LNCrawler

ADVENT

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

ADVENT

スレイに乗ったセラスが到着した。

俺は、中央のジオのところへ引き返していた。

あのあと応援が到着し、傷ついた竜兵たちを後方へ運んだ。

そして――ジオが、ニコの件を知った。

ジオが怒り狂ったのは言うまでもない。

そのままジオは単身、左翼方面へ向かおうとした。

豹兵が十数人がかりでジオを抑え込もうとする。

が、それでも止められない。

なので、

「【スリープ】」

俺は、ジオを眠らせた。

ジオを心配する豹兵たちに、俺は言った。

「安心しろ、眠らせただけだ。起こそうと思えば、いつでも起こせる」

竜煌兵団に起こったことを知り、豹兵たちも戦慄していた。

手当てを受けている当人たちがここにいるのだ。

隠しようがない。

セラスが俺の隣に来た。

厳しく、引き締まった顔をしている。

「……ニコ殿の話、聞きました」

悲壮な表情になって、薄い唇を噛むセラス。

が、それ以上は何も言わなかった。

怒り狂うジオを見て、逆に冷静になったのかもしれない。

……まあ、セラスも胸の奥の怒りは隠し切れちゃいないが。

「殺し合いに、綺麗も汚いもない……一理ある。俺たちはその殺し合いをしている。が、んなことはどうでもいい……第六騎兵隊のヤツらは”俺の気に食わねぇやり口を使った”――これだけで、十分だ」

正義やら倫理やらのお題目を唱えるつもりはない。

俺が”不快”ならそれがすべての動機となる。

動機と、する。

「……ま、無闇に突っ込んだりはしねぇさ。第六騎兵隊は強い。頭も回る。俺みたいな”弱者”は策を用いて――ハメ殺さねぇとな」

まずセラスに今後の方針を伝えた。

同時に、必要そうなものを豹兵に用意してもらった。

熱意すら覚えるほど、彼らは協力的だった――本当に。

”自分たちの怒りもあなたに託したい”

そんな気持ちが伝わってきた。

手もとの蠅王のマスクに、視線を落とす。

「……手段は問わず、か」

「ピギ?」

フン、と。

鼻を鳴らす。

「ま……意地でもやってやる、ってことだ」

「準備が整いました、我が主」

セラスと二人でスレイに騎乗する。

そして、ここを離れる直前にジオの【スリープ】を解除。

パチッ

目を覚ましたジオは、しばらくぼんやりしていた。

と、急速に意識が覚醒してきたらしい。

何か俺に言おうとした。

が、もう一人――

この間に目を覚ましていた”彼女”が、ジオに声をかけた。

そのせいか、どうにかジオは感情を抑え込んだようだ。

「第六騎兵隊は……彼らに任せるのが最善であろうよ、ジオ」

「……ちっ。怪我人は寝てりゃあいいんだよ、ニコ」

俺とセラスを乗せたスレイが、この場を発つ。

背後から、ニコの声が聞こえてきた。

「寝てもいられん。某はまだ戦えるゆえ、な」

「馬鹿かてめぇは……無茶なんだよ」

「ジオ」

「……んだよ」

「第六騎兵隊と遭遇した時、勝ち目がないと感じた。この戦争そのものにさえ、な。某たちとはあまりにも異なる凶悪性を持った相手……我らが持ちえぬ邪悪さに、某は心の底から恐怖したよ。ただ、その時だ。同時にふと、ある思いが 奔 ( はし ) った」

