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第49話

いつもの登山に行っただけなのに — fujossy.jp · All chapters

第49話

出陣の準備が進む中、夜の城は昼間よりも静けさを取り戻していた。ふたりきりになった部屋で、寛之進さんは僕を優しく抱き寄せた。「真雪……本当に、わしと共に来るのだな」「はい……」燭台の灯りに照らされた寛之進さんの目を、僕はじっと見つめながら答えた。出陣したら、いつどうなるか、分からない。そんな思いが過ぎった時、僕は自分でも信じられないようなことを口にした。「あの、寛之進さん……」あなたと、ひとつになりたいです。これまで何度も触れ合ってきた。 けれど、最後の一線だけは、まだ超えていなかった。「真雪……」「僕を、本当の側仕えにしてください」僕はこう言って、寛之進さんの頬に震える手を添えながら、唇を塞いだ。 そんな僕に、寛之進さんは深く、丁寧に、しかし熱を込めたキスで応えてくださった。ちゅッ♡ちゅくッ♡♡ちゅむッ♡♡舌が絡みあい、甘い水音が部屋に響く。「真雪、わしは、側仕えとしてではなく、お主の全てが愛おしいからこそ、お主と繋がりたい」唇が離れた時、寛之進さんはこう言ってくださった。「……寛之進さん」「どうした、真雪」「あの……ひとつだけ、聞いてもいいですか」それは、ずっと、聞きたかったことだった。でも、聞いてしまうのが怖かった。僕は顔を上げられないまま、ようやく口を開いた。「僕は……夏彦さんでは、ありません」分かっている。そんなこと、僕が一番よく分かっている。「それでも……僕にそう言ってくださるのですか?」ようやく口にした言葉は、情けないほど震えていた。「……夏彦のこと、知っておるのか」「たくさんは知らないです。でも、僕に似ていて、お花が好きな人だったということは知っています……」「……初めてお主を見たとき、夏彦の面影を見たことは否定せぬ」僕が消え入りそうな声で言うと、寛之進さんは、僕の頬にそっと触れてくださった。「だが、今、わしが見ているのは夏彦ではない。真雪、お主だ。草花のこととなると夢中になるところも、わしの知らぬ世の話をするところも、すぐに顔を赤くするところも、お主には、お主にしかないものがある」長く綺麗な指が、僕の頬を優しく撫でてくる。「わしは、お主を知るたびに、お主を愛おしいと思うようになったのだ」