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受け継がれたもの

ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで — ncode.syosetu.com · All chapters

受け継がれたもの

新しい状態異常スキル。

解放、されたか。

だが細かい確認は後回し。

まずは黒竜騎士団を確実に始末する。

既存スキルの半無限コンボでいけるはずだ。

「――――」

待てよ?

思いついた。

試す価値は、あるか……。

始末する上でも有効かもしれない。

実験相手にいつ巡り合えるかわからないしな。

「セラス」

「――は、はいっ?」

「もしオーバンが襲ってきたら、対処を頼む」

「あ――わ、わかりました」

詳細や理由を聞かずのみ込んでくれた。

セラスに内心礼を言う。

突起を操作。

再度、まだ息のあるオーバンのところへ伸ばす。

最初の麻痺ゲージはかろうじて残っていた。

「【 バーサク ( 暴性付与 ) 】」

オーバンの身体が激しく痙攣し始める。

ドッドッドッドッ――ッ!

「ぐ、ガ、ぁァ、ぁ……ッ!」

短い叫びを上げるオーバン。

怒りを秘めた濁った声。

麻痺状態中に無理に動くと大ダメージを受ける。

目論見通りいくかは、わからないが……。

ブシュゥッ!

いった。

オーバンが血を噴き上げた。

新スキル【バーサク】。

おそらく暴力衝動を植えつけるスキル。

暴力衝動。

麻痺状態。

この二つのコンボ。

暴力衝動を抑えきれず動こうとする。

結果、麻痺の性質で大ダメージを受ける。

このコンボなら、麻痺中の敵を早めに殺せるかもしれないな……。

今度はシュヴァイツのところへまた突起を近づける。

突起で近づくのは安全性が高い。

擬態からの不意打ちを避けられる。

シュヴァイツの麻痺ゲージは切れていた。

麻痺をかけ直す。

眠りの方を解除。

今、シュヴァイツは麻痺状態のみ。

多分このスキルの試用は起きててもらう必要がある。

「【 ダーク ( 闇性付与 ) 】」

目を開くシュヴァイツ。

「……ぅ、ぐっ……っ!? なっ……夜……? 違、う!? 視、界……め、目……が――」

視界を闇で閉ざすスキルか。

姿を見られたくない時は使えそうだ。

射程距離次第では近距離用の【スリープ】と分けて使えるだろう。

「ぐ、ゴ、が、ァ、ぁ……ッ!」

「ぬ、ぐぐ……っ、――ッ!?」

毒に呻き苦しむ二人の五竜士。

オーバンは金のためにセラスを殺そうとした。

シュヴァイツはセラスを連中の部下の慰み者にしようとした。

実験台にしてもまるで心が痛まない。

俺と同じでロクでもない。

「さて」

残りの【 フリーズ ( 凍結性付与 ) 】もなんとなく想像はつくが――

「――っと?」

ステータス表示を確認する。

MPが急速に数値を減らしていた。

このままMPがゼロになられたら困る。

セラスの様子をうかがう。

硬い表情で地に散らばる騎士団を眺めていた。

視界の変化に気づいた様子はない……。

ステータス表示はやはり俺にしか見えていない、か。

「解除だ、ピギ丸」

「ピッ」

両目の脇から”根”が引いていく感覚。

そうだな……。

残りのスキルは後にするか。

麻痺や眠り、毒に干渉するタイプだと困る。

凍結は微妙に干渉しそうなんだよな……。

身体の自由を奪うあたりが似ている、というか。

幸い行動不能系は麻痺と眠りが効いている。

今は確実性を取りたい。

視界の先で断末魔の呻きが上がり始めた。

「グ、エェッ――」

五竜士の黒竜が絶命。

やがてシビトの白竜も、力尽きる。

「ギェ、エッ――、……」

【レベルが上がりました】

【LV1789→LV1796】

さすがは”人類最強”の騎乗竜。

けっこうな経験値を持っていたようだ。

経験値が魔物からしか入らないのは残念にも思うが。

ただ、レベルアップでMPは全快した。

この局面でMPにはもう困るまい。

他の竜や騎士たちも順番に力尽きていく……。

眠りながら死んでいくのが大半だった。

「文字通り 永遠 ( とわ ) の眠りってやつか」

「凄まじい力、ですね」

「ん?」

セラスが話しかけてきた。

「シビトを騙しうったあなたの策にも心から驚かされましたが……今ほどの、ピギ丸殿との合わせ技も」

調子は冷静に見える。

が、セラスの声はまだ動揺を含んでいた。

あれでまだ実は放心気味なのかもしれない。

周囲を確認する。

「…………」

少し、セラスと話すか。

話しておきたいこともあるしな。

戦闘中に話せなかったアレコレなんかも。

早くここを去りたいのは山々だが……。

まだ俺はこの場を動けない。

ここにいるすべての敵が息絶えるのを見届けねばならないからだ。

「さっきのアレは発動まで時間がかかるし、精神力もバカ食いする。制約も多い」

俺のステータスはMPだけが他より高い。

さっきの力はMPが豊富じゃないと厳しいだろう。

E級勇者とはいえ、かろうじて魔術師タイプ(?)のステータスだったのは助かった。

「その……ピギ丸殿とのあの力も、異界の勇者の力なのですか?」

躊躇いがちにセラスが聞く。

俺の事情に深く踏み込まないこと。

アレの条件をまだ気にしているのだろうか?

だとすれば、まったく律儀な性格だ。

「異界の勇者の力、か」

魔物強化剤。

製法は『禁術大全』に記されていた。

書き記したのはかつての異界の勇者。

通称、暗黒の勇者。

またの名を大賢者アングリン。

「かもな」

着込んでいるローブの生地に触れる。

「そうとも、言えるのかもしれない」