第10話
第10話
「ここがわしの部屋だ。今日からお前もここで過ごすが良い」「は、はぁ、ありがとうございます……」大磯守様に案内してもらった部屋は、とても広くて、高そうな屏風などが飾られていた。そこに僕の荷物が全て運ばれ、僕はそれについてひとつずつ説明していった。その中で、やはり僕は昔の世界に来てしまったということを痛感した。そして、僕が未来から来たということを、大磯守様も理解してくださった。「そうか。後の世には、侍はいないのだな」「はい、侍はテレビや映画で過去のものとして存在しているだけです」「それは何故だ?」「何故って…うーん、戦う必要がないから、ですかね」歴史が得意じゃない僕は、上手く説明することが出来なかった。それなのに、大磯守様は僕の話をちゃんと聞いてくださった。「そんな世が来るのか、素晴らしいな」それから、大磯守様はそんな世の中になることを夢見て戦っていることを話された。「全てはここで暮らす民の為だ。それがこの家に産まれ、主として生きているわしの務めだと、そう思っている」その言葉を聞いて、新聞やインターネットのニュースで時折目にする、政治家の残念な記事が頭をよぎった。それに比べて、この人は……。そんなことを考えているうちに、僕の口から自然と言葉がこぼれていた。「……すごいですね」と。「凄い?」「はい、すごいです」「……そうか。そう言われたのは、初めてだ」そう言って、大磯守様は笑った。「真雪、わしはな、叶うならお主のように、山に入って花や草の絵を描いたり、こうした美しき色のものを身につけて歌や茶を楽しむような暮らしをしたいのだ」その笑顔がどこか悲しそうに見えて、僕は胸がぎゅっと痛くなった。