第23話
第23話
僕が側仕えのことについて考えているのをよそに、大磯守様は気分転換に庭を散歩しようと誘ってくださった。お城の庭はとても広くて、色々な植物が咲いていて、すごく楽しかった。僕は大磯守様に許可を頂き、それらの中から見たことのないものをスマホで撮影したり、持ってきたスケッチブックに描いたりした。「やはり上手いものだな」それを隣で見ていた大磯守様はこう言って下さった。「あ、ありがとうございます……」「何故これを描いた?」「僕の時代には見られない植物だからです。もしかしたら、今はもうどこにも生えていないのかもしれません。あるいは、僕の知らない地域に残っているのか……」「ふむ、草花も人と同じでずっとそこにいる訳ではない、ということだな」「はい、そういう認識で良いと思います」「……ふふ、お主は本当に草花が好きなのだな。話している時のその顔、……」そこまで言いかけて、大磯守様は、いや、なんでもない、と続けた。そこからまた別の…大磯守様のお部屋からはだいぶ離れた場所にも多くの植物があり、中には薬草として使えそうなものもあった。「この草が腹に良いのか?」「はい、これを乾燥させた後潰してお茶にする事でお腹の調子が整う効果があります。あと、……」気がつけば、僕は夢中になって説明していた。こんなに植物の話を誰かに聞いてもらえることなんて、普段はほとんどない。大磯守様は、そんな僕の話を興味深そうに聞いてくださった。けれど……。「……あ、大磯守様、この青いお花、花から下の部分の全てが薬草として使えます。わぁ、たくさん咲いていますね……」その花に目を向けた途端、大磯守様の表情が変わった。今まで見たことのない、どこか寂しそうな顔だった。「……どうかされました?」「……いや、この花を久しく見ていなかったから、驚いてしまった」「そうなんですね!確かにこの花は天候に左右されやすいですし咲いている期間も短いですから、見かける時期が限られています」「……そうか。では、今のうちにたくさん摘んで、薬として使えるようにしておく必要があるな」「はい!でも、全部摘んでしまうと毎年摘めなくなってしまいますので、摘んだとしても、半分くらいにしておいた方が良いですよ」「分かった。では真雪、明日、家臣たちに手伝わせる故、お主には使える草花とその採取量を伝える役目を与える」「は、はい!僕なんかで良ければ」「わしの見立てでは、城内でお主ほど草花に通じている者はいない。その知識、我らの、そしてこの国に住まう民のために貸してほしい」そうおっしゃる大磯守様を見て、僕は嬉しくなった。けれど、先ほどの寂しそうな表情が気になっていた。何か尋ねてみたいと思ったものの、僕には聞くことができなかった。