第1話:家族会議
第1話:家族会議
【読者の皆様へ】
第五章→第六章で少し期間が空いたため、『一分で読めるこれまでのあらすじ』を作りました!
忘れかかっている人も多いと思うので、よかったら使ってくださいませ!
【第一章】悪役貴族ホロウに転生。ダイヤを助けたり、主人公アレンと戦ったり、不憫可愛いニアを助けつつ、『大翁』ゾーヴァをヌポン。
【第二章】裏カジノを潰したり、先々代勇者ラウルをボコったりしつつ、聖騎士エリザを助けて、『闇の大貴族』ヴァランをヌポン。
【第三章】闇オークションを支配したり、暗殺者ティアラに薬を盛ったり、天才研究者リン&セレスを助けつつ、『獣災』ラグナをヌポン。
【第四章】天魔十傑の下位四人を間引いたり、ニアとエリザと朝チュンしたり、国王バルタザールを助けつつ、『四災獣』天喰を討伐。
【第五章】人界交流プログラムで帝国へ行き、帝都横断脅迫ツアーを実施したり、犯罪結社ウロボロスを潰したりしつつ、『色欲の魔女』リゼをヌポン。 虚 ( うつろ ) と帝国が同盟を締結&皇帝ルインが世界から孤立して、(ホロウだけの)ハッピーエンド。
【第六章】これから始まる!
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聖暦 ( せいれき ) 1016年7月15日。
『人界交流プログラム』の全日程が終了し、レドリック魔法学校の生徒たちが、王国へ帰ったその日の夜――第55代国王バルタザールの 崩御 ( ほうぎょ ) が発表された。
彼は王城内の私室で眠るように亡くなり、枕元には遺言状が置かれていたとのことだ。
王政府が公開したその内容は、 概 ( おおむ ) ね以下の通り。
①ささやかな葬儀を希望すること。
②政治的空白を避けるため、ただちに王位継承選定儀礼――『 王選 ( おうせん ) 』を 執 ( と ) り行うこと。
③ 此度 ( こたび ) の王選は、王位継承権上位三名に第七王女アリシアを加えた、合計四人で争うこと。
バルタザールの遺言状は、メインルートのそれと同じだった。
「うぅ、陛下ぁ……」
「ああ、なんということだ……っ」
「バルタザール様、お疲れ様でした……ッ」
王国全土が悲しみに包まれる中、葬儀の準備は淡々と進んで行く。
三日後――聖暦1016年7月18日、バルタザールの 国葬 ( こくそう ) がクライン大聖堂で開かれた。
(当代国王の葬儀は普通、三日にわたって実施されるんだけど……)
バルタザールの希望もあり、今回は一日だけの簡略式で行うらしい。
具体的には、王族と貴族による 献花式 ( けんかしき ) →国民の一般 弔問 ( ちょうもん ) →王家の眠る墓に埋葬、という流れだ。
黒い 喪服 ( もふく ) に身を包んだボクは、ハイゼンベルク家の当主として、バルタザールの国葬に出席する。
(……クライン大聖堂に来るのは、これで二度目になるのか)
前はゾーヴァのお葬式(仮)だったから、ちゃんとしたモノに出るのは初めてだ。
そんなことを考えながら、受付で 記帳 ( きちょう ) を済ませ、式場のメインホールへ移動する。
(何度見ても、立派なところだな)
メインホールの奥には大きな 祭壇 ( さいだん ) があり、そこにバルタザールの 棺 ( ひつぎ ) が 安置 ( あんち ) されている。
大勢の参列者たちは、国王と向かい合うような形で、前から順に王族→大貴族→中小貴族と並んでいた。
「――ハイゼンベルク 卿 ( きょう ) は、二列目の中央へお願いします」
係りの人の案内を受け、前から二列目の中央、大貴族のエリアへ向かう。
するとそこには、喪服を 纏 ( まと ) ったクラスメイトが――四大貴族エインズワース家の当主ニアがいた。
「ホロウも来たのね」
「まぁ、さすがにな」
ハイゼンベルク家の当主として、国王の葬儀を欠席するわけにはいかない。
そうでなくとも、バルタザールとは友達だ。
「陛下、お亡くなりになったね……」
「……惜しい人を亡くしたものだな」
二人でそんな話をしていると、王国の最高神官が 壇上 ( だんじょう ) に立ち、小さくコホンと咳払いをした。
