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黒数

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

黒数

前回更新後に新しく1件レビューをいただきました。ありがとうございます。

――ペキッ――

肩に当たった木の枝が、折れる。

俺は重い足取りで、森から出た。

木々は途切れその先には平原が広がっている。

ここを少し西方面へ行くと、パヌバ砦に辿り着くだろう。

セラスとスレイの姿が見えた。

二人は戦いの途中で、予定通り魔群帯の外へ退避させた。

二人には先に休んでもらう必要があった。

このあとのことを考えて。

ただ、セラスは起源霊装を使える余力を残させた。

いざという時は、スレイを守ってもらう必要がある。

どちらかと言えば――

何より重要なのは、スレイが休むこと。

そのスレイはちゃんと眠って休んでいるみたいだった。

セラスも休んではいるだろう。

が、眠れてはいまい。

精霊との契約があるからな……。

セラスが俺たちに気づく。

俺は時おり膝を折りそうになりながら、足を進める。

セラスが近づいて来ようとしたので手を上げ、

”問題ない”

そう伝える。

しかし俺は――

がくっ、と。

膝を折った。

身体がそのまま、前へ倒れ込もうとする。

その時。

木の葉が激しく破裂するような音がした。

何かが砲弾のように俺目がけ、飛来してくるのがわかった。

「! トーカ殿―――」

咆哮もなく飛んでくるそいつは、ふらつく俺に迫っている。

俺は肩越しに振り向いた。

全長6メートルくらいの――中型人面種。

素 ( ・ ) 早 ( ・ ) く ( ・ ) 、右手をそちらへ向ける。

「【パラライズ】」

人面種が俺へ到達する前に状態異常スキルを決める。

セラスは起源霊装を身に着けて駆けつけようとしていた。

俺は、勢いそのままに飛んでくる麻痺した人面種を――躱す。

受け身すら取れず地面に転がったそいつに【バーサク】で、とどめを刺す。

そいつを見下ろし、

「演技に決まってるだろうが……間抜けが。つくづくテメェらも、学ばねぇな」

実際は足がそこまでふらつくわけではない。

弱ったフリをすれば出てくると踏み、演技をしていただけだ。

イヴたちと魔群帯でエリカの家を目指していた時。

最後まで俺が弱るのを待っていたヤツがいた。

今回も、一匹だけどこかに潜んでいる気配があった。

用心深いのか。

まるで出てくる様子がない。

なのでひと芝居うってみた、というわけだ。

仲間のところへ俺が辿り着き安堵に満ちる。

人面種はその瞬間を絶好の隙とみて、攻撃に踏み切ってきたのだ。

俺もそれは理解できる。

安堵した瞬間こそ、確かに隙が生じやすい。

セラスが消耗しているのも、観察で把握済みだったのではないか。

「が、俺がそこまで弱ってなかったとこまでは見抜けなかったらしい」

セラスの起源霊装の展開も、注意を一瞬逸らすのに一役買った。

……ま、結果的に起源霊装を使わせたのは悪かったな。

今、セラスは策のための演技だったと気づきホッとした顔をしている。

「あとな……俺には後ろに”目”がある。背後から襲っても奇襲効果はそんなに高くねぇよ――な、ピギ丸」

「ピギッ」

「それと、相棒……最後にひと声、頼んでいいか」

最初の時と同じく、拡声石でピギ丸の鳴き声を拡大してみる。

しばらく待ってみる……。

金眼が追加で襲ってくる気配はない。

今回の経験値稼ぎは時間的にも、このくらいが限度だろう。

まあ仮にまだ残ってたとしても……。

警戒し、恐れてもう出て来る気がなくなったのならそれでいい。

「トーカ殿」

ゆっくりと歩み寄ってきていたセラスが、近くまで来た。

「悪いな。何も言ってなかったせいで、霊装を無駄に使わせちまった」

「いえ……ご無事なのが何よりです。一瞬、こちらに人面種の注意を引けた気もいたしましたし――あ、いえ……それがなくとも勝てたのは承知しておりますが……、――あ」

俺は通り過ぎざま、セラスの肩に手を置いた。

「ありがとな」

「ぁ――はいっ」

さっき騒ぎのせいか、スレイも目を覚ましていた。

「パンピィ♪」

おかえり、と言ってるようだ。

「ちょっとは休めたか?」

「パキュ♪」

背中をこっちに向け、水晶球をアピールしてくる。

これから移動するのはわかってるから早く魔素を注げ、だそうだ。

「目覚めたばかりで悪いが……頼む」

「パキュリ」

俺たちはそのあと、あの魔帝器が使用された砦に立ち寄った。

残ってる人面種がいないかを確認するためにだ。

あとは一応、生存者がいるかどうかを。

砦の中は、外と同じくらいひどい有様だった。

