LNCrawler

これからもふたり、共に歩めるように

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

これからもふたり、共に歩めるように

前回更新後に新しく1件、レビューをいただきました。ありがとうございます。

いただいたレビューの中で小説の英語版書籍の翻訳について触れてくださっていましたが、この作品は小説の作法というか、いわゆる”正しい書き方”みたいなものをかなり意図的に崩した文章(文法、文体)で書いているので、翻訳もなかなか大変なのではないかと思っています(ちなみに自分の本来の文体や作風は前作『ソード・オブ・ベルゼビュート』の方が近いかもしれません)。それでも翻訳の質が高いとレビュー内でおっしゃっているので、翻訳者のかたがとても上手く翻訳してくれているのだと思います(ありがたいことでございます)。自分が確認できる範囲ではありますが英語版もかなり数字的な面も含めご好評いただいているようで、そこも(海外の読者の方々にも楽しんでいただけているという点で)大変嬉しく、ありがたいことでございますね。

送還を見届けたあと、俺は城内の廊下を歩いていた。

すると、ロキエラが追いかけてきた。

「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

連れて行かれたのは、ヴィシスが使っていた研究室。

神族組と話し合いをする時は最近、ここが多い。

以前と比べ魔導具の灯り――魔導灯が増えていた。

いつもの席にはすでにテーゼが陣取っている。

その時だった。

キュピーンッ、とテーゼに電撃が走った――風に見えた。

俺は懐から、魔法の皮袋を取り出す。

するとテーゼはいたく満足そうに「むふぅ」と座り直した。

ちゃんとこの皮袋を持ってきてるか、確認したかったらしい。

「…………」

天界に帰る気はあるんだろうか、この序列第二位……。

「あら、トーカ?」

背の高い棚の向こうからひょっこり顔を出したのは、エリカ。

「早速、ロキエラの手伝いか。どうだ、ロキエラとは上手くやれてるか?」

エリカがこちらへやって来て、両手を数回叩き合わせて埃を払う。

「あのヴィシスと相性が悪かったってのは、よくわかるわ。なぜならね――エリカと、相性がいいから」

一方のロキエラは「はぁぁ……」と暗いため息を漏らす。

「ボク……ヴィシスのこともあって、なんか研究者として自信がなくなってきちゃったよ。エリカってほんと、ボクより色んなことに気がつくんだもの……」

エリカが優秀すぎて、自信喪失してんのか。

「おまえの場合、神族としての務めもある上での研究だろ」

そうね、とエリカが俺に続く。

「妾は研究ばっかりやってたから。むしろそのくらい花を持たせてくれないと、エリカも困っちゃうわ。エリカにもちゃんと出番がある方が、やりがいがあるってものよ」

「……温かいお言葉、どーも。はー……トーカやエリカは優しいよねぇ。ヴィシスとは大違いだ」

「わたくしも優しいですねぇ」

「いやテーゼ様ボクにはあんまり優しくないぢゃん。ヴィシスへの懸念を示した時、まともに取り合ってくれなかったし」

「ふふ…………、――えっ!?」

ガビーンッ、とショックを受けるテーゼ。

しかも最初、否定されたとは思ってなかった反応してたよな……。

ロキエラは席につきながら、

「いえ、冗談ですけどね……聞く耳さえ持ってくれればテーゼ様は何かと融通きかせてくれますし、公正な 方 ( ほう ) ですよ。自ら動いて協力もしてくれますしね。余裕のある時はちゃんとこっちの事情も理解しようとしてくれます。ですんで、普通に優しめな上司だと思いますよ?」

