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Q&A

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

Q&A

「私の質問に答えていただき、ありがとうございます」

女が礼を述べた。

「それから結果的に質問を重ねる形になった点は謝罪します。また、あの四人をあなたが打ち倒した話に嘘は感じられませんでした。質問に対し正直に答えてくださっているのも、わかります」

嘘発見器でも持っているのか。

真偽判定にいたく自信を持っている様子だ。

「ですので――」

真摯な表情で俺を見る女。

首から下がもし動けば、手を胸にでも当てていそうだった。

まるで、宣誓でもするみたいに。

「私も、あなたの質問にはできるだけ正直に答えましょう。あなたから害意は感じませんし、あの四人を打ち払ってくださったのなら――命の恩人とも言えますから」

命の恩人。

過大な評価とは思えるが。

いや――恩義を抱かれたのなら利用すべきか。

「具体的には何を聞きたいのでしょうか? この辺りの人間ではないとおっしゃっていましたが」

身体が動かないわりに堂々とした物言い。

警戒心が希薄になった証拠とも考えられる。

「かなりの遠方からの流れ者でな。気づけば、この森に辿り着いていた」

「この森に何か用事が?」

「捨てられたみたいなものだ」

「――そう、ですか。質問を謝罪します」

捨てられたみたいなもの。

いくつかの暗い想像を喚起させる言葉。

たとえば、旅の仲間に捨てられた。

住んでいた土地から追い出された。

奴隷商に捨てられた(この世界に奴隷商がいればだが)。

などなど。

そもそも捨てられたという話自体は嘘でもない。

親に捨てられたし、クソ女神にも廃棄されている。

暗い過去を匂わせると相手によっては追及の手が緩む。

追及を煙に巻く際、有効な手段となりうる。

これにはもう一つの利点もある。

上手くすれば、反応で相手の人間性を測ることもできる。

俺は女の目を見据えた。

女が表情に?マークを浮かべる。

「何か?」

「あんたは悪い人間じゃなさそうだ――今のところは」

「……少しは信頼を、得られたのでしょうか?」

「ああ、少しだけ得られたさ。ただ、俺も あ ( ・ ) ん ( ・ ) た ( ・ ) と ( ・ ) 同 ( ・ ) じ ( ・ ) で何かと事情がある。今はお互い、深入りは避けるべきと判断するが――」

女にも何か隠したい事情があるのは察せられた。

が、現状で俺に必要なのは情報だ。

得るものを得たらここで別れるのが吉だろう。

「ええ、私も賛成です」

女の表情に影が差す。

「私としても、その方がありがたいですから」

ゲージ残量の問題もある。

雑談に多くの時間は避けない。

「わかった。では早速、質問に移らせてもらう。近くに村か町は?」

「最寄りですと、ミルズという小規模の都市があります。私も――」

言いかけて女が口をつぐむ。

”私も”

行き先を告げたくない理由があるようだ。

追手に情報を与える芽を潰しにかかっているのか。

とはいえ、今のひと言で告げてしまったに等しい。

まあ、俺は都市の場所がわかればそれでいい。

深い入りはしない。

女は距離と方角も教えてくれた。

ここからそんなに遠くはなそうだ。

近いうちにちゃんとしたベッドで眠れそうである。

「ここはどこの国だ?」

次の質問へ移る。

「今いる国も、わからないのですか?」

「複雑な事情があるのさ。外の情報と断絶された生活を送っていた。事情は、察してくれ」

追及逃れの言葉が躍る。

「……わかりました。ここはウルザ王国の南方に位置する”闇色の森”と呼ばれる森林帯です」

驚いた。

ここはアライオン王国ではないのか。

てっきり廃棄遺跡はアライオンにあるものと思っていたが。

これは貴重な情報だった。

「アライオンはどの位置に?」

「アライオン、ですか? ウルザ王国の北東にありますよ? それと、ウルザ王国の南東には――」

女が言い淀む。

「バクオス帝国が、位置しています」

バクオス帝国に何か思うところがあるようだ。

しかし、再三となるが深入りはしない。

それにしても……。

ここはアライオンではないらしい。

つまりクソ女神が近くにいない。

今のところ吉報と考えてよさそうか。

現状はアライオンから離れる方向で考えている。

まず禁呪の件が先だからな。

ふむ。

別の国なら、急いで離れる必要もないか……。

「わかった。次は、少し変な質問かもしれない」

思い詰めた顔の女がハッとする。

「――あ、はいっ。どうぞ」

「たとえば……庶民が日常的に食べる質のパンを一つ買う場合、このあたりではどのくらいの金額が必要になる?」

「相場を知らないのですか?」

「このへんの物価とも無縁の場所で生きてきた」

「なる、ほど。どこの都市でもパン一つくらいであれば、大抵は銅貨一枚で買えるとは思いますが」

パンは存在している、と。

「銀貨は銅貨何枚分に相当する?」

「銅貨三十枚くらいでしょうか」

日本円でパンが一つ100円くらいとしよう。

前の世界基準でいくと、銀貨は3000円くらいか?

相当ざっくりした把握ではあるが。

当然、日本と物価は違うはずだ。

何もかも日本円感覚というわけにもいくまい。

が、パンの値段という”基準”がわかったのは前進だ。

あとの物価関係は――ミルズという都市についてからだな。

他にも知りたい情報を手早く引き出した。

黄ゲージが減ってきている。

最後に一つ、聞くべき大事な話がまだ残っている。

俺は皮袋から禁呪の呪文書を取り出した。

女の顔の前で呪文書を広げる。

「この文字について、何か知らないか?」

女の視線が文字の上を走る。

グラスアイめいた瞳が忙しなく動く。

口以外を動かせるのはもうバレているだろうか?

自覚があるかどうかは、わからない。

ん?

俺は一つ気づく。

女の目もとに薄っすらと隈が確認できる。

この距離でよく見ないとわからない程度ではあるが。

逃亡の日々で、寝不足なのだろうか?

「これは――」

女の眉間に数本、細いシワが刻まれる。

「古代文字、だと思われます。それも、かなり特殊な」

「読めるか?」

「いえ、申し訳ありませんが」

「そうか。わかった」

呪文書をしまうため丸め直す。

そう上手くはいかない、か。

手がかりくらいはと、淡い期待も抱いてはいたが。

まあ、地道に調べていくとしよう。

「ですが――」

「ん?」

「この文字に詳しいと思われる人物でしたら、知っているかもしれません」