わかった。答えるのは辛かったかもしれないが……答えてくれて、礼を言う」

俺は、荷物から蠅王のマスクを取り出す。

まだその”気配”は遠い……。

こ ( ・ ) っ ( ・ ) ち ( ・ ) か ( ・ ) ら ( ・ ) 出 ( ・ ) 向 ( ・ ) く ( ・ ) く ( ・ ) ら ( ・ ) い ( ・ ) の ( ・ ) 余 ( ・ ) 裕 ( ・ ) は ( ・ ) 、 あ ( ・ ) る ( ・ ) 。

少女――ニャキが、呆然と俺を見上げた。

「あ、あの……あなた様は、その……な、何をするつもりなのですニャ……?」

「おまえを追ってるヤツらを叩き潰してくる」

「ニャッ!?」

心底びっくりした表情をして、ニャキが跳ね上がる。

「だ、だめですニャ!」

「何か問題か? そいつらはおまえの命を狙ってるんだろ? そして、おまえだって生きられるなら生きたい……だったら、そいつらを俺が――」

「ニャキの命を狙ってるのは、あの”勇の剣”なのですニャ!」

「…………へぇ」

ニャキが忙しなく両手をバタバタさせる。

伝わり切らない部分をどうにかジェスチャーで、付け足そうとするみたいに。

「か、彼らはとっても強い人たちなのですニャ! あのバクオス帝国の”人類最強”にも挑みたいとか、そんな話をするくらいの人たちなのですニャぁ!」

その”人類最強”はもう死んでるけどな。

……ん?

ってことは――そいつら、まだシビトの死を知らないのか。

”勇の剣”

”人類最強”

いまいち俺がその両名にピンと来ていないとみてか、

「それとっ……ええっと、ええっと――、……そうニャっ!」

ニャキは慌てた様子で、さらに別の名を付け足した。

「――勇の剣さんたちは、あの強者揃いで有名だったスピード族を壊滅させているほどの猛者なのですニャ……ッ!」

…………。

「………………………………今、なんて言った?」

何 ( ・ ) 族 ( ・ ) 、だって?

「そ、そうニャのです! あのスピード族さんたちでも勝てなかったほどの人たちなのですニャ! しかもその時、勇の剣さんたちはまだ子どもだったそうですニャ……ッ!」

多分、ニャキは。

スピード族の名を出して、ようやく勇の剣の強さが伝わったと思った。

が、違う。

当然――違う。

『いや、名はわからぬのだ。年にそぐわぬほど異様に強かったのだけは、鮮明に覚えているが……』

スピード族を襲撃した者たちについてエリカに尋ねられた時の、イヴの言葉。

「……そうか。ああ、そうかよ……そうか――――そいつらか」

セラスも、状況を把握したようだ。

「つまり、ニャキ殿を追っている者たちは……」

「ああ」

スピード族を――イヴの両親を、殺した連中。

まあ、

「…………」

どのみち――

ニャキの件を考えれば、逃げ場などあるはずもなく。

勇の剣は、

こ ( ・ ) こ ( ・ ) で ( ・ ) 、 叩 ( ・ ) き ( ・ ) 潰 ( ・ ) す ( ・ ) 。