LNCrawler

第29話

いつもの登山に行っただけなのに — fujossy.jp · All chapters

第29話

大磯守様と離れることに不安を覚えながらも、僕は弥三郎さん、大磯守様の家臣の方々と共に、お城の庭に向かった。「宮前殿、ご指示を」「あっ、はい、ではまず、こちらの葉だけを採って頂きたいのですが……」僕は皆さんに採取方法を説明することにしたんだけど、口では伝えづらいので、実際に採取方法をやってみせた。履きなれた靴に、着物。靴は良かったんだけど、着物はすごく動きにくかった。「……宮前殿、しばしお待ちを」それでもなんとか正しいやり方を伝えていると、弥三郎さんが突然いなくなり、しばらくして紐のようなものを持って戻ってくる。「宮前殿、こちらへ。その袖では、動きにくうございましょう。これでたくし上げておけば、いくらか動きやすくなるはずです」「あっ、ありがとうございます!」僕がお礼を言うと、弥三郎さんは慣れた手つきで僕の袖をまとめてくれた。「これでよろしいかと」「あ、本当だ! すごく動きやすくなりました!」思わず声を弾ませると、弥三郎さんはほんの少しだけ目を細めた。こうして、僕は大磯守様の家臣の方々と共に使えそうな草の採取を進めていった。「宮前殿、こちらは」「あっ、それは似ているけれど違います。薬草として使えるのはこちらです」「宮前殿、この花のことを知りたいのですが、よろしいでしょうか?」「あ、これですか?この花なら知っているのでお答えできます」いつしか、採取する植物以外のことまで聞かれるようになり、あっという間に時間が過ぎていた。