「これより、バルタザール・オード・クライン陛下の国葬を執り行います。まずは 献花式 ( けんかしき ) を――第一王女クリス・クロム・クライン」
「うむ」
赤髪の第一王女は、祭壇の前に歩みを進め、バルタザールの棺と対面する。
「父上、クライン王国のことは、この 妾 ( わらわ ) にお任せください。あなたの築いた国を導き、立派な強国にして見せます!」
クリスは一筋の涙を流しながら、自身の心の内を熱く語った。
(……うーん、吐き気がするね)
彼女は泣いてこそいるものの、父の死を一ミリも悲しんでいない。
何せバルタザールの寝室に 呪水晶 ( じゅすいしょう ) を仕込み、 老衰 ( ろうすい ) に見せかけて殺そうとしたぐらいだからね。
(第一王女の善性は――『邪悪』)
自分が王になることしか考えていない。
父の死なんて、『イベントの一つ』ぐらいに思っているだろう。
その後は第一王子→第二王子と、王位継承権の高い順に 献花 ( けんか ) が進んだ。
二人は「必ず王になってみせる」だの、「豊かな国にしてみせる」だの、自分が王になった未来を熱く語る。
ギラギラとした欲望を、瞳の奥に浮かべながら。
バルタザールと向き合わず、他の王族と貴族にアピールしている、「我こそが次代の国王だ」と。
(まぁ、それも一つの在り方かもしれない)
故人 ( こじん ) へ送る言葉は、人それぞれだからね。
まして彼らは王族だし、王族の流儀があるのだろう。
ただ個人的には……「バルタザールの死を悲しむ言葉が、一つぐらいあってもいいのにな」、と思った。
そんな折、
「――第七王女アリシア・ノル・クライン」
「はい」
美しい金髪の女性が、 凛 ( りん ) とした表情で、真っ直ぐ祭壇へ向かう。
「……お父様、どうか安らかにお眠りください」
アリシアは静かに別れを告げ、一輪の白い花をスッと手向けた。
その短い言葉には、王選のアピールなど微塵もない。
ただただ、父の死を 悼 ( いた ) むモノだった。
(……原作と同じだね)
第七王女だけは、バルタザールの死に心を傷めていた。
さすがは第六章のヒロインの一人、とても好感の持てるキャラだ。
アリシアが深々と 拝礼 ( はいれい ) し、第一列の端に戻ろうとすると――他の王族たちから、王選にあぶれた者達から、嫉妬の言葉と視線が飛んだ。
「ちっ、第七王女の分際で……っ」
「 前王 ( ぜんおう ) の特別推薦枠で、王選に滑り込むとは汚い女だ……ッ」
「 色仕掛 ( いろじか ) けでも使ったのか? 継承権最下位のてめぇに勝ち目なんざねぇよ」
……ほんと、好感の持てない奴等ばかりだね。
王族の 献花 ( けんか ) が終わり、次は貴族の番となる。
「――ハイゼンベルク家当主ホロウ・フォン・ハイゼンベルク」
大神官の言葉を受け、
「はっ」
ボクは祭壇のもとへ向かい、棺に納められたバルタザールと対面する。
(国のために生き、国のために死ぬ。ボクとは真逆の生き方だけど……嫌いじゃなかったよ)
バルタザールはやり切った。
命の 灯 ( ひ ) が消えるそのときまで。
王国の未来のために身命を賭した。
(そういう一本筋の通った生き方は――やっぱりかっこいいと思う)
バルタザールの死を 悼 ( いた ) みながら、一輪の花をスッと 手向 ( たむ ) けた。
(……しかし、満足そうな死に顔だね)
棺の中の国王は、穏やかな顔を浮かべている。
ボクが魔力を貸し与えた結果、バルタザールは少しだけ生き永らえ、 天喰 ( そらぐい ) 討伐戦の指揮官を正しく選び――その脅威を打ち払った。
きっと安心して 逝 ( い ) けたことだろう。
(まぁあの一件は、ボクがハイゼンベルク家を継ぐための下準備なんだけど……)
ホロウルートを攻略する過程で、善良な原作キャラが幸せになるのなら、それはとても嬉しいことだ。
「じゃあね。またそのうち、墓参りにでも行くよ」
小さな声で別れを告げ、クルリと 踵 ( きびす ) を返し、所定の位置に戻る。
「――エインズワース家当主ニア・レ・エインズワース」
「はい」
ニアの献花を見つめながら、ボクは静かに思考を深める。
(バルタザールは優秀な王だった)