「そうなんですよね」

「あんまし謙虚さが見えてこないのが、欠点ですけど」

「……えっ!? わたくし、謙虚のかたまりでは!?」

「ほんとに謙虚な場合……普通、自分で自分のこと謙虚とか言わないと思いますよ?」

「う゛……た、確かに……」

そこでロキエラが頬杖をつき、温かく微笑む。

「でもま……重い腰さえ上げてくれれば頼りになる上司、ってのは事実ですけどね」

「――も、もぅ。最後に、そうやって持ち上げて……まったく、ずるい部下ですねぇ……」

これはこれで、けっこういい関係の上司と部下なのだろう。

と、椅子に腰掛けた俺の左肩にエリカが右肘をのせてくる。

「どう? ヒジリやイツキたちが帰っちゃって、やっぱり寂しい?」

「寂しくないと言ったら、嘘になるな」

「あら、正直でよろしい。ま……これからはその分このエリカがそばにいてあげるからそれで我慢なさい。何よりきみには、セラスたちがいるんだし。あと――トーカのいた元の世界と行き来できる方法が確立できないか、がんばって研究してあげるから」

「ありがとな、エリカ」

「あ、でもあんまり期待はしないでよね? エリカ、重圧って嫌いなの」

「 重圧 ( プレッシャー ) に弱いタイプか?」

いいえ、とふてぶてしく答えるエリカ

「どっちかというと、邪魔って思う方」

なるほど、そっち系か。

「ところで……エリカ・アナオロバエルの目から見て、ヴィシスの残した研究はどうだ?」

エリカは姿勢を戻し、悔しさを滲ませ息をつく。

「ロキエラの私見と一緒で、才能は認めるしかないわね。というか妾だって元々は、その発想力に思うところがあって力を貸してたわけだし」

……ってことは、やっぱ研究者としては優秀だったんだな。

俺の質問に答え終えたエリカは、

「じゃ、またあとで」

そう言って奥へ戻って行く。

エリカが去り場が改まった空気になったあと、俺は聞いた。

「で――俺に話ってのは?」

うんそのことなんだけどね、と俺の方へ向き直るロキエラ。

「結論から言うと――トーカ、半神化に興味ないかな?」

半神化。

単語だけは一応、知っている。

神徒の説明を受けた時にそんな単語が出てきた。

あと確か――

ヴィシスがニャンタンを、半神化しようとしてたんだったか。

「ヲールムガンドやアルスみたいな神徒とは違うんだよな?」

提案の意図は、ひとまず後回し。

まずは説明を聞いてみるとしよう。

俺が興味を示したと受け取り、ロキエラが説明を始める。

「神族の因子を直接与えられるのが神徒。で――神族から概念魔法を施されて半分神族の属性を持つのが、半神」

「他に違いは?」

「神徒は因子を与えた神族にほぼ絶対服従。でも半神にそういう制約はない。他には、身体的変化や能力差かな。神徒は身体的にかなり変化する。その代わり、能力が大幅に増大する。一方、半神は身体的――外見的な変化がない。能力も神徒に比べると、そこまで増大しない」

俺たちが戦った神徒は、元の姿の原型を留めてなかったんだな。

で、

「俺にそれを切り出したってことは、異界の勇者も半神化できるんだな?」

「過去にも異界の勇者を半神にした事例はある。ただ勇者の場合、女神の加護の基礎強化部分――つまりステータス補正値は消滅する。だからレベルアップの概念もなくなる。でも勇者固有の特殊能力……つまりスキルについては失わなかった例もあるし、一部を失っただけって例もある」

神徒の場合は逆に元々のスキルが変化したり、増強されたりするらしい。

「仮にスキルを失わなかったとしても、MPの補正値が消えたらほとんど使用できないんじゃないか?」

「いや、 MP ( 精神力 ) は半神化によって身体能力と共に底上げされるから使用できなくなるってことはないよ。半神化した勇者がスキルを使用し続けた事例もある。あーけど……トーカの場合だと、今ほど乱発はできなくなるかも?」

俺のステータスはMPだけ、異様に高いからな。

「他には?」

「あとは――時間と確実性かな? 神徒は仕上がるまで長い時間がかかるし、失敗してそのまま消滅もありうる。けど半神化は概念魔法を施すだけだからすぐにやれるし、失敗して消滅することもない」

