第21話
第21話
翌朝。目を覚ますと、隣にいるはずの大磯守様の姿がなかった。「大磯守様……?」慌てて身を起こすと、障子の向こうから、風を切るような音が聞こえてくる。近くに置いた眼鏡をかけ、起き上がってそちらに向かうと、庭先で竹刀を振るう大磯守様の姿が見えた。昨夜のことが夢だったのかと思うくらい、その姿は凛としていて、綺麗だった。「おお、真雪、目が覚めたか」「お、おはようございます……」そんなことを思っていると、大磯守様は僕のすぐ傍に来ていた。「なんだ、真雪。昨夜のことでも思い出しておるのか?」こんなに頬を紅くして。そう言って、大磯守様は僕の頬を撫でる。思わず、ひっ、という声が出てしまった。「ははは、そのようだな」それからしばらくの間、大磯守様は僕の頬を触り、「男のものとは思えん」と呟かれた。「……あの、大磯守様」「なんだ?」「その……男同士で、ああいうことをするのは……」まだ手を離そうとしない大磯守様に、僕はドキドキしながら尋ねていた。「珍しいことではないぞ」が、あまりにもあっさりと答えが返ってきて、僕は言葉に詰まった。「なんだ。そなたのいたところでは違うのか?」「わ、分かりません。全くない訳ではないと思いますが、少なくとも僕は……」「お主は女を抱いたこともなさそうだな」「…………」何て人だ。僕はますますどう返していいのか分からなくなった。「それにこの肌艶、女子よりも触り心地が良い……」指先で撫でられると、身体がぞくぞくした。「そ、そんなことを言われましても……」「真雪」「は、はい」「お主のこと、気に入ったぞ」そう言って、大磯守様は楽しそうに笑われた。「あ、ありがとうございます……」そんな風に言われたことなんてほとんどなかった僕は、すごく嬉しい気持ちになった。