不安定な経済を立て直し、帝国の侵攻を二度も食い止め、『 四災獣 ( しさいじゅう ) 』 天喰 ( そらぐい ) を討ち取った――王国史上、三本の指に入る 賢王 ( けんおう ) として語り継がれるだろう。
(ただ…… 跡継ぎ ( ・・・ ) には恵まれなかった)
最前列の中央に立つ、三人の王族へ目を向ける。
王選の大本命は、 傲岸 ( ごうがん ) な第一王女クリス。
二番手は、尊大な第一王子ツァリオン。
大穴として、強欲な第二王子ネードリヒ。
残念ながら、第七王女アリシアに勝ちの目はない。
(クリス・ツァリオン・ネードリヒ、誰が王になっても、この国は滅びる……)
王国の未来は、『破滅End』と決まっているのだ。
(でも、それはちょっともったいない)
確かに王国は、沈み行く泥船だ。
しかし、四大国の一角という『 地位 ( かたがき ) 』には、大きな価値がある。
ボクが国を乗っ取り、最大限有効活用させてもらおう。
そうこうしているうちに、最後の貴族が献花を終えた。
「これにて献花式を納めます。皆様、バルタザール様へ祈りを――」
参列者一同が 黙祷 ( もくとう ) を捧げた後、最高神官と入れ替わる形で、醜く肥え太った大臣が壇上に立った。
彼はゴホンと咳払いをして、大きな声を張り上げる。
「明日の正午より、王位継承選定儀礼――王選を開始する!」
その瞬間、大聖堂に緊張が走った。
王選では、この場にいる全員が 利害関係者 ( ステークホルダー ) 。
誰を味方に付け、誰を敵に置くのか。
どの陣営と手を組み、どの陣営を 蹴落 ( けお ) とすか。
権謀術数 ( けんぼうじゅっすう ) の渦巻く、過酷な戦いが幕を開ける。
(さぁて、始めようか……!)
ボクの作った『最強の攻略チャート』――『王位 簒奪 ( さんだつ ) 計画』をっ!
■
バルタザールの国葬から帰ったボクは、ハイゼンベルク家の自室に閉じ籠る。
(第六章は、これまでで一番イベントが多い)
こうしてゆっくり戦略を練れるのは、おそらく今この時間が最後になるだろう。
小さく息をつき、静かに思考を深めた。
(明日からいよいよ『王選』が始まる……)
本来のホロウルートでは、王選に勝利して当家の地位を高め、ハイゼンベルク家を継ぐ――という流れだった。
でもボクは、第四章の終了時点で当主の座に 就 ( つ ) いた。
単純計算、『二章分のショートカット』に成功しているのだ。
(となればここは、さらに上を――『王位』を目指すべきだろう!)
四大貴族の次期当主から、四大貴族の当主へ。
四大貴族の当主から、クライン王国の国王へ。
今こそまさに『王の舞台』へ羽ばたくときだ。
(つまり、第六章のクリア条件は――王位を獲ること!)
このときに備えて、大量の準備してきた。
だから、きっと大丈夫だ。
(次に考えるべきは、『どんな王になるか』)
一言に王と言っても、二通りのパターンが存在する。
①ボクが『表の王』として君臨する。
②他の王を立てて 傀儡 ( かいらい ) 政権を作り、ボクは『裏の王』として君臨する。
(個人的には――②が理想だ)
国の実権を 掌握 ( しょうあく ) しつつ、極悪貴族として暗躍できるからね。
(でも……さすがにちょっと難しいかな)
これを実現するには、クリアすべき条件が多過ぎる。
本筋として表の王を狙い、もし可能であれば、裏の王に切り替える――これが現実的なラインだろう。
(圧倒的な優位盤面を築いた今、下手に無理をする必要はない)
有利な状況に 胡坐 ( あぐら ) を 掻 ( か ) き、ハイリスク・ハイリターンを狙うのは、『怠惰傲慢な行い』だ。
地道にコツコツと小さな利を積み上げ、ローリスク・ミドルリターンを狙う、これこそが『謙虚堅実な姿勢』だろう。
後はそう、二つの大切な要素を回収しなくちゃいけない。
(一つ目は、あの『超激レアイベント』!)
極めて特殊な条件下に限り、この章には存在する、 原作 ( ・・ ) ホロ ( ・・ ) ウの ( ・・ ) 強化 ( ・・ ) イベ ( ・・ ) ント ( ・・ ) ……!
過酷なホロウルートをクリアするには、圧倒的な武力が必要不可欠だから、なんとしても成立させよう。
(二つ目は、大ボスの『 堕天使 ( だてんし ) ルシフェル』!)