ジオは黙っている。

俺の背後。

ギリギリ会話を拾える距離で、ニコが言った。

「こちらにも”あの男”がいる、と」

「……凶をもって凶を制す、か」

「第六騎兵隊との戦いは、おそらく――某たちが出られる幕ではない。本能で、わかった」

▽

「あー? なんだ、あれはー?」

「人影のようです。何か……担いでいますね」

「ふーん……いよいよ出てきたか、狂美帝ー」

「? 人間では、なさそうですね……」

「じゃあ亜人かー? でも、たった二人だぞー」

「いや、ありゃあ……おそらく違いますぜ、フェルエノク殿。あれは――」

フェルエノクと呼ばれた男が、立ち上がる。

「蠅王の、被り物ー……? まさかー」

「もしそうだとすれば、なぜあの男がここに?」

「さあなー……おーい、そこまでだー! 止まれー! おれたちは、アライオンの第六騎兵隊だー!」

フェルエノクと呼ばれた男が、頭上で両手をブンブン振る。

「噂の呪術が怖いー! けど、うちの隊長の考えだと一定の距離を取れば防げるー! 無闇に近づくのは、危ないと言われているー! そこの三日月みたいな細い岩ー! 近づいていいのは、そこまでだー! そして、おまえたちが本当に蠅王ノ戦団なら話があるー! 今は、危害を加えるつもりはないー!」

蠅王装の俺と、蝿騎士装のセラス。

今回、セラスはすでに精式霊装を展開していた。

言われた岩のところで、足を止める。

一帯が戦場と思えぬほど、この辺りの岩場は静かだった。

騎兵隊の馬は離れた場所に繋がれていて、全員下馬している。

第六騎兵隊は休んでいたように見えた。

事実、休憩中だったのだろう。

リラックスしている。

あんなことを、した後だというのに。

返り血は――残っていた。

こいつらか。

第六騎兵隊はここから移動する気配がなかった。

この間、他の方面の戦局も動いている。

できることなら、あまりここで時間をかけたくはない。

「…………」

この一帯は見晴らしがよく、遮蔽物がない。

つまり、物陰に隠れての奇襲などは不可能に近い。

ピギ丸の合体技で奇襲するにも、遠すぎる。

合体技を警戒された場合、射程外へと逃げられる恐れがある。

あれは一度使ったらしばらく使えない。

MPも馬鹿食いする。

確実に決められる時に使うべき奥の手。

前列の兵たちが、弓を構えた。

叫ばずとも互いの声は届く距離。

が、【パラライズ】の射程内ではない。

隙もない。

特にあの男――フェルエノク。

ミカエラの情報だと、あいつが副長だったか。

「――――」

しかし……本当に、隙らしい隙がない。

他の兵にしてもそうだ。

明らかに今までの騎兵隊と質が違う。

少数精鋭なのか数は他より少ない。

が、この距離でわかるほど一人一人の質が高い。

幸いなのは……【パラライズ】の対象数の制限内ってとこか。

神獣の姿は――ない。

神獣はこの戦争を終わらせてしまうカードだ。

それを知っているからこそ、別の場所に隠しているのだろうか?

それから……。

隊長のジョンドゥは――どいつだ?

特徴がないのが特徴だという。

距離の問題もあるが……ここからでは、わからない。

何も感じない。

フェルエノクはわかる。

確かな存在感がある。

強者の空気が、ある。

が、それ以上の存在感を持つヤツがいない。

何も、感じない。

フェルエノクが前へ出てくる。

20メートル以上、距離を置いている。

あれだと、30メートルは距離を置くよう言われてるっぽいな……。

「第六騎兵隊の皆さま、お初にお目にかかります。ワタシは蝿王ノ戦団を率いる、ベルゼギアと申します」

名乗りを終え、尋ねる。

「先ほどの言いぶりですと、フェルエノク殿……あなたがここの隊長ではないようですが。隊長は、ここにいらっしゃるのですか?」

「んー? ああ、いるぞー」

フェルエノクが後方を指で示す。

「中列のあそこにいるのが、この第六騎兵隊の隊長ジョンドゥだー。だが、今回の交渉はおれに一任されているー。隊長は、おまえを観察するー」

「…………」

なるほど。

平凡だ。

驚くほど、平凡。

印象は薄く――どこまでも、薄く。

まるで……”モブ”そのもののような。

何も特徴のない男が、その口を開いた。

「初めまして、でありますな。お会いできて光栄であります。先ほどフェルエノクが紹介した通り、わたしが――」

あいつが――

「第六騎兵隊長、ジョンドゥであります」