「今のところ……半神化の方は大したメリットがないように聞こえるな」

しかしロキエラは、この指摘をすでに予測していた風に言った。

「半神化の利点はね、可逆性――つまり解除できるんだ。もちろん解除にそれなりの条件はあるから、簡単ではないけどね」

片や、神徒は不可逆。

一度なってしまえば元には戻れない。

ロキエラが説明を続ける。

「そしてさっき話したように、半神化は属性として半分神族になる。ゆえに―― 人 ( ・ ) 間 ( ・ ) に ( ・ ) 比 ( ・ ) べ ( ・ ) 、 遥 ( ・ ) か ( ・ ) に ( ・ ) 寿 ( ・ ) 命 ( ・ ) が ( ・ ) 長 ( ・ ) く ( ・ ) な ( ・ ) る ( ・ ) 」

「……なるほど」

そういう、ことか。

寿命の話については、まだ聞いていなかった。

「そう……トーカが半神化すれば、今よりずっと長い年月をセラスと一緒に過ごせる」

「そいつは俺にとって、大きな利点ではあるな……」

が、疑問も湧く。

「便利な力だが……その割に、この世界で半神ってのを見たことがない。寿命を長くできるなら、ヴィシスも大量に半神化させた連中を側近にしてたんじゃないか?」

まずね、とロキエラが答える。

「半神化には膨大な力が必要になる。他にも、神族が耐用年数を迎えるまでに半神化できる数ってのが決まってて……で、半神化させた者が死んでもその枠は復活しない」

つまり、俺の【フリーズ】みたいに枠は空かないのか。

「だから、慎重になると」

「うん。そしてそれ以上に神族が半神化の概念魔法をあまり施したがらないのは――施した際、神級魔法に使う器官の一つが永久に閉じてしまうからなんだ」

その説明を聞いて、納得した。

であれば、安易に半神化したがらないのも頷ける。

特にヴィシスなんかは自分にマイナスがあるのを嫌がりそうだ。

が……なのにニャンタンはそのヴィシスに、半神化を一考させたのか。

結果的に、いかにニャンタンが有能なのかわかるな……。

「あとさっき異界の勇者を半神化した事例を話したけど、勇者を半神化して残すと次元の歪みが増大する。だからボクら神族は、勇者の半神化を避ける傾向にある」

「だが例のヴィシスの発明でその歪みをある程度は矯正できるようになったから、その問題はクリアできそう……ってことだな?」

「その通り」

俺は卓の上で両手の指を絡み合わせた。

そして数拍後に指の力を緩め、尋ねる。

「……その提案、俺とセラスに対しての親切心だけか?」

「もちろん、違う」

ロキエラは姿勢を整え、両膝の上に左右の手を揃えた。

「ボクの力が戻るまで、そばで神族の仕事を手伝ってもらいたいんだ」

「そんな長い間、おまえの力ってのは戻らないもんなのか」

「あー、うん……研究とかはできるし、次の根源なる邪悪の降臨までに召喚の儀を執り行えるくらいの力は戻ると思う。ただ……他の諸々が、どうしてもね」

困り気味な笑みになるロキエラ。

そこでテーゼが「たとえば――」と口を挟む。

「ヲールムガンドなどは一度、ほぼ消滅直前まで弱っていたはずです。もしヴィシスによる神徒化がなければ、今回の戦いまでにそこまでの戦闘能力を取り戻すことはなかったでしょう。そしてロキエラも、ヴィシスとの戦いによって消滅一歩手前まで存在力を失いました。それほどまでに弱った神族が力を取り戻すには、相当な年月がかかるものなのです。それこそ、神徒化でもしなければ」

弱々しく肩を内側に寄せ、息を落とすロキエラ。

「消滅さえしなければいずれ戻るだけ、マシとも言えるんだけどねぇ……」

「けど、半神化したら俺のスキルは消えるかもしれないんだろ? 俺は近接戦や武器の扱いが得意じゃない。だから半神化した時の手持ちスキル次第じゃ、戦闘面で大して役に立てない可能性があるぜ?」