彼だけは、 絶対 ( ・・ ) に家 ( ・・ ) 族へ ( ・・ ) 迎え ( ・・ ) なく ( ・・ ) ちゃ ( ・・ ) いけ ( ・・ ) ない ( ・・ ) 。
メインルートにおけるルシフェルは、主人公の可能性に魅せられ、アレンの仲間になってしまう。
(勇者陣営の強化、それは駄目、絶対に駄目……っ)
どんな手を使っても、阻止しなくちゃいけない。
っというわけで、第六章の目標は三つ。
①王選に勝利し、王位を獲ること。
②原作ホロウの強化イベントを回収すること。
③大ボス『堕天使』ルシフェルを家族に迎えること。
①~③をクリアすれば、第六章は『完全クリア』だ。
(そして忘れちゃいけないのが、この章にも仕込まれた『例のアレ』――『死亡フラグ』だ)
今回の内訳は確か……中盤に一つ、終盤に一つだったかな?
どちらも策を準備しているけど、油断せずにしっかりとへし折ろう。
もちろん、ランダム発生の暗殺者イベントにも注意しなきゃだね。
(最後に主人公アレン対策だけど……)
これについては、『とっておき』を用意してある。
最も効率的で効果的な『最強の一撃』だ。
(くくっ……アレン、悪いけどキミには、完全なモブに落ちてもらうよ?)
今後はただのヒロインとして、ボクの傍で指を咥えているといい。
第六章の 攻略 ( クリア ) 条件・回収要素・注意事項、一通り 纏 ( まと ) めたところで、改めて気合を入れ直す。
(とにもかくにもこの章は、今までで一番難易度が高い……)
イベント管理を厳格にこなし、適切なルートを選ぶ必要がある。
(念には念を入れて、もう一度シミュレーションしておくか!)
予 ( あらかじ ) め用意した100通りの攻略チャートを頭の中で何度も 反芻 ( はんすう ) する。
(……よし、イケるぞ!)
ボクが万全の態勢を整えたそのとき、不意に< 交信 ( コール ) >が飛んできた。
五獄 ( ごごく ) の統括ダイヤだからだ。
(ボイド、時間よ。エメとウルフ以外の幹部は、みんな集まっているわ)
(わかった、すぐに行くよ)
< 交信 ( コール ) >切断。
漆黒のローブと仮面をかぶり、 虚 ( うつろ ) の統治者ボイドとなる。
これから始めるのは、『第一回:家族会議』。
ボクの集めたコレクションが――大ボスや中ボスたちが勢揃いする、最高にエキサイティングなイベントだ!
ふふっ、きっと楽しくなるぞ!
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【※読者の皆様へ、とても大切なお知らせ!】
本作『極悪貴族、謙虚堅実に無双する』は、3月10日に電撃文庫より発売するのですが……。
当然、あります、無料の特典 SS ( ショートストーリー ) ……っ!
こちらに一挙ドドンと大公開!
■一般書店:4Pブックレット ・フィオナのクライン王国杯「ギャンブルとは、とどのつまり、勝つか負けるか!」 馬カスが好きな方はこちら!
■アニメイト:4pリーフレット ・エンティアの欲求「悔しい……でも、逆らえない」 ホロウとエンティアの絡みが好きな方はこちら!
■アニメイト:電子特典SS ボイドのその後(ニアの『アフターフォロー』を考えないと) 第一巻のその後、ボイドの思考が描かれています!
■ゲーマーズ:4Pブックレット ・ニアの甘い妄想「まるで『白馬の王子様』みたい……ではないわね」 第一巻のその後、ニアのホロウへの思いが描かれています!
■ゲーマーズ:オリジナルA5アクリルプレート&通常版と同じ内容の4Pブックレット(有償特典)
■メロンブックス:SSリーフレット ・ホロウとダイヤの修業(ふふっ、これは『嬉しい誤算』だね!) 幼いホロウとダイヤの絡みが描かれています!
■メロンブックス:ミニアクリルパネル&通常版と同じ内容のSSリーフレット(有償特典)
■Bookwalker:電子特典SS ・アレンの確信「やっぱりホロウくんは優しいね」 ホロウとアレンの勘違いが好きな方はこちら!
いやぁ……我ながら、たくさん書きましたね!
全て本編時空の物語なので、好きなキャラのエピソードを狙ってみてください!
石油王の読者様がおられましたら、全種類コンプリートしていただけると嬉しいです!
※特典の数には限りがあり、再配布の予定は現在ありません。
最後になりますが、【極悪貴族】書籍版の予約・購入、どうかよろしくお願いいたします……っ。