死臭もひどい。

死体には蠅だけでなく、蛆も湧いていた。

砦の中の惨状は……言葉にするのも、おぞましい。

金眼の魔物も、人面種もいなかった。

生存者も。

砦を出ると、俺たちはロウムたちのところを目指した。

馬上で蠅王のマスクの状態を確認しながら、

「もうだめそうだな、これは……」

今回の戦いでは、けっこうな数の人面種や金眼の魔物を殺した。

何もかも容易く勝てた……ってほどでもない。

苦戦まではいかなかった――と思う。

しかしそこは、さすがに最強と言われる北方魔群帯深部の人面種たち。

セラスが抜けたあとは、そこそこ手ごわさを感じる局面があった。

合体技も使い切ってしまい、ピギ丸を休ませていた時間帯もあった。

俺一人でとなったその時間が、最も神経を使ったかもしれない。

ただ、それに至るまでのレベルアップが確実に効いていた。

危なかったとまでは言わないが。

楽勝、ともいかなかった。

それもあって。

蠅王のマスクとローブも大分、ボロボロになってしまった。

振り返ったセラスが苦笑し、

「ローブの方も修繕を重ねてきましたが、さすがにそろそろ厳しいでしょうかね……」

「だな……」

そろそろ新しい蠅王のマスクとローブが必要、か。

▽

俺たちは、ロウムたちのいる野営地へ戻った。

ロウムとミラ兵が俺たちを見つけるなり駆け集まってくる。

俺は砦のことや戦いの成果を伝えた。

皆、驚いていた。

同時に、かなり元気が出たようだ。

もはや英雄がごとき扱いである。

ただまあ、

“勝てそうもなかった敵に勝てた味方がいる”

これが希望を与える要素になるのも、よくわかる。

一方で、連れ帰ることのできた生存者はいなかった。

これも、受け入れねばならない一つの現実だろう。

俺は彼らの仲間にお悔やみを言った。

だがそこはさすがに軍人とでもいうべきか。

俺が戻ってくる間に、彼らもそれなりの心の整理をつけていたようだ。

目を逸らすでもなく。

過剰に引きずるでもなく。

悲しみつつも、先へ進むため受け入れる。

……こういうとこはやっぱ兵士、って感じなのかもな。

それから、軍魔鳩でリィゼたちに進軍の停止解除を伝えてもらうよう頼んだ。

「一応、人面種や金眼の魔物が魔群帯から出てきそうな様子がないか、ハーピー兵に偵察してもらいながら進むよう、お伝えください」

「承知いたしました」

「では、最果ての国の方々のことをよろしくお願いいたします」

「お任せください。あの、蠅王殿……急ごしらえの野営地ではありますが、ここで少しお休みになられてはいかがですか? お休みになっている間に、最果ての国の方々と合流できるかもしれませんし……」

「いえ、ワタシはこのままこの黒馬で戻ります」

「そう、ですか……かしこまりました。陛下も蠅王殿がいち早くお戻りになれば心強いでしょう。東の戦場でまたご一緒できることを、祈っております。それでは、どうかお気をつけて」

俺は礼を言って、そのまま東へスレイを走らせた。

今はセラスが前で、俺が後ろに乗っている。

そう。

スレイを先に魔群帯から離脱させておいたのは、このためだった。

休ませておき、あまり時間を置かず聖たちのもとへ戻れるように。

「セラス、しばらく寝ようと思うが……いいか? 睡眠でMPの回復をしたいってのもあるが……さすがに……少し、疲れた……」

「はい、遠慮せずどうかお休みください。どうぞ……私の背に、身を預けてくださいませ。スレイもトーカ殿が落ちないよう、協力をお願いできますか?」

「ブルルルッ」

「……悪いな、二人とも」

背から抱き着くような形でセラスの腰に手を回し、寄りかかる。

セラスの背中に、顔をつける。

……なんというか。

ホッとする感覚がある。

モンロイを出たくらいの頃はセラスも照れ照れだったが。

今となっては、慣れたものだろう。

…………ん?

セラス?

「…………」

さすがにもう慣れてる、よな……?

しかし――そこを確認する間もなく。

すぐに眠気が、襲ってきた。

さらに……眠りを誘う、断続的な振動。

それは。

深い心地よさに包まれ、まさに、意識が途切れかける寸前だった。

「大好きです、トーカ殿」

ふと耳に届いたそのひと言。

俺はそれに、

「ああ……今さら言わなくてもわかってる――同じだ、俺も」

多分そんな言葉を、返したと思う。

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【トーカ・ミモリ】

LV5999

HP:+17997

MP:+197967

攻撃:+17997

防御:+17997

体力:+17997

速さ:+17997

賢さ:+17997

【称号:E級勇者】