「いや、トーカに期待してるのは戦闘面じゃないから大丈夫。根源なる邪悪と戦うのは異界の勇者たちだし、そっち方面ならセラスがいるから」

まあ――そうか。

今のセラス以上に強いヤツなんて、そういないだろうしな。

「あっ――あと、これも言っておかないとか……半分神族になるから当然、邪王素の影響を受けることになる」

「……なるほど、そうなるわけだな」

「ボクらみたいな純粋な神族に比べると影響はいくらか軽減されるだろうけど――根源なる邪悪本体や側近級との戦いは、異界の勇者頼りになるはず」

これも、当然と言えば当然。

半神化で寿命が長くなろうと、かつての”勇者”としては戦えない。

根源なる邪悪との戦いではどのみち、純粋な戦闘面ではあまり役に立たない。

結局――異界の勇者が、必要になる。

「でね、トーカ……キミに期待しているのは――異界の勇者を召喚した時の、まとめ役なんだ」

「要するに、ヴィシスの役割を俺にやってほしいってことか」

「う……そ、そう言うとすごく悪いことを頼んでる気がしてくるけど……まあ、うん……そうなります……ね……、――で、でもね!? それだけじゃ、ないんだっ」

ロキエラがそこで、語調を切り替える。

「ボクだって今後、何か間違った判断をしそうになることがあるかもしれない……そういう時、トーカみたいな人に相談できたらなって思うのっ」

「…………」

「トーカ、キミの状態異常スキルは確かにとても強力だ。けどね――キミの真価は理解力や発想力、応用力……駆け引き、そして、純粋な戦闘とは離れた位置にある対人能力にこそあると、ボクは思ってる」

「それで――まとめ役か」

「も、もちろんっ”女神役”はボクがちゃんと受け持つよ!? 勇者たちへの説明とかもボクがやるし、キミに全部押しつけるつもりはない! ただ……キミが力を貸してくれるとかなり心強いのは、確かでっ……」

ロキエラが手を膝の上に揃えたまま、上目遣いに、

”……だめ?”

みたいな顔で、見つめてくる。

「…………」

かなり 可愛子 ( かわいこ ) ぶってやがる……。

ロキエラがギュッと目を閉じ、ぱんっ、と両手を打ち合わせた。

拝み倒すみたいなポーズで、

「できれば――お願いできないかな!? 他でもない、トーカの力を借りたいんだ! ママからの、一生のお願いっ!」

最後の”ママ”はどっから出てきたんだ……。

――ああ、そうか。

”ボクにとってヒトは、子どもみたいなものなんだよ”

とか、言ってたな。

……生きてる年月的にはともかく。

見た目的に”母親”は、ちょっと若すぎる気がするが。

ロキエラは固唾を呑み、答えを待っている。

テーゼも黙ったまま、静かにこちらを見つめていた。

「……今の、俺は」

俺は――その答えを、口にする。

「こういう”俺たち”に関わる決断については……俺の望みよりも、セラスの望む答えを優先してやりたいと思ってる――あいつの喜ぶ顔を見られそうな答えの方を、な」

……まあそれは、結果的に。

セラスに喜んでもらいたいっていう”俺の望み”でも、あるわけだが。

「じゃ、じゃあっ――」

ロキエラが卓に両手をつき、弾かれたように腰を浮かせた。

「念のため一度セラスに相談してからにはなるが……俺としては、受けてもいいと思ってる」

「や……やったぁーっ!」

舞い上がり、万歳するロキエラ。

母親ってよりはむしろ、子どもみたいな喜び方だった。

「ありがとう、トーカ!」

「フン……礼なら、セラスに言ってくれ」

あいつが寿命の違いについて――ああ言ったから。

なら俺は……こちらを選ぶしか、ないだろう。

テーゼが「決まったようですね」と言い、

「先ほど、半神化を施すには膨大な力が必要になると言いましたね?」

そう言われて、俺は気づく。

「そうだ……ロキエラおまえ、その力は残ってんのか?」

「……な、ない……です……はい……」

するとテーゼが、

「ですのでトーカの半神化は、わたくしが行います」

ん?

俺は確認を取るように、

「あの……よろしいのですか、テーゼ様? あなたの生涯の半神化枠を消費するだけでなく、天界の序列二位の神級魔法使用のための器官を一つ……犠牲にすることになるのでしょう?」

「わたくしはそなたにそうする価値があると思っている――それだけのことですよ」

「……そうまで言われると、俺はしっかりロキエラを支えなくてはなりませんね」

ロキエラが、ぺこりと頭を下げる。

「ありがとうございます、テーゼ様」

「まあ、わたくしの主たる能力の大半は神級魔法とは無関係のものですから。ですので、そもそもわたくしが神級魔法を使うこと自体が滅多にないのです」

すると、ロキエラが俺に補足説明をする。

「あれはね、神族の中でも系統外の固有能力を特にたくさん備えてるテーゼ様だから言えることなんだよ? ボクとかヴィシスみたいな普通の神族にとっては、器官が永久に一つ閉じるのってけっこう重大なことなんだから……」

えっへん、とテーゼが胸を張る。

「わたくし、すごいのです」

「トーカ……こんなんでもね、すごいおかたなんだよ?」

「―― こ ( ・ ) 、 こ ( ・ ) ん ( ・ ) な ( ・ ) ん ( ・ ) !? ……ロキエラ?」

「うっ……す、すみません……」

……二人の空気を見るに、もう話はついていたのだろう。

俺が受け入れたらテーゼが半神化を施す、と。

そしてテーゼが、こほん、と咳払いし平静さを取り戻す。

アルカイックスマイルみたいな顔のテーゼが、俺の方を向く。

「トーカ」

「はい」

「わたくしからも一つ、大事なお話が」

「なんでしょう?」

「転送の皮袋から今日の分、何か出してくださいな」

「……え? あ……はい……わかり、ました」

大事な話……大事な、話か……。

この序列第二位にとっては、まあそうなのか……。

俺は席から立ち、卓上に置いてあった魔法の皮袋を使用した。

「――――――――」

転送は、しっかりなされた。

が、

「……く、くく」

「ふふふ……」

俺に続くように、テーゼが笑いを漏らす。

片やロキエラは無限の”???”を頭上に浮かべ、

「え? な、なんでテーゼ様も笑ってるんですか……?」

「え? いえ……トーカが笑ったので、何か面白いものが転送されたのかな……と」

テーゼの答えに、ロキエラが引きつった笑みになる。

「な、何が面白いのかもわからず……なんか面白いものっぽいっていう雰囲気だけで、笑ってたんですか……」

「え……違うんですか? だって、トーカが転送されてきたそれを見て笑ったから……それ、面白いものなのでしょう? まあ、わたくしが興味あるのは――美味しいかどうか、ですが」

俺は、転送物を見たまま言った。

「テーゼ様」

上官を前にした兵士みたいに、背筋をのばすテーゼ。

「はいっ」

転送されたものの説明を受けるからか。

説明時だけ妙に 下手 ( したて ) な序列二位である。

「この皮袋による転送は、これが最後かも知れません」

「えっじゃあもう明日あたり天界に帰ります」

そう答えたテーゼに、ロキエラがツッコミを入れる。

「いや元々テーゼ様は明日あたり、天界に帰る予定だったでしょーが……」

「あ、そうでした」

ところで、と俺を見るロキエラ。

「なんでトーカは、最後だって思ったの? その皮袋、実は回数制限とかある?」

「……いや」

これがひと区切り――とでも主張しているのか。

あるいは、役目を終えたとでも主張しているのか。

でなければ……単に”巡った”だけか。

俺は、

”もしかしたら、そうかもしれない”

なんとなく、そう思っただけだ。

実際これが最後かどうかなんて、わからない。

わからないが――

さすがに、このタイミングは……出来過ぎだろう。

ロキエラが「ちなみにトーカ」と質問を重ねる。

「今転送されてきたその飲食物は、どういうものなの?」

「ああ、これはな――」

口の端を吊り上げ、俺は答えた。

「 コーラと、ビーフジャーキーだ 」